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公開日 2022/06/24 18:24
ウイルスのヒトへの移転はなかったとのこと
豚の心臓移植した初の男性、いまだ死因不明。疑惑の豚特有ウイルスは確証なし【Gadget Gate】
Munenori Taniguchi
今年1月に豚からの異種心臓移植を受けた米国のデヴィッド・ベネット氏は、移植から2か月後に急死した。当時、死因は豚サイトメガロウイルスと称する、豚特有のウイルスが心臓に含まれていたとされ、ウィルスがなければベネット氏がもっと長く生存できたと言われていた。ところが、査読制医学誌The New England Journal of Medicineに掲載された情報によると、正確な死因はまだ不明だという。
通常なら、ブタからヒトへの異種心臓移植は認められるものではない。しかし今回のケースでは、患者は末期の心臓病を患っており、通常の心臓移植を待つ余裕もなかったことから、米国食品医薬品局(FDA)が特別な許可を出して移植手術が行われた。なお、移植する心臓は拒絶反応を無くすために10種類の遺伝子操作が施され、安全な施設で準備された。
手術は成功し、拒絶反応もなく、数日後には人工心肺も取り外すことができた。ベネット氏はリハビリを開始し、順調に回復しているかのように見えていた。ところが約7週間が過ぎたころから心臓に障害が現れはじめ、残念なことにそこから2週間経たずしてベネット氏は亡くなってしまった。
今回の報告では、移植手術に携わったバートリー・グリフィス医師らが死因について記している。当初は死亡の原因が単に心不全とされたが、解剖の結果、やはり拒絶反応などではなく、心室を仕切る壁の部分が異常に分厚くなって(肥厚して)硬化し、拡張期心不全に至ったとのことだ。この症状は拒絶反応とは関係がなく、どうして引き起こされたのかが、まだ正確にはわかっていない。
研究グループは「収縮機能障害を伴わない突然の拡張期不全と、病理学的な心筋の肥厚は説明されていない。これらの所見は通常、ヒトとヒトの間の移植では見られない」としている。
グリフィス氏はまた、当初疑われた豚サイトメガロウイルスが、豚の心臓からヒトの臓器に拡散した形跡は見られなかったと報告している。そして豚の心臓そのものに何らかの影響を与えた可能性はあるものの、この仮説にはさらに詳しい調査が必要だと指摘した。しかし移植された心臓は、事前にウィルス感染を防ぐための安全な施設で準備されているため、死亡後に発見されたウイルスは、研究者らにとって依然大きな疑問となっている。
研究の共同責任者であるムハンマド・モフディーン氏は、今後このウイルスの感染防止のために安全対策が強化されるだろうと述べ、「われわれはこれを貴重な学習の機会だと考え、今後は移植の方法やそのための技術なども変えていくことになるだろう」とした。
一方、メリーランド大学医学部の学長であるE・アルバート・リース氏は「この論文は、異種移植の研究者たちに貴重な情報を提供し、この分野の医療を前進させるための極めて重要な役割を果たすだろう」とし、心臓の心室壁が肥大化した原因と、ウィルスの混入経路の解明によって、異種移植が「順番待ちで命を落とす患者を無くすための、長期的な解決策につながることを願う」とコメントしている。
Source: The New England Journal of Medicine
via: MedPageToday, Wall Street Journal
※この記事は、現在プレオープン中のテック/ガジェット系メディア「Gadget Gate」から転載したものです。
通常なら、ブタからヒトへの異種心臓移植は認められるものではない。しかし今回のケースでは、患者は末期の心臓病を患っており、通常の心臓移植を待つ余裕もなかったことから、米国食品医薬品局(FDA)が特別な許可を出して移植手術が行われた。なお、移植する心臓は拒絶反応を無くすために10種類の遺伝子操作が施され、安全な施設で準備された。
手術は成功し、拒絶反応もなく、数日後には人工心肺も取り外すことができた。ベネット氏はリハビリを開始し、順調に回復しているかのように見えていた。ところが約7週間が過ぎたころから心臓に障害が現れはじめ、残念なことにそこから2週間経たずしてベネット氏は亡くなってしまった。
今回の報告では、移植手術に携わったバートリー・グリフィス医師らが死因について記している。当初は死亡の原因が単に心不全とされたが、解剖の結果、やはり拒絶反応などではなく、心室を仕切る壁の部分が異常に分厚くなって(肥厚して)硬化し、拡張期心不全に至ったとのことだ。この症状は拒絶反応とは関係がなく、どうして引き起こされたのかが、まだ正確にはわかっていない。
研究グループは「収縮機能障害を伴わない突然の拡張期不全と、病理学的な心筋の肥厚は説明されていない。これらの所見は通常、ヒトとヒトの間の移植では見られない」としている。
グリフィス氏はまた、当初疑われた豚サイトメガロウイルスが、豚の心臓からヒトの臓器に拡散した形跡は見られなかったと報告している。そして豚の心臓そのものに何らかの影響を与えた可能性はあるものの、この仮説にはさらに詳しい調査が必要だと指摘した。しかし移植された心臓は、事前にウィルス感染を防ぐための安全な施設で準備されているため、死亡後に発見されたウイルスは、研究者らにとって依然大きな疑問となっている。
研究の共同責任者であるムハンマド・モフディーン氏は、今後このウイルスの感染防止のために安全対策が強化されるだろうと述べ、「われわれはこれを貴重な学習の機会だと考え、今後は移植の方法やそのための技術なども変えていくことになるだろう」とした。
一方、メリーランド大学医学部の学長であるE・アルバート・リース氏は「この論文は、異種移植の研究者たちに貴重な情報を提供し、この分野の医療を前進させるための極めて重要な役割を果たすだろう」とし、心臓の心室壁が肥大化した原因と、ウィルスの混入経路の解明によって、異種移植が「順番待ちで命を落とす患者を無くすための、長期的な解決策につながることを願う」とコメントしている。
Source: The New England Journal of Medicine
via: MedPageToday, Wall Street Journal
※この記事は、現在プレオープン中のテック/ガジェット系メディア「Gadget Gate」から転載したものです。
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