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公開日 2023/03/17 11:43
【連載】佐野正弘のITインサイト 第49回
「40GB」に「ホリエモン」、MVNOが料金高めの高付加価値プランで勝負に出る背景
佐野正弘
携帯各社のサブブランドやオンライン専用プランなどによって、ここ最近防戦が続いていたMVNO。2022年は楽天モバイルの月額0円施策の終了や、KDDIの大規模通信障害によるバックアップ回線需要の高まりによって“特需”が起き、息を吹き返したように見えるが、依然低価格領域のビジネスが主体であることに変わりはなく、現在も厳しい競争環境にある。
そのMVNOの中からここ最近、従来とは違った戦略を打ち出すケースが増えている。その1つが、ソニーネットワークコミュニケーションズがMVNOとして展開している「NUROモバイル」であり、先日3月8日に新しい料金プラン「NEOプランW」を発表している。
NUROモバイルは、現在大きく分けて3つの料金プランを展開しており、1つ目は通信量3〜10GBの低価格領域を担うMVNOの王道というべき「バリュープラス」、2つ目は音声通話に重点を置いた「かけ放題プラン」。
そしてもう1つが「NEOプラン」で、通信量が20GBとMVNOとしては大容量、かつ専用の帯域を用いることなどで混雑時でも通信速度の低下がしにくい、アップロードの通信量や「LINE」「Twitter」など対象SNSのデータ通信量を消費しないなど、複数の特徴を持つ非常に特徴的な料金プランとなっている。
今回発表されたNEOプランWは、このNEOプランをさらに強化し、通信量を40GBにアップさせたもの。それでいて、NEOプランの特徴は引き継がれていることから、実質的には40GB以上の通信量が利用できるという。
その一方で月額料金は3,980円と、1,000円以下が主流のMVNOの料金プランとしてはかなり高い部類に入る。ソニーネットワークコミュニケーションズとしては、コロナ禍が明けたことなどを理由として通信トラフィックは増加傾向にあることから、より大容量のニーズが高まることを見越してNEOプランWを提供するに至ったというが、小容量かつ低価格が主流のMVNOのプランとしてはかなり異例であることは間違いない。
そしてもう1つが、特徴的なサービスを多く展開するMVNOの1つ、エックスモバイルが発表した「HORIE MOBILE」である。これはその名前の通り、実業家の堀江貴文氏が同社と共同で展開する新サービスのブランドとなっている。
それゆえ、HORIE MOBILEが展開する通信サービス「HORIE SIM」のサービス内容を見ると、堀江氏のコンテンツが大きな付加価値として打ち出されている様子がうかがえる。具体的には堀江氏が配信する「デイリーホリエニュース」が利用できたり、堀江氏が代表取締役を務めるベーカリー「小麦の奴隷」のカレーパンが毎月1回無料でもらえたり、今後展開される「HORIEプロジェクトの参加権」を特典として利用できたりする、といった具合だ。
一方で通信部分のサービス内容を見ると、NTTドコモのネットワークを用い、月当たりの通信量は20GBとMVNOとしては大容量、かつ5分間のかけ放題が利用できるとされている。料金は3,030円となっており、やはりMVNOとしては高めの月額料金に設定されていることが分かる。
通信に付加価値を置いたNEOプランWと、堀江氏のキャラクターとコンテンツに付加価値を置いたHORIE MOBILEとでは、目指すところに明らかに違いがあるだろう。ただいずれも、MVNOのサービスとしては高い付加価値を付け、従来より高い月額料金を設定しているという点では共通している。
これまでMVNOの競争軸は、携帯大手がかつて低価格の料金プランの提供に消極的だった低価格帯に非常に重きを置いていた。だが、政治的意向が強く働き、携帯各社が低価格サービスの提供へと舵を切って以降、MVNOの料金には一層低価格化が求められるようになり、価格だけで勝ち抜くのが難しい状況となりつつある。
その一方で、5G時代に入りスマートフォンの通信トラフィックが増加傾向にあることもたしかで、NUROモバイルほどではないが、通信量の増大に応える動きは他にも出てきている。
それを示しているのが、MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)が展開する「IIJmio」で、主力の「ギガプラン」を2023年4月1日に改定、月額料金を維持したまま通信量が4GBと8GBのプランをそれぞれ5GB、10GBに増量することを明らかにしている。
また、携帯大手からネットワークを借りる料金が年々安くなり、より多くの帯域を借りられるようになったこともあって、かつてのように昼休みなどの混雑時に、MVNOの通信速度が極端に落ちるというケースは減少傾向にあるようだ。MVNOとしては高額な料金プランが増えている背景には、そうしたMVNOを取り巻く環境や構造が変化し、付加価値で勝負ができる環境が整いつつあるからこそといえるのではないだろうか。
とはいえ、最近では通信だけでなくコンテンツからコマース、金融に至るまで、非常に幅広い事業を手掛ける携帯大手と、規模が小さいMVNOが正面を切って付加価値で勝負するのは困難だ。
子供とシニアにターゲットを絞って事業展開しているトーンモバイルのように、小規模ながら小回りが利くというMVNOならではの特性を生かしてニッチな市場を徹底して攻めるというのが、MVNOの付加価値戦略となってくるのではないだろうか。
■NUROモバイルの新料金プラン「NEOプランW」
そのMVNOの中からここ最近、従来とは違った戦略を打ち出すケースが増えている。その1つが、ソニーネットワークコミュニケーションズがMVNOとして展開している「NUROモバイル」であり、先日3月8日に新しい料金プラン「NEOプランW」を発表している。
NUROモバイルは、現在大きく分けて3つの料金プランを展開しており、1つ目は通信量3〜10GBの低価格領域を担うMVNOの王道というべき「バリュープラス」、2つ目は音声通話に重点を置いた「かけ放題プラン」。
そしてもう1つが「NEOプラン」で、通信量が20GBとMVNOとしては大容量、かつ専用の帯域を用いることなどで混雑時でも通信速度の低下がしにくい、アップロードの通信量や「LINE」「Twitter」など対象SNSのデータ通信量を消費しないなど、複数の特徴を持つ非常に特徴的な料金プランとなっている。
今回発表されたNEOプランWは、このNEOプランをさらに強化し、通信量を40GBにアップさせたもの。それでいて、NEOプランの特徴は引き継がれていることから、実質的には40GB以上の通信量が利用できるという。
その一方で月額料金は3,980円と、1,000円以下が主流のMVNOの料金プランとしてはかなり高い部類に入る。ソニーネットワークコミュニケーションズとしては、コロナ禍が明けたことなどを理由として通信トラフィックは増加傾向にあることから、より大容量のニーズが高まることを見越してNEOプランWを提供するに至ったというが、小容量かつ低価格が主流のMVNOのプランとしてはかなり異例であることは間違いない。
そしてもう1つが、特徴的なサービスを多く展開するMVNOの1つ、エックスモバイルが発表した「HORIE MOBILE」である。これはその名前の通り、実業家の堀江貴文氏が同社と共同で展開する新サービスのブランドとなっている。
それゆえ、HORIE MOBILEが展開する通信サービス「HORIE SIM」のサービス内容を見ると、堀江氏のコンテンツが大きな付加価値として打ち出されている様子がうかがえる。具体的には堀江氏が配信する「デイリーホリエニュース」が利用できたり、堀江氏が代表取締役を務めるベーカリー「小麦の奴隷」のカレーパンが毎月1回無料でもらえたり、今後展開される「HORIEプロジェクトの参加権」を特典として利用できたりする、といった具合だ。
一方で通信部分のサービス内容を見ると、NTTドコモのネットワークを用い、月当たりの通信量は20GBとMVNOとしては大容量、かつ5分間のかけ放題が利用できるとされている。料金は3,030円となっており、やはりMVNOとしては高めの月額料金に設定されていることが分かる。
通信に付加価値を置いたNEOプランWと、堀江氏のキャラクターとコンテンツに付加価値を置いたHORIE MOBILEとでは、目指すところに明らかに違いがあるだろう。ただいずれも、MVNOのサービスとしては高い付加価値を付け、従来より高い月額料金を設定しているという点では共通している。
これまでMVNOの競争軸は、携帯大手がかつて低価格の料金プランの提供に消極的だった低価格帯に非常に重きを置いていた。だが、政治的意向が強く働き、携帯各社が低価格サービスの提供へと舵を切って以降、MVNOの料金には一層低価格化が求められるようになり、価格だけで勝ち抜くのが難しい状況となりつつある。
その一方で、5G時代に入りスマートフォンの通信トラフィックが増加傾向にあることもたしかで、NUROモバイルほどではないが、通信量の増大に応える動きは他にも出てきている。
それを示しているのが、MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)が展開する「IIJmio」で、主力の「ギガプラン」を2023年4月1日に改定、月額料金を維持したまま通信量が4GBと8GBのプランをそれぞれ5GB、10GBに増量することを明らかにしている。
また、携帯大手からネットワークを借りる料金が年々安くなり、より多くの帯域を借りられるようになったこともあって、かつてのように昼休みなどの混雑時に、MVNOの通信速度が極端に落ちるというケースは減少傾向にあるようだ。MVNOとしては高額な料金プランが増えている背景には、そうしたMVNOを取り巻く環境や構造が変化し、付加価値で勝負ができる環境が整いつつあるからこそといえるのではないだろうか。
とはいえ、最近では通信だけでなくコンテンツからコマース、金融に至るまで、非常に幅広い事業を手掛ける携帯大手と、規模が小さいMVNOが正面を切って付加価値で勝負するのは困難だ。
子供とシニアにターゲットを絞って事業展開しているトーンモバイルのように、小規模ながら小回りが利くというMVNOならではの特性を生かしてニッチな市場を徹底して攻めるというのが、MVNOの付加価値戦略となってくるのではないだろうか。