トップページへ戻る

ニュース

HOME > ニュース > AV&ホームシアターニュース

公開日 2017/01/19 09:00
新開発の調光セルで高コントラスト化

まるで有機ELのような黒表現。コントラスト100万対1のパナソニック新IPS液晶を体験

編集部:小野佳希
パナソニック液晶ディスプレイが昨年11月に開発を発表した、従来比600倍となるコントラスト100万対1以上を実現する新IPS液晶パネル(関連ニュース)。同パネルを実際に体験する機会を得たので詳細をレポートしたい。結論から言ってしまうと、液晶でありながら、まるで有機ELであるかのような引き締まった黒表現を体験することができた。

31型での従来品との比較デモと、4Kと8Kの55型2タイプを体験することができた

同パネルは、パナソニックのIPS液晶技術をベースに、画素ごとにバックライト光量を制御できる新開発の調光セルを内蔵。調光セルには、表示セルと光透過特性が異なる液晶材料を使用し、それぞれを独立制御している。これにより光漏れを大幅に抑制し、きめ細かな階調表現を実現。コントラスト比を100万対1とした。

表示セルとバックライトとの間へ新たに開発した調光セルを追加

表示セルと調光セルの透過率を高めていること、かつ高輝度バックライトを採用していることにより、最大輝度1,000cd/m2、最小輝度0.001cd/m2を実現している。

なお本パネルはB to B向けのもので、放送局などプロ向けHDR対応モニターや、医療用・車載用モニターなどでの展開を見据えている。現在すでにサンプル出荷を開始しており、早ければ来年の初め頃、本パネルを採用した業務用モニターなどの製品が登場する可能性があるという。

本パネルのポイントは、上述した「画素ごとにバックライト光量を制御できる新開発の調光セルを内蔵している」点。現在の液晶ディスプレイでは、LEDバックライトの点灯を細かくエリア制御することで高画質化を図ることが多いが、今回のパネルではバックライトのオンオフではなく、パネル側で、しかも1画素ごとという非常に細かい単位で光を調整できる。乱暴な言い方をしてしまうと、1画素ごとにバックライトのローカルディミングをしている効果が得られるイメージだ。

また、バックライトのエリア駆動で光を制御しているわけではないため、ハロー現象が出ないという点もメリット。加えてバックライトを緻密に制御する必要がないため、それほど高性能な映像エンジンでなくとも製品化が可能だ。

デモ機として用意されていたのは、31型と55型のもの。31型では4K/HDRのソースを用いて、本パネルを使用していない従来品との比較視聴が体験できたのだが、その違いは一目瞭然。今回の新パネルでの映像を見てしまうと、従来品は画面全体が白茶けて感じられてしまう。

従来品(右)との比較(映像:QT-4000series 株式会社キュー・テック)

例えば打ち上げ花火の映像では、夜空の黒さ表現が段違いに引き締まり、花火のきらびやかさがより一層際立つ。冒頭でも述べたが、まるで有機ELで見ているかのような黒の締まり方と感じた。また、森林の映像では木々の緑がグッと引き締まり、木漏れ日に照らされた部分の明るさとの対比が非常に印象的になる。

明るさをしっかりと出しつつ暗部もしっかりと引き締まっている(映像:QT-4000series 株式会社キュー・テック)

55型のデモ機は4Kと8Kの2種類を用意。8Kデモ用のものはコントラスト比が100万対1ではなく1,500対1程度とのことだったが、色域はBT.2020を98%カバーしているという(なお一般的なOLEDのBT.2020カバー率は80%ほど)。

55型モデルの8K対応機

なお8Kモニターでは、レーザーバックライトを採用して広色域化している。このように既存の様々な技術を組み合わせて活用できるのもメリットのひとつだ。バックライトなど本パネル以外の要素のどれかが進化すれば、それを活用して最終的な製品の画質や完成度が高められることになるのだ。

製品開発に携わったパナソニック液晶ディスプレイ(株)経営企画部主幹の木子茂雄氏は、「放送業界の方々とマスモニ用のパネルの話をしていて、『液晶だとやっぱり限界があるよね』といったようなことを言われることもありました」とコメント。

開発に携わったパナソニック液晶ディスプレイの木子氏(右)とマーケティングセンター商品企画部 主幹技師の小畑央氏(左)

「一方で自発光デバイスである有機ELは黒表現に有利ですが、明るさを出そうとすると不利です」とし、「また一般のご家庭にはかなり大型のテレビも入るようになっている状況なのに、有機ELのマスモニは大きくても30型ほどです」と、業務用マスターモニターにまつわる背景を語る。

今回の新パネルは、製造に従来から使用されている装置を用いることが可能。4K/HDR時代に求められる高画質を実現させながら大型化しやすく、小型から大型までサイズ展開を揃えやすい点もメリットだという。

また自発光の有機ELに比べ、劣化に対する長期的な信頼性が高い点もメリットだと説明。こうした点からも、高い精度を求められる医療用途を始めとした業務用モニターに向いているとした。

関連リンク

新着クローズアップ

クローズアップ

アクセスランキング RANKING
1 レコードプレーヤーは “2強” テクニクス「SL-1500C」&デノン「DP-3000NE」がつばぜり合い<ハイファイオーディオ売れ筋ランキング10月>
2 評論家も驚く実力派サウンドバーがこの価格? JBL「BAR 1000/800」がAmazonブラックフライデーで激安!
3 【プロレビュー有】老舗デノンの技術が結集! “音が良いサウンドバー”代表選手「DHT-S218」の魅力に迫る!
4 Amazonブラックフライデー、Shanlingの多機能プレーヤー・iBassoのUSB-DAC/アンプも狙い目
5 Hey! Say! JUMP、全曲サブスク解禁。最新アルバム「H+」含む全349曲が聴き放題に
6 独自技術を結集したPolk Audioの最高峰「R700」に迫る徹底レビュー
7 Bang & Olufsen、ANCを強化した完全ワイヤレスイヤホン「Beoplay Eleven」
8 【レビューあり】「ビクター史上、最高傑作」から高コスパ機まで。どれを買うべき?ビクター製イヤホン2024年モデル総まとめ
9 「Sonos Ace」レビュー。美しいデザインに高いノイキャン性能、そして音質…完成度の高さにVGP審査員が唸った
10 「今、売れているオーディオアクセサリー」<売れ筋ランキング10月 番外編>
11/28 10:35 更新

WEB