ニュース
HOME > ニュース > AV&ホームシアターニュース
公開日 2021/08/18 10:23
調理家電事故が増加。最多は電子レンジ
電子レンジ、庫内の汚れは油断大敵。正しい使い方と安全・安心な製品で事故を未然に防ごう
PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
■食品や容器への正しい知識も必要
コロナ禍のステイホームで調理家電が売上げを伸ばしている。おうち時間が増え、家で食事をする機会も多くなったことから、パンづくりが楽しめるホームベーカリーやホットプレート、コーヒーマシン、電子レンジ、トースターなどが人気を集めている。ここで注目したいのは、使用機会が増えることで、調理家電による火災事故も増えていること。独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)によると、2020年に発生した調理家電の火災事故件数は2019年比で14%も増加している。
なかでも、2016年から2020年までの5年間にNITEに通知のあった製品事故情報を見てみると、調理家電による事故は490件あり、最も多いのが「電子レンジ」。2位の「IHコンロ」83件に大差をつけ、3割以上にあたる153件を占めている。NITE製品安全センター 広報担当・佐藤秀幸氏は「電子レンジの事故原因の32%を占めているのが誤った使い方や不注意によるもの。正しい使い方をきちんと理解することが必要です」と訴える。
気を付けなければならないこととして、佐藤氏が一番に指摘するのが“庫内の汚れ”。
「食品カスなど庫内に汚れを付着したままにして使用すると、それが炭化して火花が発生し、発火する恐れがあります。なるべく使うたびにこまめに掃除をして、庫内の汚れは速やかに取り除いてください。特に気を付けたいのが、マイクロ波が庫内に出てくる通路にある“庫内カバー”です。ここが汚れるとマイクロ波が集中的に照射されてしまい、加熱し発火する危険があります」。
電子レンジの中に付着した汚れが炭化し、発火に至った事故の再現映像(動画提供:NITE)。
使用する上では、必要以上に長い時間にわたり加熱しないこと。「パンや根菜類など水分が少ない食品は、比較的早く炭化し、スパークして発火します。また、肉まんや天ぷらなど特に油分を多く含むものは、加熱しすぎると爆発的に燃焼する恐れがあります」と注意を促す。
電子レンジで肉まんを長時間加熱してしまったことにより、スパーク・発火した事故の再現映像(動画提供:NITE)。
電子レンジでは加熱してはいけない食品、注意すべき食品があるのだが、きちんと理解している人は意外と少ないのではないだろうか。例えば、殻付き卵、ゆで卵(殻付き・殻なし)は破裂する恐れがあるため加熱は不可。庫内でゆで卵が破裂し、ガラスプレートが破損した事故も報告されている。栗やぎんなんなど殻がある食品は、一部に強い圧力がかかって破裂する恐れがあるため、加熱する場合には、殻をむくか切れ目を入れる必要がある。ソーセージ、明太子、イカなどの膜のある食品も、同じく一部に強い圧力がかかり破裂する恐れがあることから、切れ目を入れてから加熱しなければならない。
電子レンジで生卵を加熱してしまったことにより、破裂した事故の再現映像(動画提供:NITE)。
カレー、シチュー、味噌汁などとろみのある食品は突然沸騰する場合がある。加熱する場合は事前によくかき混ぜ、少しずつ様子を見ながら加熱していく。水や牛乳などの液体も同様で、コーヒーをオート調理機能で加熱し、取り出そうとしたら、突然コーヒーが飛び散り、顔面にやけどを負った事故も報告されている。レトルトパックには加熱できるものとできないものとがあり、外装や外箱に記載されている調理方法をきちんと確認しなければならない。
電子レンジで温めた水が沸騰した事故の再現映像(動画提供:NITE)。
食品だけではなく、容器にも注意が必要。ふた付きの容器に入った食品や小量(100g未満)の食品をオート調理機能で加熱すると、正常に温度が検知されず、加熱しすぎて発火に至る恐れがある。金属容器や金串、金網などはスパークが生じるため使用できない。ガラス容器も耐熱性のものかどうかの確認が必要だ。
佐藤氏は「“チン”するだけで使い方が簡単。何気なく使用している電子レンジですが、そこに落とし穴が潜んでいます」と警鐘を鳴らす。取扱説明書にもきちんと目を通し、「正しい使い方を心掛けてほしい」と重ねて訴える。
■Sマークやリコール情報もチェック
万が一、電子レンジから発煙・発火してしまったときにはどうすればいいのか。「気をつけてほしいのは、あわてて扉を開けないこと。庫内に空気が入り込み、炎が拡大する恐れがあります。また、水をもかけないでください。高温になっているドアのガラスが急激に冷やされ、割れる危険があります」。正解は電源プラグを抜くこと。ドアを開けるのも火が消えてからだ。
オーブントースターにおいても、注意点は電子レンジと同様。汚れやパンくずをそのままにしないでこまめに掃除をすること。使用方法では、パンにジャムやバターを事前に塗るのはご法度。「油分が下のヒーターに垂れて、発火する恐れがあるからです。お餅も必要以上に長く調理すると、膨らんで上部のヒーターに接触して炭化、発火する恐れがあるので注意してください」と呼び掛ける。
これら、誤った使い方や不注意と並んで多い事故原因が、製品の不具合によるものだ。2016年から2020年までの5年間における調査が完了した電子レンジの事故150件のうち、60件(40%)を占める。生産国の内訳で見ると、中国製の45件を筆頭に日本製11件、韓国製2件、タイ製1件、不明1件となっている。
安全性の確認にはPSEマークがひとつの目安となるが、電子レンジもオーブントースターも政府により認可された認証機関が適合性検査を実施する角型ではなく、事業者の“自己確認”となる丸型であることを知っておきたい。そこで、併せて確認しておきたいのが、第三者認証機関が公正・公平・中立な立場から厳しい検査により安全性を客観的に評価し、認証を与える「Sマーク」だ。安全・安心な製品を選ぶ際の大きな目安となる。
また、前述の製品の不具合による事故60件において、リコールされている製品の件数は24件だった。「リコールされている製品なのに、知らないでそのまま使用していて事故になるケースも少なくありません」と注意を喚起する。製品のリコール情報についても併せて気を配ることが必要で、「リコール情報」は経済産業省やNITEのホームページなどで確認することができる。
身近にある電子レンジ、オーブントースターによる事故を未然に防ぐためには、改めて取扱説明書にもう一度目を通し、正しい使い方を理解すること。同時に安全・安心な製品を選ぶために、SマークやPSEマークがついているかをきちんと確認し、リコール製品でないかどうかも調べておきたい。とりわけネット通販での購入が当たり前となるなかでは、消費者自らが製品安全に関する情報にアンテナを高くしていくことがますます大事になっている。
コロナ禍のステイホームで調理家電が売上げを伸ばしている。おうち時間が増え、家で食事をする機会も多くなったことから、パンづくりが楽しめるホームベーカリーやホットプレート、コーヒーマシン、電子レンジ、トースターなどが人気を集めている。ここで注目したいのは、使用機会が増えることで、調理家電による火災事故も増えていること。独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)によると、2020年に発生した調理家電の火災事故件数は2019年比で14%も増加している。
なかでも、2016年から2020年までの5年間にNITEに通知のあった製品事故情報を見てみると、調理家電による事故は490件あり、最も多いのが「電子レンジ」。2位の「IHコンロ」83件に大差をつけ、3割以上にあたる153件を占めている。NITE製品安全センター 広報担当・佐藤秀幸氏は「電子レンジの事故原因の32%を占めているのが誤った使い方や不注意によるもの。正しい使い方をきちんと理解することが必要です」と訴える。
気を付けなければならないこととして、佐藤氏が一番に指摘するのが“庫内の汚れ”。
「食品カスなど庫内に汚れを付着したままにして使用すると、それが炭化して火花が発生し、発火する恐れがあります。なるべく使うたびにこまめに掃除をして、庫内の汚れは速やかに取り除いてください。特に気を付けたいのが、マイクロ波が庫内に出てくる通路にある“庫内カバー”です。ここが汚れるとマイクロ波が集中的に照射されてしまい、加熱し発火する危険があります」。
電子レンジの中に付着した汚れが炭化し、発火に至った事故の再現映像(動画提供:NITE)。
使用する上では、必要以上に長い時間にわたり加熱しないこと。「パンや根菜類など水分が少ない食品は、比較的早く炭化し、スパークして発火します。また、肉まんや天ぷらなど特に油分を多く含むものは、加熱しすぎると爆発的に燃焼する恐れがあります」と注意を促す。
電子レンジで肉まんを長時間加熱してしまったことにより、スパーク・発火した事故の再現映像(動画提供:NITE)。
電子レンジでは加熱してはいけない食品、注意すべき食品があるのだが、きちんと理解している人は意外と少ないのではないだろうか。例えば、殻付き卵、ゆで卵(殻付き・殻なし)は破裂する恐れがあるため加熱は不可。庫内でゆで卵が破裂し、ガラスプレートが破損した事故も報告されている。栗やぎんなんなど殻がある食品は、一部に強い圧力がかかって破裂する恐れがあるため、加熱する場合には、殻をむくか切れ目を入れる必要がある。ソーセージ、明太子、イカなどの膜のある食品も、同じく一部に強い圧力がかかり破裂する恐れがあることから、切れ目を入れてから加熱しなければならない。
電子レンジで生卵を加熱してしまったことにより、破裂した事故の再現映像(動画提供:NITE)。
カレー、シチュー、味噌汁などとろみのある食品は突然沸騰する場合がある。加熱する場合は事前によくかき混ぜ、少しずつ様子を見ながら加熱していく。水や牛乳などの液体も同様で、コーヒーをオート調理機能で加熱し、取り出そうとしたら、突然コーヒーが飛び散り、顔面にやけどを負った事故も報告されている。レトルトパックには加熱できるものとできないものとがあり、外装や外箱に記載されている調理方法をきちんと確認しなければならない。
電子レンジで温めた水が沸騰した事故の再現映像(動画提供:NITE)。
食品だけではなく、容器にも注意が必要。ふた付きの容器に入った食品や小量(100g未満)の食品をオート調理機能で加熱すると、正常に温度が検知されず、加熱しすぎて発火に至る恐れがある。金属容器や金串、金網などはスパークが生じるため使用できない。ガラス容器も耐熱性のものかどうかの確認が必要だ。
佐藤氏は「“チン”するだけで使い方が簡単。何気なく使用している電子レンジですが、そこに落とし穴が潜んでいます」と警鐘を鳴らす。取扱説明書にもきちんと目を通し、「正しい使い方を心掛けてほしい」と重ねて訴える。
■Sマークやリコール情報もチェック
万が一、電子レンジから発煙・発火してしまったときにはどうすればいいのか。「気をつけてほしいのは、あわてて扉を開けないこと。庫内に空気が入り込み、炎が拡大する恐れがあります。また、水をもかけないでください。高温になっているドアのガラスが急激に冷やされ、割れる危険があります」。正解は電源プラグを抜くこと。ドアを開けるのも火が消えてからだ。
オーブントースターにおいても、注意点は電子レンジと同様。汚れやパンくずをそのままにしないでこまめに掃除をすること。使用方法では、パンにジャムやバターを事前に塗るのはご法度。「油分が下のヒーターに垂れて、発火する恐れがあるからです。お餅も必要以上に長く調理すると、膨らんで上部のヒーターに接触して炭化、発火する恐れがあるので注意してください」と呼び掛ける。
これら、誤った使い方や不注意と並んで多い事故原因が、製品の不具合によるものだ。2016年から2020年までの5年間における調査が完了した電子レンジの事故150件のうち、60件(40%)を占める。生産国の内訳で見ると、中国製の45件を筆頭に日本製11件、韓国製2件、タイ製1件、不明1件となっている。
安全性の確認にはPSEマークがひとつの目安となるが、電子レンジもオーブントースターも政府により認可された認証機関が適合性検査を実施する角型ではなく、事業者の“自己確認”となる丸型であることを知っておきたい。そこで、併せて確認しておきたいのが、第三者認証機関が公正・公平・中立な立場から厳しい検査により安全性を客観的に評価し、認証を与える「Sマーク」だ。安全・安心な製品を選ぶ際の大きな目安となる。
また、前述の製品の不具合による事故60件において、リコールされている製品の件数は24件だった。「リコールされている製品なのに、知らないでそのまま使用していて事故になるケースも少なくありません」と注意を喚起する。製品のリコール情報についても併せて気を配ることが必要で、「リコール情報」は経済産業省やNITEのホームページなどで確認することができる。
身近にある電子レンジ、オーブントースターによる事故を未然に防ぐためには、改めて取扱説明書にもう一度目を通し、正しい使い方を理解すること。同時に安全・安心な製品を選ぶために、SマークやPSEマークがついているかをきちんと確認し、リコール製品でないかどうかも調べておきたい。とりわけネット通販での購入が当たり前となるなかでは、消費者自らが製品安全に関する情報にアンテナを高くしていくことがますます大事になっている。
- トピック
- S21 ビジネスニュース