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公開日 2017/11/05 21:23
様々な処理を行い検証

「iPhone X」はどれだけ“熱い”のか? 赤外線温度計でiPhone 7と比較した

編集部:風間雄介
アップル「iPhone X」を自腹で購入し、使い始めて数日が経った。当初の感想はこちらで紹介したとおりで、基本的にそのときの印象と今の印象は変わっていない。

顔認証技術「Face ID」の精度とスピードは大したものだし、有機ELディスプレイは素晴らしい画質で、大画面の恩恵も日々感じている。しばらくiPhone Xを使ってからiPhone 7を触ると、こんなに画面が小さかったのかと驚くほどだ。全体的な仕上がりにはたいへん満足している。

ただし1点だけ気になっていたのが、本体の熱だ。現在は裸で運用しているのだが、iPhone 7より温かく感じるのだ。ちょっとしたことですぐに温かくなって、手のひらにじんわりと熱が伝わってくる。はじめは初期不良の可能性も疑ったが、バッテリーの保ちや処理速度などに全く問題はないため、こういう仕様だと判断した。

これは感覚で書いても仕方ないと、赤外線で物体の表面温度を測る温度計を購入。iPhone XとiPhone 7の温度を比較してみた。

赤外線で物体の表面温度を測る温度計でiPhone Xを測定

なお条件を揃えるため、OSはiOS 11.1で統一。また各アプリはすべて停止してから測定し、バックグラウンド動作の影響を極力排除した。また、テストはエアコンで室温21度に設定した環境下で行った。

まず両機を使用していない状態で、背面のカメラ下あたり、使用時に一番熱くなる箇所を測定すると、iPhone Xは23.3度、iPhone 7は23.6度と、ほぼ同じだった。今回はこの平静時の温度を基準とし、各テストを行ったあと、この基準温度まで下がるのを待ち、そのあと次のテストへ移るよう徹底した。

カメラの下あたりが最も温度が高くなる

動画再生やゲームでは明らかにiPhone Xの温度が高かった

まずは動画を再生してみた。Netflixで「マインドハンター」シーズン1 第5話の冒頭を10分間再生したあとの温度を計測した。結果はiPhone Xが31.1度、iPhone 7が28.4度と、約3度近くiPhone Xが高かった。

続いて本体を十分冷ましてから、「スーパーマリオラン」を10分間プレイ。遊ぶのも「リミックス10」モードで統一した。プレイした後に測ってみたら、iPhone Xは30.6度、iPhone 7は28.7度と、約2度の違いが出た。

これは個人差もあるだろうが、筆者の体感では、30度を越えるあたりで「熱いな」という感覚に変わってくる。「スーパーマリオラン」はそれほど処理負荷が高そうなゲームに思えないが、それでもiPhone Xでは30度を超えた。

続いて、処理負荷の高そうなアプリとして、ドラゴンを現実世界に召喚するARゲーム「AR Dragon」を10分間プレイした。これは両モデルともにかなり温度が上がり、かなり熱いと感じられる程度になった。iPhone Xは35.7度、iPhone 7は34.1度だった。

ウェブブラウズや動画撮影時の温度は?

続いてウェブブラウジングを行った。多くの方が実際に使う機会が多い操作だろう。iPhone 7を左手、iPhone Xを右手で持ち、ここでも10分間、当サイトのヘッドホン祭の記事を同時にスクロールしたり、何度もリロードしたりした。

するとここでは、iPhone Xが29.9度だったのに対して、iPhone 7は30.4度に上昇。わずかな差ではあるが、ウェブブラウジングではiPhone 7の方が若干熱くなった。

動画撮影時の温度上昇も調べてみた。4K/30pのHEVC動画を5分間同時に撮影した。前回の記事執筆時には、iPhone Xの方が熱くなると感じたが、実際に厳密な測定を行ってみると、iPhone Xは35.3度、iPhone 7は35.5度でほとんど変わらなかった。

ところが、だ。動画撮影から約15分経過したときの温度を計測してみると、iPhone Xは27.8度だったのに対して、iPhone 7は25.6度まで下がり、温度が逆転した。iPhone Xは温度が下がりにくいと感じていたが、これが実際の測定値からも裏付けられた格好だ。

同じ操作を行った後、温度が低下していく傾向も調べた

40度越えも記録、熱くなるAnimoji

参考までに、実使用時にかなり熱くなると感じていた、iPhone Xからの新機能「Animoji」を使った後の温度も測定してみた。5分ほどAnimojiを使ってメッセージを作ったりして遊んでから温度を測ってみると、38.2度という数字が出た。人間の体温よりかなり高く、相当な熱さを感じる。

さらに4K/30pで5分動画を撮影してからAnimojiを使うという操作も行い、その後の温度も測ってみた。実使用時にもこのような使い方を行うことは普通にありそうだが、測定すると、なんと40.4度という数値が出た。熱くて持てないほどではないが、風呂並みの温度だ。かなり不快な熱さになる。

写真は少し下がり始めたところだが、40度越えを記録した

局所的な熱さが不快感につながる

今回はテスト時に、最も熱いカメラ下あたりの箇所に加えて、本体下部の比較的熱くなりづらいところも測定したのだが、この結果もお伝えしよう。

かんたんに言うと、iPhone 7の場合、熱くなるときは全体的に熱くなる傾向があるのに対して、iPhone Xは熱いところとそうでないところの差が激しい。

本体上部は熱くなるが、下部は比較的温度上昇がゆるやか。iPhone Xはこの差が激しい

たとえば冒頭で紹介したNetflixの動画撮影では、iPhone 7の上部が28.4度、下部が25.8度と、その差が2.6度だったのに対し、iPhone Xは上部が31.1度、下部が26.2度と、実に約5度の差があった。場所による温度差が大きいため、熱いところがより熱く感じられていたのだろう。

また、これは感覚の話になってしまうが、同じ程度の温度であっても、ガラスのiPhone Xより金属のiPhone 7の方がひんやり感じられ、より快適に感じられたことも報告しておきたい。ただし、これはケースを付ければ差はなくなるはずだ。



すべての操作でiPhone Xの方が熱くなるわけではなく、現にウェブブラウズではiPhone Xの方が温度が低かった。だが負荷が高い処理を行うと、iPhone Xの方が温度が上昇しやすい傾向があることが明らかになった。数度程度の違いではあるが、人間は数度の違いでも敏感に感じる力を持っている。

また今回のテストは、それぞれ長くても10分のテストで、なおかつ21度の室内環境で行ったものだ。夏などに屋外で負荷の高い処理を長時間行った場合、当然ながら今回以上の温度になるはずだ。

他社のスマホではもっと熱くなるものもあるようだが、アップルが未来のスマホを標榜し、なおかつこれまでで最も高価なiPhoneが、従来のiPhoneより快適でなくなった部分があるのは残念だ。とはいえ、全体的な完成度にはとても満足していることを、念のためもう一度繰り返しておきたい。

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