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公開日 2019/02/13 15:13
作業の効率化と精度向上を図る
8Kで深海を撮るカメラやAIによる翻訳・要約、番組作りの最新技術が並ぶ「NHK番組技術展」
編集部:押野 由宇
AIや8Kといった先端技術を利用したNHKによる放送技術の展示イベント「第48回 NHK番組技術展」が開催。会場ではNHKとしての全体的な取り組みだけではなく、地域の放送局で開発された技術も紹介されており、効率化の向上に繋がる発想が多く見られた。
■4K・8Kの高精細映像で臨場感のある放送を
新4K8K衛星放送が開始され、コンテンツの制作も4K・8K画質で行われることになる。その高精細な映像を活かして、これまでにないクオリティでの撮影に成功したのが「深海8Kプロジェクト」だ。
JAMS-TEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)と共同で開発した深海用の8Kカメラシステムを用いて、無人探査機で深海の撮影を世界で初めて成功させたプロジェクト(関連記事)。開発された深海カメラ/マイク、LED照明用の耐圧容器は水深3,000mに耐えられるというもので、小笠原沖の海底で撮影を実施。
LED照明は深海用に調整されたもので、専用のカメラ用カラーチャートも製作。実際の深海の風景と変わりがないよう、色再現性の検証も行っている。8K撮影において技術が求められるピント調整は船からカメラマンが遠隔操作で行ったという。
ほか、上空約400kmにある国際宇宙ステーションから、宇宙飛行士が小型の8Kカメラで撮影した地球の映像も流されているなど、その場でなければ見ることがかなわない風景を、できる限りそのまま視聴者に届けるという試みが行われていた。
またNHKでは「HDRでの番組制作についても力を入れている」とし、実際に大河ドラマ『いだてん』など4K/HDRでの放送が行われているコンテンツもある。一方で、ハイビジョン放送ではSDR化が必要となり、その世界観を損なわない一括変換による作業効率化を模索。独自のパラメーターを定め、色域を含めた変換を3D-LUTとして出力、LUTBOXで変換結果を確認するフローにより、視聴環境の統一を図っている。
パラメーターはシリーズを通して統一されるが、例えば室内が多い、外のシーンが多いといった傾向に合わせて、作品ごとで異なる設定となる。担当者は「1話ごとに調整すれば最もクオリティの高いものが制作できるが、長編作品でそれを行うのは多くの労力が必要となるため、可能な限りHDR映像の見た目と変わらないようなSDR映像を生成しながら、効率化を実現した」技術と説明していた。
■AIを番組制作に活用、よりスピーディに情報を届ける
番組制作において、AI活用に注目が集まっている。国際放送局では、字幕や吹き替えによる多言語化に対応しているが、英語から多言語への翻訳は人手と時間がかかることが課題となっていた。そこで、AI音声認識を使用した字幕作成、そして英語字幕をもとにしたAI翻訳により多言語字幕を制作する「スピード翻訳システム」が開発された。
これにより、従来3週間かかっていた作業が4日に短縮できたという。その翻訳精度については、プロの翻訳家から見ても「番組理解の助けになる」というレベルに達しているとのこと。ただし誤訳の可能性や、あくまで機械的な翻訳となっており意訳というものではないということで、そうした精度を向上させて「東京オリンピックなど国際的な放送を視野に取り組む」とした。
また青森放送局では、ニュースの動画をAIで30秒程度に自動要約することで、SNSなどで情報を発信し、テレビ視聴に導くことを目的としたシステムを開発。ニュースではスタジオでの前振り、本編の映像といった構成が多いが、スタジオと本編を切り離し、スタジオでの音声をもとにキーワードを抽出、それに沿ったシーンを本編から抜き出して、音声と映像を再配列するという仕組みだ。
人力で行うと、要約に素材となる映像の数倍の時間が必要となるが、AIを用いる本システムでは10分程度のリポートを4分程度で出力できるという。ただし、まだ開発段階の現状では、抜き出す箇所や時間の精度に課題があり、今後は精度を向上させ青森局の公式Twitterで運用することなどを考えているとのこと。
また松江放送局では、青や緑の背景のクロマキーセットを用いることなく、CG合成を行う「Keydream」システムを開発。カメラに距離センサーを取り付けて任意の距離にある被写体を背景と分離させ、さらに骨格センサーにより動きに追従したCG合成も可能としたというもので、スタジオにクロマキーセットを設置する必要がなく、また屋外での運用も行えるとしている。
そしてAIを用いた顔認識の活用事例として、人物の顔を自動追尾してボカし加工を実施するシステムや、番組出演者を抽出して権利情報のデータベース構築に役立てるといった事例が紹介された。
そのほか、4K画質で360度撮影する全方位カメラを使用したサーバーシステム、立体音響再現技術を用いて制作されたオーディオドラマのデモなどが展示され、多くの一般来場者が興味深そうに説明を受けていた。
■4K・8Kの高精細映像で臨場感のある放送を
新4K8K衛星放送が開始され、コンテンツの制作も4K・8K画質で行われることになる。その高精細な映像を活かして、これまでにないクオリティでの撮影に成功したのが「深海8Kプロジェクト」だ。
JAMS-TEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)と共同で開発した深海用の8Kカメラシステムを用いて、無人探査機で深海の撮影を世界で初めて成功させたプロジェクト(関連記事)。開発された深海カメラ/マイク、LED照明用の耐圧容器は水深3,000mに耐えられるというもので、小笠原沖の海底で撮影を実施。
LED照明は深海用に調整されたもので、専用のカメラ用カラーチャートも製作。実際の深海の風景と変わりがないよう、色再現性の検証も行っている。8K撮影において技術が求められるピント調整は船からカメラマンが遠隔操作で行ったという。
ほか、上空約400kmにある国際宇宙ステーションから、宇宙飛行士が小型の8Kカメラで撮影した地球の映像も流されているなど、その場でなければ見ることがかなわない風景を、できる限りそのまま視聴者に届けるという試みが行われていた。
またNHKでは「HDRでの番組制作についても力を入れている」とし、実際に大河ドラマ『いだてん』など4K/HDRでの放送が行われているコンテンツもある。一方で、ハイビジョン放送ではSDR化が必要となり、その世界観を損なわない一括変換による作業効率化を模索。独自のパラメーターを定め、色域を含めた変換を3D-LUTとして出力、LUTBOXで変換結果を確認するフローにより、視聴環境の統一を図っている。
パラメーターはシリーズを通して統一されるが、例えば室内が多い、外のシーンが多いといった傾向に合わせて、作品ごとで異なる設定となる。担当者は「1話ごとに調整すれば最もクオリティの高いものが制作できるが、長編作品でそれを行うのは多くの労力が必要となるため、可能な限りHDR映像の見た目と変わらないようなSDR映像を生成しながら、効率化を実現した」技術と説明していた。
■AIを番組制作に活用、よりスピーディに情報を届ける
番組制作において、AI活用に注目が集まっている。国際放送局では、字幕や吹き替えによる多言語化に対応しているが、英語から多言語への翻訳は人手と時間がかかることが課題となっていた。そこで、AI音声認識を使用した字幕作成、そして英語字幕をもとにしたAI翻訳により多言語字幕を制作する「スピード翻訳システム」が開発された。
これにより、従来3週間かかっていた作業が4日に短縮できたという。その翻訳精度については、プロの翻訳家から見ても「番組理解の助けになる」というレベルに達しているとのこと。ただし誤訳の可能性や、あくまで機械的な翻訳となっており意訳というものではないということで、そうした精度を向上させて「東京オリンピックなど国際的な放送を視野に取り組む」とした。
また青森放送局では、ニュースの動画をAIで30秒程度に自動要約することで、SNSなどで情報を発信し、テレビ視聴に導くことを目的としたシステムを開発。ニュースではスタジオでの前振り、本編の映像といった構成が多いが、スタジオと本編を切り離し、スタジオでの音声をもとにキーワードを抽出、それに沿ったシーンを本編から抜き出して、音声と映像を再配列するという仕組みだ。
人力で行うと、要約に素材となる映像の数倍の時間が必要となるが、AIを用いる本システムでは10分程度のリポートを4分程度で出力できるという。ただし、まだ開発段階の現状では、抜き出す箇所や時間の精度に課題があり、今後は精度を向上させ青森局の公式Twitterで運用することなどを考えているとのこと。
また松江放送局では、青や緑の背景のクロマキーセットを用いることなく、CG合成を行う「Keydream」システムを開発。カメラに距離センサーを取り付けて任意の距離にある被写体を背景と分離させ、さらに骨格センサーにより動きに追従したCG合成も可能としたというもので、スタジオにクロマキーセットを設置する必要がなく、また屋外での運用も行えるとしている。
そしてAIを用いた顔認識の活用事例として、人物の顔を自動追尾してボカし加工を実施するシステムや、番組出演者を抽出して権利情報のデータベース構築に役立てるといった事例が紹介された。
そのほか、4K画質で360度撮影する全方位カメラを使用したサーバーシステム、立体音響再現技術を用いて制作されたオーディオドラマのデモなどが展示され、多くの一般来場者が興味深そうに説明を受けていた。