そんなピエガの製品を代表するのが、今春から日本市場に導入された最新のTPシリーズである。上位のTCシリーズと同様にリボン型ユニットを搭載して本格的なホームシアターにふさわしいクオリティを達成しながら、価格はミドルレンジを実現。特にセンタースピーカーとリアスピーカーは家庭用として扱いやすいサイズなので、サラウンドシステム導入の敷居も低い。
TPシリーズはリボン型ユニットをトゥイーターに採用し、ウーファーとミッドレンジの各ユニットにはピエガとピアス社が共同開発したMDS技術を投入。その組み合わせによって反応の良さとスムーズなつながりを両立させていることが特徴である。同シリーズを構成する4モデルのうち、最大のTP7は6ユニットの3ウェイだが、高さを111cmに抑えたTP5は2ウーファー+トゥイーターの2.5ウェイという違いがある。ブックシェルフ型のTP3、センター用のTP4Cはいずれも2ウェイでコンパクトなサイズにまとめており、トールボーイ型の2機種と同様、とてもスタイリッシュでデザインに隙がない。 その高い質感はアルミニウムの美しい仕上げに由来するもので、そこにピエガのもうひとつの魅力がある。細部まで精度高く加工されたキャビネットは存在感をさりげなく主張しながら、インテリアにすっきりと溶け込む。薄型テレビはもちろんだが、スクリーンとの組み合わせにも好適だ。 今回TPシリーズのテストは音元出版の視聴室で行った。フロア型モデルTP7、TP5をそれぞれフロントスピーカーとして利用し、TP4CとTP3を組み合わせてサラウンドシステムを構築する。サブーファーは仕上げが美しくコンパクトな新製品PS1を用意し、BDのパッケージソフトを中心に試聴を行った。バリエーションとして大型スクリーンとの組み合わせを想定し、センタースピーカーのみ上位シリーズのTC40Cを組み込んだ試聴も行っている。アンプはミドルレンジの一体型AVアンプを使用した。 |
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センターをTC40Cに変更すると、台詞の重心が低くなって厚みが出てくるのはもちろんだが、その効果がサラウンド成分にまで波及し、量感が向上してスケールがさらに広がることは意外な発見であった。100インチを超えるスクリーンと組み合わせる場合は、センタースピーカーのグレードアップも選択肢に入れておくことをお薦めする。
次にフロントスピーカーをTP5に変更し、同じソースを試聴。薄型テレビとの組み合わせではTP5のサイズが視覚的にもバランスがとれてくるし、設置の自由度も高い。間接照明下で視聴したのだが、TP5のリボンが照明を微妙に反射し、さりげなく存在感を主張して美しい。 TP5ではひと回り小さな音場になるかと思ったが、意外にもスケール感の大きさはTP7に見劣りしない。音の凝縮感とスピード感が際立ち、とてもいいバランスで鳴っている。音楽のクオリティと音色の美しさにピエガならではの説得力があり、音量を上げても、小音量で聴いても、いずれもたいへん密度が高い。低音が重すぎず、部屋の影響を受けにくいことも嬉しい発見であった。比較的壁に近い設置で聴いたのだが、部屋の悪影響をそれほど意識しなくて済むのである。 このシステムでもセンタースピーカーをTC40Cに変えてみると、台詞の微妙なニュアンスがより細かく伝わってくる。『カジノ・ロワイヤル』のカジノシーンで会話にいっそうの重みが出てくることが、とても印象的であった。 いずれのシステムもリアスピーカーにはコンパクトなTP3を組み合わせたが、音色とレスポンスが揃っているので、サラウンド音場の密度は濃密で、力不足を感じることはない。洗練された外見からはちょっと想像できないかもしれないが、スケール感とエネルギーの密度感は大口径の大型システムに匹敵する。本物のホームシアターを目指すファンにぜひお薦めしたい。 |
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