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公開日 2024/10/25 12:44
オートモーティブ向け新SoCを解説レポート!
Snapdragonが先進ドライブ体験を変える、カスタムCPUを載せたEliteシリーズの車載向けSoCを発表
山本 敦
米クアルコムが、通信機能を持つソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)車両向けに「Snapdragon Digtal Chassis」として提供する開発プラットフォームに、カスタムメイドのOryon CPUを搭載する新しい2つのSoCを発表した。「Snapdargon Cockpit Elite」と「Snapdragon Ride Elite」が変える自動車の未来を解説する。
昨今ではソフトウェア、あるいはAIに関連するデジタルテクノロジーが自動車開発のトレンドに大きな影響を与えている。クアルコムは魅力あるドライブ体験と安全な運転を支援するために、得意とする半導体開発のテクノロジーをパッケージにしたSnapdragon Digtal Chassisを2022年から提供してきた。
ソフトウェア・デファインド・ビークルとは双方向の通信機能を備え、AIを含むソフトウェアによる新しい付加価値を更新しながら提供できるコネクテッドカーのコンセプトだ。例えばソニー・ホンダモビリティが2025年に北米市場で発売を予定するEV(電気自動車)の「AFEELA(アフィーラ)」も代表的なSDVであり、クアルコムのSnapdragon Digtal Chassisを採用している。
自動車のデジタル化を実現するためにクアルコムが提供するSnapdragon Digtal Chassisは、主な4つのプラットフォームにより構成される。その中のSnapdragon Cockpitは、インフォテインメントスクリーンを核とするデジタルコックピットのような車内体験を革新するインタフェースを実現することに主眼を置く。Snapdragon Rideでは主に先進運転支援システム(ADAS)向けの技術をまとめ上げた。これら2つのプラットフォームが提供するテクノロジーを、コストパフォーマンスも重視しながらひとつのSoCに集約したSnapdragon Ride Flexという統合型のSoCもある。
そして残る2つのプラットフォームが、自動車に通信機能を提供するSnapdragon Auto Connectivityと、クラウドを介したサービスとOTAアップデートを実現するSnapdragon Car-to-Cloudだ。自動車メーカーのOEMは、Snapdragon Digtal Chassisを一括して活用したり、それぞれに必要とするソリューションだけをピックアップしてもいい。
クアルコムがハワイのマウイ島で開催したSnapdragon Summitのイベントでは、最先端・最上位のEliteシリーズとしてSnapdragon CockpitとSnapdragon Rideの進化にスポットライトを当てた。SoCを構成する柱は、コンピューティングからモバイル、そしてオートモーティブの領域にも拡大したカスタムメイドの「Oryon CPU」のほか、高度なグラフィックス処理を司るAdreno GPU、そして高性能なDSPに基づく機械学習処理を担う「Hexagon NPU(Neural Processing Unit)」がある。
クアルコムは「インテリジェント、かつパワフルでフレキシブルな次世代のSDV開発を支援するSoC」として自社製品をアピールしている。チップセットの量産は2025年以降の開始を見込む。一般的な昨今のSDV開発のスピード感を踏まえると、EliteシリーズのSoCを載せた自動車はこれから数年後に各自動車メーカーから誕生することになりそうだ。
クアルコムでは2022年のSnapdragon Digital Chassisの発表前から、自動車のための半導体と関連する様々な技術をパートナーに提供している。直近では「Gen 4=第4世代」に位置付けられるSoCと比較した場合、Eliteシリーズに搭載するOryon CPUは処理パフォーマンスが3倍に飛躍した。シンプルでフレキシブル、なおかつ自動車が採用することを見越しながら、様々な安全運転を支援するためのプログラムを安定的に遅延なく制御するためのスペックを両立しているという。
Hexagon NPUは、音声に画像など様々な種類のデータを扱う車載向けマルチモーダルセンサーの情報を瞬時に解析しながら、ドライバーに合わせたパーソナライゼーションもできる「車載AIアシスタント」のようなアプリケーションの開発を可能にする。やはり前世代のNPUに対して、パフォーマンスを約12倍に引き上げた。10億単位を越えるパラメータ数のAIモデルも軽快に動かせるパフォーマンスを備えているようだ。
スマホやAI PC向けのSoCにも搭載するAdreno GPUもまた、自動車向けのCockpitとRideのプラットフォームに統合するうえで最適化を図っている。NPUと切り離したグラフィック専用のプロセッサアーキテクチャとして、例えば4K高画質のモニターを最大16台まで、1台の車両の中に組み込むことを可能にしている。クアルコムが例にあげたのは、車両環境前方のダッシュボードに複数枚のスクリーンによるデジタルコックピットを載せ、後部座席用にはエンタテインメントスクリーンを配置。インフォテインメントにカーシアター、ゲーミングなど多彩な用途に高精細なディスプレイを活かすコンセプトだ。
クアルコムによるデジタルオーディオプロセッシングの技術は、SDVによるハンズフリー通話の音声を明瞭化したり、例えば後部座席の1箇所だけに迫力あふれる音響空間を再現する「Zonal Audio」のような体験も可能にする。
Snapdragon Summitのイベント会場では、前世代Gen 4のソリューションによるものだが、インフォテインメントスクリーンにMetaのLlama 2、OpenAIのWhisperを組み合わせた音声操作に対応するAIアシスタントを載せて、SDVの操作マニュアルを音声で呼び出したり、友だちへのバースデーカードの画像をStable Diffusionにより生成してドライブ中に贈るといった、SDVの付加価値を高める機能のプロトタイプが参照できた。
最新のSnapdragon Eliteシリーズの車載向けSoCを活用することに、早くもメルセデスベンツAGや中国の新興EVメーカーであるLi Autoが名乗りを挙げている。クアルコムはいま次世代のSDVを開発する多くの自動車メーカーとの結び付きを持ち、さらに拡大することを積極的に押し進めている。「Snapdragonを搭載するクルマ」が今後さらに増えることは間違いないだろう。
■自動車が変わる時代にSnapdragonが求められる理由
昨今ではソフトウェア、あるいはAIに関連するデジタルテクノロジーが自動車開発のトレンドに大きな影響を与えている。クアルコムは魅力あるドライブ体験と安全な運転を支援するために、得意とする半導体開発のテクノロジーをパッケージにしたSnapdragon Digtal Chassisを2022年から提供してきた。
ソフトウェア・デファインド・ビークルとは双方向の通信機能を備え、AIを含むソフトウェアによる新しい付加価値を更新しながら提供できるコネクテッドカーのコンセプトだ。例えばソニー・ホンダモビリティが2025年に北米市場で発売を予定するEV(電気自動車)の「AFEELA(アフィーラ)」も代表的なSDVであり、クアルコムのSnapdragon Digtal Chassisを採用している。
自動車のデジタル化を実現するためにクアルコムが提供するSnapdragon Digtal Chassisは、主な4つのプラットフォームにより構成される。その中のSnapdragon Cockpitは、インフォテインメントスクリーンを核とするデジタルコックピットのような車内体験を革新するインタフェースを実現することに主眼を置く。Snapdragon Rideでは主に先進運転支援システム(ADAS)向けの技術をまとめ上げた。これら2つのプラットフォームが提供するテクノロジーを、コストパフォーマンスも重視しながらひとつのSoCに集約したSnapdragon Ride Flexという統合型のSoCもある。
そして残る2つのプラットフォームが、自動車に通信機能を提供するSnapdragon Auto Connectivityと、クラウドを介したサービスとOTAアップデートを実現するSnapdragon Car-to-Cloudだ。自動車メーカーのOEMは、Snapdragon Digtal Chassisを一括して活用したり、それぞれに必要とするソリューションだけをピックアップしてもいい。
■パフォーマンスが飛躍を遂げた2つのEliteシリーズのSoC
クアルコムがハワイのマウイ島で開催したSnapdragon Summitのイベントでは、最先端・最上位のEliteシリーズとしてSnapdragon CockpitとSnapdragon Rideの進化にスポットライトを当てた。SoCを構成する柱は、コンピューティングからモバイル、そしてオートモーティブの領域にも拡大したカスタムメイドの「Oryon CPU」のほか、高度なグラフィックス処理を司るAdreno GPU、そして高性能なDSPに基づく機械学習処理を担う「Hexagon NPU(Neural Processing Unit)」がある。
クアルコムは「インテリジェント、かつパワフルでフレキシブルな次世代のSDV開発を支援するSoC」として自社製品をアピールしている。チップセットの量産は2025年以降の開始を見込む。一般的な昨今のSDV開発のスピード感を踏まえると、EliteシリーズのSoCを載せた自動車はこれから数年後に各自動車メーカーから誕生することになりそうだ。
クアルコムでは2022年のSnapdragon Digital Chassisの発表前から、自動車のための半導体と関連する様々な技術をパートナーに提供している。直近では「Gen 4=第4世代」に位置付けられるSoCと比較した場合、Eliteシリーズに搭載するOryon CPUは処理パフォーマンスが3倍に飛躍した。シンプルでフレキシブル、なおかつ自動車が採用することを見越しながら、様々な安全運転を支援するためのプログラムを安定的に遅延なく制御するためのスペックを両立しているという。
Hexagon NPUは、音声に画像など様々な種類のデータを扱う車載向けマルチモーダルセンサーの情報を瞬時に解析しながら、ドライバーに合わせたパーソナライゼーションもできる「車載AIアシスタント」のようなアプリケーションの開発を可能にする。やはり前世代のNPUに対して、パフォーマンスを約12倍に引き上げた。10億単位を越えるパラメータ数のAIモデルも軽快に動かせるパフォーマンスを備えているようだ。
スマホやAI PC向けのSoCにも搭載するAdreno GPUもまた、自動車向けのCockpitとRideのプラットフォームに統合するうえで最適化を図っている。NPUと切り離したグラフィック専用のプロセッサアーキテクチャとして、例えば4K高画質のモニターを最大16台まで、1台の車両の中に組み込むことを可能にしている。クアルコムが例にあげたのは、車両環境前方のダッシュボードに複数枚のスクリーンによるデジタルコックピットを載せ、後部座席用にはエンタテインメントスクリーンを配置。インフォテインメントにカーシアター、ゲーミングなど多彩な用途に高精細なディスプレイを活かすコンセプトだ。
クアルコムによるデジタルオーディオプロセッシングの技術は、SDVによるハンズフリー通話の音声を明瞭化したり、例えば後部座席の1箇所だけに迫力あふれる音響空間を再現する「Zonal Audio」のような体験も可能にする。
■自動車の可能性を広げるAIの技術を体験
Snapdragon Summitのイベント会場では、前世代Gen 4のソリューションによるものだが、インフォテインメントスクリーンにMetaのLlama 2、OpenAIのWhisperを組み合わせた音声操作に対応するAIアシスタントを載せて、SDVの操作マニュアルを音声で呼び出したり、友だちへのバースデーカードの画像をStable Diffusionにより生成してドライブ中に贈るといった、SDVの付加価値を高める機能のプロトタイプが参照できた。
最新のSnapdragon Eliteシリーズの車載向けSoCを活用することに、早くもメルセデスベンツAGや中国の新興EVメーカーであるLi Autoが名乗りを挙げている。クアルコムはいま次世代のSDVを開発する多くの自動車メーカーとの結び付きを持ち、さらに拡大することを積極的に押し進めている。「Snapdragonを搭載するクルマ」が今後さらに増えることは間違いないだろう。