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公開日 2023/10/12 10:28
【連載】佐野正弘のITインサイト 第78回
Google「Pixel 8/Pixel 8 Pro」実機レビュー。AI技術だけでなくデザインもハードも進化
佐野正弘
Googleの新しいスマートフォンのフラグシップモデル「Pixel 8」シリーズが発表された、というのは前回記事でお伝えした通りだが、今回発売前に先行して実機をお借りすることができた。本稿では、気になる機能面や使用感について実機レビューをしていきたい。
Pixel 8シリーズは、スタンダードモデルの「Pixel 8」と、大画面でより機能を多く備えている「Pixel 8 Pro」の2機種を用意しており、この点は前機種の「Pixel 7」シリーズと変わっていない。カメラ部分がバー状となった独自性のあるデザインは継承されており、ぱっと見には違いがないように見えるのだが、実際に以前のシリーズと比較するとさまざまな点で違いがある。
まずはPixel 8についてだが、前機種「Pixel 7」と明らかに異なっているのがサイズだ。Pixel 8は6.2インチディスプレイを搭載しており、外形寸法は70.8W×150.5H×8.9Dmm、質量は187g。一方のPixel 7は6.3インチディスプレイを搭載し、外形寸法は73.2W×155.6H×8.7Dmm、質量は197gと、明らかにサイズが小さくなっている。
実際に両機種を手にするとその違いは明確で、明らかにPixel 8の方が片手で持ちやすい。その分ディスプレイサイズは0.1インチ小さくなっているが、ベゼル部分をより狭くしていることもあってか大きな違いを感じる程ではなく、iPhoneのスタンダードモデルと近いサイズ感ということもあって日本のユーザーには馴染みやすいだろう。
一方のPixel 8 Proは、6.7インチディスプレイを搭載しており、外形寸法は76.5W×162.6H×8.8Dmm、質量は213g。ディスプレイサイズが同じ6.7インチで、本体サイズが76.6W×162.9H×8.9Dmm、質量が212gの前機種「Pixel 7 Pro」と比べ、サイズ感はあまり大きく変わっていない。
だが、大きく変わっているのがディスプレイだ。従来のPixelシリーズのProモデルで採用してきた、側面がカーブしているディスプレイではなく、一般的なフラットディスプレイを採用しているのだ。側面がカーブしたディスプレイはデザイン面での見栄えは良いのだが、一方で強度や操作性などの面では不満を抱くユーザーも多く、最近では採用するメーカーも減少傾向にある。それゆえGoogleも、利便性に重きを置いてフラットディスプレイの採用に至ったといえそうだ。
背面もPixel 7 Proと同じくガラス素材が用いられているが、Pixel 8 Proはマット調の加工が施されており、さらさらした手触りで指紋も付きにくい。この辺りは好みが分かれるところでもあるが、個人的には好感触だ。
続いてカメラを確認すると、Pixel 8の背面のカメラは5000万画素/F値1.68の広角カメラと、1200万画素/F値2.2の超広角カメラを搭載。Pixel 8 ProはPixel 8と同じ性能の広角カメラに加え、4800万画素/F値1.95の超広角カメラと4800万画素/F値2.8の望遠カメラを搭載している。なお、前面のカメラはいずれも1050万画素/F値2.2となる。
全体的に多くのイメージセンサーが刷新され、より暗い場所での撮影に強くなったほか、Pixel 8 Proに関しては超広角カメラの画素数が大幅に向上している。Pixelシリーズののカメラといえば、AI技術の活用による加工に重点が置かれていた印象があるが、Pixel 8シリーズではハード面での進化にも重点を置いている印象がうかがえる。
もちろん、AI技術を活用した機能の強化もなされており、新たに追加された機能の1つが「ベストテイク」。これは目を閉じてしまったり、横を向いてしまったりした人の顔を、似ている写真から組み合わせて入れ替えて補正するというもの。同じようなシーンの写真を複数撮る必要があるが、集合写真を撮影する際に便利な機能といえるだろう。
そしてもう1つが「音声消しゴムマジック」。動画の中の雑音を低減してくれるというもので、ノイズキャンセリングイヤホンのような効果が得られるため、外で動画を撮影する時などに役立つ機能だろう。
このほかにも、明るさを補正したり、被写体を移動したりするなどさまざまな調整を施す「編集マジック」がラボ機能として追加されているほか、Pixel 8 Proに向けては動画の色や明るさを調節する「動画ブースト」や、暗い場所で撮影した写真だけでなく動画も明るくする「ビデオ夜景モード」などが後日追加予定だ。AI技術の活用が写真だけでなく、動画に広がっていることには驚きがある。
他にもPixelシリーズには、AI技術を活用した多くの機能が備わっているが、高度なAI技術の実現に貢献しているのがGoogleが独自開発しているチップセット「Tensor」シリーズの存在だ。Pixel 8シリーズは新世代の「Tensor G3」を搭載しており、AI関連処理の一層の高速化がなされたことで、動画にもAI技術を活用できるようになったといえる。
ただTensorシリーズは、他社のハイエンド向けチップセットと比べて、AI関連処理以外の性能が高いとはいえず、高いCPU・GPU性能を必要とするゲーミングでは不利な状況にあったことから、Tensor G3ではCPUやGPUも強化がなされているようだ。ちなみにRAMは、Pixel 8が8GB、Pixel 8 Proが12GBとなっている。
では実際のところ、性能はどの程度のものなのだろうか。主要なゲームで確認してみると、例えば「原神」では「Tensor G2」を搭載した「Pixel 7」の場合、デフォルトのグラフィック設定が5段階中2段階目の「低」と、ミドルクラス並みの設定となっていた。
だが、Tensor G3を搭載したPixel 8のデフォルト設定では、その1つ上となる「中」と、他のハイエンドスマートフォンと同等になっている。加えて設定を「最高」に変え、フレームレートも上げるなどより負荷が高い状態にしてプレイしても、フレーム落ちなどはあまり発生せず快適なプレイが可能だった。
性能強化で気になるのは、発熱とそれによるパフォーマンスの低下だが、少なくとも筆者がゲームを1時間程度プレイして測定してみた限り、両機種ともに前面・背面ともに温度が40度を超えることはなく、パフォーマンスも安定している印象だ。ただ放熱は、側面のアルミフレームからなされているようで、長時間プレイ時は側面が全体的にやや熱くなる点には注意したい。
バッテリー容量はPixel 8が4575mAhで、Pixel 8 Proが5050mAh。サイズの違いからバッテリーの容量に違いはあるが、両機種ともに30Wの急速充電やワイヤレス充電、バッテリーシェアなどにも対応しており安定感がある。
またPixel 8 Proだけの新機能として、温度計機能が搭載されている。Pixel 8 Proの背面、フラッシュの下は温度センサーが用意されており、専用のアプリを用いて非接触での温度測定が可能だ。測定方法は、アプリ上から「タップして測定」を押すだけと非常にシンプルだが、対象物との距離を5cm程度に保つ必要があり、赤外線タイプの非接触温度計と比べると、使い勝手や精度はいまひとつ、といった印象だ。
最後に通信に関してだが、Pixel 8シリーズはともに物理SIM(ナノSIM)とeSIMのデュアルSIM構成で、NTTドコモからも販売されることから5Gの4.5GHz帯(n79)にも対応する。また日本向けモデルは、従来同様FeliCaにも対応し、電子マネーによる決済が利用できる点でも安心感が高い。
◇◇◇
総括すると、Pixel 8シリーズは強みとしているAI技術の活用をより広げながらも、ハード面での進化も推し進め、より使い勝手の良いスマートフォンに仕上がっていることは間違いない。とりわけ、前機種での不満要素だったゲーミングに関する性能が大幅に向上したことは、フラグシップモデルとしての競争力を高める上でも、大きなポイントになったといえるだろう。
ただ一方で、Pixel 8が11万2,900円から、Pixel 8 Proが15万9,900円からと、価格面で他のハイエンドモデルとの競争力が薄れてしまったのは悩ましい。
もちろん、AI技術をふんだんに取り入れたスマートフォンとしてPixel 8シリーズは高い魅力を持つが、それ以外の部分に興味を持つ人達にとって、コストパフォーマンスの利点が失われたPixel 8シリーズを積極的に選ぶ理由に乏しくなってしまっただけに、Googleとしても非常に悩ましいところかもしれない。
■片手で持ちやすくなった「Pixel 8」。「Pixel 8 Pro」はディスプレイが大きく刷新
Pixel 8シリーズは、スタンダードモデルの「Pixel 8」と、大画面でより機能を多く備えている「Pixel 8 Pro」の2機種を用意しており、この点は前機種の「Pixel 7」シリーズと変わっていない。カメラ部分がバー状となった独自性のあるデザインは継承されており、ぱっと見には違いがないように見えるのだが、実際に以前のシリーズと比較するとさまざまな点で違いがある。
まずはPixel 8についてだが、前機種「Pixel 7」と明らかに異なっているのがサイズだ。Pixel 8は6.2インチディスプレイを搭載しており、外形寸法は70.8W×150.5H×8.9Dmm、質量は187g。一方のPixel 7は6.3インチディスプレイを搭載し、外形寸法は73.2W×155.6H×8.7Dmm、質量は197gと、明らかにサイズが小さくなっている。
実際に両機種を手にするとその違いは明確で、明らかにPixel 8の方が片手で持ちやすい。その分ディスプレイサイズは0.1インチ小さくなっているが、ベゼル部分をより狭くしていることもあってか大きな違いを感じる程ではなく、iPhoneのスタンダードモデルと近いサイズ感ということもあって日本のユーザーには馴染みやすいだろう。
一方のPixel 8 Proは、6.7インチディスプレイを搭載しており、外形寸法は76.5W×162.6H×8.8Dmm、質量は213g。ディスプレイサイズが同じ6.7インチで、本体サイズが76.6W×162.9H×8.9Dmm、質量が212gの前機種「Pixel 7 Pro」と比べ、サイズ感はあまり大きく変わっていない。
だが、大きく変わっているのがディスプレイだ。従来のPixelシリーズのProモデルで採用してきた、側面がカーブしているディスプレイではなく、一般的なフラットディスプレイを採用しているのだ。側面がカーブしたディスプレイはデザイン面での見栄えは良いのだが、一方で強度や操作性などの面では不満を抱くユーザーも多く、最近では採用するメーカーも減少傾向にある。それゆえGoogleも、利便性に重きを置いてフラットディスプレイの採用に至ったといえそうだ。
背面もPixel 7 Proと同じくガラス素材が用いられているが、Pixel 8 Proはマット調の加工が施されており、さらさらした手触りで指紋も付きにくい。この辺りは好みが分かれるところでもあるが、個人的には好感触だ。
■暗所性能が強化されたカメラ。AI技術活用の新機能も
続いてカメラを確認すると、Pixel 8の背面のカメラは5000万画素/F値1.68の広角カメラと、1200万画素/F値2.2の超広角カメラを搭載。Pixel 8 ProはPixel 8と同じ性能の広角カメラに加え、4800万画素/F値1.95の超広角カメラと4800万画素/F値2.8の望遠カメラを搭載している。なお、前面のカメラはいずれも1050万画素/F値2.2となる。
全体的に多くのイメージセンサーが刷新され、より暗い場所での撮影に強くなったほか、Pixel 8 Proに関しては超広角カメラの画素数が大幅に向上している。Pixelシリーズののカメラといえば、AI技術の活用による加工に重点が置かれていた印象があるが、Pixel 8シリーズではハード面での進化にも重点を置いている印象がうかがえる。
もちろん、AI技術を活用した機能の強化もなされており、新たに追加された機能の1つが「ベストテイク」。これは目を閉じてしまったり、横を向いてしまったりした人の顔を、似ている写真から組み合わせて入れ替えて補正するというもの。同じようなシーンの写真を複数撮る必要があるが、集合写真を撮影する際に便利な機能といえるだろう。
そしてもう1つが「音声消しゴムマジック」。動画の中の雑音を低減してくれるというもので、ノイズキャンセリングイヤホンのような効果が得られるため、外で動画を撮影する時などに役立つ機能だろう。
このほかにも、明るさを補正したり、被写体を移動したりするなどさまざまな調整を施す「編集マジック」がラボ機能として追加されているほか、Pixel 8 Proに向けては動画の色や明るさを調節する「動画ブースト」や、暗い場所で撮影した写真だけでなく動画も明るくする「ビデオ夜景モード」などが後日追加予定だ。AI技術の活用が写真だけでなく、動画に広がっていることには驚きがある。
■新世代チップ「Tensor G3」の性能をゲームプレイでチェック
他にもPixelシリーズには、AI技術を活用した多くの機能が備わっているが、高度なAI技術の実現に貢献しているのがGoogleが独自開発しているチップセット「Tensor」シリーズの存在だ。Pixel 8シリーズは新世代の「Tensor G3」を搭載しており、AI関連処理の一層の高速化がなされたことで、動画にもAI技術を活用できるようになったといえる。
ただTensorシリーズは、他社のハイエンド向けチップセットと比べて、AI関連処理以外の性能が高いとはいえず、高いCPU・GPU性能を必要とするゲーミングでは不利な状況にあったことから、Tensor G3ではCPUやGPUも強化がなされているようだ。ちなみにRAMは、Pixel 8が8GB、Pixel 8 Proが12GBとなっている。
では実際のところ、性能はどの程度のものなのだろうか。主要なゲームで確認してみると、例えば「原神」では「Tensor G2」を搭載した「Pixel 7」の場合、デフォルトのグラフィック設定が5段階中2段階目の「低」と、ミドルクラス並みの設定となっていた。
だが、Tensor G3を搭載したPixel 8のデフォルト設定では、その1つ上となる「中」と、他のハイエンドスマートフォンと同等になっている。加えて設定を「最高」に変え、フレームレートも上げるなどより負荷が高い状態にしてプレイしても、フレーム落ちなどはあまり発生せず快適なプレイが可能だった。
性能強化で気になるのは、発熱とそれによるパフォーマンスの低下だが、少なくとも筆者がゲームを1時間程度プレイして測定してみた限り、両機種ともに前面・背面ともに温度が40度を超えることはなく、パフォーマンスも安定している印象だ。ただ放熱は、側面のアルミフレームからなされているようで、長時間プレイ時は側面が全体的にやや熱くなる点には注意したい。
バッテリー容量はPixel 8が4575mAhで、Pixel 8 Proが5050mAh。サイズの違いからバッテリーの容量に違いはあるが、両機種ともに30Wの急速充電やワイヤレス充電、バッテリーシェアなどにも対応しており安定感がある。
またPixel 8 Proだけの新機能として、温度計機能が搭載されている。Pixel 8 Proの背面、フラッシュの下は温度センサーが用意されており、専用のアプリを用いて非接触での温度測定が可能だ。測定方法は、アプリ上から「タップして測定」を押すだけと非常にシンプルだが、対象物との距離を5cm程度に保つ必要があり、赤外線タイプの非接触温度計と比べると、使い勝手や精度はいまひとつ、といった印象だ。
最後に通信に関してだが、Pixel 8シリーズはともに物理SIM(ナノSIM)とeSIMのデュアルSIM構成で、NTTドコモからも販売されることから5Gの4.5GHz帯(n79)にも対応する。また日本向けモデルは、従来同様FeliCaにも対応し、電子マネーによる決済が利用できる点でも安心感が高い。
総括すると、Pixel 8シリーズは強みとしているAI技術の活用をより広げながらも、ハード面での進化も推し進め、より使い勝手の良いスマートフォンに仕上がっていることは間違いない。とりわけ、前機種での不満要素だったゲーミングに関する性能が大幅に向上したことは、フラグシップモデルとしての競争力を高める上でも、大きなポイントになったといえるだろう。
ただ一方で、Pixel 8が11万2,900円から、Pixel 8 Proが15万9,900円からと、価格面で他のハイエンドモデルとの競争力が薄れてしまったのは悩ましい。
もちろん、AI技術をふんだんに取り入れたスマートフォンとしてPixel 8シリーズは高い魅力を持つが、それ以外の部分に興味を持つ人達にとって、コストパフォーマンスの利点が失われたPixel 8シリーズを積極的に選ぶ理由に乏しくなってしまっただけに、Googleとしても非常に悩ましいところかもしれない。