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公開日 2023/11/27 06:30
オーディオアクセサリー銘機賞2024受賞:完実電気 山田慎一氏

【インタビュー】完実電気、自ら生み出した強力製品群での受賞。創設を担った自社ブランド「PERFECTION」再始動への思いとは

PHILEWEBビジネス 徳田ゆかり
オーディオアクセサリー銘機賞2024
受賞インタビュー:完実電気


国内オーディオマーケットに展開される、その年の最も優れたアクセサリー製品を選定する「オーディオアクセサリー銘機賞2024」において、完実電気が2023年より展開する自社ブランドPERFECTION(パーフェクション)の製品が同アワードのグランプリを受賞した。製品の卸業や輸入業、販売業など、オーディオのカテゴリーで幅広い事業を手掛けてきた完実電気。その75周年の記念事業となったブランド展開の取り組みについて、山田慎一社長に話を伺った。


完実電気株式会社 代表取締役社長 
山田慎一氏


■完実電気創立時の独自ブランド パーフェクション、同社75周年の節目に復活



―― オーディオアクセサリー銘機賞2024において、パーフェクションの電源ボックス「PFT-T3000AF」、アーススタビライザー「PFT-ES1」がグランプリ受賞となりました。さらに、パーフェクションブランドの立ち上げに対して、審査員特別賞が贈られました。誠におめでとうございます。

山田 本当に有難うございます。パーフェクションは、私の父である弊社の創業者がもともと手掛けていたブランドの名前です。父はスピーカーのユニットメーカーに勤務した後に独立し、スピーカーのキャビネットを制作してユニットを組み込んで販売していました。それが弊社の成り立ちで、そのスピーカーをパーフェクションのブランド名で展開していたのです。

完実電気の創立75周年を記念し、同社創業時に展開していた「PERFECTION」ブランドを再始動

ベトナム戦争の頃で、米兵達が帰国時に乗る大きな船に、メイド・イン・ジャパンのスピーカーがたくさん積み込まれて本国に運ばれていった時期です。パーフェクションのスピーカーも全世界に輸出されていました。当時のオーディオ評論家の方とともに開発したスリーディメンションステレオのフィルターや、アンプ付フィルターなども、パーフェクションブランドとして1975年頃に販売していました。

当時のパーフェクションのことを、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。それからずいぶん時が経ちましたが、今年、弊社の75周年というタイミングでもあり、もう一度原点に返ろうという思いでブランドを復興したのです。決断してこの事業を立ち上げて、ここまで認めていただけたことが大変有難く、感慨深い思いでおります。

―― 今回受賞に至った製品は、ブランド復興のタイミングでリリースされたものですね。電源や仮想アースといった、オーディオアクセサリー市場の中でも注目の高いカテゴリーです。

アーススタビライザー「PFT-ES1」。「20万円以上」のカテゴリーにてグランプリを受賞

山田 おっしゃるとおり、そこは弊社の経験の中である意味狙ったところはありますし、これから手掛けていくものについても、基本的にはオーディオアクセサリー中心でやっていくつもりです。同業の皆様のたくさんの製品の中で、お客様にとっての選択肢が一つ増えれば嬉しいですね。ただ、出すからにはしっかりとしたものをご提案したい。おかげさまでエンジニアを含めていい社員に恵まれましたから、力を合わせてやっていきます。

アクティブフィルター搭載電源ボックス「PFT-T3000AF」。「10万円以上」のカテゴリーにてグランプリを受賞


ブランド再始動時にリリースされた、パッシブフィルター搭載電源ボックス「PFT-T1000PF」

―― 今回のブランドの立ち上げや製品に対して、ご販売店の反応はいかがでしたか。

山田 以前のこのブランドのなりたちをご存知の専門店様も多くいらっしゃいますから、すんなりと受け入れていただけましたし、若い世代でブランドをご存知ない方に対しても、違和感なくリリースできました。

ただ、製品については失敗のないように、販売店様にご相談もしましたし、評論家の方々にもご意見を伺い修正を加えるなど、事前の準備はしっかりとやらせていただいたつもりです。おかげさまで製品を高くご評価いただくことができて、皆様に感謝しております。

■蓄積した経験と人材を活かし、独自のブランド展開に満を持してのチャレンジ



―― 今回のブランド事業については、いつ頃から計画されていたのでしょうか。

山田 話は何年も前から出てはいたんですよ。本格的にやろうという話になったのは一昨年の6月頃でしたが、それは人材の後ろ盾があったからですね。輸入販売業を手掛ける中では、お預かりしているブランドの製品の修理などのサービス対応も致しますから、弊社でエンジニアも採用し、育ててきたのです。

そしてプロジェクトリーダーとエンジニアの2人、彼ら自身がしっかりやっていくと言ってくれたので決断しました。卸業や輸入業を行う中で、完実電気の名前が一般のお客様に触れる機会は限られます。しかしもともとメーカーとして創設され、ブランドも持っているのだから、その事業をやってみようと。ここで名前を全面に出すことにチャレンジしてみたのです。

ブランドの展開については、製品開発から生産に至るまで、すべて弊社でやっております。これまで商社としての活動でいろいろな製品を扱わせていただき、市場やお客様の動向に触れてきた知見から、アイデアを生み出すことができました。

そして製品化に至るには、トライアンドエラーを繰り返し、方針変換もしながら実現の道を探ってきたのです。これまでの仕事の中でお付き合いのあった、工場やメーカーの方々が快くお力を貸してくださったことも大きいですね。有難いことです。

―― いろいろな企業と関わり、製品を手がけてこられた御社ならではのあゆみですね。ご経験の中でノウハウが集約しただけでなく、いろいろな方が力を貸してくださったのは、御社が業界の中でずっといいご関係をつくってこられたからですね。

山田 競合のお立場であっても、ブランドや製品が増えれば話題が広がるからどんどんやっていこうよと、多くの方が言ってくださっているんです。我々としてももちろん、販売店様には弊社の製品だけでなく、これまで同様にすべての会社の製品をしっかりとおすすめしていく、という活動になります。

■日本の市場へさらなる貢献を。オーディオ事業に集中してきた完実電気の思い



―― あらためて、山田社長ご自身のご経歴についてもお伺いします。

山田 私は学校を卒業してすぐ、1980年にこの会社に入ってずっと営業一筋で来ました。実はまったく職種の違う会社から内定を受けていたんですが、最後の春休みに父から「明日からうちに来い」と言われて。当時従業員が辞めて、人が足りなくなったんですね。ただ大学の就職課から、親の会社を継ぐなら親子で一緒に働く時間が長いほど成功する、早く入った方がいいと言われてもいたので、私自身もいずれは入るつもりでいました。それでそのタイミングで決心したんです。

1987年には、福岡営業所に配属されました。当時、近隣の新興工業経済地域の製品を日本に輸入して売るといったNIESブームがありましたが、新しく営業部長で入った人物がそういう製品を扱い出し、福岡の最大手の家電店様でそれを取り扱っていただくための役割を、私が担うことになったのですね。弊社にとって初の営業所でした。

そこで2年ほどは、その家電店様と一緒に企画製品をつくったり、地域の専門店様の対応をさせていただいたりしていましたが、1989年に社内で事件が起きたんです。例の部長が私以外の社員を味方につけて、会社を譲ってほしいと言ってきたんですね。正月で福岡から東京に戻っていた私にそんな話をするので、とんでもないと思って当時引退して家にいた父に伝えたんです。

それで2人で考えた結果、彼らに辞めてもらうことにしました。そこからは、会社には私だけ。登記上はもう少し先ですが、実質的に一人で社長業もやっていったんですね。もう必死でした。

その時に原点回帰でよけいなことはやめて、事業はすべてオーディオに戻して集中しました。それがよかったんだと思います。徐々に社員を増やして行きながら、1990年くらいから直輸入も始め、1995年に大阪営業所を、1998年に仙台営業所をつくって、2000年に販売店であるユーオーディオをつくりました。それから今に至ります。

―― 原点にかえっての今回のブランド復活は、そのお話を聞くと一層重みが感じられますね。

山田 私自身も振り返ると中学生の頃に、当時銀座の汚いビルにあった完実電気で、スピーカーを組み立てたり梱包したりというアルバイトをしていましたよ。それがパーフェクションのスピーカーでしたから、私にとってもこのブランドが、子どもの頃からのルーツということです。そして完実電気の社名は、パーフェクションの名称を訳して命名されたと聞いています。弊社にとってもこの名前は、原点中の原点と言えますね。

こうして復活させたブランドですから、あらためてしっかりとやっていきたいと思っています。現時点で3製品をリリースさせていただいていますが、年内にもう1製品、そして2024年の3月頃にも新製品のリリースを計画しています。アイデアはたくさんありますから、今後もご期待いただければと思います。

―― ぜひ、今後の意気込みをお聞かせください。

山田 弊社は直輸入も、卸も行い、プロオーディオの会社、ハイエンドオーディオの会社をもち、販売店も展開して、総合的にオーディオに関わってきました。そこにメーカーとして、新しい一面をもつことができました。あらためてオーディオ全般を通じて、日本の市場に貢献できればと思っております。今後ともよろしくお願い致します。

―― パーフェクションブランドも、そして他の事業のご活動もますます楽しみですね。ありがとうございました。

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