プロオーディオの世界で確固たるポジションを持つ歴史あるブランド、SHURE。加えて近年ではイヤホンの分野でも高い評価を得ている。

そのイヤホン「SEシリーズ」に新たに追加されるのがハイCPモデル「SE115」だ。まずは発売開始から2年を迎えるSEシリーズのラインナップを整理しておこう。

SHUREのニューモデル「SE115」。左からブラック、ブルー×ブラック、レッド×ブラック、ピンク×ブラック

SE530とSE420はバランスド・アーマチュア型のドライバを複数基搭載するハイエンド。ミドルレンジのSE310とSE210はBA型ドライバを1基搭載。エントリークラスはSE110がBA型、SE102はダイナミック型とユニットの方式が異なっており、バリエーションを広げている。

SHURE SEシリーズ 現行ラインナップ
  モデル名 搭載ユニット
SE102 ダイナミック型×1
SE110 バランスド・アーマチュア型×1
SE115 NEW ダイナミック型×1
SE210 バランスド・アーマチュア型×1
SE310 バランスド・アーマチュア型×1
SE420 バランスド・アーマチュア型×2
SE530 バランスド・アーマチュア型×3

SE115はエントリークラスを拡充するモデルとして投入されるようだ。新規ユーザーの獲得はもちろん、SE102ユーザーのステップアップも期待しているとのことである。

ではSE115の内容を見ていこう。

キーとなっているのは「Dynamic MicroSpeaker II」である。同社が「第2世代の」と称するこのダイナミック型ドライバーユニットがSE115に様々な音質面のメリットをもたらしている。

そして音質の他にもDynamic MicroSpeaker IIには大きな特長がある。それは小型化の実現である。ユニット単体で見た場合で、同社従来のダイナミック型ユニットと比べて径が約10mmから約8mmにまで小型化されている。その小型化がSE115に2つの利点を与えているのだ。

 

ひとつめは全体的な小型化によって装着感が向上し、長時間の利用時にも耳への負担が少なくなったこと。これはわかりやすいところだろう。

ふたつめはイヤーパッドを取り付けるノズルの径も細くなり、同社上位モデルと共通の径になったこと。おかげで上位モデルと共通のパッドを利用できるようになった。

 
ノズルの径がSEシリーズ上位モデルと共通になった   このためソフト・フォーム・イヤパッドなども利用ができる

特に、低反発素材のソフトフォームイヤーパッドが使えるようになったのは大きい。同パッドは装着の容易さと極めて高い遮音性、密閉度を兼ね備える。

ソフト・フォーム・イヤパッド(上)とソフト・フレックス・イヤパッド(下)はいずれもS/M/Lの3サイズを同梱する

モジュラーケーブル構造はSEシリーズ共通の特長だ。ケーブルが交換可能となっており、付属の延長ケーブルの他に、iPhone用のマイク付きケーブル「Music Phone Adapter(MPA-3C)」、イヤホンを外さなくてもボタンひとつで周囲の音をさっと確認できる「Push-To-Hereコントローラー(PTH)」の利用が可能だ。

 
iPod shuffleなどを襟元に装着した時にもケーブルがたるまないよう、ケーブル長は約45cmと短めになっている   付属の約91cmの延長ケーブルを装着すれば、鞄などにプレーヤーを入れた場合にも楽々対応できる

そしてSEシリーズ初となる要素が豊富なカラーバリエーション。既存SEシリーズは黒系と白系が基本色で、同一モデルのカラーバリエーションもその2色までだった。しかしSE115はブラック、ブルー、レッド、ピンクの4色展開。ブラック、ブルー、レッドは実物を見ると、渋い深みを感じさせる落ち着いた色調で大人っぽい。

一方ピンクは、桜色とか桃色とかではなく、ビビッドな”ド”ピンクだ。いままでの同社のイメージからは考えられないチョイスであり、驚いた。実物を見て確認してほしい。

 
実際の装着例。写真はブラック   ブルー×ブラック
     
 
レッド×ブラック   ピンク×ブラック

 

まずはジャズボーカルものから、Jacintha「Autumn Leaves」。試聴曲はウッドベースが低い音程でビートを刻むのだが、その音程感の確かさと音の厚みは納得のレベル、というか大満足。ウッドベースの迫力のある低音が実感を持って感じられる。

SE115の特徴は、中域から低域にかけての音の厚みがこれまでのSHURE製品に比べて豊かであることだが、それによって解像感が大きく犠牲になっているということはない。例えばスネアドラムの抜けは硬すぎずしなやか。そして響きの細かな成分まで追いかけてくれる。シンバルの粒子感(響きの細やかさ)にも満足。ピアノのコードプレイも厚みがあり、角を適度に落として艶を感じさせる音色だ。

そして肝心のボーカルもハイレベル。BA型の上位モデルと比べれば少しざっくりとした感触だが、力強く伸びやかに歌ってくれるので気分が良い。

続いてピアノトリオの名盤、Bill Evans Trio「Waltz For Debby」。ウッドベースの生々しさが印象的である。ゴリッとした硬質なタッチはほんの少し弱まっているが、ブースト感のない自然な太さで、時に奔放に駆け回りつつも、アンサンブルの底をしっかりと支えてくれる。

 

ドラムスの迫力を表現するということは、下手をしたらこもり気味ということにもなりかねないのだが、しかしSE115は中低域のバシッという抜けの良さを兼ね備え、リズムを見事に決めてくれる。

ピアノも紳士的な軽やかさ、響きの繊細さなど、僕がこの演奏の再生に期待するところをしっかり押さえてくれている。

また、ライブ録音ならではの気配(話し声や食器の音など)も何というか、いい感じである。全体的な情報量も、BA型ユニットを複数基搭載した上位モデルと比較したりしなければ、十分だ。

 

RADWIMPS「アルトコロニーの定理」はRed Hot Chili Peppersを消化した、日本のロックの最新型のひとつと言ってよいだろう。他の試聴盤には含まれない要素であるエレクトリックのギターとベースに注目してみる。ギターのクリーン?クランチは艶やかで、パーカッシブな単音カッティングのフレーズもどこか滑らかで流麗だ。そして歪ませたときのキレ味と厚み、クリーンとの落差も、演奏と録音の狙い通りのものだろう。ギュイーンという圧縮感も爽快。

ベースはフラットな音色で実に自然に曲に溶け込んでいるのだが、それでいてその存在感は確か。これも元々の音作りをそのまま引き出した結果と考えてよいだろう。スラップも前に前にという音ではなく、適度な、しかし十分なアタック感で届けてくれる。武田氏(ベーシスト)とSHUREの音楽的なセンスに感心させられた。

ダイナミック型ユニット採用機に期待される迫力は当然持っていながら、細部の描写力も主張しすぎない程度に兼ね備えている。本機の音質面での特長をまとめるとそのような印象だ。

プレーヤー付属イヤホンからのステップアップだけでなく、同価格帯の他のイヤホンのユーザーにもアピールできるほどの仕上がりである。この価格帯のイヤホンの基準を底上げする存在となってくれそうだ。

 
イヤパッド以外の同梱物。クリーニングツール(上)、91cm延長ケーブル(左)、キャリングポーチ(右)   キャリングポーチを開けたところ。メッシュポケットも備える

 

ドライバー:ダイナミック型×1
感度:105dB SPL/mW(1kHz)
再生周波数帯域:22Hz〜17.5kHz
公称インピーダンス:16Ω(1kHz)
入力コネクター:3.5mmステレオ・ミニプラグ、金メッキ
ケーブル長:約45cm
質量:約30g(ケーブル、コネクター含む)
カラー:ブルー×ブラック、レッド×ブラック、ピンク×ブラック、ブラック
付属品:ソフト・フォーム・イヤパッド(S・M・L)、ソフト・フレックス・イヤパッド(S・M・L)、クリーニングツール、91cm延長ケーブル、キャリングポーチ
Phile-webニュース【SHUREのカナル型イヤホン「SE115」正式発表 − 4色カラバリ/新ダイナミック型ドライバー搭載】
Phile-webインタビュー【音質もファッション性も兼ね備えた自信作 − SHURE担当者が語る「SE115」の秘密(前編)】
SHURE 公式サイト