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公開日 2021/07/14 08:38
コンサート当日の模様とCD先行試聴をレポート

ヘッドホンで「生演奏」を聴く。藤田恵美『Headphone Concert 2021』のCDが発売開始

季刊オーディオアクセサリー編集部・野間
“オーディオクイーン”として人気のシンガー・藤田恵美が、2021年2月18、19日に神奈川県横浜市のサンハートホールにて開催した“ヘッドフォンコンサート”。この収録音源がいよいよCDアルバム『Headphone Concert 2021』として7月14日にリリースされた。ここでは、ヘッドフォンコンサートの現場を体験し、その5カ月後、完成したCDを聴いたレポートをお届けしたい。

シンガー藤田恵美

同ヘッドフォンコンサートは、オーディエンスが(参加は無料/事前登録していた方々)、持参したイヤホン/ヘッドホンで、収録している音をリアルタイムで聴けるという公開録音であった。

当日会場へ行くと、椅子の上にはM-AUDIOのポータブル・へッドホン・アンプ「Bass Traveler」が用意されており、ラフミックスされたステレオ音声が客席まで届くよう配線がされていた。このヘッドホン・アンプに各自持参したヘッドホンを接続すれば、演奏・収録している音をリアルタイムで聴くことができるというものだ。

ヘッドホンを装着すれば、通常のコンサートと同じ感覚で、曲の合間に藤田の楽しいMCも聴けるし、拍手もしてもOK。ただし、演奏中、万一、オーディオエンス自身が騒音を出してしまったら、マイクに拾われてしまうかもしれないという独特の緊張感が漲っていた。

コンサートの様子

普通のコンサートに見えるが、演奏が始まるとオーディエンス一人一人がヘッドフォンを装着して聴くというリスニング形式


M-AUDIOのへッドフォンアンプ「Bass Traveler」
選曲は、アルバム『こころの時間』から引き続きテーマとされている1970年から80年代のいわば“隠れ名曲”の和物カバーが中心。そこに世界のフォークソングや英語詞のスタンダードナンバー、またル・クプル時代のヒット曲「ひだまりの詩」も披露。


レコーディング・エンジニア阿部哲也

上手の舞台袖に設置された録音機材。上からADコンバーターRME FIREFACE 800、MOTU 896 mk3、同896HD、同HD192、ヘッドアンプAMEK System 9098 RCMA、NEVE 1272 MODULE、FOCUSRITE ISA828他
レコーディング・エンジニアは、藤田恵美の所属するHD Impressionレーベルを主宰し、このヘッドフォンコンサートを企画したプロデューサーでもある阿部哲也の手による。ちなみに阿部は藤田のヒットアルバム『カモミール・ベスト・オーディオ』の名エンジニアでもある。

阿部哲也氏が考案したアンビエンスマイク。B&K 4003をメインLRとしてステージに向け、NEUMANN 184を6本を上下や客席側に。

スピーカー等の音響設備は使用されないため、コンサートの最中、そっとヘッドフォンを外すと、PAを通さない生音が、ステージから小さく聴こえてくる。この感覚が不思議だった。

現場にいれば聴ける「生音」と思われていたものも、マイクで音を収録し、音響設備を使ってエンジニアがラフミックスした音を聴いているという事実を再確認させられた。マイクを通さなければ、当然ながら、ドラムスの音が大きく、藤田恵美の声はささやくように聴こえるのみなのである。

コンサートとしてのクオリティは高く、“藤田恵美のフォーキーな世界観”が築き上げられていた。藤田恵美の声は魅力的で、さまざまなアコースティック楽器の絡みも素晴らしい。特に「レット・イット・ビー」の男性コーラスとのハモリは(アコースティック・ギターの西海孝が男声コーラスも担当)、その一瞬だけでも奇跡的な音楽的瞬間に立ち会えた気がした。


さて、7月14日発売のCDが届いたので、オーディオシステム(アキュフェーズDP-750、C-3900、M-6200×2台、B&W 803D3)で聴いてみる。再生してみてすぐに、当日聴いた感覚が蘇ってきた。


CDアルバム『Headphone Concert 2021』7月14日発売
その音を聴いて、当日聴いていた音自体が、よくコンサートで耳にするPAシステム独特の飛んでくるような音ではなく、口周りの細かな動きもきれいに見えるような、繊細なピュアオーディオサウンドであったことをいまさらながらに気づかされた。キラキラとした空気感もたっぷりと存在している。

MCや拍手は編集で全てカットされていたこともあるだろうが、仕上がりのサウンドが、ライブ収録とは思えない澄んだサウンドとなっている。

朝倉真司によるパーカッションが創造的でひとつの聴きどころ

実質、一発録りであるため、ベテランミュージシャンの技量の確かさにも改めて驚かされる。

特に、コンサート当日にハッとさせられた「レット・イット・ビー」の、藤田と西海とのハモリが入った瞬間は鳥肌が立った。ヴァイオリンやアコーディオンなどの楽器も多彩。パーカッションは非常に面白い効果音的なサウンドを創造しており、アレンジの質の高さも再確認させられた。

レコーディング当日は、ダイレクト2ch/マルチトラックの両方で192kHz/24bitで音声レコーディングされているが、一方で、動画も収録していた。その動画は、フェイスの動画配信サービス「Thumva」(サムバ)が、コルグによる4Kハイレゾ動画配信システム「Live Extreme」を採用した、こけら落とし公演として採用された。

その動画配信の音声部分は、今回のアルバム『Headphone Concert 2021』のスタジオマスターの、MCや拍手部分がカットされていないバージョンが採用されている。そのクオリティからも、収録音声の質の高さがわかる。

『Headphone Concert 2021』CDアルバムはphilewebshopでも販売中。ハイレゾのダウンロード配信は先だって、e-onkyo musicにてスタートしている。ぜひ、併せてお聴きいただきたい。

■『Headphone Concert 2021』収録曲
1 パレード
2 ケンとメリー 〜愛と風のように〜
3 Let it Be
4 愛の景色
5 セクシィ
6 縁は異なもの
7 卒業写真
8 From a Distance
9 The Water Is Wide
10 Tokyo
11 酒と泪と男と女
12 What a Wonderful World
13 ひだまりの詩

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