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公開日 2017/06/22 10:00
スマホ史上最高の高画質

【測定】AVファンも注目のソニー「Xperia XZ Premium」。4K/HDR対応ディスプレイはもはや“マスモニ”レベル

鴻池賢三

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前回Android端末の測定分析第1号として、ソニーのハイエンドモデル「Xperia XZ」を取り上げた(関連記事)。「制作者の意図を忠実に再現=高画質」というマスターモニター的な使い方をするには少々注文を付けさせてもらったが、広色域パネルの採用とその使いこなしや、SD解像度の映像も精細感を増す「X-Reality for mobile」の画作りの巧みさなど、さすがソニーと思える見どころの多さは印象的だった。

そして今回は、ソニー渾身の4K/HDR対応のフラッグシップモデル「Xperia XZ Premium」(ドコモSO-04J)を取り上げる。AVファンからも注目されるであろう本機の実力とは? 測定で徹底分析していく。

測定のセンサーには業務用高精度カラーアナライザのコニカミノルタ「CA-310」を使用


グラフ化には、ディスプレイ評価およびキャリブレーションで世界標準のSpectraCalの「CalMAN 2016」(写真左)、測定用パターンの表示にはSpectraCalのAndroid用アプリ「Mobile Forge」(写真右)を使用

評価の方針

本機はHDR対応が最大のポイントだが、残念ながら測定機材(テストパターン発生アプリ「Mobile Forge」)が追いついていないため、HDTV基準で評価した。色温度はD65(6508K)、色域はRec.709、ガンマは2.2がターゲットで、これらに近ければ近いほど、制作者の意図を忠実に再現できるディスプレイと判断できる。現時点ではHDTV基準で制作されたコンテンツが大半を占めるので、大いに参考になるだろう。

また、パネルの性能や画作り傾向がつかめればHDR映像の評価にも役立つ。なおディスプレイ上の色の見え方は、周囲の環境光による色順応が影響する。映像装置の多くは、実使用状況を勘案して調整(画作り)されているケースが多く、基準値に合致しないものは全てNGというわけではない。この点を留意の上、以降読み進んで頂きたい。

測定評価

【基本項目】

「色域とコントラスト」スタンダードモード:最大輝度 495.0cd/m2(7600K/ x:0.2979 y: 0.3140)/コントラスト比 1248:1 (白輝度106.1 cd/m2/黒輝度0.085 cd/m2)

画面の最大輝度(白100%)は495.0cd/m2。XperiaXZの592.6cd/m2を下回るが、4Kパネルは原理上、開口率が低くなってしまう。そうしたハンデを背負いながらも、高水準を維持していると捉えるべきだろう。コントラスト比は実用に近い条件として、白100%表示時の輝度を100cd/m2付近に調整した後、「白輝度」と「黒輝度」を測定して算出した。

明るさ設定のスライドバーがキャプチャ画像の位置でターゲットの約100cd/m2に近かった

今回得た1,248:1というコントラスト値は、XperiaXZの1,558:1をやや下回るが、テレビ製品に比べると高水準と言える。パネル方式は不明だが、目視で視野角性能を確認したところ、45度付近で輝度が半減する印象。VAパネルのように見受けられるが、色味やコントラスト感はキープされており視野角性能は良好だ。

【グレースケールトラッキング/ガンマ/色域】

前回のXperiaXZは、記事中でも指摘したが、画質モードとして「X-Reality for mobile」「ダイナミックモード」「OFF」と3つのプリセットを備え、ワンタッチで切替ができる代わりに、色表現が最も素直な「X-Reality for mobile」を選ぶと「X-Reality for mobile」(超解像処理)がオフにできずシュートが見え、「OFF」で「X-Reality for mobile」をオフにすると今度は色が派手になってしまうという痛し痒しの状態だった。

ところが本機はそうした不満の声を聞き入れたのか、「画質」という調整項目を持ち、さらにその中には「色域とコントラスト」「ホワイトバランス」「動画再生時の高画質処理」(X-Reality for mobileのON/OFF)の3つの項目を個別に調整できるようになった。

なお、本記事では色の再現性をメインに扱うので、原則X-Reality for mobileをオフの状態で測定した

本機の設定と色味の関係について、概要を把握するために一通りざっと測定してみると、「色域とコントラスト」で「プロフェッショナルモード」を選択し、ホワイトバランスを整えると、マスターモニターライクな映像に調整できることが分かった。

本稿は評価の基準として「マスターモニター調の映像が得られるかどうか」を1つのテーマとしているので、まずはこの設定に沿って詳しく測定を行った。結果は以下の通りだ。

【色域とコントラスト】

「色域とコントラスト」画面。プロフェッショナルモードはsRGB(=BT.709)に沿った設定であることが明記されている


【ホワイトバランス】

手元の個体では、R「195」、G「194」、B「0」の状態で、暗部から明部まで概ねD65に調整できた(注:個体差により、全ての端末がこの値でD65に調整できるとは限りません)


「プロフェッショナルモード」でホワイトバランスをD65に整えた際の測定結果

「色域とコントラスト」で「プロフェッショナルモード」を選択し、ホワイトバランスをR「195」、G「194」、B「0」に整え、キャリブレーションソフトウェア「CalMAN」で、クレースケールトラッキング(左上)、ガンマ(左下)、色域(中央上)を測定した結果

測定結果を見ると、白100%のポイントでホワイトバランスをD65に整えると、おおむね暗部まできちんとD65に揃った。ガンマも2.2の黄色い基準ラインにピッタリ沿い、階調表現も基準に忠実であることが読み取れる。DeltaE 2000の値を見ると、グレースケールの30%〜80%で少し乱れているように見えるが、許容上限とされるΔ3を楽々と下回る水準。

驚くべきは、RGBCMYの各色がそれぞれの色度点にピッタリで、明度も適正なこと。DeltaE 2000も2程度以下とすこぶる良好だ。これはハイエンドなテレビ製品でもなかなかお目に掛かれない精度で、マスターモニターとしての素養は非常に高い。

【色再現性】


測定結果を解説するために、簡単に表の見方を説明しておこう。キャリブレーションソフトウェア「CalMAN」で、中間色を含む約100ポイントを測定した結果を示している。図中「CIE 1931 xy」の大きな三角形は人間が見る事のできる色の範囲で、内側の三角がBT.709の範囲を示している。その中で白い枠が測定のターゲット、色のついた丸印が実際の測定値をプロットしたもの。

評価は中央のグラフ「DeltaE 2000」が指標になる。Δ1(緑色のライン)以下だと、人間の視覚で基準に対する色のズレが識別できない。Δ3(黄色のライン)は、違いが分かるものの許容範囲、Δ10(赤色)のラインを超えるとNGとされる。

それをふまえて本機の測定結果を分析すると、Max deltaE値が2.66、Ave deltaE値が1.42と非常に良い値が出た。過去の測定で最も優秀だったiPhone 7を楽々と上回る、高忠実な色再現性能を備えていることが分かった。もはや家庭用テレビを超えて、マスターモニターの領域と言っても良いだろう。パネル性能(バラツキ)、設計思想、生産時の調整など、全てがうまくいかないとこうした結果は出ない。驚きだ。入力映像がBT.2020準拠の場合はどのようになるのかも興味深く、今後機材が整えば再度測定分析してみたい。その他参考までに、パネル性能を見るために他のモードの測定結果は以下のとおりとなる。

「スタンダードモード」

BT.709(明るい三角形)の範囲を少し超える設定。明るい屋外でも色鮮やかな映像が楽しめるよう意図したものだろう


「ダイナミックモード」

BT.709に照らすと範囲を大きく超えているように見えるが、デジタルシネマのDCI-P3に相当。広色域パネルを採用していることが分かると共に、4K/HDR時代の色域BT.2020で制作されたコンテンツの視聴にも、スマホとしてはハイレベルで対応できそう


実際の目で見てみると…?

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