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公開日 2018/06/15 18:16
独自のフィルム技術を活用

富士フイルムが“画期的”なスピーカー技術「φ(ファイ)」開発、OTOTENで公開

ファイルウェブ編集部
富士フイルム(株)は、スピーカー技術「Φ(ファイ)」を開発した。あすから東京国際フォーラムで開催される「OTOTEN 2018」(事前来場者登録はこちら)で、この技術を搭載したスピーカーと、市販のサブウーファーを組み合わせた2.2chシステムでデモを実施する。

「B.E.A.T.」を用いたスピーカー技術「φ」による試作スピーカー本体

OTOTENのブースの様子。ECLIPSEのサブウーファーを組み合わせた2.2chでデモ

「Φ(ファイ)」は、同社が独自開発した、磁石やコイルなしで、電気信号で直接振動する電気音響変換フィルム「B.E.A.T.」をスピーカーの振動板に採用した。独自のユニット構造とすることで、世界最速クラスの音の立ち上がり・立ち下がり速度を実現したとしており、同社ではこの技術を “画期的” なものと表現している。

「B.E.A.T.」は圧電セラミックスの微粒子と粘弾性ポリマーを複合化した振動板で、磁石やコイルなしに電気信号で直接振動する “電気音響変換フィルム” ともいうべきもの。電気を加えることで振動する圧電素材を応用することで、電気信号を直接振動に変換できる。

圧電素材であるセラミックを電気で直接振動させるスピーカーはこれまでもあったが、セラミックは硬いために内部損失が小さく、素材固有の音の色づきが避けられなかった。また素材の性質上、振動板の成形も限界があった。

φのスピーカーユニット構造(左)と一般的なスピーカーの構造(右)

B.E.A.T.は粘弾性ポリマーの中に圧電セラミックの微粒子を均一に分布させることで、セラミックの圧電特性および優れた伝播速度と、フィルムならではの柔軟性を両立。また、セラミックスを主成分としながらも、スピーカーの振動板に広く採用されているコーン紙の約3倍という高い内部損失を持たせることにも成功した。

このようにして、一般的な振動板では難しいとされている「伝播速度」と「内部損失」を理想的にバランス。ひいては優れた伝播速度に起因する「立ち上がり・立ち下がりの速さ」、高い内部損失による「音の色づきの排除」、これらを両立させたことにより低ノイズでクリアな音を実現できたという。

このB.E.A.T.の開発にあたっては、富士フイルムがこれまで写真フィルムで培ってきた材料設計技術や分散技術、精密塗布技術が活用された。

ネット越しに見える銅色のフィルムが「B.E.A.T.」だ

またB.E.A.T.においては、内部に吸音材を充填した独自のスピーカーユニット構造とすることで、前述の通り、音の立ち下がり速度のさらなる高速化に成功。200Hz-20kHzという幅広い音域で世界最速クラスという0.1m秒以下の音の立ち上がり・立ち下がりを可能にしたとする。

また、この新スピーカー技術「φ」においては、このB.E.A.T.によるスピーカーユニットを、柱状のスピーカーの4面に配置した多面体構造を採用。水平面内において360度全方向に音を放射できるため、幅広い音域で均一な音の広がりが可能になる。これにより、自然界の音が持つ「点音源・全指向性」の特性に近い自然な音場感を実現したという。

富士フイルムでは、この「φ」の技術を、社外パートナーとのオープンイノベーションも視野に、ハイエンドオーディオ機器や業務用音響機器へ応用・展開することを検討していく。また、OTOTEN会場で来場者に意見を聞き、今後の研究や製品開発にも反映させていくという。

なお、B.E.A.T.の技術については音響学で著名な大賀寿?氏(芝浦工業大学名誉教授)もコメントを寄せている。同氏は約50年前に圧電セラミックとポリマーの複合体を音響用振動板に用いることを提案したが、圧電セラミックの配合率を高めると壊れやすくなることが避けられず、実用化を断念したのだという。また、これまでも同様の技術を複数の研究機関が実用化に挑んだものの、成功した例はなかったとする。

大賀氏はB.E.A.T.を用いた「φ」スピーカーについて、「音響学的に理想に近い二次元音場を創成でき、広い範囲で自然な音場感が得られるので、新しい形の音楽鑑賞用スピーカーシステムとして大いに注目される」と述べている。

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