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公開日 2012/10/23 10:16

ティアック「Reference 501シリーズ」を聴く(第1回) ヘッドホンアンプ「HA-501」

特別企画:短期集中連載
岩井喬
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■試聴レポート

ここからは「HA-501」の試聴レポートをお届けしていこう。組み合わせとしては発売間近のDSD対応USB-DAC「UD-501」とのバランス接続、そしてアンバランス接続ではSACDプレーヤー「ラックスマンD-06」を用意した。

まずはじめに試聴したのはSHURE「SRH1840」である(ダンピングファクターセレクターはMID)。高解像度かつS/Nの大変良いサウンドで、音像の厚みや存在感、その周囲を包み込む空気感までも如実に描き出す。クラシックではキレ良くスマートなローエンドの描写と、繊細で一つ一つが鮮明な管弦楽器の旋律がバランス良く融合。リアルで分解能の高い爽やかな音場が展開する。

ジャズにおいてはクリアでヌケの良いピアノやキレ良い胴鳴りを聴かせるドラム、制動高い弾力を響かせるウッドベースが引き締まった音像として立体的に浮かび上がる。ホーンセクションの鮮やかなサウンドも滲みなくストレートに伸び良く、アンビエントの響きも質感、階調性細やかだ。ポップスのボーカル表現においても丁寧で滑らかなディティール描写が耳当たり良く、有機的なボトムの厚みが肉付きの自然さを実感させてくれる。ロックではリズム隊のスマートで引き締まったアタックと、わずかにディストーションの甘い刻みを響かせるエレキが絶妙なコントラストとなり、ボーカルの口元をハリ艶良くリアルに描き出す。

192kHzのハイレゾ音源ではきめ細やかさと音像の輪郭が一層鮮やかになり、引き締まった低域の効果もあって解像度の高さも実感できる。しかし音が細くならず密度のある音像となることや、空気の抑揚、オーケストラのハーモニーの清らかさなど、見かけ倒しの解像感ではなく、真の情報量の多さが得られる点は、本機の持つポテンシャルの高さを物語っている。

DoP伝送によるDSD再生においては一層ナチュラルな音場感が展開し、音の分離の良さ、滑らかな質感の心地よさを同時に味わえる。DSDならではのスムーズで無理のない音場の広がりも的確に描き出してくれた。

「D-06」からのSACD再生ではDAC部の豪勢さ、リッチで密度のある空間再生を行ってくれた。素直で落ち着きのある傾向であり、接続機器の特性も如実に表現してくれるようだ。「UD-501」にも優れたヘッドホン出力が装備されているが、こちらは柔らかくふっくらとした質感描写傾向となり、高域の倍音成分もいくらか豊かになるようだ。解像感やリアルな描写性、音像の密度の点では「HA-501」が圧倒的に優位だ。

続いてベイヤーダイナミックのテスラドライバーを搭載した最新型オープンモデル「T90」も試聴してみた。鮮やかでキレ良くスマートな音像描写となり、倍音成分の豊かさから、華やぎのある高域感が特長のサウンドだ。キックやベースの低域成分はふっくらと太さがあり、エレキのリフも厚くリッチなディストーションサウンドを味わえる。テスラドライバーならではのアタック&リリースの素早さも実感でき、オープン型らしいすっきりと広大な音場の表現も好ましい。


600Ωというハイインピーダンス機、ベイヤーダイナミック「T1」も難なくならすハイパワーを備える
最後にハイエンドセミオープン型であり、600Ωのハイインピーダンス機の筆頭でもあるベイヤーダイナミック「T1」を試聴した。ダンピングファクターセレクターをHIGHとしたこともあるが、解像感の優れたハイエンド機らしいサウンドが得られ、落ち着きある上品な描写性と密度と厚みのあるリアルな音像表現が独特な世界観を作り出している。ボーカルの口元はウェットでふっくらとした描写であり、ナチュラルに分離良く浮き上がる。クラシックのオーケストラは重厚で、192kHzのハイレゾ音源では、キレ込み鮮やかなエレキやどっしりとした太さのあるリズム隊の存在感を楽しめた。

コンパクトながら実に本格的な仕様となっている「HA-501」は、価格以上の安定したドライブ能力と、色付けのない高密度なサウンドを味わえるリファレンス級のヘッドホンアンプと言えるだろう。

(岩井喬)

【筆者プロフィール】長野県出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)に勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。VGP審査員。

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