そして今秋、ついに新たな「HD500」シリーズの3モデルが我々の前に姿を現したのである。シリーズトップモデル「HD595」の後継である「HD598」、同ミドル機「HD555」の後継「HD558」、同入門機「HD515」の後継「HD518」という顔ぶれで、モデルナンバー末尾に“8”が付いたラインアップだ。 |
||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||
まずはトップモデル「HD598」からサウンドも含め細かくみていこうと思う。従来モデルから大きく変わったと感じさせるのはその外観ではないだろうか。上品なアイボリー色のカラーリングにローズウッドのような木目調パーツとメタルグリルのアクセントが加わり、優雅なラグジュアリーテイストに溢れるデザインに仕上げられている。それはまるで欧州産高級車の内装を彷彿とさせるもので、ダークブラウンのベロア製イヤーパッドや、レザー調ヘッドパッドのソフトな装着感もまた心地良い感触に繋がっている。このヘッドバンドは自在にしなり、ストレスの少ない装着感の助けとなっているようだ。
今回は自宅環境で試聴を行ったが、PCオーディオ環境の躍進目覚しい昨今の事情を踏まえ、MacProにリッピングしてある音源をAmarra2.0で再生。FireWire接続している192kHz対応DAC「Apogee
ROSETTA200」のバランス出力をヘッドホンアンプ「ラックスマンP-1u」に繋ぎ、新「HD500」シリーズのサウンドを確認した。
「HD598」のサウンドは従来モデルの「HD595」に伸び伸びとした厚みのある中低域のトーンが加わっているかのようだ。爽やかなオープンエアーの解像感やヌケの良さはもちろん、密度とハリの鮮やかさが同居する絶妙のバランスである。
『レヴァイン』の管弦楽器は滑らかで艶に溢れる描写だ。ホールトーンはゆったりとリッチな響きに満ちて、太い音像がしっかりと立ち上がる。『AP』のストリングスも流麗で、滑らかなハーモニーが響いている。ふくよかなリズム隊のリリース、ウェットで肉付き良い存在を見せるボーカル表現も艶かしい。 『オスカー』のピアノは低域まで厚みがあり、ハイノートも深く融合する。ウッドベースはむっちりとした質感で胴鳴りはスムースに伸び、スネアの胴も太い。『スコーピオンズ』のエレキは表情豊かな音を紡ぎ、ボーカルは初老とは思えない艶と若々しいハリに満ちたトーンで、透明感溢れるリヴァーブの乗りも良い。 |
||||||||||||||||||||||
続いてミドル機の「HD558」であるが、「Advanced Duofol」ドライバーユニットや『E.A.R.』テクノロジー、共通仕様となる着脱式ケーブルのほか、「HD598」同様に最適な音響空間性を作り出すサウンドレフレクターを内蔵している。ヘッドバンドの自在なしなりも継承し、ベロアのイヤーパッドとともに上級機譲りの優れた装着感を実現している。「HD598」の豊かな中低域を幾分か抑えたような傾向で、適度なふくよかさと引き締りのバランスを持ったサウンドである。
『AP』の弦のハーモニーはハリ良く、ふっくらとした余韻を残す。リズム隊はドライで程よい肉付きを持ち、ボーカルは厚みのある音像で、ウェットな口元の質感も得られる。『スコーピオンズ』のエレキはエッジが細やかで、派手な煌びやかさも伴う。リズム隊はほど良い膨らみを持ち、厚みがある安定した音場が展開。ボーカルは伸び良いボトムを持ち、高域はソリッドに浮き上がる。iPodでも厚みのあるサウンドは健在だが、すっきりとヌケの良い見通しも感じられた。 バランスよいエッジの鋭さが魅力、ロック&ポップスも軽快に鳴らす「HD518」 最後にシリーズのエントリーモデルである「HD518」にも触れておこう。ドライバーユニットの基本仕様や『E.A.R.』、ケーブル着脱など、上位モデルの流れをそのまま引き継いでいるが、バランスよくコストダウンを図り、一般的な生地素材によるソフトイヤーパッドや、ホールディング性能の高い、硬めの感触となったヘッドバンドを採用。装着感に関しては上位モデルほどではないにせよ、従来モデルからの流れに近い感触ではある。
サウンドにおいては全帯域でスマートな音像描写をしてくれる傾向で、ゼンハイザーの中では硬質なベクトルのモデルと言えそうだ。『レヴァイン』では細身の管弦楽器がクリアに浮き上がり、ローエンドも弾力良く引き締めて、透明感ある音場を作り出している。『オスカー』のピアノは澄んだ高域のトーンを硬めなアタックに載せて描写。ウッドベースは弦のたわみ感を際立たせ、胴鳴りは腰高な制動感あるものとなる。 どのモデルもじっくりと聴き込んでみたくなるヘッドホンだ
|
||||||||||||||||||||||