公開日 2019/03/07 14:53
出水電器のオーディオ電源体験イベントを報告
本邦初対決「“マイ柱”電源」VS「バッテリー電源」! 音の違いを体験レポート
季刊オーディオアクセサリー編集部
さる2月23日に都内西蒲田の(有)出水電器ALLION試聴室にて、既報告知ニュースの通り「バッテリー電源とマイ柱電源の音質を聴き比べる」試聴会が開催された。昨年11月24日に実施して好評を博した「マイ柱電源と燃料電池の音質を聴き比べる」(既報レポート参照)に続き、異なる電源2種類を使って同じオーディオ機器を駆動し、その音の違いを参加者全員で聴き比べるものだ。
今回用意された電源は、「ELIIY Powerのリチウムイオンバッテリー、Power YIILE3」と、「通称 “マイ柱” =マイ柱上トランス」による電源。いずれも100Vで、楽曲ごとにリアルタイムで電源差し替えで聴き比べた。試聴に用いた機材は、出水電器が主宰する国産アンプブランド、アリオンのプリメインアンプALLION A10と、エソテリックのデジタルプレーヤー「K-03X」で、2機種の電源ケーブルを直接抜き差して比較した。スピーカーはディナウディオ「C4」である。
まず初めに、今回比較した「Power YIILE3」と「マイ柱上トランス」について解説しておこう。
■「ELIIY PowerのPower YIILE3」
「ELIIY Powerのリチウムイオンバッテリー、Power YIILE3」は、エリーパワー(株)による可搬型の室内用蓄電システムで、100Vで1.5kVA/1.4kWの出力を備える。安全、長寿命、温度特性に優れた国産の自社製リチウムイオンバッテリー・セルを搭載し、万が一、内部ショートしても、押し潰されても、過充電しても、発煙・発火しないという高い安全性を備えている(大型リチウムイオン電池セルとして世界で初めて「TUV-Sマーク」を取得)。また、10年間繰り返し充放電(約12,000回)を行っても、電池容量保持率80.1%以上の長寿命性を実現したという。
本機は家庭やオフィス内での、非常時の電源確保や太陽光発電の効率的活用のために開発されているが、オーディオ用としても運転時の動作音が静かであり、またレコーディングの現場でも用いられている実績がある。出力は、AC100Vでアース付きの3Pコンセント2口。主な仕様は、蓄電池容量2.5kWh、サイズ320W×514H×585Dmm、質量約52kg。なお、運転音は38dB以下となっている。
■「マイ柱上トランス」
一方の「“マイ柱” =マイ柱上トランス」は、(有)出水電器が究極のオーディオ用電源として提唱するもので、通常は近隣の10〜20世帯ほどで共用している商用電源の柱上トランスを個人宅専用とすることで、近隣世帯から電源を通して入ってくるノイズの回り込みを避けるとともに、変動の少なく安定した電源供給を実現させるもの。
アメリカ版「Wall Street Journal」誌の記事掲載(2016年8月)を端緒に、TVでも「タモリ倶楽部」「羽鳥慎一モーニングショー」「Nスタ」や、NHK、英国BBC、久米宏のラジオ番組などで相次いで取り上げられ、世界的にも “マイ電柱=A Personal Utility Pole” として知られるに至った。一般には “マイ電柱” として話題だが、電柱は脇役で、主役はマイ柱上トランスである。略称「マイ柱」(マイチューと読む)。個人ユーザー宅以外にプロの録音スタジオなどでも導入されており、50件以上の実績を積む。実現には電力会社への申請や施工を含めて複雑な手続きを経る必要があり、出水電器が請け負っている。
■本邦初対決! 「Power YIILE3」V.S.「マイ柱上トランス」音質比較
比較体験に同席した記者の個人的な感想を述べておきたい。
●バッテリー、Power YIILE3
リチウムイオンバッテリーのPower YIILE3は、歪み感の少なく、透明な音質傾向が印象的で、ニュアンス表現をきれいに出してくる。精度の高い音で、実在感がありながら、フワッとした空間表現も引き出し、長時間聴いていても疲れない、耳あたりの良い自然なサウンド傾向である。音域的には決して低音不足という訳ではなく、重低音の空気感も程よく出している。どこか突出した音調を感じさせることなく、丸みや艶やかさを備え、S/Nの良く、整ったバランスで心地よい音を聴かせてくれる。
●マイ柱上トランス
一方、鋭くエグミのあるようなゴリン、ガツーンとした挑戦的な重低音や、その量感などはマイ柱に分がある。さすがに、マイ柱は瞬発力や馬力に優れており、ズシンとした重低音の空気感や量感にはどこまでも制限がないという印象。オーディオ専用アースとオーディオ専用回路を整備している効果もあると思われるが、S/N感もたいへん優れている。奥行き感は、遙かステージの向こうまで見通すように澄み渡る明晰さがある。豊かな臨場感が印象的で、余韻の伸びも豊か。奏者やステージがリスナーの目前に迫るような感覚がある。
●まとめ
今回は、比較した電源が「究極の “マイ柱” 電源」のため、「バッテリー電源」としては厳しい対決になったと思うが、通常の家庭に供給されている商用電源とで比較すると、どんな機材を繋ぐかにもよるが、バッテリーに軍配が上がることが容易に予想される。バッテリー電源の優れた点を確認すると共に、その今後の可能性についても改めて認識できたと思う。
■究極の「マイ柱上トランス」と、導入が手軽な「Power YIILE3」
以前、雑居ビル内にある試聴室で「Power YIILE3」をオーディオ機器に繋いで聴き比べたこともあるが、それまで粗っぽく“面”で鳴っていた音が緻密に分解してほぐれてくる。一見すると勢いや力が減ったような感覚になるかもしれないが、埋もれていた細かなニュアンスや空間情報が豊かに出てきて、演奏空間に入り込んだよう。一度その音を体験するとそのまま導入したいと思うような効果があると感じた。
一方「マイ柱上トランス」の導入には、建物が一戸建ての必要があるほか、実現させるには多くの条件とハードルがあり、また実現できる環境があったとしても賃貸などでは困難だ。ただ、もしマイ柱上トランスが困難だとしても、オーディオ専用の幹線工事など、「オーディオ用電源工事」ができる場合はそれを採り入れるだけでも相当なレベルでクオリティアップを望むことができる。マンションなどでもオーディオ用電源工事はできて、しかも配線を目立たなくする隠蔽配線も可能である。
では、マイ柱上トランスはもとより、オーディオ電源工事をやりたくてもできない人や環境下ではどうするか。そんなユーザーへの解答が、ELIIY Powerのバッテリー電源「Power YIILE3」といえるだろう。大容量かつ瞬発力を要求するパワーアンプなどを駆動するとなると、1台に1基という贅沢な方法も検討することになると思われるが、プリアンプやソース系プレーヤーならば1基あれば十分に足りそうだ。今回の試聴でも、プリメインアンプとCDプレーヤーを駆動する上で容量の問題はなく、電源のバッテリー化を実際に体験すると、その大きなメリットに納得するに違いない。
オーディオのクオリティアップに有効となる「電源整備」の対策アイテムとしてはもちろん、本来の用途である、非常時の安心安全のための備えとしての電源確保にも「Power YIILE3」は役立つ強力なツールとなるだろう。
今回用意された電源は、「ELIIY Powerのリチウムイオンバッテリー、Power YIILE3」と、「通称 “マイ柱” =マイ柱上トランス」による電源。いずれも100Vで、楽曲ごとにリアルタイムで電源差し替えで聴き比べた。試聴に用いた機材は、出水電器が主宰する国産アンプブランド、アリオンのプリメインアンプALLION A10と、エソテリックのデジタルプレーヤー「K-03X」で、2機種の電源ケーブルを直接抜き差して比較した。スピーカーはディナウディオ「C4」である。
まず初めに、今回比較した「Power YIILE3」と「マイ柱上トランス」について解説しておこう。
■「ELIIY PowerのPower YIILE3」
「ELIIY Powerのリチウムイオンバッテリー、Power YIILE3」は、エリーパワー(株)による可搬型の室内用蓄電システムで、100Vで1.5kVA/1.4kWの出力を備える。安全、長寿命、温度特性に優れた国産の自社製リチウムイオンバッテリー・セルを搭載し、万が一、内部ショートしても、押し潰されても、過充電しても、発煙・発火しないという高い安全性を備えている(大型リチウムイオン電池セルとして世界で初めて「TUV-Sマーク」を取得)。また、10年間繰り返し充放電(約12,000回)を行っても、電池容量保持率80.1%以上の長寿命性を実現したという。
本機は家庭やオフィス内での、非常時の電源確保や太陽光発電の効率的活用のために開発されているが、オーディオ用としても運転時の動作音が静かであり、またレコーディングの現場でも用いられている実績がある。出力は、AC100Vでアース付きの3Pコンセント2口。主な仕様は、蓄電池容量2.5kWh、サイズ320W×514H×585Dmm、質量約52kg。なお、運転音は38dB以下となっている。
■「マイ柱上トランス」
一方の「“マイ柱” =マイ柱上トランス」は、(有)出水電器が究極のオーディオ用電源として提唱するもので、通常は近隣の10〜20世帯ほどで共用している商用電源の柱上トランスを個人宅専用とすることで、近隣世帯から電源を通して入ってくるノイズの回り込みを避けるとともに、変動の少なく安定した電源供給を実現させるもの。
アメリカ版「Wall Street Journal」誌の記事掲載(2016年8月)を端緒に、TVでも「タモリ倶楽部」「羽鳥慎一モーニングショー」「Nスタ」や、NHK、英国BBC、久米宏のラジオ番組などで相次いで取り上げられ、世界的にも “マイ電柱=A Personal Utility Pole” として知られるに至った。一般には “マイ電柱” として話題だが、電柱は脇役で、主役はマイ柱上トランスである。略称「マイ柱」(マイチューと読む)。個人ユーザー宅以外にプロの録音スタジオなどでも導入されており、50件以上の実績を積む。実現には電力会社への申請や施工を含めて複雑な手続きを経る必要があり、出水電器が請け負っている。
■本邦初対決! 「Power YIILE3」V.S.「マイ柱上トランス」音質比較
比較体験に同席した記者の個人的な感想を述べておきたい。
●バッテリー、Power YIILE3
リチウムイオンバッテリーのPower YIILE3は、歪み感の少なく、透明な音質傾向が印象的で、ニュアンス表現をきれいに出してくる。精度の高い音で、実在感がありながら、フワッとした空間表現も引き出し、長時間聴いていても疲れない、耳あたりの良い自然なサウンド傾向である。音域的には決して低音不足という訳ではなく、重低音の空気感も程よく出している。どこか突出した音調を感じさせることなく、丸みや艶やかさを備え、S/Nの良く、整ったバランスで心地よい音を聴かせてくれる。
●マイ柱上トランス
一方、鋭くエグミのあるようなゴリン、ガツーンとした挑戦的な重低音や、その量感などはマイ柱に分がある。さすがに、マイ柱は瞬発力や馬力に優れており、ズシンとした重低音の空気感や量感にはどこまでも制限がないという印象。オーディオ専用アースとオーディオ専用回路を整備している効果もあると思われるが、S/N感もたいへん優れている。奥行き感は、遙かステージの向こうまで見通すように澄み渡る明晰さがある。豊かな臨場感が印象的で、余韻の伸びも豊か。奏者やステージがリスナーの目前に迫るような感覚がある。
●まとめ
今回は、比較した電源が「究極の “マイ柱” 電源」のため、「バッテリー電源」としては厳しい対決になったと思うが、通常の家庭に供給されている商用電源とで比較すると、どんな機材を繋ぐかにもよるが、バッテリーに軍配が上がることが容易に予想される。バッテリー電源の優れた点を確認すると共に、その今後の可能性についても改めて認識できたと思う。
■究極の「マイ柱上トランス」と、導入が手軽な「Power YIILE3」
以前、雑居ビル内にある試聴室で「Power YIILE3」をオーディオ機器に繋いで聴き比べたこともあるが、それまで粗っぽく“面”で鳴っていた音が緻密に分解してほぐれてくる。一見すると勢いや力が減ったような感覚になるかもしれないが、埋もれていた細かなニュアンスや空間情報が豊かに出てきて、演奏空間に入り込んだよう。一度その音を体験するとそのまま導入したいと思うような効果があると感じた。
一方「マイ柱上トランス」の導入には、建物が一戸建ての必要があるほか、実現させるには多くの条件とハードルがあり、また実現できる環境があったとしても賃貸などでは困難だ。ただ、もしマイ柱上トランスが困難だとしても、オーディオ専用の幹線工事など、「オーディオ用電源工事」ができる場合はそれを採り入れるだけでも相当なレベルでクオリティアップを望むことができる。マンションなどでもオーディオ用電源工事はできて、しかも配線を目立たなくする隠蔽配線も可能である。
では、マイ柱上トランスはもとより、オーディオ電源工事をやりたくてもできない人や環境下ではどうするか。そんなユーザーへの解答が、ELIIY Powerのバッテリー電源「Power YIILE3」といえるだろう。大容量かつ瞬発力を要求するパワーアンプなどを駆動するとなると、1台に1基という贅沢な方法も検討することになると思われるが、プリアンプやソース系プレーヤーならば1基あれば十分に足りそうだ。今回の試聴でも、プリメインアンプとCDプレーヤーを駆動する上で容量の問題はなく、電源のバッテリー化を実際に体験すると、その大きなメリットに納得するに違いない。
オーディオのクオリティアップに有効となる「電源整備」の対策アイテムとしてはもちろん、本来の用途である、非常時の安心安全のための備えとしての電源確保にも「Power YIILE3」は役立つ強力なツールとなるだろう。
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