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公開日 2024/05/10 10:41
【連載】佐野正弘のITインサイト 第107回
“ライカロゴ”のスマホを投入したシャープとXiaomi、実は共通して抱えている課題
佐野正弘
老舗のカメラメーカーである独ライカカメラが、スマートフォンの世界で注目を高めている。その理由は、同社の監修を受けたり、共同開発したりしたカメラを搭載したスマートフォンが相次いで登場しているからだ。
ライカカメラと提携してスマートフォンを共同開発する取り組みを始めたのは、中国のファーウェイ。だが同社が米国から制裁を受け、スマートフォン事業に大きな影響を受けて以降は、日本ではシャープ、それ以外の国や地域では中国のXiaomi(シャオミ)がライカカメラと提携。各社が共に協業でスマートフォンのカメラを開発し、ライカカメラのロゴを冠したスマートフォンを投入するに至っている。
そしてゴールデンウィークが明けた2024年5月、両社は日本でライカカメラのロゴを冠した新機種を相次いで発表している。だがその内容を見ると、同じ「ライカロゴが付いたスマホ」といってもかなりの違いがあるようだ。
5月8日、先に新機種を発表したのはシャープだ。同社は7月以降に発売予定の新機種として「AQUOS R9」と「AQUOS wish4」の2機種を発表しているのだが、このうちライカカメラのロゴが付いているのはAQUOS R9の方である。
AQUOS R9は性能の高いスタンダードモデルで、名前の通り「AQUOS R8」の後継に当たる。ライカカメラの監修を受けていることもあってカメラには力が入れられており、標準カメラだけでなく広角(超広角)カメラ、フロントカメラともに約5030万画素という非常に高い画素数のイメージセンサーを搭載している。
それに加えて標準カメラには、ライカカメラの「ヘクトール」レンズを搭載。また、AQUOS R8と同じく大型の1/1.55インチのイメージセンサーを採用し、なおかつAQUOS R8にはなかった光学式手ブレ補正にも対応することで、暗い場所での撮影にも強くなっているようだ。
ただ一方で、AQUOS R9はあくまでAQUOS R8の後継機。1インチのイメージセンサーを採用した、AQUOS R8シリーズの最上位モデル「AQUOS R8 Pro」の後継機ではない。それゆえ性能は、他社のフラグシップモデルと比べても最高クラスというわけではなく、搭載するチップセットもクアルコム製の「Snapdragon 7+ Gen 3」。性能的に見ればハイエンドではなく、ミドルハイに位置付けられるモデルだ。
性能が抑えられている理由は、記録的な円安と政府主導のスマートフォン値引き規制などによるスマートフォンの大幅な値上がりで、日本で高額なハイエンドモデルの販売が大きく落ち込んでいるためだ。シャープのスマートフォン事業の主戦場は日本市場なので、これだけ厳しい環境下で生き残るため、「売れないハイエンド」より「売れるミドルハイ」を選んだというのが正直なところだろう。
にもかかわらず、コストアップ要因にもなり得るライカカメラとの協業を継続したのはなぜといえば、海外への販売拡大が最大の狙いと言えそうだ。シャープは今回の新製品発表に際して、日本だけでなく台湾とインドネシア、そして新たにシンガポールにもスマートフォン新機種を投入し、再び海外市場開拓を積極化する方針を明確に打ち出している。
国内市場は飽和どころか衰退傾向にあるだけに、家電事業でシャープのブランドが浸透している東南アジアを中心に、海外での市場開拓を進めようとしている。そのための武器の1つとして、ライカカメラ監修のカメラを活用したいというのが同社の狙いといえるのではないだろうか。
一方のXiaomiも、昨日5月9日に開催した新製品発表会で、ライカカメラのロゴを冠したスマートフォン新機種「Xiaomi 14 Ultra」を発表している。
こちらはXiaomiの2024年フラッグシップモデル新機種であり、約5000万画素のイメージセンサーと、ライカカメラの「VARIO-SUMMILUX」レンズを採用した4つのカメラを搭載。加えて広角カメラには、1インチサイズのソニー製イメージセンサー「LYT-900」を採用し、F値が1.63〜4.0まで無段階で可変するシステムを採用するなど、非常に高い機能・性能を備えている。
加えて、オプションの「Xiaomi 14 Ultra フォトグラフィーキット」を装着することで、一般的なデジタルカメラと同じ感覚シャッターやズームなどの操作ができる。スマートフォンのカメラとしては最高クラスの機能・性能を持つことは間違いない。
それだけカメラに強いこだわりを持つだけに、Xiaomi 14 Ultraがカメラをライカカメラと共同開発したのは必然ともいえるだろう。ただこれまで日本ではシャープがライカカメラと協業していたことから、ライカカメラと共同開発したカメラを搭載したスマートフォンの販売に制約があったこともまた確かである。
実際、2023年発売の「Xiaomi 13T」シリーズでは、海外向けモデルではライカカメラと共同開発したカメラを搭載していたが、日本向けモデルでは独自開発のカメラに変更されていた。にもかかわらず、今回その障壁を乗り越えてまで、わざわざライカロゴを冠したかたちでXiaomi 14 Ultraを日本市場に投入したのはなぜだろうか。
その理由は、Xiaomi 14 Ultraの弱点から見えてくる。Xiaomi 14 Ultraはカメラ性能に非常に力が入っている分、カメラ部分が非常に大きいのでスマートフォンとしてのバランスは良いとは言えない。とりわけ本体を横にして映像を視聴したり、ゲームをしたりする際にカメラ部分の出っ張りが邪魔になりやすいからだ。
加えて199,900円という価格を考えても、Xiaomi 14 Ultraは万人向けのモデルとは言い難いのだが、あえて現在のタイミングでそうした機種を投入する狙いは、日本でのブランド確立にあるといえよう。日本市場では参入が後発のXiaomiは、幅広い消費者にブランドが認知されておらず、コストパフォーマンスの面では強みがあるものの、「Xiaomiのスマホが欲しい」と継続的な購買につながりにくい弱点がある。
そこで、性能が非常に高いフラグシップモデルをあえて投入することにより、日本市場での注目度を高めブランド認知を高めるとともに、ファンを増やし継続的な購買へとつなげたいというのが、Xiaomiの狙いといえそうだ。
シャープは海外市場、Xiaomiは日本市場という違いはあるが、ともに従来弱みとしていた市場での存在感を高めるため、ライカカメラとの協業に力を入れている点は非常に興味深い。それだけに、ライカカメラとの取り組みが両社の今後の製品販売にどのような成果をもたらすのか、大いに関心を呼ぶところではないだろうか。
ライカカメラと提携してスマートフォンを共同開発する取り組みを始めたのは、中国のファーウェイ。だが同社が米国から制裁を受け、スマートフォン事業に大きな影響を受けて以降は、日本ではシャープ、それ以外の国や地域では中国のXiaomi(シャオミ)がライカカメラと提携。各社が共に協業でスマートフォンのカメラを開発し、ライカカメラのロゴを冠したスマートフォンを投入するに至っている。
■ライカカメラのロゴを冠した新機種が相次いで発表
そしてゴールデンウィークが明けた2024年5月、両社は日本でライカカメラのロゴを冠した新機種を相次いで発表している。だがその内容を見ると、同じ「ライカロゴが付いたスマホ」といってもかなりの違いがあるようだ。
5月8日、先に新機種を発表したのはシャープだ。同社は7月以降に発売予定の新機種として「AQUOS R9」と「AQUOS wish4」の2機種を発表しているのだが、このうちライカカメラのロゴが付いているのはAQUOS R9の方である。
AQUOS R9は性能の高いスタンダードモデルで、名前の通り「AQUOS R8」の後継に当たる。ライカカメラの監修を受けていることもあってカメラには力が入れられており、標準カメラだけでなく広角(超広角)カメラ、フロントカメラともに約5030万画素という非常に高い画素数のイメージセンサーを搭載している。
それに加えて標準カメラには、ライカカメラの「ヘクトール」レンズを搭載。また、AQUOS R8と同じく大型の1/1.55インチのイメージセンサーを採用し、なおかつAQUOS R8にはなかった光学式手ブレ補正にも対応することで、暗い場所での撮影にも強くなっているようだ。
ただ一方で、AQUOS R9はあくまでAQUOS R8の後継機。1インチのイメージセンサーを採用した、AQUOS R8シリーズの最上位モデル「AQUOS R8 Pro」の後継機ではない。それゆえ性能は、他社のフラグシップモデルと比べても最高クラスというわけではなく、搭載するチップセットもクアルコム製の「Snapdragon 7+ Gen 3」。性能的に見ればハイエンドではなく、ミドルハイに位置付けられるモデルだ。
性能が抑えられている理由は、記録的な円安と政府主導のスマートフォン値引き規制などによるスマートフォンの大幅な値上がりで、日本で高額なハイエンドモデルの販売が大きく落ち込んでいるためだ。シャープのスマートフォン事業の主戦場は日本市場なので、これだけ厳しい環境下で生き残るため、「売れないハイエンド」より「売れるミドルハイ」を選んだというのが正直なところだろう。
にもかかわらず、コストアップ要因にもなり得るライカカメラとの協業を継続したのはなぜといえば、海外への販売拡大が最大の狙いと言えそうだ。シャープは今回の新製品発表に際して、日本だけでなく台湾とインドネシア、そして新たにシンガポールにもスマートフォン新機種を投入し、再び海外市場開拓を積極化する方針を明確に打ち出している。
国内市場は飽和どころか衰退傾向にあるだけに、家電事業でシャープのブランドが浸透している東南アジアを中心に、海外での市場開拓を進めようとしている。そのための武器の1つとして、ライカカメラ監修のカメラを活用したいというのが同社の狙いといえるのではないだろうか。
一方のXiaomiも、昨日5月9日に開催した新製品発表会で、ライカカメラのロゴを冠したスマートフォン新機種「Xiaomi 14 Ultra」を発表している。
こちらはXiaomiの2024年フラッグシップモデル新機種であり、約5000万画素のイメージセンサーと、ライカカメラの「VARIO-SUMMILUX」レンズを採用した4つのカメラを搭載。加えて広角カメラには、1インチサイズのソニー製イメージセンサー「LYT-900」を採用し、F値が1.63〜4.0まで無段階で可変するシステムを採用するなど、非常に高い機能・性能を備えている。
加えて、オプションの「Xiaomi 14 Ultra フォトグラフィーキット」を装着することで、一般的なデジタルカメラと同じ感覚シャッターやズームなどの操作ができる。スマートフォンのカメラとしては最高クラスの機能・性能を持つことは間違いない。
それだけカメラに強いこだわりを持つだけに、Xiaomi 14 Ultraがカメラをライカカメラと共同開発したのは必然ともいえるだろう。ただこれまで日本ではシャープがライカカメラと協業していたことから、ライカカメラと共同開発したカメラを搭載したスマートフォンの販売に制約があったこともまた確かである。
実際、2023年発売の「Xiaomi 13T」シリーズでは、海外向けモデルではライカカメラと共同開発したカメラを搭載していたが、日本向けモデルでは独自開発のカメラに変更されていた。にもかかわらず、今回その障壁を乗り越えてまで、わざわざライカロゴを冠したかたちでXiaomi 14 Ultraを日本市場に投入したのはなぜだろうか。
その理由は、Xiaomi 14 Ultraの弱点から見えてくる。Xiaomi 14 Ultraはカメラ性能に非常に力が入っている分、カメラ部分が非常に大きいのでスマートフォンとしてのバランスは良いとは言えない。とりわけ本体を横にして映像を視聴したり、ゲームをしたりする際にカメラ部分の出っ張りが邪魔になりやすいからだ。
加えて199,900円という価格を考えても、Xiaomi 14 Ultraは万人向けのモデルとは言い難いのだが、あえて現在のタイミングでそうした機種を投入する狙いは、日本でのブランド確立にあるといえよう。日本市場では参入が後発のXiaomiは、幅広い消費者にブランドが認知されておらず、コストパフォーマンスの面では強みがあるものの、「Xiaomiのスマホが欲しい」と継続的な購買につながりにくい弱点がある。
そこで、性能が非常に高いフラグシップモデルをあえて投入することにより、日本市場での注目度を高めブランド認知を高めるとともに、ファンを増やし継続的な購買へとつなげたいというのが、Xiaomiの狙いといえそうだ。
シャープは海外市場、Xiaomiは日本市場という違いはあるが、ともに従来弱みとしていた市場での存在感を高めるため、ライカカメラとの協業に力を入れている点は非常に興味深い。それだけに、ライカカメラとの取り組みが両社の今後の製品販売にどのような成果をもたらすのか、大いに関心を呼ぶところではないだろうか。