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公開日 2024/11/07 06:30
「Inter BEE 2024」に出展予定

ハイブリッド会議の“音問題”を解決するパナソニックのシーリングマイク体感。開発背景を担当者に訊く

編集部 : 伴 修二郎
個人のリモートワークだけでなく、会議室どうしを結んだ会社間でのリモート会議なども当たり前になった昨今。会議室にリモート会議用のシステムを装備する企業も増えている。そんなリモート会議ツールのなかでも特に注目してほしいのが、パナソニックが展開する天井設置型のシーリングアレイマイクロホン「WX-AM800」、および開発中のAVプロセッサー「WR-AV800」だ。担当者に製品開発の背景を訊いたほか、同社浜離宮オフィスにて体験デモの機会をいただいたので、その模様と共に紹介する。

リアル対面とオンラインのリモートを組み合わせたハイブリッド会議・授業での「音」の課題を解決し、コミュニケーションを活性化させる製品群を展開

■ハイブリッド会議中の“音問題”を解決するシーリングアレイマイクロホン。担当者に開発背景を訊く



パナソニック コネクトでは、ハイブリッド会議や授業における、対面参加者の会話の聞き取りづらさやマイクから遠い人の声が聞こえないなどのオンライン参加者が感じる音のストレス、マイクなどの機材セッティングの手間といった課題解決を目的とした製品群を展開。その第1弾製品として、ビームフォーミング技術を採用したシーリングアレイマイクロホン「WX-AM800」を、昨年開催の展示イベント「Inter BEE 2023」にて初お披露目し、今年1月に発売に至っている。

WX-AM800は、天井に設置することで部屋内の全ての人の声を拾い、オンライン先にも自然な音声を届けることができるシーリングアレイマイクロホン。シーリングマイク一台で部屋内をカバーすることで、複数名が同時に発話してもクリアな収音が可能で、準備作業の手間も省くことで、より快適なオンラインコミュニケーションが可能だと謳っている。

「WX-AM800」

大きな特徴として、シーリングマイクに到達した時間差を元に指向性を制御し、特定方向の音を強調するビームフォーミング技術を採用。これにより、狙った場所や発話者の声を的確に収音できるとアピールする。同時収音数は(ビームフォーミング数)は最大4ch。収音範囲は1台で9m×9mまで対応し、広い会議室や教室にも対応できるとしている。

同社がシーリングマイク製品の発売に至った背景について、パナソニックエンターテインメント&コミュニケーションの三橋氏は、「コロナ禍によって学校では通学が制限され、企業ではリモート会議の機会が増えるなどしたことで業界的にもシーリングマイクへの注目が一気に高まった」「海外でマイク製品を展開するなかでも、アメリカを中心にシーリングマイク製品化の要望を多く受け、後発ではあるが当社でもシーリングマイク開発に踏み切った」と語る。

収音範囲は1台で9m×9mまで対応し、広い会議室や教室にも対応できる

また、WX-AM800独自の仕様として、シーリングマイクのみならず同社製ワイヤレスマイクとの併用にも対応する。シーリングマイクにダイバーシティ受信方式のワイヤレスアンテナユニット「WX-AU202」を1台連携することで、同社製の1.9GHz帯ワイヤレスマイクとの併用が最大2本まで行える。

通常ワイヤレスマイクを併用すると、会場内のスピーカーで拡声された音声をシーリングマイクが拾い、それがハウリングやエコーのトラブルを促してオンライン側に不自然な音が届いてしまう課題があった。これに対してWX-AM800では、WX-AU202を用いることでワイヤレスマイク使用中にシーリングマイクの収音を自動で抑制する「ダッカー機能」に対応。これによりワイヤレスマイク使用時でもオンライン先に自然な音声を届けることが可能で、プレゼンターは口元で収音できるワイヤレスマイク、参加者の声はシーリングマイクで収音するなど、よりスムーズなコミュニケーションを実現すると謳う。

ワイヤレスアンテナユニット「WX-AU202」

同社製の1.9GHz帯ワイヤレスマイクとの併用にも最大2本まで対応

シーリングマイク発売後は、特にこのダッカー機能に対してユーザーから好評の声が届いたと、商品企画担当の越坂氏は語る。「通常同じ空間でワイヤレスマイクを併用する際は、音がまわらないよう、シーリングマイクを逐一ミュートしなければならなかった。本機能を活用すればそれぞれの音声をミュートの手間なく自然に切り替えられるのが他社にない強み」と説明する。

シーリングマイク収音時は緑色に点灯

ワイヤレスマイク収音時は橙色に点灯する

システム面では、無償の専用ソフトウェア「Microphone System Configuration Center(MicCC)」を用いることで、別々の部屋にあるシーリングマイクシステムや同社製1.9GHz帯デジタルワイヤレスマイクシステムなどの各種設定や状態取得が可能。PCから複数の部屋のシステムを簡単に一元管理することができる。

シーリングマイクの収音エリア・除外エリアの設定は、MicCCを使用してユーザーの使用環境や運用にあわせた4種類から設定が可能。ビーム(話者)の位置表示も行えることで、ソフトウェア上で収音エリア内に発話者が存在しているかどうかを視覚的にも確認できる。

もう1つの大きな特徴として、同社製リモートカメラとの連携が行える。各カメラエリアで話者の位置を特定して、そのエリアごとに紐づけられたプリセットを呼び出すことで、発話者が位置する対象エリアにリモートカメラの向きが自動で切り替わる。なお、シーリングマイク1台に対して連携可能なリモートカメラは1台まで。

同社製リモートカメラとの連携が可能

また、WX-AM800からダイレクトに制御信号を出力することで、カメラのプリセットを呼び出し自動で向きを切り替えてくれるため、外部機器やソフトウェアによる制御は不要になる。カメラの向くエリアはシーリングマイクで最大16エリア、ワイヤレスマイクで最大2エリアまで設定できる。

このリモートカメラとの連動機能について三橋氏は、「PCレスでカメラ連携が行えるとともに、カメラ設定がシーリングマイクの音響設定用ソフトウェアと同じソフトで行えるのがポイント。自社でシステムが完結できる当社ならではの強みになっている」と力を込める。

そのほか、シーリングマイクの設置方法には、「天井埋込」、「天井取付」、「ワイヤー吊り下げ」、「VESAマウント金具取付」の4種類を用意。なお、ワイヤーやVESAマウントは別途用意する必要がある。WX-AM800の消費電力は最大18W、電源はPoE+(IEEE802.3at)。外形寸法/質量は、WX-AM800が約400W×42H×400Dmm/約2.4kg(取付金具含まず)、WX-AU202が約212W×184H×32Dmm/約480g(本体のみ)。

シーリングマイクの設置方法は4種から選択できる

■カメラ自動追尾やボイスリフト機能などを拡張するAVプロセッサー「WR-AV800」



さらに先日10月25日には、ハイブリッド会議システムにおいてさらなる機能拡張を実現するAVプロセッサー「WR-AV800」が開発中であることを発表。発売時期は2025年度の第一四半期頃を予定している。

開発中のAVプロセッサー「WR-AV800」

WR-AV800では主に、複数台のマイクやリモートカメラとの連携や、カメラの自動追従機能「ビームトラッキングモード」、シーリングマイクの収音とスピーカーからの音声出力を両立する「ボイスリフト機能」、USBケーブル1本で映像出力および音声の入出力が可能な「AVブリッジ機能」といった新機能を拡張できる。

中でも注目の機能となるのが、複数台のマイクと複数台のリモートカメラとの連携機能だ。シーリングマイクは最大4台、リモートカメラは最大8台まで連携が可能で、この複数台の連携によって現場の様子をリモート側にも詳細に伝えられるとしている。

リモートカメラの連携数は、当初最大5台を想定していたとのことだが、特にアメリカの大学では教室に約5〜8台のカメラを設置する充実したシステムが導入されているケースが少なくなかったとして、そのようなシーンもカバーできるよう、カメラの連携数を最大8台まで増やすことにしたのだという。

複数台のマイクとリモートカメラでの連携イメージ

また、リモートカメラとの連携機能の強化を図ってくれるのが、マイクが検知した発話者の位置を基準にリモートカメラを制御するビームトラッキングモード。本モードではプリセットの設定なしにシーリングマイクとリモートカメラの連携を実現し、部屋のレイアウトにかかわらず話者を捉えることができる。また自動追尾機能では、ワイヤレスマイクを持ちながら移動する人物も追尾することが可能になる。

担当者は、教室など定期的に部屋のレイアウト変更が発生する部屋においては、従来のプリセット設定だとレイアウトが変わるたびに設定しなおす必要があった点を指摘。本モードでは直接話者の座標位置とカメラのパンチルトズームが連携するため、レイアウト変更時の画角のズレや設定変更の手間といった課題解決を促せるとアピールしていた。

さらに、ハウリングのない状態でシーリングマイク収音とスピーカーからの音声出力を両立させ、音声のストレスを軽減するのがボイスリフト機能。独自の調整方式とDSP(Digital Signal Processing)機能を用いることで、シーリングマイクで収音した話者の声を複数の天井スピーカーから出力して、発話者が部屋のどこにいてもすべての参加者に声を届けることが可能だ。また、オンライン参加者にはシーリングマイクでの収音音声を届け、リアル会場での参加者にはハウリングのないクリアな声を届けることで、ハンドマイクを使わずともお互いの声がよく聞こえる環境を構築できると謳っている。

自分から遠い人の声が、頭上のスピーカーからはっきりと聞き取れるようになる

このボイスリフト機能について三橋氏は、「周波数をシフトすることでハウリングを起こさず、発話者の肉声を自然に持ち上げてくれるイメージ。肉声とブレンドしながら自分の近くのシーリングスピーカーが音を持ち上げてくれることで音量感が上がり、自分から遠い位置でしゃべっている声も聞きやすくなる」と語る。

そのほか、AVブリッジ機能ではUSBケーブル1本で映像出力および音声の入出力が可能。また、上掲で紹介したソフトウェアMicCCからワイヤレスマイク、シーリングマイク、AVプロセッサー、リモートカメラのプリセット設定を一元化できることで、よりストレスなく効率的な運用をサポートできるとしている。

■気になる実際の聞こえ具合は? 同社製品によるハイブリッド会議システムを体験



これらシーリングマイクやリモートカメラが導入された同社浜離宮オフィスの会議室にて、実際にシーリングマイクで収音された会話音声を体感できるデモ体験の機会をいただいた。同会議室のシステムはデジタルオーディオネットワーク規格「Dante」を用いて構築されており、USB搭載デジタルミキサー「WR-DX200DAN」やアンプ、コントロール用のフェーダーなどシステム用のラックが用意されている。

体験デモは同会議室をリアル会場とした会議にオンラインで参加するというもので、担当者はシーリングマイク設置の会議室に待機、筆者は別部屋へと移動した状態でTeamsをつなぎ、実際に担当者に会議室内で発話してもらうことで、シーリングマイクによる実際の収音音声をイヤホンを通して確認できた。

会議室内に設置されたシステム用のラック

実際に音声を聞いてみると、イヤホン・ヘッドセットや会議用スピーカーフォンでの収音音声と遜色のない聞こえ具合で、音声自体も明瞭で聞き取りやすい。デモ中には何箇所か会議室内の位置を移動してもらったが、デスクの端の席などで発話してもらった際でも、特に聞こえ具合や音量に大きな差は発生せず、終始スムーズなやり取りが行えた。

また、複数人での発話を行ってもらったところ、声の被りによる聞きづらさもほとんど感じない。最後にワイヤレスマイクを併用しての音声もチェックしてみたが、ごく自然に音声が切り替わるため、聞いていて特に違和感は感じられなかった。ワイヤレスマイク使用時もマイクで話している感は薄く、とても自然な聞こえ方をしてくれるので、オンライン参加時でも音のストレスを感じることはないだろう。

ラック内にはコントロール用のフェーダーも収納されている

◇◇◇


パナソニック コネクトは、11月13日(水)から15日(金)までの3日間にわたって幕張メッセで開催される、音や映像、通信技術の展示会イベント「Inter BEE 2024」に出展。 “Activity Based Working” をコンセプトに掲げる「会議室ソリューションゾーン」では、今回紹介したシーリングアレイマイクロホンやリモートカメラ、新発表のAVプロセッサーを活用したAVソリューションの展示紹介や、体験デモを予定しているとのことだ。本記事を読んで興味を持ったという方は、ぜひお気軽に足を運んでみてほしい。

(協力 : パナソニック コネクト)


パナソニック コネクト「Inter BEE 2024」出展ブースのイメージ

Inter BEE 2024概要

<会場・会期>
〇幕張メッセ会場
2024年11月13日(水)10:00〜17:30
2024年11月14日(木)10:00〜17:30
2024年11月15日(金)10:00〜17:00

<入場>
無料(全来場者登録入場制)

▼パナソニック コネクト Inter BEE 2024オンラインページ
https://www.inter-bee.com/ja/forvisitors/exhibitor_info/detail/detail.html?id=287

「会議室ソリューションゾーン」出展内容
<映像制作/放送関連機材部門 ホール4>
出展テーマ:『現場がつながる・変わる』
・Activity Based Working
−シーリングアレイマイクロホン
−ワイヤレスアンテナユニット
−AVプロセッサー

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