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公開日 2022/10/05 19:15
エンタメ領域への展開も見据える
ソニー、40種の「におい」を瞬間放出・測定できる機器 。新開発「Tensor Valveテクノロジー」搭載
編集部:伴 修二郎
ソニーは、嗅素を手軽に制御できる独自技術「Tensor Valveテクノロジー」を新開発。あわせて同技術を搭載した嗅覚測定スマート機器「NOS-DX1000」を2023年春に発売する。価格はオープンだが、市場推定価格は税込230万円前後。
「Tensor Valveテクノロジー」は、ソニーが注力する感動体験のベースとなる五感のなかで、これまで同社が開発してきた「視覚」「聴覚」「触覚」に加え、新たに「嗅覚」へ挑戦したもの。多数の嗅素(においの素)を手軽に制御し、混在させず均一に放出することが可能になった。
「NOS-DX1000」は、その独自技術Tensor Valveテクノロジーを採用し、嗅覚に関する研究や測定などに向け、においを瞬間的に放出し、測定できる機器。医療機関や研究機関、自治体などでの嗅覚測定や嗅覚トレーニング、においサンプルの確認や検証などを主な用途として想定している。
NOS-DX1000は、専用のタブレット上で40種から選択したにおいを瞬間的に放出でき、手先が嗅素で汚染される恐れや、操作時に他の異なる嗅素が混ざることを防ぐなど、様々なリスクを回避できる。
本体には、アレイ上に連なる40種の嗅素成分を含んだカートリッジを即座に切り替える「ワイヤ式リニアアクチュエータ」を40機搭載。独自開発したにおい漏れを抑制する高気密カートリッジ技術も採用している。
さらに、ソニーのパーソナルアロマディフューザー“AROMASTIC”で培ったカートリッジ流路技術も採用。その技術をさらに発展させた「らせん流路構造」を採用し、においの気流が巡るように設計した。強いにおいの嗅素でも密閉し、本体に内蔵された脱臭機構の気流制御により、放出したにおいを速やかに除去し、空気の汚染を抑制するという。
また嗅覚の測定も手軽に行えるようにした。従来の嗅覚測定では、測定時間に30分以上を要し、試薬の発する臭気を逃さないために専用空調設備のある試験室が必要だった。本機を導入し、測定のワークフローをDX化することで、脱臭装置や専門の部屋を必要とせず、より手軽な運用が可能になるという。
嗅覚の測定は、専用アプリを用いることで、結果を簡単に記録し、アプリ上で比較表示・分析できる。Wi-Fiや二次元コード、USBなどで測定データを転送できるほか、Bluetoothプリンターを用いて感熱紙へ出力することも可能だ。
さらに環境配慮の一環として、同社が独自開発した様々な再生材を採用することで、バージンプラスチックの使用量を削減。被験者ごとに取替えが必要な使い捨てのノーズガイドには、米の籾殻から生まれた天然由来の多孔質カーボン素材トリポーラスと、竹や紙などをリサイクルした原料を配合した新素材を使用している。消耗品の専用カートリッジの一部には、難燃性再生プラスチック「SORPLAS」も使われている。
消費電力は最大約6W。外形寸法は約374W×378H×235Dmm、質量は約5.2kg。なお、同社がパートナーシップを結んだ第一薬品産業(株)が、2023年春に、NOS-DX1000専用のOTカートリッジの発売を予定している。価格や販売方法は未定。
そして本日10月5日、ソニー本社にてメディア向けの発表会も実施された。ソニー(株)より新規ビジネス・技術開発本部 副本部長の櫨本修氏が登壇し、これから新たに展開する嗅覚事業について説明した。
「本能、感情、記憶にダイレクトに関わる要素として“嗅覚”に着目している」と切り出した櫨本氏。「これまで嗅覚について取り扱うことは長らく困難だったが、今回の新技術を通し、エンターテイメントの領域においても新しい体験を創出することを考えている」と、メディカルにとどまらない新たな領域への展開にも意欲を示した。
続いて、新規ビジネス・技術開発本部 ビジネスインキュベーション部 嗅覚事業推進室 室長の藤田修二氏が登壇。新製品NOS-DX1000について説明した。
嗅覚測定の重要性について「認知症やパーキンソン病では、発症前から嗅覚の低下がみられる」と指摘。「発症前の早いタイミングで早期発見し対処することで、発症のリスクを抑えられる」と、におい放出装置の意義をアピールした。
現状の嗅覚測定では手間や時間がかかることや、においが室内に充満することなどが課題となっているが、「視力測定のような手軽さで行えるようになれば、より早期発見に繋がる」と、今後の嗅覚測定のニーズの高まりを期待する。
最後に今後の展開として「これまで難しかった、医療現場での嗅覚活用によって、従来とは異なる方向性から健康維持に貢献できる。今後は健康診断への展開や、実際の医療の現場での使用に向けた保険適用に向けて動いていきたい」と力を込めた。
さらに、本製品の開発に携わった金沢医科大学 耳鼻咽喉科学・三輪高喜教授および東海国立大学機構 名古屋大学 大学院医学系研究科 神経内科学・勝野雅央教授をゲストスピーカーに迎え、ソニーの藤田氏と共にパネルディスカッションが行われた。
嗅覚医療を扱う三輪教授は、今の嗅覚と疾患の関係性について「嗅覚障害の最も大きな要因となる蓄膿症や昨今のコロナの後遺症など、嗅覚測定は日々欠かせないものになってきている」と嗅覚医療がますます重要になっていると訴えた。
認知症などの最先端医療に携わる勝野教授は「アルツハイマーや認知症などの前触れ症状として、嗅覚が低下することがわかっている」として、「そこを的確に測定できれば早期発見、早期治療に繋がる」と期待を寄せた。
続けて、現在の嗅覚測定の実態について三輪教授は「様々なにおいがあるため、それが検査室にこもったり服に付着するなど、測定に支障を来す恐れがある」と説明。実際に通常の嗅覚測定方法について解説した。
本製品の印象について三輪教授は「機械の手でここまでできるのかと驚いた」、勝野教授は「開発が進み、ソニーらしい洗練されたデザインになった。医療機器には少ない優しい親しみのあるデザインであることは、検査を受ける患者の立場からみると重要」と語った。
ソニーに期待する点について両者は、「健康診断などで使われると早期治療や予防につながるので、ソニーにキープレイヤーになってもらいたい」「保険適用に至るまで、これまでのデータとの互換性や機器に対する安定性をクリアする必要がある。ぜひ我々も協力して進めていきたい」とコメント。今後の展開に期待を寄せた。
「Tensor Valveテクノロジー」は、ソニーが注力する感動体験のベースとなる五感のなかで、これまで同社が開発してきた「視覚」「聴覚」「触覚」に加え、新たに「嗅覚」へ挑戦したもの。多数の嗅素(においの素)を手軽に制御し、混在させず均一に放出することが可能になった。
「NOS-DX1000」は、その独自技術Tensor Valveテクノロジーを採用し、嗅覚に関する研究や測定などに向け、においを瞬間的に放出し、測定できる機器。医療機関や研究機関、自治体などでの嗅覚測定や嗅覚トレーニング、においサンプルの確認や検証などを主な用途として想定している。
NOS-DX1000は、専用のタブレット上で40種から選択したにおいを瞬間的に放出でき、手先が嗅素で汚染される恐れや、操作時に他の異なる嗅素が混ざることを防ぐなど、様々なリスクを回避できる。
本体には、アレイ上に連なる40種の嗅素成分を含んだカートリッジを即座に切り替える「ワイヤ式リニアアクチュエータ」を40機搭載。独自開発したにおい漏れを抑制する高気密カートリッジ技術も採用している。
さらに、ソニーのパーソナルアロマディフューザー“AROMASTIC”で培ったカートリッジ流路技術も採用。その技術をさらに発展させた「らせん流路構造」を採用し、においの気流が巡るように設計した。強いにおいの嗅素でも密閉し、本体に内蔵された脱臭機構の気流制御により、放出したにおいを速やかに除去し、空気の汚染を抑制するという。
また嗅覚の測定も手軽に行えるようにした。従来の嗅覚測定では、測定時間に30分以上を要し、試薬の発する臭気を逃さないために専用空調設備のある試験室が必要だった。本機を導入し、測定のワークフローをDX化することで、脱臭装置や専門の部屋を必要とせず、より手軽な運用が可能になるという。
嗅覚の測定は、専用アプリを用いることで、結果を簡単に記録し、アプリ上で比較表示・分析できる。Wi-Fiや二次元コード、USBなどで測定データを転送できるほか、Bluetoothプリンターを用いて感熱紙へ出力することも可能だ。
さらに環境配慮の一環として、同社が独自開発した様々な再生材を採用することで、バージンプラスチックの使用量を削減。被験者ごとに取替えが必要な使い捨てのノーズガイドには、米の籾殻から生まれた天然由来の多孔質カーボン素材トリポーラスと、竹や紙などをリサイクルした原料を配合した新素材を使用している。消耗品の専用カートリッジの一部には、難燃性再生プラスチック「SORPLAS」も使われている。
消費電力は最大約6W。外形寸法は約374W×378H×235Dmm、質量は約5.2kg。なお、同社がパートナーシップを結んだ第一薬品産業(株)が、2023年春に、NOS-DX1000専用のOTカートリッジの発売を予定している。価格や販売方法は未定。
そして本日10月5日、ソニー本社にてメディア向けの発表会も実施された。ソニー(株)より新規ビジネス・技術開発本部 副本部長の櫨本修氏が登壇し、これから新たに展開する嗅覚事業について説明した。
「本能、感情、記憶にダイレクトに関わる要素として“嗅覚”に着目している」と切り出した櫨本氏。「これまで嗅覚について取り扱うことは長らく困難だったが、今回の新技術を通し、エンターテイメントの領域においても新しい体験を創出することを考えている」と、メディカルにとどまらない新たな領域への展開にも意欲を示した。
続いて、新規ビジネス・技術開発本部 ビジネスインキュベーション部 嗅覚事業推進室 室長の藤田修二氏が登壇。新製品NOS-DX1000について説明した。
嗅覚測定の重要性について「認知症やパーキンソン病では、発症前から嗅覚の低下がみられる」と指摘。「発症前の早いタイミングで早期発見し対処することで、発症のリスクを抑えられる」と、におい放出装置の意義をアピールした。
現状の嗅覚測定では手間や時間がかかることや、においが室内に充満することなどが課題となっているが、「視力測定のような手軽さで行えるようになれば、より早期発見に繋がる」と、今後の嗅覚測定のニーズの高まりを期待する。
最後に今後の展開として「これまで難しかった、医療現場での嗅覚活用によって、従来とは異なる方向性から健康維持に貢献できる。今後は健康診断への展開や、実際の医療の現場での使用に向けた保険適用に向けて動いていきたい」と力を込めた。
さらに、本製品の開発に携わった金沢医科大学 耳鼻咽喉科学・三輪高喜教授および東海国立大学機構 名古屋大学 大学院医学系研究科 神経内科学・勝野雅央教授をゲストスピーカーに迎え、ソニーの藤田氏と共にパネルディスカッションが行われた。
嗅覚医療を扱う三輪教授は、今の嗅覚と疾患の関係性について「嗅覚障害の最も大きな要因となる蓄膿症や昨今のコロナの後遺症など、嗅覚測定は日々欠かせないものになってきている」と嗅覚医療がますます重要になっていると訴えた。
認知症などの最先端医療に携わる勝野教授は「アルツハイマーや認知症などの前触れ症状として、嗅覚が低下することがわかっている」として、「そこを的確に測定できれば早期発見、早期治療に繋がる」と期待を寄せた。
続けて、現在の嗅覚測定の実態について三輪教授は「様々なにおいがあるため、それが検査室にこもったり服に付着するなど、測定に支障を来す恐れがある」と説明。実際に通常の嗅覚測定方法について解説した。
本製品の印象について三輪教授は「機械の手でここまでできるのかと驚いた」、勝野教授は「開発が進み、ソニーらしい洗練されたデザインになった。医療機器には少ない優しい親しみのあるデザインであることは、検査を受ける患者の立場からみると重要」と語った。
ソニーに期待する点について両者は、「健康診断などで使われると早期治療や予防につながるので、ソニーにキープレイヤーになってもらいたい」「保険適用に至るまで、これまでのデータとの互換性や機器に対する安定性をクリアする必要がある。ぜひ我々も協力して進めていきたい」とコメント。今後の展開に期待を寄せた。
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