公開日 2011/07/11 09:30
「ハイレゾだけがハイファイじゃない」 − 新ブランド「KEY Sound」のねらいを開発責任者・長谷川氏に聞く
第一弾USB-DAC「UDA923BF」まもなく発売
今回、長谷川氏が無くしたもの。それはコンデンサーだ。「UDA923BF」はUSBバスパワーで駆動する製品だが、内部電源にDC/DC±コンバーター(±12V)を搭載し、差動動作を採用することで、コンデンサーレスの、全段直結のDC回路構成を実現した。
「当たり前ですが、コンデンサーが無くなれば、コンデンサーによる音の影響はなくなります。不要なものは取り去るのがハイファイの基本ですので、その意味で、コンデンサーレスにできた意味は大きいと思います」。
また電源を±12Vにしたことで、多くの種類のオペアンプが選べるのもポイントだ。「+5Vで使用できるオペアンプはほとんどありませんよね。±12Vならたくさんありますから、音のチューニングの幅が広がります」。
アナログ信号経路からコンデンサーを無くす一方で、あえて加えたものもある。出力段のトランジスターバッファー回路だ。「ハイファイとは関係のない、回路を読める方が見たら、このトランジスターバッファーは不要、と切り捨てるでしょう。たしかに回路上は必要ないものです」。それでも加えたのは、もちろん、その方が音質が向上すると長谷川氏が確信したから。「トランジスターバッファーを加えたことで、オペアンプ特有の“雑味”が減って、解像度や分離、粒立ちが高まりました」と説明する。
ほかにも工夫した点は多い。たとえばディスクリート部品を多用し、チップ部品をあまり使わなかったのも、パーツの選択肢を増やして音のチューニングを突き詰めて行うためだ。
■「出てくる音がすべて」。低ビットレートでもハイファイは可能
このように長谷川氏のこだわりが詰め込まれた、KEY Soundの第一弾モデル「UDA923BF」。だがコンデンサーレスなどのキーフィーチャーについても「出てくる音がすべて」と素っ気ない。音を良くするために選んだ手段の一つがコンデンサーレスであって、回路設計ありきで製品を作っているわけではない、という自負が言葉の端々に滲む。
長谷川氏の、この「出てくる音がすべて」という考え方はすべてに通底している。
冒頭、本機が48kHz/16bitまでの対応で、いわゆるハイレゾ音源には対応していないと書いた。長谷川氏にその理由を尋ねると、技術的な制約からハイレゾ対応を諦めたのではなく、対応させる必要性を感じなかったのだという。
「昨今、ハイビット/ハイサンプリングでなければ音が良くないという意見があるようで、それって少し違うんじゃないのかな、と思っています。もちろんハイビットにすれば音は良くなります。ですが、それが実際の音質向上に寄与する割合は、私がこれまで業務や趣味で数多くの機器を設計・製作した経験上、それほど大きくはありません。それよりも、回路構成やパーツの組み合わせによる音の変化の方が遙かに大きいと考えています」。
インタビューの後に、短時間ではあるが「UDA923BF」のサウンドを体験することができた。
オスカー・ピーターソン・トリオ「You look good to me」では、ピアノの音色が非常にまろやかで、シンバルの粒立ちも良好。低域の解像感もこのクラスの水準を超えている。The Raconters「Consoler of the Lonely」ではボーカルのスピード感、ギター荒々しくかき鳴らす激しいサウンドを、実に生っぽく表現する。
この「生っぽさ」は女声ボーカルでも実感され、口唇が触れあう微少な音までをリアルに表現。その場にいるかのような臨場感が感じられるのは、つまりは解像感が高いということだろう。一方で音場の表現力も優れており、ホールトーンの微妙な残響音まで的確に再現する。
決してハイレゾ音源を否定しているわけではない。だが、ハイレゾが全てとも考えない。たとえ40kbpsでも、音楽的に、音質的に優れているのなら、そこに「ハイファイ」は存在する。KEY Soundのこのような考え方は、ベテラン設計者が興したブランドならではの“余裕”と言えるだろう。この意見に少しでも頷くところがあれば、ぜひKEY Soundの音質を、店頭やイベントで実際に確かめてみてほしい。
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