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公開日 2022/03/25 10:11
コロナ禍で需要が拡がるなか課題意識を共有化
ネット通販、消費者が安心して安全な製品を購入できる環境構築へ。関連団体が初の意見交換会
PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
■家電製品のEC化率は4割に迫る
コロナ禍の巣ごもり消費も後押しし、ネット通販市場の拡大がスピードアップしていくなか、オンラインマーケットプレイス協議会(JOMC)、主婦連合会(主婦連)、日本消費者協会(JCA)、電気製品認証協議会(SCEA)の各団体は、消費者が安心して安全な製品を購入できる場を構築するための取り組みについて意見交換会を実施した。
経済産業省が昨年7月30日に発表した「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、ネット通販市場は、旅行サービスが縮小するなどサービス系の市場規模が大幅に減少したことから、BtoC-EC市場の全体の規模が対前年比0.43%減の19兆2779億円にとどまった一方、物販系は同21.71%増の12兆2333億円と大きく伸長した。その内訳は、「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」2兆3489億円、「衣類・服装雑貨等」2兆2203億円、「食品、飲料、酒類」2兆2086億円、「生活雑貨、家具、インテリア」2兆1322億円と上位4カテゴリーで7割を超え、EC化率は「書籍、映像・音楽ソフト」(42.97%)と「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(37.45%)で3割を超えている。
そのようななか、とりわけ「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」においては、店頭で実際に商品を確認したり、販売員に質問したりする機会が減り、海外系ブランドの不良品モバイルバッテリーによる事故が度々報道されるなど、どうすれば安全・安心な買い物の場を提供できるかが、ひとつの大きな課題としてクローズアップされている。そこで催されたのが今回の意見交換会だ。
商品の安全性を見極める上で、ひとつの目安となるのがPSEマークだが、これら製品に付される丸型PSEマークは、技術基準への適合を事業者の“自己確認”に委ねており、実際に事故が発生するケースも目につくなど、現行制度下での限界を露呈しつつある。これまで日本の製造事業者は国内法を真面目に遵守し、何より安全品質を的確に評価することで消費者の信頼を獲得してきた。ところが上記のように海外製品がネット通販において安易に日本国内に流通することが可能となり、正しく“自己確認”されているかのチェック機能がいささか危ぶまれる。そこで、それを補完する存在となるのが、第三者認証機関が公正・公平・中立な立場から厳しい検査により安全性を客観的に評価し、認証を与える「Sマーク」だ。しかし、同マークを運営するSCEAでは、ネット販売でウェイトが高い海外製品のSマーク認証取得率が極めて低いことを危惧している。
■急務の課題となるネット販売のトラブル対処
関係各所でも手をこまねいているわけではない。オンラインマーケットプレイスを運営する各事業者は、利用者の信頼を得、消費者に安心して利用してもらうための様々な取り組みを重ねてきた。そして2020年8月には、互いの情報交換や外部への情報提供、行政との連携などの重要性が増してきたと判断し、消費者にとってより安全・安心な取引環境の構築に貢献し、オンラインマーケットプレイスの健全な発展を促すことを目的に、「オンラインマーケットプレイス協議会」を設立した。SCEAでも、ネット通販事業者に向けてSマークの取得を推進すべく「電気用品安全法(電安法)とSマーク制度の相違点」を中心に個別にセミナーを実施している。
SCEAの呼び掛けで実現した今回の意見交換会では、「製品安全」を中心テーマに、それぞれの団体の紹介や活動、取り組み状況が紹介された後、活発な討議が行われた。ネット通販各社からは、電安法による特定電気用品(菱型PSE)と特定以外の電気用品(丸型PSE)での安全確認の方法の差や、Sマークとの違いについて質問が寄せられた。消費者団体からは、リコール製品の扱いについてのネット通販各社における対応や違反への規定について。また、消費者トラブルを生じやすい訪問販売や通信販売において事業者が守るべきルール等を定めた特定商取引法(特商法)に関して、「表記が見つけにくい」「消費者の認知が低いために十分に活用されているとは言えずもどかしい」などの意見が出された。偽サイト対策についてのJOMCへの質問に対しては、毎日パトロールを行い、見つけ次第セキュリティ会社等へ依頼して対処するなど、一時期に比べれば少なくなっているが、最近ではSNSと通じたサイト等が出てくるなど、いたちごっこの状態が続いていると説明された。
SCEA事務局長・平井雄二氏は「消費者にとっては、今や便利なネット通販の恩恵を大いに受ける反面、様々なトラブルも発生している。しかし、消費者団体としてもこれまで、ネット通販事業者側に対策を伺い、改善意見を直接に訴える機会がなかったため、貴重な意見交換の場となった」と開催の意義を訴えた。また、「ネット通販各社におけるSマークの認知度、捉え方にも差があり、トラブル対策においても各社サイトの仕様・サービスに応じて相違があることがわかった。今後、この協議会活動を通じて消費者団体及びネット通販各社との課題意識の共有化が図られ、より良い方向へ議論が進んでいくことを期待している」とこれからのより精力的な取り組みが注目される。
ネット通販事業者は電気用品安全法の責任を負わないなど、見直しが求められる事項も少なくない。ネット通販がごく当たり前の商習慣としてさらに市場が拡大していくなかで、顕在化する課題に対し、誰がどのような役割を担い、責任を果たしていくのか。今回の意見交換会が、その実効性ある取り組みへ向けた一歩となることを願うとともに、消費者にも自ら判断する厳しい目がますます求められてくる。
コロナ禍の巣ごもり消費も後押しし、ネット通販市場の拡大がスピードアップしていくなか、オンラインマーケットプレイス協議会(JOMC)、主婦連合会(主婦連)、日本消費者協会(JCA)、電気製品認証協議会(SCEA)の各団体は、消費者が安心して安全な製品を購入できる場を構築するための取り組みについて意見交換会を実施した。
経済産業省が昨年7月30日に発表した「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、ネット通販市場は、旅行サービスが縮小するなどサービス系の市場規模が大幅に減少したことから、BtoC-EC市場の全体の規模が対前年比0.43%減の19兆2779億円にとどまった一方、物販系は同21.71%増の12兆2333億円と大きく伸長した。その内訳は、「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」2兆3489億円、「衣類・服装雑貨等」2兆2203億円、「食品、飲料、酒類」2兆2086億円、「生活雑貨、家具、インテリア」2兆1322億円と上位4カテゴリーで7割を超え、EC化率は「書籍、映像・音楽ソフト」(42.97%)と「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(37.45%)で3割を超えている。
そのようななか、とりわけ「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」においては、店頭で実際に商品を確認したり、販売員に質問したりする機会が減り、海外系ブランドの不良品モバイルバッテリーによる事故が度々報道されるなど、どうすれば安全・安心な買い物の場を提供できるかが、ひとつの大きな課題としてクローズアップされている。そこで催されたのが今回の意見交換会だ。
商品の安全性を見極める上で、ひとつの目安となるのがPSEマークだが、これら製品に付される丸型PSEマークは、技術基準への適合を事業者の“自己確認”に委ねており、実際に事故が発生するケースも目につくなど、現行制度下での限界を露呈しつつある。これまで日本の製造事業者は国内法を真面目に遵守し、何より安全品質を的確に評価することで消費者の信頼を獲得してきた。ところが上記のように海外製品がネット通販において安易に日本国内に流通することが可能となり、正しく“自己確認”されているかのチェック機能がいささか危ぶまれる。そこで、それを補完する存在となるのが、第三者認証機関が公正・公平・中立な立場から厳しい検査により安全性を客観的に評価し、認証を与える「Sマーク」だ。しかし、同マークを運営するSCEAでは、ネット販売でウェイトが高い海外製品のSマーク認証取得率が極めて低いことを危惧している。
■急務の課題となるネット販売のトラブル対処
関係各所でも手をこまねいているわけではない。オンラインマーケットプレイスを運営する各事業者は、利用者の信頼を得、消費者に安心して利用してもらうための様々な取り組みを重ねてきた。そして2020年8月には、互いの情報交換や外部への情報提供、行政との連携などの重要性が増してきたと判断し、消費者にとってより安全・安心な取引環境の構築に貢献し、オンラインマーケットプレイスの健全な発展を促すことを目的に、「オンラインマーケットプレイス協議会」を設立した。SCEAでも、ネット通販事業者に向けてSマークの取得を推進すべく「電気用品安全法(電安法)とSマーク制度の相違点」を中心に個別にセミナーを実施している。
SCEAの呼び掛けで実現した今回の意見交換会では、「製品安全」を中心テーマに、それぞれの団体の紹介や活動、取り組み状況が紹介された後、活発な討議が行われた。ネット通販各社からは、電安法による特定電気用品(菱型PSE)と特定以外の電気用品(丸型PSE)での安全確認の方法の差や、Sマークとの違いについて質問が寄せられた。消費者団体からは、リコール製品の扱いについてのネット通販各社における対応や違反への規定について。また、消費者トラブルを生じやすい訪問販売や通信販売において事業者が守るべきルール等を定めた特定商取引法(特商法)に関して、「表記が見つけにくい」「消費者の認知が低いために十分に活用されているとは言えずもどかしい」などの意見が出された。偽サイト対策についてのJOMCへの質問に対しては、毎日パトロールを行い、見つけ次第セキュリティ会社等へ依頼して対処するなど、一時期に比べれば少なくなっているが、最近ではSNSと通じたサイト等が出てくるなど、いたちごっこの状態が続いていると説明された。
SCEA事務局長・平井雄二氏は「消費者にとっては、今や便利なネット通販の恩恵を大いに受ける反面、様々なトラブルも発生している。しかし、消費者団体としてもこれまで、ネット通販事業者側に対策を伺い、改善意見を直接に訴える機会がなかったため、貴重な意見交換の場となった」と開催の意義を訴えた。また、「ネット通販各社におけるSマークの認知度、捉え方にも差があり、トラブル対策においても各社サイトの仕様・サービスに応じて相違があることがわかった。今後、この協議会活動を通じて消費者団体及びネット通販各社との課題意識の共有化が図られ、より良い方向へ議論が進んでいくことを期待している」とこれからのより精力的な取り組みが注目される。
ネット通販事業者は電気用品安全法の責任を負わないなど、見直しが求められる事項も少なくない。ネット通販がごく当たり前の商習慣としてさらに市場が拡大していくなかで、顕在化する課題に対し、誰がどのような役割を担い、責任を果たしていくのか。今回の意見交換会が、その実効性ある取り組みへ向けた一歩となることを願うとともに、消費者にも自ら判断する厳しい目がますます求められてくる。
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