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公開日 2021/09/28 12:35
多視点からの取り組みが急務
ネット通販利用者保護へ「デジプラ法」制定。「Sマーク」も課題解決へ一石
PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
■大きな一歩を踏み出すも内容には不十分の声も
コロナ禍のお家時間の増加も後押しして、ネット通販市場の拡大が加速している。ご家庭でも、宅配便の空段ボールが知らぬ間にたまってしまうことも珍しくないのではないだろうか。国土交通省が発表した令和2年度の宅配便取扱個数は、対前年度比11.9%増の48億3,467万個と大幅に伸長し、過去最多を記録した。これに伴い、デジタルプラットフォームにまつわるトラブルも数多く発生するなかで、先の通常国会では「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」(デジプラ法)が成立した。
デジプラ法とは、デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益保護を目的とするもの。購買行動により紛争が生じた際には、解決のために消費者が販売業者等と円滑に連絡することができるようにするなどデジタルプラットフォーム提供者の自主的な取り組みを促進することや、著しく事実に相違する表示をした販売業者が特定できないなどした際には、デジタルプラットフォーム提供者に対し、内閣総理大臣が利用の停止等の要請をできること、そして、販売業者の氏名や住所などの開示請求ができること、さらに、国の関係行政機関や消費者団体を含めた官民協議会を設置することが定められた。悪質な販売業者への対応策が示され、消費者により身近になったネット通販市場の健全化を目指す方向性が示されたと言えるだろう。
これに対し、消費者の権利を守るための提言活動や法制度整備の促進などの活動を行う全国消費者行政ウォッチでは「これまで各事業者の自主的な取り組みのみに委ねられていた取引デジタルプラットフォームの市場において、デジタルプラットフォーム提供者が消費者保護のためにとるべき対応を具体的に示すものであり、一定の評価ができる」とする一方で、CtoC取引に対する固有の課題が対象から除外されていることやデジタルプラットフォーム提供者が義務に違反した際の行政処分、不正レビューへの対応策への言及がないことを大きな課題として指摘する。
■デジプラ法は事故後、Sマークは事故前の消費者保護
家電製品もネット販売でのトラブルが後を絶たない代表的な商品のひとつだが、けがや火事など深刻なケースも見受けられ、早急な改善が求められている。電気製品認証協議会(SCEA)事務局長・平井雄二氏は「ネット商取引に関して、消費者保護を目的とする法案が成立したことは一歩前進したと考えられるが、内容的には“努力義務的な要素”が多く、消費者の請求できる権利に対して取引デジタルプラットフォーム提供者は対応しなければならないとはなっていない。また、デジプラ法は主に事故等のトラブルが発生した後の消費者保護に対する規定が中心であり、そもそも安全な製品を販売するという視点に欠けている。これでは現在問題となっているネット商取引における諸問題が一気に解決されるとは思われず、関係団体の今後の動向を注視していきたい」と未熟さを指摘する。
電気製品に関しては、デジタルプラットフォーム提供者も出店者に対し、電気用品安全法の順守を強く訴えかけるなど取り組みの強化を開始している。しかし、販売業者が法令順守のエビデンスとして提出する書類の提出が煩雑だったり、デジタルプラットフォーム提供者自身もその確認業務に手間がかかったり、また、昨今では一部の海外製品において、丸型PSEマークがついていても事故が発生するなど、事業者の“自己確認”に委ねた現在の状況にも限界が露呈しつつある。
これに対してデジタルプラットフォーム提供者では、これらの課題を解消する手立てのひとつとして、第三者認証機関が公正・公平・中立な立場から厳しい検査により安全性を客観的に評価し、認証を与える「Sマーク」を有効に活用した方策の検討を進めている。同マークを運営するSCEAでも、アマゾンジャパンや楽天グループからの要請に応えて、電気用品安全法とSマーク認証の相違点やSマーク認証の仕組みについて「Sマーク認証WEBセミナー」を開催するなどSマーク認証に対する理解を深めている。
新たな認証を追加するためには、当然ながら相応の費用と時間を要するため販売単価への反映が課題となる。正しく品質評価された製品とそうでない製品を消費者が現状のネット通販サイトで見抜くことは至難の技であり、デジタルプラットフォーム提供者がSマーク等を活用して、いかに消費者へアピールするかも今後の電気製品の販売伸長の鍵のひとつと言えるだろう。
さらなる市場拡大が予想されるネット通販にかかわるそれぞれの自覚ある行動により、消費者が安全・安心に製品を手にできるよう、今回のデジプラ法を契機に、ルールの一層の整備が加速することが期待される。
コロナ禍のお家時間の増加も後押しして、ネット通販市場の拡大が加速している。ご家庭でも、宅配便の空段ボールが知らぬ間にたまってしまうことも珍しくないのではないだろうか。国土交通省が発表した令和2年度の宅配便取扱個数は、対前年度比11.9%増の48億3,467万個と大幅に伸長し、過去最多を記録した。これに伴い、デジタルプラットフォームにまつわるトラブルも数多く発生するなかで、先の通常国会では「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」(デジプラ法)が成立した。
デジプラ法とは、デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益保護を目的とするもの。購買行動により紛争が生じた際には、解決のために消費者が販売業者等と円滑に連絡することができるようにするなどデジタルプラットフォーム提供者の自主的な取り組みを促進することや、著しく事実に相違する表示をした販売業者が特定できないなどした際には、デジタルプラットフォーム提供者に対し、内閣総理大臣が利用の停止等の要請をできること、そして、販売業者の氏名や住所などの開示請求ができること、さらに、国の関係行政機関や消費者団体を含めた官民協議会を設置することが定められた。悪質な販売業者への対応策が示され、消費者により身近になったネット通販市場の健全化を目指す方向性が示されたと言えるだろう。
これに対し、消費者の権利を守るための提言活動や法制度整備の促進などの活動を行う全国消費者行政ウォッチでは「これまで各事業者の自主的な取り組みのみに委ねられていた取引デジタルプラットフォームの市場において、デジタルプラットフォーム提供者が消費者保護のためにとるべき対応を具体的に示すものであり、一定の評価ができる」とする一方で、CtoC取引に対する固有の課題が対象から除外されていることやデジタルプラットフォーム提供者が義務に違反した際の行政処分、不正レビューへの対応策への言及がないことを大きな課題として指摘する。
■デジプラ法は事故後、Sマークは事故前の消費者保護
家電製品もネット販売でのトラブルが後を絶たない代表的な商品のひとつだが、けがや火事など深刻なケースも見受けられ、早急な改善が求められている。電気製品認証協議会(SCEA)事務局長・平井雄二氏は「ネット商取引に関して、消費者保護を目的とする法案が成立したことは一歩前進したと考えられるが、内容的には“努力義務的な要素”が多く、消費者の請求できる権利に対して取引デジタルプラットフォーム提供者は対応しなければならないとはなっていない。また、デジプラ法は主に事故等のトラブルが発生した後の消費者保護に対する規定が中心であり、そもそも安全な製品を販売するという視点に欠けている。これでは現在問題となっているネット商取引における諸問題が一気に解決されるとは思われず、関係団体の今後の動向を注視していきたい」と未熟さを指摘する。
電気製品に関しては、デジタルプラットフォーム提供者も出店者に対し、電気用品安全法の順守を強く訴えかけるなど取り組みの強化を開始している。しかし、販売業者が法令順守のエビデンスとして提出する書類の提出が煩雑だったり、デジタルプラットフォーム提供者自身もその確認業務に手間がかかったり、また、昨今では一部の海外製品において、丸型PSEマークがついていても事故が発生するなど、事業者の“自己確認”に委ねた現在の状況にも限界が露呈しつつある。
これに対してデジタルプラットフォーム提供者では、これらの課題を解消する手立てのひとつとして、第三者認証機関が公正・公平・中立な立場から厳しい検査により安全性を客観的に評価し、認証を与える「Sマーク」を有効に活用した方策の検討を進めている。同マークを運営するSCEAでも、アマゾンジャパンや楽天グループからの要請に応えて、電気用品安全法とSマーク認証の相違点やSマーク認証の仕組みについて「Sマーク認証WEBセミナー」を開催するなどSマーク認証に対する理解を深めている。
新たな認証を追加するためには、当然ながら相応の費用と時間を要するため販売単価への反映が課題となる。正しく品質評価された製品とそうでない製品を消費者が現状のネット通販サイトで見抜くことは至難の技であり、デジタルプラットフォーム提供者がSマーク等を活用して、いかに消費者へアピールするかも今後の電気製品の販売伸長の鍵のひとつと言えるだろう。
さらなる市場拡大が予想されるネット通販にかかわるそれぞれの自覚ある行動により、消費者が安全・安心に製品を手にできるよう、今回のデジプラ法を契機に、ルールの一層の整備が加速することが期待される。
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