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公開日 2022/08/24 18:02
Mac OS版アプリも9月中に提供開始

ARグラス「Nreal Air」がiPhoneやSwitchで使えるように。専用アダプター発売

編集部:川田菜月
Nreal Japanは、同社のARグラス「Nreal Air」の専用3Dインタラクティブアプリケーション「Nebula」において、Mac OS版を9月中にリリースすると発表。また、iPhoneやNintendo Switchなどとの接続を可能にするアダプター「Nreal Adapter」を、9月末に発売する。価格は8,980円(税込)。

iPhoneやNintendo Switchなどとの接続を可能にするアダプター「Nreal Adapter」が登場

Nreal Airは、対応スマホなどとUSB-Cで接続・ミラーリングし、動画やWebブラウザなどのコンテンツを大画面で楽しめるというARグラス。ディスプレイ部にはソニー製のマイクロOLEDチップを搭載し、高密度かつ高解像度な映像を、約130インチ相当のサイズで投写可能となっている。

ARグラス「Nreal Air」

画面表示は両眼で3,840×1,080ピクセル、sRGB 108%の色域をカバーし、最大輝度は400nits。コントラスト比 100,000:1で、角解像度(単位角度あたりの画素数)は49ピクセル(PPD)となる。

従来モデル「Nreal Light」の後継として、20%の軽量化および、連続稼働時間の最大50%向上を実現。質量は約79gで持ち運びしやすく、コンパクトかつファッションブルなデザインとし、幅広いシーンで使用できるモデルだとしている。

2022年2月に世界各国での販売に先駆けて日本で先行販売を開始しており、このたび8月23日より中国、アメリカでの予約販売もスタート。本格的なグローバル展開を進めていく。

専用の3Dインタラクティブアプリケーション「Nebula」では、接続したスマートフォンの画面をNrealのARグラスにミラーリングして大画面で楽しめる「Air Casting」機能と、ARグラス内の仮想3次元空間上に複数コンテンツを同時に映し出すことができる「MR Space」機能の2つを用意。Nebulaを介して、スマートフォン上でNrealのARグラスに映し出した画面操作が行える。

「Nebula」には2つの機能を備える

Nreal Airでは、Air Casting使用時に4mで130インチの投影が可能で、MR Space使用時には6mで201インチの大画面モードを実装している。

このたび、アプリのMac OS版を9月中にリリースする。Air Casting、MR Spaceの両機能をMac PCでも利用できるようになる。なお、MR Space機能で複数ブラウザをマルチスクリーン表示する際、Android版は最大5画面となるが、Mac OS版は最大3画面までとなる。Windows PC版については対象となる端末数が非常に多く、開発には時間を要するとのことだが、研究は進められているという。

Mac OS版の専用アプリ「Nebula」が9月中にリリースされる

また同社は、充電式の変換アダプター「Nreal Adapter」も同時に発表した。HDMI出力端子を備えており、市販のHDMI変換コネクトと組み合わせることで、iPhoneなどのLightning端子対応機や、HDMI端子を備えたNintendo Switchなどのゲーム機器など、これまで使用できなかったデバイスにもNreal Airを接続することができるようになる。

HDMI端子部はスライドして着脱可能になっており、この部分をLightningアダプターと付け替えることでiPhoneなどと接続できる

「Nreal Adapter」

Nreal Airの発表当初より接続対応デバイスについて、Androidスマートフォンだけでなく「別途デバイスを用いたiOSデバイスへの対応を予定」「AppleのiOSデバイスとの互換性を提供する世界初のARデバイス」としており、実際に製品リリースから半年の間、ユーザーからも対応を求める多くの声があって、このたびNreal Adapterによってそれが実現したという。

なお、iOSデバイスへの対応に関して、「一部機能については制限される可能性もある」と当初から説明されていたとおり、専用アプリ「Nebula」のiOS版はまだ用意されていない。アダプターを介してiPhone側のミラーリング機能を利用し、スマホ画面の投影をするかたちだ。

機能制限はあるものの、アダプター登場により接続対応デバイスの幅が広がる

また、Nreal AdapterはHDMI端子を備えているが、接続先はゲーム機に限ったものではないとのこと。あくまで「HDMI端子によってデバイスと接続して投影できる」ものであり、対応端末については精査しきれていない部分もあるという。

現時点ではNintendo Switchとの対応は確認できており、XboxやPlayStationはテスト段階。ソフト側を徐々にアップデートしていく予定で、今後プレーヤーと接続してのBlu-ray再生も可能になることが見込まれるとした。

今年2月、Nreal Airと同時に、Display Port出力に非対応のスマホユーザー向けに、ワイヤレス接続でそれを実現する「Nreal Streaming Box」も発売している。この度発表されたNreal Adapterでは有線接続となるが、映像や音声の遅延などの面で接続の安定性は高まると考えられる。なお、Nreal Streaming Boxは現在生産中止状態。部品の一部が生産できなくなってしまったとのことで、今後製造再開の見込みはたっていないという。

同社は本日8月24日に、「Nreal Japan 新製品発表会」を開催。Mac OS版Nebulaのリリース、Nreal Adapterの製品紹介のほか、国内での状況や今後のグローバル展開に向けての戦略などについて、Nreal副社長兼日本Nreal代表取締役の呂 正民氏が説明した。

呂氏は、Nreal Airには3つのポイントがあるとし、最初にデザインを挙げて紹介した。ユーザーがARをもっと身近なものとして積極的に使いたくなるような製品を目指し、軽量かつ持ち運びやすく、身につけていても不自然にならないファッショナブルなアイテムに仕上げたとアピールする。

130インチの投影を可能にする「OPTICS 2.0 Engine」も重要であり、同社では、高精度な開発・製造を実現すべく、世界初だというオプティカルモジュールの自動化製造施設を中国に設立。高品質な製品を安定して供給できる体制整備を進めているのだという。

オプティカルモジュールの自動化製造施設を中国に設立

また安全性にも配慮しており、Nreal Airではブルーライト低減、フリッカーフリー、アイコンフォートのテュフラインランド認証を受けているとのこと。特にアイコンフォートは、認証を受けているディスプレイの数が世界でも多くなく、ARグラスにおいてはNreal Airが世界初、かつ唯一のモデルという。「目との距離が近いと悪影響を及ぼすのでは?と懸念するかもしれないが、十分に配慮した設計を施している」とアピールした。

同社は世界に先駆けて、日本での市場展開を推進している。コンシューマー向け販売も日本が最初であり、Amazon、ビックカメラ、ヨドバシカメラ、ヤマダ電機などの量販店でも取り扱いされている。

日本Nreal Marketing Managerの下高原沙也佳氏によると、実際の販売状況も好調で、「販売目標数値はクリアしてる」「Nreal Lightと比較すると売上は10倍」だという。

また、これまでは専用アプリ「Nebula」がハイエンドのAndroidスマートフォンだけ対応していたが、Nreal Adapterの登場を皮切りに、iPhoneユーザーやゲームユーザーなどより幅広い層にも広がっていくことを期待しているとした。

なお、NebulaアプリのiOS対応については、まだ目処は立っていないとのこと。日本ほどiPhoneユーザーが多い国は珍しく、海外ではAndroidユーザーが7割近いという背景もあって、「少し足踏みしている状態」なのだという。

ただ、日本市場に対しては呂氏いわく「他の国と比べても関心度が高い。ARグラス、新しい技術そのものに関心の高いユーザーが多い。映画やアニメなどコンテンツも豊富に有る」とし、とても大きな市場と捉えていると説明する。実際、日本で展開をスタートした際、多数のパートナー企業と新しいコンテンツ開発を推進しており、今後もコンテンツ拡充を図っていくとした。

技術が発展するにつれ、動画などのコンテンツを楽しむためにディスプレイの大画面化が進む一方で、スマートフォンの登場・普及によってデバイスの携帯性も重要視されるようになっているとし、「大画面と携帯性の両立ができるのがARグラスだ」と呂氏は説明する。

世界的にも、今後XR/ARデバイスの普及は拡大するとみられている。実際ARデバイスの出荷台数は、2020年から2021年の1年の間で、市場全体で231%、コンシューマー向けデバイスは161%も増加している。

その中でコンシューマーAR市場のシェア率は、Nrealが席巻している。2020年には30%程度だったところ、2022年上半期現在では81%を獲得し、世界一の市場シェアを占めている。

2022年上半期で世界シェアトップに

さらなる拡大を目指し、ARグラスをもっと日常生活に積極的に取り入れてもらうべく、コンシューマーのみだけでなく、開発企業や公共施設、自治体などにもアプローチを図り、「現在のARに対する認識を変えていきたい」と力を込めた。また将来的にはワイヤレス化の実現も目指しているとのこと。

さらに、今後については「ARグラスの普及にともない、生活や人生までもが変わるようなアプリケーションが次々と生まれる。今までとは全く異なる体験が広がる」とし、「新しいデジタルライフを世界中のあらゆる人々に提供していきたいと考えている。皆さんの予想するよりももっと早く、AR時代が訪れると信じている」と語った。

Nreal Airを実際に体験



発表会会場には体験スペースも用意。実際にiPhoneとの接続や、アプリの動きなどを体験してきた。

体験スペースで実際にNreal Airをつけてみた

本体はいわゆるウェリントン型のサングラスのようなデザインと形状で、ディスプレイ部はシースルー構造となっている。このため、使用しながら周囲の状況も同時に確認が可能。またテンプルは3つの位置で調整が可能で、装着者に合わせて最適な視聴角度で使用することができる。

ディスプレイ部分

昨今では音楽リスニングや通話が楽しめるオーディオグラスなど、メガネ型のウェアラブル製品が増えてきているが、鼻の高さの違いなどを考慮し、欧米/アジア向けで主にノーズパッドの形状の最適化を図るケースも多い。

Nreal Airではそうした本体形状の違いはなく、グローバルで同一仕様とのこと。なお、地域別に分けてはいないものの、従来モデルのNreal Lightと比較して、Nreal Airではあらゆる国で多くのユーザーが利用しやすいよう改善しているという。頭幅の対応サイズも若干拡大されており、120 - 186mmまでカバーするとのこと。

また、従来モデルよりノーズパッドが複数用意されており、Nreal AirではS/M/Lの3種を同梱している。これにより自身のフィット感に合わせて調整することができ、上述したテンプルの角度調整と合わせて、ユーザーそれぞれに合った視認性と快適な装着感の両立が可能になるようだ。

ノーズパッドは3サイズ。写真はM

体験スペースで使用できる製品には、Mサイズのノーズパッドが装着された状態。記者にとっては全体的に少し大きめに感じた。また、手に持つと全体的に軽量なのだが、バランスとしてはグラス部分に若干重みが偏っている。装着すると両耳と鼻の3か所で支えるため、そのグラス部分が少し下がってきたので、やはりまだ装着者にある程度の鼻の高さが求められているように思った。

装着した様子

グラス部分に若干重みのバランスが偏るが、全体的にはかるい

iPhoneとのNreal Adapterを介して接続する。iPhone側ですぐに認識し、Nreal Airの画面上にスマホ画面がそのまま映し出された。くっきりとした明るい映像表示で見やすい投影だ。

iPhoneとのNreal Adapterを介して接続

Android端末との組み合わせでマルチスクリーン表示ができるMR Space機能を試すと、対応アプリのアイコンなどが並んだ画面が表示される。パノラマのように横に広がっており、画面をスライトさせながらコンテンツを選択できる。

スマートフォンがリモコン代わりに

この際、接続したスマートフォンがリモコン代わりになり、見えている視界に向けてスマホを向けるとレーザーが出現し、ポインターとなってタップ操作などが行えるようになる。操作は滑らかでカクつきなどもなく快適だった。

画面の表示範囲でタップすることで操作できる

Nreal Airには、テンプルの耳にかかる部分に左右1つずつ、合計2つの開放型スピーカーを搭載。無指向性MEMSマイクもデュアル構成で内蔵する。ゲーム内の音など、耳元から回り込むようにして再生され、臨場感を高めてくれる。

このほか機能面ではバスブーストや、ノイズキャンセル、ビームフォーミングなどを採用しており、従来モデルよりもオーディオ性能は向上している。

一方、環境認識機能は3DoF ヘッドトラッキングのみ対応。2基のカメラを内蔵していた従来モデルでは、6DoFに対応し、このほかハンドトラッキングやイメージトラッキング、平面検出なども備えていたが、現時点ではNreal Airにハンドトラッキング機能などを追加する予定はないという。

対応コンテンツについては、この3DoF ヘッドトラッキングのみという点で、より自由度の高い6DoF対応モデルと比べて、開発がさほど大きく前進してこなかった部分もあるとしつつ、直近で開発者向けミーティングの開催やSDKの公開などが進められ、「3DoFでできることを開発者らと共有している。今後はコンテンツがより拡充がされていくと期待してほしい」とした。

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