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公開日 2017/06/19 14:00
DAZNならではの工夫とは?
16台のカメラでJリーグ中継が進化。DAZN「サンデー・Jプライム」制作の裏側
編集部:小野佳希
DAZN(ダ・ゾーン)は、通常よりもカメラ台数を増やしてJリーグ中継を行う「サンデー・Jプライム」の舞台裏をメディアに公開。DAZNコンテンツ制作本部長の水野重理氏と、Jリーグの映像事業・制作の全体統括をするJリーグデジタルの武笠一樹氏が制作秘話を語った。
「サンデー・Jプライム」は、通常はカメラ9台で試合中継を行うところをカメラ16台に増やすというもの。「家族みんなで、ゆっくりと大画面で、魅力的な映像でのJリーグ中継を楽しんでもらおうという狙い」(水野氏)のため日曜夕方の試合を対象にしており、今回は6月18日に埼玉スタジアムで行われた浦和レッズ対ジュビロ磐田の試合の制作現場が披露された。
通常の中継でのカメラ配置は、メインスタンドに4台、両ゴール裏に1台ずつ、ピッチサイド中央に1台、ピッチレベルで移動するステディカム1台、バックスタンド側のコーナーフラッグ付近のスーパースローカメラ1台というもの。メインスタンドはメインの映像を撮るようスタンド中央2台と、ペナルティエリアのラインからの延長線上に1台という構成で、オフサイドなどをきちんと横から映像で収めて確認できるようにしている。
これがサンデー・Jプライムでは、ゴールラインの延長線上に1台ずつと、ゴールネットに小型カメラ1台ずつ、ピッチサイドカメラ2台を追加。スーパースローカメラも1台追加される。ゴールラインを割ったかどうかの微妙な場合の映像など、より多くの角度から様々な映像を楽しめるようにしている。
カメラを増やすメリットについて水野氏は「特にリプレイ映像の質が違ってくる」とコメント。「これまで日本ではメインカメラとは別に1台ないし2台のカメラでの映像からリプレイ映像を選ぶことが一般的だった。しかしDAZNの中継では、全てのカメラの映像から選んでリプレイ映像をつくっている」と説明した。
さらに、サンデー・Jプライムでは試合直前のロッカールームの様子を見られる「ニアライブ」コーナーも展開。選手たちがロッカーを出る直前に円陣を組んでいるシーンなどを確認できる。
なお、“ニア”ライブと銘打っているのは、実は完全な生中継ではないから。「やはり試合直前のロッカールームは非常にセンシティブな部分なので、撮影後にチーム側の確認などを経て配信している」(Jリーグデジタル 武笠氏)とのことで、「外部の人間を入れたくないというチームもあるので、クラブスタッフの方にカメラを渡して撮影してもらうなどのご協力をいただく場合もある」という。
スーパースローカメラは通常の3倍の速度(フレームレート)で映像を撮影できるというもの。3倍速で撮影した映像を通常速度で再生することでスーパースロー映像となる。
このカメラをピッチの横ではなく、コーナーフラッグ付近という斜めの位置に設置しているのは、「ヨーロッパではスタンダードになっており、パフォームとしてそれをJリーグにも導入してもらった」(水野氏)とのこと。水野氏は「このカメラによって、ゴールの際の細かな足技や選手の喜びの表情を捉えられる」と言葉を続けた。
なお、サンデー・Jプライムに限らず、こうしたカメラ位置は各試合共通。Jリーグ全体で映像に統一感を出すために基準を決めている。「例えばこの埼玉スタジアムでは、電光掲示板上にゴール裏カメラを設置しているが、柏(日立柏サッカー場)はゴール裏のセンター位置に掲示板などの設置場所がないのでクレーン車を入れている」(武笠氏)と、スタジアムの違いによる苦労話も聞くことができた。
また、このゴール裏のカメラ(ちなみに内部では「タテカメラ」と呼んでいるとのこと)は必ずピッチのセンターに位置するように設置。メインカメラもセンターラインの延長線上に正確に設置するなど、「ベストな位置からの映像を見てもらいたい」と配慮しているのだという。
こうして魅力的な映像を撮影することでサッカーの魅力を伝えやすくするため、カメラ設置のための設備を整えたりすることを各クラブや(スタジアムの持ち主であることが多い)行政にも要望しているとのこと。
Jリーグではクラブライセンス制度において、例えばJ1であれば15,000人以上の収容可能人数を持つことなど、スタジアムにも条件が定められている。こうした撮影カメラ設置のための設備についても「すぐにどうこうという話ではないが、将来的にはクラブライセンス制度の条件になる可能性はある」(武笠氏)という。また、こうしたスタジアム設備についてはスタジアム新設の場合だけでなく、改修を行うタイミングなどでも要望を出しているとのことだった。
また映像制作においては、選手がバスから下りてきての会場入りや、試合前の監督インタビューを必ず撮影するなどのフォーマットを統一。バスから下りてくる場面も抑えるなどのこうしたフォーマットは“ワールドフィード”と呼ばれ、ドイツ・ブンデスリーガなど世界各国のリーグで採用されている。「実はDAZNでの中継時には使わない映像の場合もあるが、ある程度基準に沿った映像素材があることで海外に売りやすくなるといったメリットも考えられる」という。
加えて、監督インタビューも画角を揃えたり、試合撮影の機材もなるべく各スタジアムで同じものを使うようにするなど、試合ごとに映像クオリティに差が出ないよう配慮。「反則でイエローカードが出た際には、異なるアングルのリプレイ映像を2度流した後に対象選手のアップにしてテロップとともに説明する、など細かい部分の演出も統一ルールを作っている」(武笠氏)という。
DAZNの水野氏は「チケットを買ってスタジアムに来るだけでは見られない部分を見せたい」と、一連の演出の狙いを説明。「今年はまず最初ということで、シーズン前半戦ではなるべく様々なスタジアムでの試合をサンデー・Jプライムの対象にしていた。後半戦は白熱する順位争いだったり、あるいはJ2の昇格争いクライマックスだったりを対象に、いろんなチャレンジをしていきたい」と語る。
そしてJリーグデジタルの武笠氏も「ビデオ判定用などに撮っている映像ではないが、こうした映像の取り組みは選手、関係者、審判すべてのレベルアップにもつながると思っている。Jリーグとしてもこれからも新しい技術を採り入れてチャレンジしていきたい」と述べた。
「サンデー・Jプライム」は、通常はカメラ9台で試合中継を行うところをカメラ16台に増やすというもの。「家族みんなで、ゆっくりと大画面で、魅力的な映像でのJリーグ中継を楽しんでもらおうという狙い」(水野氏)のため日曜夕方の試合を対象にしており、今回は6月18日に埼玉スタジアムで行われた浦和レッズ対ジュビロ磐田の試合の制作現場が披露された。
通常の中継でのカメラ配置は、メインスタンドに4台、両ゴール裏に1台ずつ、ピッチサイド中央に1台、ピッチレベルで移動するステディカム1台、バックスタンド側のコーナーフラッグ付近のスーパースローカメラ1台というもの。メインスタンドはメインの映像を撮るようスタンド中央2台と、ペナルティエリアのラインからの延長線上に1台という構成で、オフサイドなどをきちんと横から映像で収めて確認できるようにしている。
これがサンデー・Jプライムでは、ゴールラインの延長線上に1台ずつと、ゴールネットに小型カメラ1台ずつ、ピッチサイドカメラ2台を追加。スーパースローカメラも1台追加される。ゴールラインを割ったかどうかの微妙な場合の映像など、より多くの角度から様々な映像を楽しめるようにしている。
カメラを増やすメリットについて水野氏は「特にリプレイ映像の質が違ってくる」とコメント。「これまで日本ではメインカメラとは別に1台ないし2台のカメラでの映像からリプレイ映像を選ぶことが一般的だった。しかしDAZNの中継では、全てのカメラの映像から選んでリプレイ映像をつくっている」と説明した。
さらに、サンデー・Jプライムでは試合直前のロッカールームの様子を見られる「ニアライブ」コーナーも展開。選手たちがロッカーを出る直前に円陣を組んでいるシーンなどを確認できる。
なお、“ニア”ライブと銘打っているのは、実は完全な生中継ではないから。「やはり試合直前のロッカールームは非常にセンシティブな部分なので、撮影後にチーム側の確認などを経て配信している」(Jリーグデジタル 武笠氏)とのことで、「外部の人間を入れたくないというチームもあるので、クラブスタッフの方にカメラを渡して撮影してもらうなどのご協力をいただく場合もある」という。
スーパースローカメラは通常の3倍の速度(フレームレート)で映像を撮影できるというもの。3倍速で撮影した映像を通常速度で再生することでスーパースロー映像となる。
このカメラをピッチの横ではなく、コーナーフラッグ付近という斜めの位置に設置しているのは、「ヨーロッパではスタンダードになっており、パフォームとしてそれをJリーグにも導入してもらった」(水野氏)とのこと。水野氏は「このカメラによって、ゴールの際の細かな足技や選手の喜びの表情を捉えられる」と言葉を続けた。
なお、サンデー・Jプライムに限らず、こうしたカメラ位置は各試合共通。Jリーグ全体で映像に統一感を出すために基準を決めている。「例えばこの埼玉スタジアムでは、電光掲示板上にゴール裏カメラを設置しているが、柏(日立柏サッカー場)はゴール裏のセンター位置に掲示板などの設置場所がないのでクレーン車を入れている」(武笠氏)と、スタジアムの違いによる苦労話も聞くことができた。
また、このゴール裏のカメラ(ちなみに内部では「タテカメラ」と呼んでいるとのこと)は必ずピッチのセンターに位置するように設置。メインカメラもセンターラインの延長線上に正確に設置するなど、「ベストな位置からの映像を見てもらいたい」と配慮しているのだという。
こうして魅力的な映像を撮影することでサッカーの魅力を伝えやすくするため、カメラ設置のための設備を整えたりすることを各クラブや(スタジアムの持ち主であることが多い)行政にも要望しているとのこと。
Jリーグではクラブライセンス制度において、例えばJ1であれば15,000人以上の収容可能人数を持つことなど、スタジアムにも条件が定められている。こうした撮影カメラ設置のための設備についても「すぐにどうこうという話ではないが、将来的にはクラブライセンス制度の条件になる可能性はある」(武笠氏)という。また、こうしたスタジアム設備についてはスタジアム新設の場合だけでなく、改修を行うタイミングなどでも要望を出しているとのことだった。
また映像制作においては、選手がバスから下りてきての会場入りや、試合前の監督インタビューを必ず撮影するなどのフォーマットを統一。バスから下りてくる場面も抑えるなどのこうしたフォーマットは“ワールドフィード”と呼ばれ、ドイツ・ブンデスリーガなど世界各国のリーグで採用されている。「実はDAZNでの中継時には使わない映像の場合もあるが、ある程度基準に沿った映像素材があることで海外に売りやすくなるといったメリットも考えられる」という。
加えて、監督インタビューも画角を揃えたり、試合撮影の機材もなるべく各スタジアムで同じものを使うようにするなど、試合ごとに映像クオリティに差が出ないよう配慮。「反則でイエローカードが出た際には、異なるアングルのリプレイ映像を2度流した後に対象選手のアップにしてテロップとともに説明する、など細かい部分の演出も統一ルールを作っている」(武笠氏)という。
DAZNの水野氏は「チケットを買ってスタジアムに来るだけでは見られない部分を見せたい」と、一連の演出の狙いを説明。「今年はまず最初ということで、シーズン前半戦ではなるべく様々なスタジアムでの試合をサンデー・Jプライムの対象にしていた。後半戦は白熱する順位争いだったり、あるいはJ2の昇格争いクライマックスだったりを対象に、いろんなチャレンジをしていきたい」と語る。
そしてJリーグデジタルの武笠氏も「ビデオ判定用などに撮っている映像ではないが、こうした映像の取り組みは選手、関係者、審判すべてのレベルアップにもつながると思っている。Jリーグとしてもこれからも新しい技術を採り入れてチャレンジしていきたい」と述べた。