公開日 2023/06/14 10:29
最新アプリ「BluOS 4.0」も紹介
“ワイヤレス世代に向けた”HiFiブランド。BluesoundのPMに聞くネットワークオーディオの未来
ファイルウェブオーディオ編集部・筑井真奈
今年で10周年を迎えるカナダのオーディオブランド、Bluesound。ネットワークオーディオの世界を革新してきた同社のプロダクト・マネージャーである“Mr.Bluesound”ことマット・シモンズさんがこの春に来日し、Bluesoundブランドの背景と最新アプリ「BluOS 4.0」について紹介してくれた。
ーー日本にようこそお越しくださいました。マットさんにお会いできてとても嬉しく思います。
マット Bluesoundは2023年で創業10周年を迎えます。この10年間はハイレゾを含むストリーミングサービスの市場が大きく拡大しました。そこで、まずはBluesoundというブランドのバックボーンについて改めてお話しできればと思います。
Bluesoundが誕生したのが2013年になりますが、少しその前のお話もいたしましょう。Bluesoundの親会社はLenbrookというカンパニーで、カナダやアメリカにおけるHiFiオーディオのディストリビューターとして45年の歴史を持っています。
1984年にはカナダのスピーカーブランドであるPSB speakersを買収しました。その後エレクトロニクスのブランドとしてNADも買収しました。ですからPSB speakersとNAD、Bluesoundは同じグループ企業ということになります。
2000年代に、オーディオビジュアルの世界を大きく変える重要な出来事が2つありました。ひとつは2005年にYouTubeが誕生したこと、そして2007年にiPhoneが登場したことです。mp3というデジタルフォーマットの普及もあいまって、コンテンツを楽しむスタイルがまったく様変わりしてしまったのです。
それ以前のオーディオ産業は、いわば斜陽産業になってしまったわけです。英語版WikipediaのSunset Industryの項目には、斜陽産業の代表例として「アナログ録音」が挙げられているくらいです。残念ながらこの流れを止めることはできません。
そこで私たちは考えました。このストリーミングへの流れは変えようがないのだから、その時代にあったプロダクトを生み出していく必要があると。「新しいイノベーションを起こすことができるか、あるいは死ぬか」。そんな思いで製品開発をおこなってきました。そして私たちは、新しい日の出を見ることができたと考えています。Bluesoundは、ストリーミング時代に向けた、新しいブランドになります。
ーーBluesoundは初めからストリーミングを意識したブランドだったのですね。
マット 当時、ストリーミングをオーディオ機器に組み込むためのチップやモジュールを作っている会社がいくつかありました。そのチップやモジュールを組み込むことで、ストリーミング対応製品を比較的簡単に作ることができるものです。しかし、それではあまり自由度の製品開発をすることができません。それで、私たちはソフトウェアから全部、自分たちで作ることにしたのです。
たとえばお客さんからもっと機能を増やしてほしい、という要望がきたとしても、他社から買ってきたモジュールを使っている限り、それにすぐ対応することはできません。また、そのモジュールメーカーの考え次第によってブランドを継続していけるかどうかも決まってしまいます。ですから、やはり自分たちでその技術を持っていることがとても大切なのです。
Bluesoundは、まさにワイヤレス世代のオーディオファンに向けたブランドなんです。この10年間、本当に大変な日々でした。特にソフトウェア開発には苦労させられました。実は、最初はNADブランドの中のプロダクトとして考えていたのですが、これは新しいオーディオユーザーに向けたものなのだから、新しいブランドにするべきだ、と考えたのです。
ーーワイヤレス世代のオーディオファンに向けたブランド、ということにはとても説得力があります。
マット Bluesoundの最初のモデルは、ネットワークプレーヤーのNODE、アンプ内蔵のPOWERNODE、CDリッピングができるVAULT、そしてワイヤレススピーカーでした。今とは外観もだいぶ違いましたね(笑)。
わたしたちのミッションは「ワイヤレス世代のユーザーに対し、新しいHiFiプロダクトを届けること」です。オーディオにイノベーションを起こし、未来への期待を高める製品を作り続けたいと考えています。そしてこの10年で、Bluesoundは私達のブランドの中でも一番のセールスを実現するまでに成長しました。
世の中には、まだHiFiについてよく知らないお客さんも少なくありません。彼らに「良質なオーディオとはなにか」を知ってもらいたいと思っています。一方で、HiFiは分かっているが、ストリーミングはあまり詳しくない、という方もいます。このどちらのお客さんにも届くものを作りたいと考えています。
言うまでもありませんが、Bluesoundの背景にはPSB speakersやNADで培われてきた音響技術が多く込められています。私達はソフトウェアチーム、ネットワークに特化したチームが社内にいますし、ドイツにはアプリやUXに特化した多くのデザインパートナー、ニューヨークには外観デザイン開発を手掛けてくれるパートナーがいます。それら多くのパートナーの手によってBluesoundのプロダクトは生まれてきます。
ーーBlue(青)の由来はどこにありますか?
マット ポップスやロックのライヴなどに行ったときのことを想像してください。どんな色をイメージしますか? 実はそういう市場調査を行ったことがあるのです。そこでは「ブルー」(青)という声が多くありました。ライヴに行ったときのようなワクワクした気持ちになってほしい、という思いからBluesoundというブランド名が生まれました。
ーーあくまで「音楽ファン」を大切にしたブランドなのですね。
マット 私達が製品開発を始めた頃、他にも同じようなことを研究していた会社もありました。しかし、そういった会社の多くはコンピューターを重視していたように思います。私達はコンピューターではなく、はじめからネットワーク/ストリーミングをハイクオリティで再生するためのプロダクト開発に注力してきました。
いまやApple Musicもハイレゾでもストリーミングを開始する時代です。ストリーミングにもクオリティが大切だということが分かってきたのです。
ですが、もはや「ハイレゾ」という言葉だけではバズを狙えなくなってきています。多くのストリーミングサービスがすでにそれを実現してしまっていますから。そういう時代において次に何を仕掛けるべきかということを常に考えています。
ーーBluesoundは他のブランドにもモジュールを提供していますね。
マット はい、いくつかのHiFiオーディオブランドがBluOSを活用してくれています。DALIやモニターオーディオ、ROKSAN、Peachtreeなどがありますね。これらのブランドの製品はみな同じアプリで操作することができます。実はLenbrookは北米のDALIの代理店でもあり、私達は長年の関係を築いてきたのです。
ーー今回は新しいアプリをご紹介していただけると聞いています。
マット ここで新しいBluOSアプリの4.0をご紹介したいと思います。まだベータバージョンですが、これが私達の次世代のアプリプラットフォームになります。まもなく正式にリリース予定となります。
わたしたちのアプリは基本的にLinuxベースで動いています。BluOSのアプリは、音楽再生用のリモコンとして操作できますが、このアプリも最初から完璧だったわけではありません。製品をリリースして最初にわかったことは、ユーザーは製品に毎日触るわけではないということです。毎日触るのはアプリの方です。ですから、アプリのインターフェースが非常に重要だと気がついたのです。アプリこそがブランドの製品そのものなのです。ですから、アプリの体験の質を高めることにたくさんの投資をしてきました。
4.0の一番の変更点は、「ボトムナビゲーション」を追加したことです。一番下に「Home」「Favorites」「Music」「Players」「Search」となっており、親指でタップしやすくなっています。
「Home」画面も新たに追加されました。最初にアプリを立ち上げたときに見る画面であり、どの音楽を再生しようか、あるいはどのストリーミングサービスを利用しようか考えたときに最初に見る画面となります。
またよく使う画面を表示する「Favorites」、音楽ソースを表示する「Music」、オーディオ機器を操作する「Players」となっています。
ーー「Favorites」の中にはローカル音源やストリーミングの音源など何でも指定できるのですか?
マット そのとおりです。プレイリストやアーティストなどさまざまに指定ができます。つまり、ユーザー自身がアプリを使いやすいようカスタマイズすることができるのです。ですから、ユーザー自身がこのアプリをどう楽しむか、色々と探ってほしいと思っています。私は「アルバム」を楽しむことが好きですから、アルバム単位で「Favorites」に登録します。
目的のところにいくために幾度も「戻る」ボタンを押さないといけないアプリもありますね。そういうのは使い勝手が良くないので、下のナビゲーションボタンから、なるべく簡単に目当てのところにいけるようにしています。
また、「Now Playing」のページでは音源のクオリティを表示できるようにしました。これは特に要望が多かったものです。アプリで行える設定など基本的な機能は変更していませんが、デザインやナビゲーションの配置などを変更して、より今風のアプリに生まれ変わっています。
アプリのアップデートはまずはiPhone、iPad、Androidからの対応になります。Mac/Windows用のアプリも準備していますが、リリースは少し先になるでしょう。
ーーとても使い勝手が良さそうで、とても楽しみです!
マット それから、昨年発売された「POWERNODE EDGE」についても簡単に説明させてください。アンプまで一体型となったネットワークプレーヤーで、スピーカーと組み合わせるだけでさまざまな音楽再生が可能になる製品です。
使い方のバリエーションも豊富です。たとえば最近ではリモートで働くことも増えましたね。仕事机の周りのグレードアップするためにもぜひ使ってほしいと思いますし、ベッドルームにちょっとしたシステムを構築することもできます。また、HDMI端子を搭載しているので、テレビと連携することもできます。若者が初めて一人暮らしをする時のリビング用にもおすすめですね。
背面にネジ穴がついていますので、壁掛けとして利用することもできます。たとえばテレビの後ろに配置すれば、ケーブルが見えず配線をシンプルにセットアップすることができます。テレビの裏側に設置することはこれからもっと増えてくると思いますよ。
アンプはチャンネルごとに40Wです。小型のサイズですがしっかりパワーもあります。私たちはこれを「Direct Digital Amplifier Platform」と呼んでいます。出力段の直前までデジタルにすることで、歪みのないピュアな音楽信号を伝送できます。また内部にフィードバック回路を設けており、出力の信号と最初の入力の信号を比較して、途中で発生したエラーをキャンセルすることができるようになっています。
いずれにしてもお求めやすい価格であることと省スペースであることは私たちのプロダクトにとって大切なことです。
ーーひとつ以前からお尋ねしたかったことですが、BluesoundはどうしてAmazon Musicと連携できたのでしょうか? ネットワークオーディオブランドの中でも、Amazonと連携できる製品はあまり多くありません。
マット 実はAmazon側から私たちにオファーがあったのです。彼らがAmazon Music HDをスタートさせた時に、オーディオ市場で良いパートナーになれるブランドを探し、最初の会社としてBluesoundを選んでくれました。それは、私たちが長い間ストリーミングサービスとの連携について研究してきたからではないでしょうか。彼らはAPIを提供してくれて、BluOSに組み込むことができました。
できればApple Musicとも連携したいと考えていますが、現在のところそういったオファーはきていません。
ーー最近ではAIの進化が非常に大きいですが、AIを活用したBluOSのアップデートは検討していることがありますか?
マット いい質問ですね。BluOSにChatGPTを組み込みますか(笑)。逆に何をしてほしいですか?
ーー精度の高いレコメンド機能はぜひほしいですね。
マット レコメンドは重要ですね。正直に言えば、今の段階で何かAIと連携する具体的なプランがあるわけではありません。でもぜひ今後やってみたいですね。私たちはハードウェアもソフトウェアも自分たちで作っているので、新しい機能を追加していくことは難しいことではありません。ほかに何か希望はありますか?
ーースマートウォッチと連携して、私の体調や気分に合わせた音楽を再生してほしいと思っています。たとえば上司から理不尽なメールが送られてきたら、スマートウォッチが血圧の上昇を感知して、「気持ちを穏やかにしてくれる音楽」を再生してくれる。あるいは友人からハッピーなメールが送られてきたら、「ハッピーな音楽」を再生してくれる。そういう可能性があるんじゃないかと思っています。
マット (笑)。いいアイデアですし、実現可能性も高そうです。HiFiの世界をさらに豊かにするという自分たちのバックボーンを忘れてはいけませんが、未来に向けたさまざまな取り組みも同時におこなっていかなければならないと思います。
ーーBluesoundの先進的な取り組みについて、非常によくわかりました。貴重なお時間をいただきありがとうございました!
“ワイヤレス世代に向けた”HiFiブランドとして誕生したBluesound
ーー日本にようこそお越しくださいました。マットさんにお会いできてとても嬉しく思います。
マット Bluesoundは2023年で創業10周年を迎えます。この10年間はハイレゾを含むストリーミングサービスの市場が大きく拡大しました。そこで、まずはBluesoundというブランドのバックボーンについて改めてお話しできればと思います。
Bluesoundが誕生したのが2013年になりますが、少しその前のお話もいたしましょう。Bluesoundの親会社はLenbrookというカンパニーで、カナダやアメリカにおけるHiFiオーディオのディストリビューターとして45年の歴史を持っています。
1984年にはカナダのスピーカーブランドであるPSB speakersを買収しました。その後エレクトロニクスのブランドとしてNADも買収しました。ですからPSB speakersとNAD、Bluesoundは同じグループ企業ということになります。
2000年代に、オーディオビジュアルの世界を大きく変える重要な出来事が2つありました。ひとつは2005年にYouTubeが誕生したこと、そして2007年にiPhoneが登場したことです。mp3というデジタルフォーマットの普及もあいまって、コンテンツを楽しむスタイルがまったく様変わりしてしまったのです。
それ以前のオーディオ産業は、いわば斜陽産業になってしまったわけです。英語版WikipediaのSunset Industryの項目には、斜陽産業の代表例として「アナログ録音」が挙げられているくらいです。残念ながらこの流れを止めることはできません。
そこで私たちは考えました。このストリーミングへの流れは変えようがないのだから、その時代にあったプロダクトを生み出していく必要があると。「新しいイノベーションを起こすことができるか、あるいは死ぬか」。そんな思いで製品開発をおこなってきました。そして私たちは、新しい日の出を見ることができたと考えています。Bluesoundは、ストリーミング時代に向けた、新しいブランドになります。
ーーBluesoundは初めからストリーミングを意識したブランドだったのですね。
マット 当時、ストリーミングをオーディオ機器に組み込むためのチップやモジュールを作っている会社がいくつかありました。そのチップやモジュールを組み込むことで、ストリーミング対応製品を比較的簡単に作ることができるものです。しかし、それではあまり自由度の製品開発をすることができません。それで、私たちはソフトウェアから全部、自分たちで作ることにしたのです。
たとえばお客さんからもっと機能を増やしてほしい、という要望がきたとしても、他社から買ってきたモジュールを使っている限り、それにすぐ対応することはできません。また、そのモジュールメーカーの考え次第によってブランドを継続していけるかどうかも決まってしまいます。ですから、やはり自分たちでその技術を持っていることがとても大切なのです。
Bluesoundは、まさにワイヤレス世代のオーディオファンに向けたブランドなんです。この10年間、本当に大変な日々でした。特にソフトウェア開発には苦労させられました。実は、最初はNADブランドの中のプロダクトとして考えていたのですが、これは新しいオーディオユーザーに向けたものなのだから、新しいブランドにするべきだ、と考えたのです。
ーーワイヤレス世代のオーディオファンに向けたブランド、ということにはとても説得力があります。
マット Bluesoundの最初のモデルは、ネットワークプレーヤーのNODE、アンプ内蔵のPOWERNODE、CDリッピングができるVAULT、そしてワイヤレススピーカーでした。今とは外観もだいぶ違いましたね(笑)。
わたしたちのミッションは「ワイヤレス世代のユーザーに対し、新しいHiFiプロダクトを届けること」です。オーディオにイノベーションを起こし、未来への期待を高める製品を作り続けたいと考えています。そしてこの10年で、Bluesoundは私達のブランドの中でも一番のセールスを実現するまでに成長しました。
世の中には、まだHiFiについてよく知らないお客さんも少なくありません。彼らに「良質なオーディオとはなにか」を知ってもらいたいと思っています。一方で、HiFiは分かっているが、ストリーミングはあまり詳しくない、という方もいます。このどちらのお客さんにも届くものを作りたいと考えています。
言うまでもありませんが、Bluesoundの背景にはPSB speakersやNADで培われてきた音響技術が多く込められています。私達はソフトウェアチーム、ネットワークに特化したチームが社内にいますし、ドイツにはアプリやUXに特化した多くのデザインパートナー、ニューヨークには外観デザイン開発を手掛けてくれるパートナーがいます。それら多くのパートナーの手によってBluesoundのプロダクトは生まれてきます。
ーーBlue(青)の由来はどこにありますか?
マット ポップスやロックのライヴなどに行ったときのことを想像してください。どんな色をイメージしますか? 実はそういう市場調査を行ったことがあるのです。そこでは「ブルー」(青)という声が多くありました。ライヴに行ったときのようなワクワクした気持ちになってほしい、という思いからBluesoundというブランド名が生まれました。
ーーあくまで「音楽ファン」を大切にしたブランドなのですね。
マット 私達が製品開発を始めた頃、他にも同じようなことを研究していた会社もありました。しかし、そういった会社の多くはコンピューターを重視していたように思います。私達はコンピューターではなく、はじめからネットワーク/ストリーミングをハイクオリティで再生するためのプロダクト開発に注力してきました。
いまやApple Musicもハイレゾでもストリーミングを開始する時代です。ストリーミングにもクオリティが大切だということが分かってきたのです。
ですが、もはや「ハイレゾ」という言葉だけではバズを狙えなくなってきています。多くのストリーミングサービスがすでにそれを実現してしまっていますから。そういう時代において次に何を仕掛けるべきかということを常に考えています。
ーーBluesoundは他のブランドにもモジュールを提供していますね。
マット はい、いくつかのHiFiオーディオブランドがBluOSを活用してくれています。DALIやモニターオーディオ、ROKSAN、Peachtreeなどがありますね。これらのブランドの製品はみな同じアプリで操作することができます。実はLenbrookは北米のDALIの代理店でもあり、私達は長年の関係を築いてきたのです。
さらなる使い勝手を追求した最新BluOSアプリを紹介
ーー今回は新しいアプリをご紹介していただけると聞いています。
マット ここで新しいBluOSアプリの4.0をご紹介したいと思います。まだベータバージョンですが、これが私達の次世代のアプリプラットフォームになります。まもなく正式にリリース予定となります。
わたしたちのアプリは基本的にLinuxベースで動いています。BluOSのアプリは、音楽再生用のリモコンとして操作できますが、このアプリも最初から完璧だったわけではありません。製品をリリースして最初にわかったことは、ユーザーは製品に毎日触るわけではないということです。毎日触るのはアプリの方です。ですから、アプリのインターフェースが非常に重要だと気がついたのです。アプリこそがブランドの製品そのものなのです。ですから、アプリの体験の質を高めることにたくさんの投資をしてきました。
4.0の一番の変更点は、「ボトムナビゲーション」を追加したことです。一番下に「Home」「Favorites」「Music」「Players」「Search」となっており、親指でタップしやすくなっています。
「Home」画面も新たに追加されました。最初にアプリを立ち上げたときに見る画面であり、どの音楽を再生しようか、あるいはどのストリーミングサービスを利用しようか考えたときに最初に見る画面となります。
またよく使う画面を表示する「Favorites」、音楽ソースを表示する「Music」、オーディオ機器を操作する「Players」となっています。
ーー「Favorites」の中にはローカル音源やストリーミングの音源など何でも指定できるのですか?
マット そのとおりです。プレイリストやアーティストなどさまざまに指定ができます。つまり、ユーザー自身がアプリを使いやすいようカスタマイズすることができるのです。ですから、ユーザー自身がこのアプリをどう楽しむか、色々と探ってほしいと思っています。私は「アルバム」を楽しむことが好きですから、アルバム単位で「Favorites」に登録します。
目的のところにいくために幾度も「戻る」ボタンを押さないといけないアプリもありますね。そういうのは使い勝手が良くないので、下のナビゲーションボタンから、なるべく簡単に目当てのところにいけるようにしています。
また、「Now Playing」のページでは音源のクオリティを表示できるようにしました。これは特に要望が多かったものです。アプリで行える設定など基本的な機能は変更していませんが、デザインやナビゲーションの配置などを変更して、より今風のアプリに生まれ変わっています。
アプリのアップデートはまずはiPhone、iPad、Androidからの対応になります。Mac/Windows用のアプリも準備していますが、リリースは少し先になるでしょう。
ーーとても使い勝手が良さそうで、とても楽しみです!
マット それから、昨年発売された「POWERNODE EDGE」についても簡単に説明させてください。アンプまで一体型となったネットワークプレーヤーで、スピーカーと組み合わせるだけでさまざまな音楽再生が可能になる製品です。
使い方のバリエーションも豊富です。たとえば最近ではリモートで働くことも増えましたね。仕事机の周りのグレードアップするためにもぜひ使ってほしいと思いますし、ベッドルームにちょっとしたシステムを構築することもできます。また、HDMI端子を搭載しているので、テレビと連携することもできます。若者が初めて一人暮らしをする時のリビング用にもおすすめですね。
背面にネジ穴がついていますので、壁掛けとして利用することもできます。たとえばテレビの後ろに配置すれば、ケーブルが見えず配線をシンプルにセットアップすることができます。テレビの裏側に設置することはこれからもっと増えてくると思いますよ。
アンプはチャンネルごとに40Wです。小型のサイズですがしっかりパワーもあります。私たちはこれを「Direct Digital Amplifier Platform」と呼んでいます。出力段の直前までデジタルにすることで、歪みのないピュアな音楽信号を伝送できます。また内部にフィードバック回路を設けており、出力の信号と最初の入力の信号を比較して、途中で発生したエラーをキャンセルすることができるようになっています。
いずれにしてもお求めやすい価格であることと省スペースであることは私たちのプロダクトにとって大切なことです。
ーーひとつ以前からお尋ねしたかったことですが、BluesoundはどうしてAmazon Musicと連携できたのでしょうか? ネットワークオーディオブランドの中でも、Amazonと連携できる製品はあまり多くありません。
マット 実はAmazon側から私たちにオファーがあったのです。彼らがAmazon Music HDをスタートさせた時に、オーディオ市場で良いパートナーになれるブランドを探し、最初の会社としてBluesoundを選んでくれました。それは、私たちが長い間ストリーミングサービスとの連携について研究してきたからではないでしょうか。彼らはAPIを提供してくれて、BluOSに組み込むことができました。
できればApple Musicとも連携したいと考えていますが、現在のところそういったオファーはきていません。
ーー最近ではAIの進化が非常に大きいですが、AIを活用したBluOSのアップデートは検討していることがありますか?
マット いい質問ですね。BluOSにChatGPTを組み込みますか(笑)。逆に何をしてほしいですか?
ーー精度の高いレコメンド機能はぜひほしいですね。
マット レコメンドは重要ですね。正直に言えば、今の段階で何かAIと連携する具体的なプランがあるわけではありません。でもぜひ今後やってみたいですね。私たちはハードウェアもソフトウェアも自分たちで作っているので、新しい機能を追加していくことは難しいことではありません。ほかに何か希望はありますか?
ーースマートウォッチと連携して、私の体調や気分に合わせた音楽を再生してほしいと思っています。たとえば上司から理不尽なメールが送られてきたら、スマートウォッチが血圧の上昇を感知して、「気持ちを穏やかにしてくれる音楽」を再生してくれる。あるいは友人からハッピーなメールが送られてきたら、「ハッピーな音楽」を再生してくれる。そういう可能性があるんじゃないかと思っています。
マット (笑)。いいアイデアですし、実現可能性も高そうです。HiFiの世界をさらに豊かにするという自分たちのバックボーンを忘れてはいけませんが、未来に向けたさまざまな取り組みも同時におこなっていかなければならないと思います。
ーーBluesoundの先進的な取り組みについて、非常によくわかりました。貴重なお時間をいただきありがとうございました!
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