新たな一歩を踏み出したといえる程の大きな変化

 今年初頭のウインターCES開幕前夜、センセーショナルに登場したディナウディオの新コンターシリーズが、日本上陸を果たした。旧コンターシリーズが発表されて今年で8年目、また同社資料によれば、同シリーズのオリジナルモデルが生まれて17年という歳月が過ぎたという。技術革新の早いオーディオ界にあって異例のロングライフを誇るシリーズといえるだろう。

 フルモデルチェンジされたコンターシリーズは、同社が新たな一歩を踏み出したといえる程の大きな変化が見てとれる。外観から受ける印象は昨年発表された“コンフィデンス”シリーズの成果を感じさせる部分があり、同社の最新技術とノウハウが投入されているように見える。しかし旧シリーズの設計コンセプトも忠実に継承しているという。新しいコンターシリーズは現在のところ5モデルで構成されている。

 2ウェイ小型モニター機的性格のS1.4、同シリーズのミディアムレンジといえる2ウェイ3スピーカーのトールボーイ型S3.4、トップエンド機の3ウェイ4スピーカーのS5.4、それにサラウンド用のコンターSRとセンターch用のコンターSCの5機種である。従来は2機種のセンターch用とサブウーファーを含めて11モデルで構成されていたから、旧シリーズを大幅に整理統合した感がある。また最初からサラウンド用の小型機“コンターSR”や“コンターSC”が用意されているのは世界的に隆盛を極めようとしているシアターシステムに対応したもので、時代の要請といえるだろう。新シリーズには未だサブウーファーシステムが投入されていないが、同社では従来機であるコンターサブウーファーはマッチングの面で問題はなく、そのまま利用可能としている。

 新しいコンターシリーズの各モデルは、高性能化を果たした同社先進のドライバー技術と、すでに同社製品の伝統となった感があるデンマークファニチャーを思わせる精巧なキャビネット構造が高度に融合されている感がある。また“エヴィデンス”シリーズで開発され“コンフィデンス”シリーズで昇華された同社独自の指向性制御技術であるDDC(ディナウディオ・ダイレクティヴィティ・コントロール)も忠実に受け継がれている。

 新シリーズを特徴づけるフロントのサブバッフルの形状は、明らかに“コンフィデンス”の流れを汲むことを物語る。十分な質量を確保した厚さ5mmのメタルプレートにドライバーのアルミダイキャストフレームを強固に取り付け、振動吸収性に優れた樹脂系素材を介してエンクロージャーにマウントされている。これによって各ユニットを精密に一体化するとともに、特徴あるメタルプレートの形状が点音源的なブロードな指向特性を実現しているという。さらに、このマウント方法を採ることで、ダイヤフラムの振動がエンクロージャーに伝わらないという副次的なメリットももたらしているといえるだろう。これらの特徴は “コンフィデンス”譲りのテクニックで、旧コンターシリーズには見られなかった部分である。さらに、このサブバッフルはメタルの熱伝導性の高さを利用し、各ユニットの放熱効果も高める役割も果たし、常に安定した動作を得て、リニアリティの高いサウンドを実現しているのである。

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本シリーズにはエンクロージャー素材にメイプルとローズウッド、それぞれを用いた2つのバリエーションモデルが揃う。どちらも北欧家具を想起させる美しい仕上げが魅力だ。上は落ち着いた雰囲気を醸し出すローズウッドモデル(スピーカースタンドは別売)

自社生産ユニットならではの行き届いた管理体制

 使用ユニットは各モデル共通の特徴を有している。ウーファー及びミッドレンジは一体成型コーンと75mm口径(S5.4のミッドレンジは38mm口径)のアルミボイスコイルを採用。フレームはアルミダイキャスト製で高い剛性を確保し、先に触れたように5mm厚のメタルプレートと強固に一体化される。ダイヤフラムは、同社オリジナルの珪酸マグネシウムポリマー(MSP)という前シリーズ譲りの定評あるマテリアルである。この一体成型ダイヤフラムは、素材自体の内部損失が適度で聴感上の歪みがなく、分割振動を最小限に抑えることができるという優れた特徴を有している。

 トゥイーターユニットは全機ともピュアアルミ・ボイスコイルと熱処理アルミボビンを備えた、28mmのソフトドームトゥイーターを使用している。ただトップエンドのS5.4は、コンフィデンスシリーズと共通のエソター2、他モデルは旧タイプのエソテックD-260をモディファイしたD-280タイプが採用されている。両者ともファブリックドームは手作業で精密コーティングを施すことで、可聴帯域外まで良好なレスポンスを得ているという。

 これら全てのユニットは製造の各段階で入念な品質検査が行われ、それぞれのドライバーはコンピューター測定による厳格な検査を通過した後、シリアルナンバーとともに保管される。そして製造されたすべてのユニットのデータは保存され、いつでもデータベースによって復元可能で、もし交換パーツが必要になった時には、オリジナルのパラメーターと正確に一致させるシステムを採っているのは同社の良心的姿勢の現れである。

 また、同社システムの化粧板はデンマーク家具の熟練クラフツマンによって手作業で選別され、一人のクラフツマンが、組み立てから仕上げまでの全工程を担当している。またペアマッチングを図るべく一枚の化粧板からカットされているのは、もはや同社製品の伝統といっても良いだろう。さらに内部には固有の鳴きや共振を排除すべく適切な部位にクロスブレーシングを挿入し剛性を高めている。北欧家具を思わせる美しい仕上げのエンクロージャーを支えるS3.4と5.4のベース部は“コンフィデンス”譲りといえるもので、システムの優雅なデザインを損ねることなくベストなセッティングを可能にしている。床面との接地はベースと一体となったスパイクだが、高さ調整はベースプレート上面から行うことができる。そして、内蔵ネットワークは振動や共鳴の影響を受けないよう、このベースプレートとエンクロージャー間のブロック上に配置し、金メッキ処理を施したWBT製の入力ターミナルまでの信号経路も最短になるよう配慮しているという。



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リアパネルには型番を刻印したメタルプレートが貼られている 5mm厚のメタルプレートにユニットを取りつけ、木製エンクロージャーとは吸音材でセパレートされている 旧シリーズのContour 3.0(右)と新シリーズのContour S3.4。ユニットの配置だけではなく、寸法比まで大きく変わっている

音楽をより伸びやかに再生してくれるシリーズ

 まず2ウェイブックシェルフ型のコンターS1.4から聴いた。本機は同社のスタンドDynaudio Stand2にダイレクトにジョイントさせることができるが、今回は汎用スタンドを使用した。その状態で聴けたのはサイズを超えたFレンジの広さ、質感のナチュラルさ、豊富な情報量など、すべての面で上級のコンフィデンス C1を思い出させるサウンドであった。アキュレートなサウンドだが単に忠実に信号を変換するという傾向ではなく、音楽を生き生きと聴かせるのが好ましい。また低音楽器の重量感などは大型機のようなリアルさがありながらアタック感は小口径ウーファーらしい反応の良さがあり、素早く立ち上がってくる。さらにフロアタムやキックドラムの胴の響きや空気の動きも感じさせる低域レンジと高い解像度が確保されていることに驚かされる。またボーカルもナチュラルな質感でセンターに明確に浮き上がり、表情豊かに再現された。ジャズのピアノトリオなどもバランスが良く、個々の質感もナチュラルで三者の緻密なコラボレーションが生々しく引き出される感がある。

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S1.4とS3.4に採用されている新開発のトゥイーターユニット「ESOTEC」は、ダブルマグネットシステムの高耐入力型

 中型トールボーイ機のS3.4もS1.4と同様リニアリティの高いサウンドが得られ、低域の充実ぶりは38cm級ウーファー搭載の大型機を彷彿とさせる部分がある。しかし振動系質量を高めることで低域レンジを拡大したシステムのようにパワーで低音を押し出すような鳴り方でなく、高能率システムのように伸び伸びとしたサウンドだ。コンテンポラリー系のパワフルかつヘビーな低音もリアルに再現する高いパワーハンドリングを備える反面、小音量であってもコントラバスの微かな弦の震えもクリアに引き出してくるなど、音量の大小を問わずにリニアリティの高いサウンドを聴かせる。またダイレクト2trのライブ音源などを聴くと、そのフレッシュな演奏とサウンドを生々しく再現し、管楽器は張りのある響きで、トランペットなどは適度な輝きが感じられる。

 またドラムスなどもシンバルのアタック音は芯がしっかりとし、スネアドラムのリムショットもヌケの良さがある。シンプルなプリメインアンプでは瑞々しい響きを聴かせ、本格派のセパレート型アンプを使うと低域の支えがしっかりとし、あたかも大型システムのような堂々たるサウンドが得られた。しかも音像の輪郭も明快でパルシブな低音も制動を甘くすることがなく、ディテールの音楽情報が確実に増してくるという印象だ。

 最後に聴いたS5.4は低域を2本の20cm口径ウーファーが支えているだけにボトムエンドまでスムーズに伸びて情報量の差も歴然としており、S3.4以上に精緻なサウンドを聴かせてくれた。ボーカルの質感も素直に引き出し音像のフォーカスも明確でビブラートやブレスなども生々しさが感じられる。また低音楽器の質感や量感もひと際高まりファンダメンタルを鮮明かつ実在的に描き出す。そして空気の波動を感じるような重量級低音もスムーズに立ち上がり鈍重さを一切感じさせないのが好ましい。低域情報が豊富でディテールも精緻に描き切るので、ホールでライブ録音されたソフトなどを再生すると空間の広さが実感でき、左右のS5.4の間に展開する音場のスケールも雄大だ。また高域方向も十分な伸びと高い分解能が確保され、微細な残響成分も鮮明でストリングスなどの瑞々しく繊細な触感を巧く引き出してくるのは、エソター2トゥイーターの威力だろう。今回の試聴で用意されたアンプでは特に問題はなかったが、ボトムエンドまでの伸びと豊富な情報量を持つソフトを再生しウーファーの振幅が大きくなると、ミディアムクラスのインテグレーテッドアンプでは、やや制動不足を感じることがあるかもしれない。その意味ではアンプのドライブ能力が要求されるが、米国ハイエンドブランドの大型・高級機のように気難しくなく、シビアにアンプを選ぶ傾向はないはずだ。高いサウンドクオリティを有しているが同社ミディアムレンジの製品だけに比較的鳴らしやすく、しかもアンプのグレードを高めれば、確実に音質が高まるだけの潜在能力を秘めているといえる。今回の3モデルは旧コンターシリーズに通じるアキュレートさを感じさせるが、厳格さが薄らぎ、音楽をより伸びやかに再生してくれたように思う。新コンターシリーズはオーディオ的パフォーマンスの高まりが確実に音楽表現力の高まりに結実した好例といえるだろう。

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S5.4の入力端子部。S3.4とともに入力端子は最下部に位置。ディナウディオ伝統のシングルワイヤリングを継承

Contour S1.4 specifications】

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形式:2ウェイ2スピーカーバスレフ型
感度:85dB(2.82V/1m)
公称インピーダンス:4Ω
ユニット:170mm MSPコーンウーファー、28mmソフトドームトゥイーター
外形寸法:188W×400H×340Dmm
質量:12kg
仕上げ:メイプル、ローズウッド

Contour S3.4 specifications】

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形式:2ウェイ3スピーカーバスレフ型
感度:88dB(2.82V/1m)
公称インピーダンス:4Ω
ユニット:170mm MSPコーンウーファー×2、28mmソフトドームトゥイーター
外形寸法:190W×1220H×340Dmm
質量:33kg
仕上げ:メイプル、ローズウッド

Contour S5.4 specifications】

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 形式:3ウェイ4スピーカーバスレフ型
 感度:89dB(2.82V/1m)
 公称インピーダンス:4Ω
 ユニット:200mm MSPコーンウーファー×2、150mm MSPコーンミッドレンジ、28mmソフトドームトゥイーター
 外形寸法:214W×1450H×390Dmm
 質量:44kg
 仕上げ:メイプル、ローズウッド

ディナウディオ株式会社のホームページ:http://www.dynaudio.jp/
「Contour」シリーズの紹介ページ:http://www.dynaudio.jp/news/ContourSeries.html
問い合わせ先:ディナウディオ株式会社 TEL/03-5542-3545



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