公開日 2020/01/31 19:35
世界でも貴重な音源が登場!
UNAMASレーベル、アンビソニックス×ハイレゾによる最新作「Piano Pieces」のリリースを発表
季刊・オーディオアクセサリー編集部
UNA MASレーベルは、イマーシブ3Dオーディオのフォーマットの一種となるアンビソニックスを採用した作品『Piano Pieces/Masaaki Enatsu』のリリースを発表した。
本作はまず2020年2月1日(土)に96kHz/24bitのステレオ版を先行してリリース。その後3月21日(土)にDSD 11.2MHzとMQA(それぞれステレオ版)を、また3月21日以降に7th Order 64chによるアンビソニックス版をリリースする予定となっている。
配信サイトはステレオ版がe-onkyo music、アンビソニックス版のみエムアイセブンジャパンが運営するオンラインストア「MUSIC EcoSystems」にて再生ソフトを付属した形で販売される。
『Piano Pieces』の音楽制作を務める江夏正晃氏は、音楽家/DJ/プロデューサー/エンジニアなどさまざまな顔を持つ人物であると同時に、marimoRecordsの代表として映画やテレビ、CMなどさまざまな音楽制作も手掛けている。今回はプラグインを使用して、スタインウェイやベーゼンドルファーの名機を再現したピアノ音源による生演奏を中心にモジュラーシンセ等を組み合わせ、前後左右の縦横無尽に音を配置できるアンビソニックスを用いて収録することで、全く新しい世界観を表現すべく制作された音源だという。
また、このアンビソニックスと96kHz/24bitのハイレゾというサウンド面での特徴以外にも、全22曲全てのスコアが付属するなど、リスナーが楽しむための仕掛けが多数用意されている。
本作のリリースに先駆けUNAMASレーベルは、東京・赤坂にあるmxLoungeにて先行試聴会を開催。「商業ベースとしてリリースされる音楽に特化したアンビソニックス作品としては、おそらく世界でも5本指以内のリリースとなる」という本作は、これまでイマーシブサウンドを含む数々の最先端レコーディングに挑んできたUNAMASレーベルらしい作品となっている。
イマーシブ3Dオーディオの一種であるアンビソニックスは、昨今ではVR動画などに用いられるなど注目度が急上昇したこともあり、この数年で登場したように思われがちだが、実は1970年代に発明されたテクノロジーである。今回の試聴会にあたって登壇したUNAMASレーベル代表の沢口 “Mick” 真生氏自身も、1991年に実際にアンビソニックスが登場したイギリスへ趣き、その技術にまつわる詳細なレポートを記したことがあるという。
現在に至るまで、特にこのアンビソニックについて熱心な研究をしているのは、オーストリアにあるグラーツ大学。2000年からアンビソニックスの研究に取り組んできたグラーツ大学では、現在に至るまでさまざまなプラグインが生み出されてきた。本作で採用された「IEM Plug-in Suite」もこのグラーツ大学に籍を置くダニエル・ルードリッヒ氏が開発したもので、現在のアンビソニックス制作におけるスタンダードとなっている。
そもそもイマーシブオーディオといえば、チャンネルベースを採用したAuro 3DやオブジェクトベースによるDolby Atmosなどがすでに存在するが、アンビソニックスはそれらとは異なるシーンベースのフォーマット。音そのものが位置情報を持っていることが大きな特徴となる。
このシーンベースによるアンビソニックスのメリットとして沢口氏は、「マイクを使ってその空間の音場のすべてを360度の球体の中に取り込むことが可能となるので、スピーカーレイアウトに依存することなく、どのようなレイアウトであってもユーザーの環境に合わせて柔軟に対応できます」と解説する。
アンビソニックスは、上下左右・前後に加えて全方位を4つのチャンネルで構成される1st Order(1次)を基本として、この4つのチャンネル間を補間するチャンネルを加えた9chで構成される2nd Order(2次)、さらにその間を補間するチャンネルを加えた16chで表現される3rd Order(3次)というように、次元数が増えるに従って高解像度となることを特徴としている。
今回の『Piano Pieces』の制作においては、前述のIEM Plug-in Suiteで扱える現状最上位となる7th order(64ch)を採用。ちなみに、アンビソニックスの音源はごくごく普通のインターリーブで構成されたWAVファイルで保存される。
今回、演奏からミックスダウンまでを行った江夏氏は、「あまり前例のない音源制作だけあって、非常にチャレンジャブルでした」とその工程を振り返る。ユニークなのは、空間を動き回る音を表現するため、IEM Plug-in Suiteと同じくダニエル・ルードリッヒ氏が開発した「MrHeadTracker」というデバイスを用いて、音を定位・もしくは移動させたい方向へ向かって中空に振るという直感的なパンニングを実践。また、アンビソニックスにはリミッターが存在しないため、ピーク管理も非常にシビアなものとなったという。
アンビソニックスという新たな音楽表現へとアプローチを掛けた本作は、1分から2分のトラックでも約2GBという容量に達し、全22曲入りという構成のアルバムはトータルで30GBにも及ぶなど、まだまだ発展途上にあると江夏氏も話すが、それゆえに『Piano Pieces』はエポックメイキング的な位置づけにもなり得るといっていいだろう。
実際の試聴デモでは、DAWに用いたReaperからRMEの「M-32 DA」へと送り、GENELECの「The Ones」シリーズを用いた7.1.4chの環境で再生。音そのものが位置情報を持つアンビソニックスでは、江夏氏が弾くピアノの旋律とシンセのサウンドがリスニングポジションを中心として自由に飛び回る、これまでのステレオやサラウンドとはひと味もふた味も違う音楽体験ができた。
また、今回は、DAWのReaperを用いてデモンストレーションされたが、3月のリリース時にはリスナーの環境に合わせたチャンネル数で再生できる再生用のソフトウェアも無料で用意される予定で開発が進められている。
現在、映画やゲームの世界においては急速に注目度を高めているアンビソニック。その音楽的な価値を示す作品としても、本作は注目すべき作品と言えそうだ。
本作はまず2020年2月1日(土)に96kHz/24bitのステレオ版を先行してリリース。その後3月21日(土)にDSD 11.2MHzとMQA(それぞれステレオ版)を、また3月21日以降に7th Order 64chによるアンビソニックス版をリリースする予定となっている。
配信サイトはステレオ版がe-onkyo music、アンビソニックス版のみエムアイセブンジャパンが運営するオンラインストア「MUSIC EcoSystems」にて再生ソフトを付属した形で販売される。
『Piano Pieces』の音楽制作を務める江夏正晃氏は、音楽家/DJ/プロデューサー/エンジニアなどさまざまな顔を持つ人物であると同時に、marimoRecordsの代表として映画やテレビ、CMなどさまざまな音楽制作も手掛けている。今回はプラグインを使用して、スタインウェイやベーゼンドルファーの名機を再現したピアノ音源による生演奏を中心にモジュラーシンセ等を組み合わせ、前後左右の縦横無尽に音を配置できるアンビソニックスを用いて収録することで、全く新しい世界観を表現すべく制作された音源だという。
また、このアンビソニックスと96kHz/24bitのハイレゾというサウンド面での特徴以外にも、全22曲全てのスコアが付属するなど、リスナーが楽しむための仕掛けが多数用意されている。
本作のリリースに先駆けUNAMASレーベルは、東京・赤坂にあるmxLoungeにて先行試聴会を開催。「商業ベースとしてリリースされる音楽に特化したアンビソニックス作品としては、おそらく世界でも5本指以内のリリースとなる」という本作は、これまでイマーシブサウンドを含む数々の最先端レコーディングに挑んできたUNAMASレーベルらしい作品となっている。
イマーシブ3Dオーディオの一種であるアンビソニックスは、昨今ではVR動画などに用いられるなど注目度が急上昇したこともあり、この数年で登場したように思われがちだが、実は1970年代に発明されたテクノロジーである。今回の試聴会にあたって登壇したUNAMASレーベル代表の沢口 “Mick” 真生氏自身も、1991年に実際にアンビソニックスが登場したイギリスへ趣き、その技術にまつわる詳細なレポートを記したことがあるという。
現在に至るまで、特にこのアンビソニックについて熱心な研究をしているのは、オーストリアにあるグラーツ大学。2000年からアンビソニックスの研究に取り組んできたグラーツ大学では、現在に至るまでさまざまなプラグインが生み出されてきた。本作で採用された「IEM Plug-in Suite」もこのグラーツ大学に籍を置くダニエル・ルードリッヒ氏が開発したもので、現在のアンビソニックス制作におけるスタンダードとなっている。
そもそもイマーシブオーディオといえば、チャンネルベースを採用したAuro 3DやオブジェクトベースによるDolby Atmosなどがすでに存在するが、アンビソニックスはそれらとは異なるシーンベースのフォーマット。音そのものが位置情報を持っていることが大きな特徴となる。
このシーンベースによるアンビソニックスのメリットとして沢口氏は、「マイクを使ってその空間の音場のすべてを360度の球体の中に取り込むことが可能となるので、スピーカーレイアウトに依存することなく、どのようなレイアウトであってもユーザーの環境に合わせて柔軟に対応できます」と解説する。
アンビソニックスは、上下左右・前後に加えて全方位を4つのチャンネルで構成される1st Order(1次)を基本として、この4つのチャンネル間を補間するチャンネルを加えた9chで構成される2nd Order(2次)、さらにその間を補間するチャンネルを加えた16chで表現される3rd Order(3次)というように、次元数が増えるに従って高解像度となることを特徴としている。
今回の『Piano Pieces』の制作においては、前述のIEM Plug-in Suiteで扱える現状最上位となる7th order(64ch)を採用。ちなみに、アンビソニックスの音源はごくごく普通のインターリーブで構成されたWAVファイルで保存される。
今回、演奏からミックスダウンまでを行った江夏氏は、「あまり前例のない音源制作だけあって、非常にチャレンジャブルでした」とその工程を振り返る。ユニークなのは、空間を動き回る音を表現するため、IEM Plug-in Suiteと同じくダニエル・ルードリッヒ氏が開発した「MrHeadTracker」というデバイスを用いて、音を定位・もしくは移動させたい方向へ向かって中空に振るという直感的なパンニングを実践。また、アンビソニックスにはリミッターが存在しないため、ピーク管理も非常にシビアなものとなったという。
アンビソニックスという新たな音楽表現へとアプローチを掛けた本作は、1分から2分のトラックでも約2GBという容量に達し、全22曲入りという構成のアルバムはトータルで30GBにも及ぶなど、まだまだ発展途上にあると江夏氏も話すが、それゆえに『Piano Pieces』はエポックメイキング的な位置づけにもなり得るといっていいだろう。
実際の試聴デモでは、DAWに用いたReaperからRMEの「M-32 DA」へと送り、GENELECの「The Ones」シリーズを用いた7.1.4chの環境で再生。音そのものが位置情報を持つアンビソニックスでは、江夏氏が弾くピアノの旋律とシンセのサウンドがリスニングポジションを中心として自由に飛び回る、これまでのステレオやサラウンドとはひと味もふた味も違う音楽体験ができた。
また、今回は、DAWのReaperを用いてデモンストレーションされたが、3月のリリース時にはリスナーの環境に合わせたチャンネル数で再生できる再生用のソフトウェアも無料で用意される予定で開発が進められている。
現在、映画やゲームの世界においては急速に注目度を高めているアンビソニック。その音楽的な価値を示す作品としても、本作は注目すべき作品と言えそうだ。