公開日 2021/05/17 06:30
アナロググランプリ2021 受賞インタビュー
トライオード、トップエンド「JUNONE」ブランドで新展開をスタートしさらなる成長へ
PHILEWEBビジネス 徳田ゆかり
アナロググランプリ2021 Gold Award
受賞インタビュー:トライオード
「アナログ感覚が感じられ、オーディオファンに推薦するにふさわしいアナログ再生に欠かせない機器」を選出し、13年目を迎えたアワード「アナロググランプリ2021」。Gold Awardを受賞したJUNONEブランドを展開するトライオードの社長 山崎順一氏が、受賞の栄誉とともに、真空管オーディオに対する取り組みと思いを語った。
株式会社トライオード 代表取締役 山崎順一氏
インタビュアー 徳田ゆかり(ファイルウェブビジネス担当)
■自身の名前をつけたトップエンドブランドで展開するプリメインアンプJUNONE 845S
ーー アナロググランプリ2021で、「JUNONE」ブランドの管球式プリメインアンプ「JUNONE 845S」がGold Awardを受賞されました。おめでとうございます。
山崎 JUNONE 845Sは、フラグシップに位置付けられるプリメインアンプで、「845」という大型三極管を使っています。845管の力を発揮させるために、大型で強力なトロイダル電源トランスと、倍電圧回路で構成した電源部を採用していて、回路構成はA級シングルにしました。とても力強く、奥深い表現力をもっていて、皆様から高くご評価をいただいています。
JUNONE 845Sはトライオードの中でトップエンドを展開する「JUNONE」ブランドのモデルです。「JUNONE」ブランドは2014年のプリアンプ「REFERENCE ONE」をリリースする時に作ったもので、本来これに対するパワーアンプを計画していたのですが、部品供給の問題などで断念せざるを得ず、プリメインアンプとして路線を変更し、ご提案したのが今回のモデルです。
ーー 「JUNONE」は山崎(順一)さんの名前からネーミングされたものですね。
山崎 「REFERENCE ONE」を出す2013年頃に、トライオードでいろいろなことをコーディネートしてくださった方から、トップエンドモデルを展開するためのブランドを新しく作り、ブランドに私の名前を入れてはどうかと提案されたのです。当初はびっくりしましたけれど、結果として非常によかったと思います。自分の名前が入るからには、いっさいの妥協なくものづくりに力が入ります。お客様からは作り手の存在が見えやすくなったと思いますし、海外の方にもわかりやすく受けがいいですね。
そのコーディネーターの方が、「音の夢、共に。」という当社のブランドスローガンや、トライオードのロゴもつくってくれました。私自身が考えていたイメージを、とてもよく具現化してくれたのです。彼は残念ながら亡くなってしまわれましたが、ものづくりにおいて彼のような存在は欠かせないもので、今後もイメージづくりには力を入れていきたいと思っています。
JUNONEは従来の「TRIODE」ブランドとは一線を画した存在であり、ここでトップエンドをしっかりと展開していくことでTRIODEにもいい効果が波及します。JUNONEブランドの次の機種も、今年の年末にかけて準備しています。REFERENCE ONEでやろうとしていたことを仕切り直すつもりです。REFERENCE ONEでいろいろ勉強ができ、今なおすごいアンプだとお褒めをいただきますから、あの音を継承していくと思います。
■真空管に魅せられて、趣味を超えた26年間のあゆみ
ーー この1年間のコロナウィルス感染拡大の影響はいかがでしたか。
山崎 これは私どもだけでなく業界全体が同様だと思いますが、想像以上に追い風になりました。お客様の試聴の機会はほとんどなくなってしまいましたが、ブランドを信じて買ってくださっている、それはとても嬉しいことだと思います。新しいお客様も増えて、トランジスタの製品からの買い替えや買い足しの方もいます。
ーー 巣ごもりの中でお客様がオーディオに集中し、ブランドに対するこれまでのご評価が今につながりました。トライオードは創業26年目とお聞きしていますが、どんな道のりだったのでしょうか。
山崎 私がオーディオに出会ったのは子どもの頃、父が警視庁音楽隊にいて、家にあった電蓄でソノシートを聞いて音楽にひたる生活でした。小学生の頃に父の知り合いの家で単品コンポでレコードを聞いて、その音のよさに衝撃を受けて、中学生から高校生の頃にはシステムステレオを手に入れて聞いていましたね。
真空管との出会いは、高校を卒業して国鉄に就職した後です。友達がつくった3Wの小さな真空管アンプで聞いて、カルチャーショックを受けました。この体験がなければ、私はオーディオマニアのままだったでしょう。
それをきっかけに秋葉原に通って真空管を手に入れて、自分でアンプを作り出した。いろいろな部品が必要になって、海外にも調達しに行くようになりました。部品を見ると欲しくなってつい買ってしまい、使いきれなくなって、「トライオードサプライジャパン」の名でサイドビジネスを始めたんです。
ーー 真空管は山崎さんにとって、どんな魅力があるのでしょうか。
山崎 音楽の表現力が違うんですね。最初に聞いた、友人が数万円で作った小さいアンプに音楽性を感じてから、真空管はすごいなあという思いが未だに脈々と続いているのです。私はずっと自分が求める音を追求し続けていて、目指す心地よい音を出すのが最終目的。そこに真空管の音がはまったわけです。
ーー いい音をご自身で求め続け、たくさんの方に聞いていただきたい一心での活動ですね。
山崎 それしかありません。私が初めて触れたのはアナログでしたが、その後世の中では急速にデジタルが進化して、ハイレゾ音源も登場しました。けれど面白いことに、真空管でもデジタル音源の再生を追求できるのです。人間の耳はデジタル信号を聞けませんから、アンプより先の出力手段はアナログしかありません。要は感性の世界だから私もやっていけるのです。そういう意味で、これからももっと面白いことをやっていきたいですし、進化したいと思っています。
ーー 生産は中国の工場ということですが、どのように見つけたのでしょうか。
山崎 部品を集めていろいろな国のオーディオショーに顔を出していて、香港のショーで中国の方から真空管アンプを作らないかと言われたんです。それまでは自分のためだけに部品を集めて作っていたわけですが、自分の音を出して、人に聞いていただけたらいいなと。これは面白いと思い、その人に託すことにしたんです。今はそちらとの取引は終わっていますが、あの時声をかけられていなかったら、アンプメーカーにはなっていなかったと思います。
つくるにはとにかくコストを下げて、安い価格で提供したかったんです。最初にキットで9万9800円で直販してすごく売れましたが、その頃出会った人から、オーディオ製品はいろいろな販売店様とお付き合いして売っていただいた方がいいとアドバイスをされて。その後は14万8000円の価格にして、販売店様に扱っていただくことにしました。
ーー 全国のご販売店にも、ご自身でまわられたんですね。
山崎 おかげさまで、日本全国で今250店様がご協力くださっています。さらに、試聴のできる展示機を置いていただくなどいくつかの条件のもとで、弊社が認定させていただく「トライオードプレミアムショップ」の制度にご協力くださっているのが80店様です。すべての販売店様に、私自身がまわらせていただきました。26年前から長くおつきあいいただいているお店もたくさんあります。ありがたいことです。
■多くの人に感動を届けるため、チャレンジを続け突き進む
ーー 今後はどんなことを計画されているのですか。
山崎 今はイベントがなかなかできませんが、当社でも動画のプロモーションをやろうと考えています。ちょっとしたことであっても、こまめに動画を上げて浸透させていきたいですね。
製品まわりでは、機器の使い勝手をもう少しよくしたい。今年リリースを計画しているTRIODEブランドのアンプでは、そういうことも念頭においています。またブルートゥース対応で、デザインにも重点を置いたものも考えていますし、これを安い価格でご提供できるよう挑戦していきます。
サラリーマンの給料の範囲で買えるものをご提供するのが、トライオードの信条です。普通のアンプならば20万円以内と考えます。だからトライオードは今日まで続けられたと思います。本当は10万円を切る価格にしたいですし、さらに高校生くらいの若い方にも買っていただけるように考えると、5万円でも高いかもしれません。
こんな風に楽しい悩みがいっぱいあります。こういうことをしょっちゅう考えて、人に話しながらイメージをふくらませています。もちろんお客様の声も重要で、オーディオイベントなどはお客様や販売店様から貴重な声をいただける機会ですから、早く相対してできるようになるといいですね。
自分の考えを具現化して、製品にできるのはありがたいことです。楽なことではないですが、こうして26年間続けて来られたのは、皆様のご理解とご協力あってのことと感謝しています。これからも求める音を追求し続けて、皆様に喜んでいただけるものをご提案していきたいと思います。
ーー 夢がどんどん広がっていきますね。これからのご活動も期待しております。ありがとうございました。
受賞インタビュー:トライオード
「アナログ感覚が感じられ、オーディオファンに推薦するにふさわしいアナログ再生に欠かせない機器」を選出し、13年目を迎えたアワード「アナロググランプリ2021」。Gold Awardを受賞したJUNONEブランドを展開するトライオードの社長 山崎順一氏が、受賞の栄誉とともに、真空管オーディオに対する取り組みと思いを語った。
株式会社トライオード 代表取締役 山崎順一氏
インタビュアー 徳田ゆかり(ファイルウェブビジネス担当)
■自身の名前をつけたトップエンドブランドで展開するプリメインアンプJUNONE 845S
ーー アナロググランプリ2021で、「JUNONE」ブランドの管球式プリメインアンプ「JUNONE 845S」がGold Awardを受賞されました。おめでとうございます。
山崎 JUNONE 845Sは、フラグシップに位置付けられるプリメインアンプで、「845」という大型三極管を使っています。845管の力を発揮させるために、大型で強力なトロイダル電源トランスと、倍電圧回路で構成した電源部を採用していて、回路構成はA級シングルにしました。とても力強く、奥深い表現力をもっていて、皆様から高くご評価をいただいています。
JUNONE 845Sはトライオードの中でトップエンドを展開する「JUNONE」ブランドのモデルです。「JUNONE」ブランドは2014年のプリアンプ「REFERENCE ONE」をリリースする時に作ったもので、本来これに対するパワーアンプを計画していたのですが、部品供給の問題などで断念せざるを得ず、プリメインアンプとして路線を変更し、ご提案したのが今回のモデルです。
ーー 「JUNONE」は山崎(順一)さんの名前からネーミングされたものですね。
山崎 「REFERENCE ONE」を出す2013年頃に、トライオードでいろいろなことをコーディネートしてくださった方から、トップエンドモデルを展開するためのブランドを新しく作り、ブランドに私の名前を入れてはどうかと提案されたのです。当初はびっくりしましたけれど、結果として非常によかったと思います。自分の名前が入るからには、いっさいの妥協なくものづくりに力が入ります。お客様からは作り手の存在が見えやすくなったと思いますし、海外の方にもわかりやすく受けがいいですね。
そのコーディネーターの方が、「音の夢、共に。」という当社のブランドスローガンや、トライオードのロゴもつくってくれました。私自身が考えていたイメージを、とてもよく具現化してくれたのです。彼は残念ながら亡くなってしまわれましたが、ものづくりにおいて彼のような存在は欠かせないもので、今後もイメージづくりには力を入れていきたいと思っています。
JUNONEは従来の「TRIODE」ブランドとは一線を画した存在であり、ここでトップエンドをしっかりと展開していくことでTRIODEにもいい効果が波及します。JUNONEブランドの次の機種も、今年の年末にかけて準備しています。REFERENCE ONEでやろうとしていたことを仕切り直すつもりです。REFERENCE ONEでいろいろ勉強ができ、今なおすごいアンプだとお褒めをいただきますから、あの音を継承していくと思います。
■真空管に魅せられて、趣味を超えた26年間のあゆみ
ーー この1年間のコロナウィルス感染拡大の影響はいかがでしたか。
山崎 これは私どもだけでなく業界全体が同様だと思いますが、想像以上に追い風になりました。お客様の試聴の機会はほとんどなくなってしまいましたが、ブランドを信じて買ってくださっている、それはとても嬉しいことだと思います。新しいお客様も増えて、トランジスタの製品からの買い替えや買い足しの方もいます。
ーー 巣ごもりの中でお客様がオーディオに集中し、ブランドに対するこれまでのご評価が今につながりました。トライオードは創業26年目とお聞きしていますが、どんな道のりだったのでしょうか。
山崎 私がオーディオに出会ったのは子どもの頃、父が警視庁音楽隊にいて、家にあった電蓄でソノシートを聞いて音楽にひたる生活でした。小学生の頃に父の知り合いの家で単品コンポでレコードを聞いて、その音のよさに衝撃を受けて、中学生から高校生の頃にはシステムステレオを手に入れて聞いていましたね。
真空管との出会いは、高校を卒業して国鉄に就職した後です。友達がつくった3Wの小さな真空管アンプで聞いて、カルチャーショックを受けました。この体験がなければ、私はオーディオマニアのままだったでしょう。
それをきっかけに秋葉原に通って真空管を手に入れて、自分でアンプを作り出した。いろいろな部品が必要になって、海外にも調達しに行くようになりました。部品を見ると欲しくなってつい買ってしまい、使いきれなくなって、「トライオードサプライジャパン」の名でサイドビジネスを始めたんです。
ーー 真空管は山崎さんにとって、どんな魅力があるのでしょうか。
山崎 音楽の表現力が違うんですね。最初に聞いた、友人が数万円で作った小さいアンプに音楽性を感じてから、真空管はすごいなあという思いが未だに脈々と続いているのです。私はずっと自分が求める音を追求し続けていて、目指す心地よい音を出すのが最終目的。そこに真空管の音がはまったわけです。
ーー いい音をご自身で求め続け、たくさんの方に聞いていただきたい一心での活動ですね。
山崎 それしかありません。私が初めて触れたのはアナログでしたが、その後世の中では急速にデジタルが進化して、ハイレゾ音源も登場しました。けれど面白いことに、真空管でもデジタル音源の再生を追求できるのです。人間の耳はデジタル信号を聞けませんから、アンプより先の出力手段はアナログしかありません。要は感性の世界だから私もやっていけるのです。そういう意味で、これからももっと面白いことをやっていきたいですし、進化したいと思っています。
ーー 生産は中国の工場ということですが、どのように見つけたのでしょうか。
山崎 部品を集めていろいろな国のオーディオショーに顔を出していて、香港のショーで中国の方から真空管アンプを作らないかと言われたんです。それまでは自分のためだけに部品を集めて作っていたわけですが、自分の音を出して、人に聞いていただけたらいいなと。これは面白いと思い、その人に託すことにしたんです。今はそちらとの取引は終わっていますが、あの時声をかけられていなかったら、アンプメーカーにはなっていなかったと思います。
つくるにはとにかくコストを下げて、安い価格で提供したかったんです。最初にキットで9万9800円で直販してすごく売れましたが、その頃出会った人から、オーディオ製品はいろいろな販売店様とお付き合いして売っていただいた方がいいとアドバイスをされて。その後は14万8000円の価格にして、販売店様に扱っていただくことにしました。
ーー 全国のご販売店にも、ご自身でまわられたんですね。
山崎 おかげさまで、日本全国で今250店様がご協力くださっています。さらに、試聴のできる展示機を置いていただくなどいくつかの条件のもとで、弊社が認定させていただく「トライオードプレミアムショップ」の制度にご協力くださっているのが80店様です。すべての販売店様に、私自身がまわらせていただきました。26年前から長くおつきあいいただいているお店もたくさんあります。ありがたいことです。
■多くの人に感動を届けるため、チャレンジを続け突き進む
ーー 今後はどんなことを計画されているのですか。
山崎 今はイベントがなかなかできませんが、当社でも動画のプロモーションをやろうと考えています。ちょっとしたことであっても、こまめに動画を上げて浸透させていきたいですね。
製品まわりでは、機器の使い勝手をもう少しよくしたい。今年リリースを計画しているTRIODEブランドのアンプでは、そういうことも念頭においています。またブルートゥース対応で、デザインにも重点を置いたものも考えていますし、これを安い価格でご提供できるよう挑戦していきます。
サラリーマンの給料の範囲で買えるものをご提供するのが、トライオードの信条です。普通のアンプならば20万円以内と考えます。だからトライオードは今日まで続けられたと思います。本当は10万円を切る価格にしたいですし、さらに高校生くらいの若い方にも買っていただけるように考えると、5万円でも高いかもしれません。
こんな風に楽しい悩みがいっぱいあります。こういうことをしょっちゅう考えて、人に話しながらイメージをふくらませています。もちろんお客様の声も重要で、オーディオイベントなどはお客様や販売店様から貴重な声をいただける機会ですから、早く相対してできるようになるといいですね。
自分の考えを具現化して、製品にできるのはありがたいことです。楽なことではないですが、こうして26年間続けて来られたのは、皆様のご理解とご協力あってのことと感謝しています。これからも求める音を追求し続けて、皆様に喜んでいただけるものをご提案していきたいと思います。
ーー 夢がどんどん広がっていきますね。これからのご活動も期待しております。ありがとうございました。
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