公開日 2017/11/25 18:19
様々な質問で比較した
【実験】Amazon EchoとGoogle Home、よりスマートで「もの知り」なのはどっち?
編集部:風間雄介
ついにスマートスピーカー「Amazon Echo」と「Google Home」が日本に上陸した。どちらを買おうか迷っている方もいるだろう。現在、両者をくわしく比較した記事を書いているのだが、その前哨戦として、どっちが物知りなのか比べてみた。
スマートスピーカーを使っていて、音楽再生と同じくらい便利なのは、わざわざスマホで操作するまでもないことを声で聞けることだ。天気予報やタイマー、ニュースの読み上げなどはとても重宝している。同じように「ふと疑問に思ったことを尋ねる」使い方も頻繁に行っている。
スマートスピーカーが家に来る前は、子供になにか質問されたときなど、「おい、俺のスマホどこ行った? ……何でそんな場所に落ちてんだよ! そうそれ、こっちに渡して」という流れがまずあって、そこから検索をはじめ、ようやく結果を伝えていた。それが、音声検索では文字通り「一声」で答えが返ってくる。素晴らしい時代になったものだ。もちろん、これは両モデルが対応している音声アシスタント「Amazon Alexa」と「Googleアシスタント」がクラウド上で実現しているものだ。
それではさっそくAmazon EchoとGoogle Homeを比べてみよう。
■Google Homeは質問の仕方に工夫が必要
まずは試しに「湯川秀樹について教えて」「リチャード・ファインマンについて教えて」「ビートルズについて教えて」「ローリング・ストーンズについて教えて」「夏目漱石について知りたい」など、適当に人名を尋ねてみた。
するとAmazon Echoはそれぞれについて「こんな説明が見つかりました」と、ウィキペディアの情報をしっかり読み上げる。一方のGoogle Homeはすべて「すみません、わかりません」「すみません、お役に立てそうにありません」となった。
この段階で「Google、ダメじゃん…」となったが、いろいろ試してみると、ただ単に聞き方が悪かっただけということがわかった。「○○について教えて」「○○を知りたい」という言い方では、今のところGoogle Homeに伝わらない。「誰?」「何?」と、よりわかりやすい疑問形で話しかける必要がある。「湯川秀樹って誰?」「ビートルズって何?」などと聞けば、しっかりと答えてくれる。
コツを掴んだところで、ちょっと難しいかなと思いながら「マンハッタン計画について教えて」「不確定性原理って何?」「731部隊について教えて」「前方後円墳について知りたい」などと思いつくまま聞いてみた。Google Homeはここでも聞き方を少し工夫する必要があるものの、結局はAmazon、Googleともにウィキペディアの情報をしっかりと読み上げた。
ただし「西田幾多郎」というお題については答えが分かれた。いくら滑舌よく発音しても、Amazon Echoは「ちょっとよくわからないです」とサンドウィッチマンのような回答に終始するのに対し、Google Homeは「日本を代表する哲学者です」と正しく回答した。
また「ゲーデルについて教えて」と聞くと、Amazon Echoでは「ゲイは同性愛の人々。日本では特に男性の同性愛者を指すことが多い」と、「ゲイ」の説明が始まった。発音が悪いのかと何度か「ゲーデルって誰?」と聞いてみたのだが、何度やっても「すみません、わかりません」となり、どうしても正しい答えを聞き出せなかった。対してGoogle Homeは「クルト・ゲーデルは、オーストリア・ハンガリー二重帝国のブルノ生まれの数学者・論理学者です」と一発で正しく回答した。
多少の違いはあったものの、ここまでの実験だけでは、どちらが物知りかはっきりしない。ほとんどの質問に対する答えは、単にウィキペディアの冒頭を読み上げているだけだからだ。ウィキペディアの単語の読みを、より正確にインデックス処理しているのはGoogle Homeの方だと思うが、逆に言うと、ただ単にそれだけのことだ。
そこで、少し変化球を投げてみることにした。
■川端康成の出身地を聞いたら回答が分かれた
ちょっと難しいかな、と思いながら「湯川秀樹はいつ生まれた?」と聞いてみたら、Amazon EchoもGoogle Homeも「1907年1月23日です」と答えてきた。ほう、と2つのスピーカー(正確にはそれぞれの音声アシスタント)を見直した。
続いて「川端康成の出身地は?」と聞いたら、Amazon Echoは「大阪市です」と簡潔な答えをキッパリ述べてきた。対するGoogle Homeは「川端康成は大阪府茨木市で生まれました」と丁寧に回答。AmazonとGoogleで回答が異なる結果になった。
念のため調べてみると、川端康成は3歳の時に茨木市に移ったが、生まれたのは大阪市だ。つまり、正しく回答したのはAmazon Echoということになる。試しにGoogleで「川端康成 出身地」で検索すると、大阪府茨木市が大きく表示されるので、Googleが持っている元の情報が誤っているようだ。
もうひとつ、「夏目漱石はいつ亡くなった?」と聞いてみたら、Amazon Echoは「夏目漱石の命日は1916年です」という回答。「命日」という正しい日本語を使えているわりに、何月何日に亡くなったか、という肝心の情報は語られない。
同じ質問をGoogle Homeに聞いてみたら、「すみません、お役に立てそうもありません」という答えだった。だが試みに「夏目漱石はいつ死んだ?」と直球で聞いてみたら、「夏目漱石の死亡日は1916年12月9日です」と回答。「死亡日」というサバサバした言い方が気になるが、正しい情報が得られた。
「亡くなる」「命日」など情緒的な言葉を理解しているのはAmazonだが、没年しか答えられない。一方のGoogleは、正確な答えを導くことはできるが、「死亡日」という言葉遣いはどうも潤いに欠ける印象で、気になる。
■ピタゴラスの定理にこだわるAmazon Echo
続いて「ピタゴラスの定理って何?」と聞いてみた。Google Homeはやはりウィキペディアの冒頭を読み上げ、「初等幾何学におけるピタゴラスの定理は、直角三角形の3辺の長さの関係を表す」と、大ざっぱな説明にとどまる。
対するAmazon Echoは、オリジナルの説明らしきものを読み上げた。「方程式の a2+b2=c2。直角三角形の斜辺の長さcと、他辺の長さaとbの関係をピタゴラスが証明しました」。発音が少し妙なのが残念だが、より分かりやすいのはこちらの方だ。
一方で「世界で三番目に高い山は?」という質問では、Google Homeが若干リードした。Amazon Echoはここでも「ちょっとよくわかりません」となるのに対して、Google Homeは「『旅に行き隊!』のサイトにはこう書かれています」と話しはじめ、「おっ」と期待を持たせた。だがその実、紹介されるのは1位のエベレストと2位のK2の説明のみ。3位のカンチェンジュンガについては説明しないまま終わってしまい、ずっこけた。
■日本特有の単位は苦手なAmazon Echo
スマートスピーカーは単位の換算にも便利だ。AmazonもGoogleも、どちらも基本的な単位換算、通貨の換算はお手の物だが、Amazonはまだ、日本特有の単位が苦手なようだ。
「1寸は何センチ?」と聞くと、Amazon Echoは「それはよくわかりません」となるのに対して、Google Homeは「3.03cmです」と正しく答える。Google Homeはこのほか、1尺、1貫なども正しく理解していた。
また、細かな単位まで教えてくれるのはGoogle Homeの方だ。「1フィートは何センチ?」と聞いたら、Google Homeは「30.48cmです」と回答。また1インチは何センチ? と聞くと「2.54cmです」と答える。
一方のAmazon Echoはと言うと、1フィートは「30.5cmです」、1インチは「2.5cmです」と、ゼロコンマ一桁までしか教えない。わかりやすさを重視し、あえてこういう仕様にしたのだろうが、はじめに「約」などを最初に付けないと誤解しそうな気もする。
計算もさせてみた。「1億×1億は?」と聞いたら、Amazon Echoは「1京です」と、ここでは日本式の単位で回答してきた。対するGoogle Homeは、「1×10の16乗です」と、理系っぽい答えが返ってきた。このあたりは好みが分かれそうだ。
◇
いろいろな実験を行ってみたが、率直に言って一長一短。だが一歩リードしているのはGoogle Homeという印象だった。
とはいえ、Googleはアプリの「Googleアシスタント」をかなり前にリリースし、周到に日本語対応の準備を行っていた。それに対して、Amazonは一般コンシューマーに対して日本語の音声アシスタント機能を提供するのは今回が初めて。そういった事情を考え合わせると、Amazonの健闘ぶりが際立って感じられた。
今後も両社は競い合い、こういった質問に対する回答もさらに洗練されていくのだろう。いまはまだよちよち歩きのような状態だが、今後半年から1年経ったら、驚くほど賢くなっていそうな予感がある。
スマートスピーカーを使っていて、音楽再生と同じくらい便利なのは、わざわざスマホで操作するまでもないことを声で聞けることだ。天気予報やタイマー、ニュースの読み上げなどはとても重宝している。同じように「ふと疑問に思ったことを尋ねる」使い方も頻繁に行っている。
スマートスピーカーが家に来る前は、子供になにか質問されたときなど、「おい、俺のスマホどこ行った? ……何でそんな場所に落ちてんだよ! そうそれ、こっちに渡して」という流れがまずあって、そこから検索をはじめ、ようやく結果を伝えていた。それが、音声検索では文字通り「一声」で答えが返ってくる。素晴らしい時代になったものだ。もちろん、これは両モデルが対応している音声アシスタント「Amazon Alexa」と「Googleアシスタント」がクラウド上で実現しているものだ。
それではさっそくAmazon EchoとGoogle Homeを比べてみよう。
■Google Homeは質問の仕方に工夫が必要
まずは試しに「湯川秀樹について教えて」「リチャード・ファインマンについて教えて」「ビートルズについて教えて」「ローリング・ストーンズについて教えて」「夏目漱石について知りたい」など、適当に人名を尋ねてみた。
するとAmazon Echoはそれぞれについて「こんな説明が見つかりました」と、ウィキペディアの情報をしっかり読み上げる。一方のGoogle Homeはすべて「すみません、わかりません」「すみません、お役に立てそうにありません」となった。
この段階で「Google、ダメじゃん…」となったが、いろいろ試してみると、ただ単に聞き方が悪かっただけということがわかった。「○○について教えて」「○○を知りたい」という言い方では、今のところGoogle Homeに伝わらない。「誰?」「何?」と、よりわかりやすい疑問形で話しかける必要がある。「湯川秀樹って誰?」「ビートルズって何?」などと聞けば、しっかりと答えてくれる。
コツを掴んだところで、ちょっと難しいかなと思いながら「マンハッタン計画について教えて」「不確定性原理って何?」「731部隊について教えて」「前方後円墳について知りたい」などと思いつくまま聞いてみた。Google Homeはここでも聞き方を少し工夫する必要があるものの、結局はAmazon、Googleともにウィキペディアの情報をしっかりと読み上げた。
ただし「西田幾多郎」というお題については答えが分かれた。いくら滑舌よく発音しても、Amazon Echoは「ちょっとよくわからないです」とサンドウィッチマンのような回答に終始するのに対し、Google Homeは「日本を代表する哲学者です」と正しく回答した。
また「ゲーデルについて教えて」と聞くと、Amazon Echoでは「ゲイは同性愛の人々。日本では特に男性の同性愛者を指すことが多い」と、「ゲイ」の説明が始まった。発音が悪いのかと何度か「ゲーデルって誰?」と聞いてみたのだが、何度やっても「すみません、わかりません」となり、どうしても正しい答えを聞き出せなかった。対してGoogle Homeは「クルト・ゲーデルは、オーストリア・ハンガリー二重帝国のブルノ生まれの数学者・論理学者です」と一発で正しく回答した。
多少の違いはあったものの、ここまでの実験だけでは、どちらが物知りかはっきりしない。ほとんどの質問に対する答えは、単にウィキペディアの冒頭を読み上げているだけだからだ。ウィキペディアの単語の読みを、より正確にインデックス処理しているのはGoogle Homeの方だと思うが、逆に言うと、ただ単にそれだけのことだ。
そこで、少し変化球を投げてみることにした。
■川端康成の出身地を聞いたら回答が分かれた
ちょっと難しいかな、と思いながら「湯川秀樹はいつ生まれた?」と聞いてみたら、Amazon EchoもGoogle Homeも「1907年1月23日です」と答えてきた。ほう、と2つのスピーカー(正確にはそれぞれの音声アシスタント)を見直した。
続いて「川端康成の出身地は?」と聞いたら、Amazon Echoは「大阪市です」と簡潔な答えをキッパリ述べてきた。対するGoogle Homeは「川端康成は大阪府茨木市で生まれました」と丁寧に回答。AmazonとGoogleで回答が異なる結果になった。
念のため調べてみると、川端康成は3歳の時に茨木市に移ったが、生まれたのは大阪市だ。つまり、正しく回答したのはAmazon Echoということになる。試しにGoogleで「川端康成 出身地」で検索すると、大阪府茨木市が大きく表示されるので、Googleが持っている元の情報が誤っているようだ。
もうひとつ、「夏目漱石はいつ亡くなった?」と聞いてみたら、Amazon Echoは「夏目漱石の命日は1916年です」という回答。「命日」という正しい日本語を使えているわりに、何月何日に亡くなったか、という肝心の情報は語られない。
同じ質問をGoogle Homeに聞いてみたら、「すみません、お役に立てそうもありません」という答えだった。だが試みに「夏目漱石はいつ死んだ?」と直球で聞いてみたら、「夏目漱石の死亡日は1916年12月9日です」と回答。「死亡日」というサバサバした言い方が気になるが、正しい情報が得られた。
「亡くなる」「命日」など情緒的な言葉を理解しているのはAmazonだが、没年しか答えられない。一方のGoogleは、正確な答えを導くことはできるが、「死亡日」という言葉遣いはどうも潤いに欠ける印象で、気になる。
■ピタゴラスの定理にこだわるAmazon Echo
続いて「ピタゴラスの定理って何?」と聞いてみた。Google Homeはやはりウィキペディアの冒頭を読み上げ、「初等幾何学におけるピタゴラスの定理は、直角三角形の3辺の長さの関係を表す」と、大ざっぱな説明にとどまる。
対するAmazon Echoは、オリジナルの説明らしきものを読み上げた。「方程式の a2+b2=c2。直角三角形の斜辺の長さcと、他辺の長さaとbの関係をピタゴラスが証明しました」。発音が少し妙なのが残念だが、より分かりやすいのはこちらの方だ。
一方で「世界で三番目に高い山は?」という質問では、Google Homeが若干リードした。Amazon Echoはここでも「ちょっとよくわかりません」となるのに対して、Google Homeは「『旅に行き隊!』のサイトにはこう書かれています」と話しはじめ、「おっ」と期待を持たせた。だがその実、紹介されるのは1位のエベレストと2位のK2の説明のみ。3位のカンチェンジュンガについては説明しないまま終わってしまい、ずっこけた。
■日本特有の単位は苦手なAmazon Echo
スマートスピーカーは単位の換算にも便利だ。AmazonもGoogleも、どちらも基本的な単位換算、通貨の換算はお手の物だが、Amazonはまだ、日本特有の単位が苦手なようだ。
「1寸は何センチ?」と聞くと、Amazon Echoは「それはよくわかりません」となるのに対して、Google Homeは「3.03cmです」と正しく答える。Google Homeはこのほか、1尺、1貫なども正しく理解していた。
また、細かな単位まで教えてくれるのはGoogle Homeの方だ。「1フィートは何センチ?」と聞いたら、Google Homeは「30.48cmです」と回答。また1インチは何センチ? と聞くと「2.54cmです」と答える。
一方のAmazon Echoはと言うと、1フィートは「30.5cmです」、1インチは「2.5cmです」と、ゼロコンマ一桁までしか教えない。わかりやすさを重視し、あえてこういう仕様にしたのだろうが、はじめに「約」などを最初に付けないと誤解しそうな気もする。
計算もさせてみた。「1億×1億は?」と聞いたら、Amazon Echoは「1京です」と、ここでは日本式の単位で回答してきた。対するGoogle Homeは、「1×10の16乗です」と、理系っぽい答えが返ってきた。このあたりは好みが分かれそうだ。
いろいろな実験を行ってみたが、率直に言って一長一短。だが一歩リードしているのはGoogle Homeという印象だった。
とはいえ、Googleはアプリの「Googleアシスタント」をかなり前にリリースし、周到に日本語対応の準備を行っていた。それに対して、Amazonは一般コンシューマーに対して日本語の音声アシスタント機能を提供するのは今回が初めて。そういった事情を考え合わせると、Amazonの健闘ぶりが際立って感じられた。
今後も両社は競い合い、こういった質問に対する回答もさらに洗練されていくのだろう。いまはまだよちよち歩きのような状態だが、今後半年から1年経ったら、驚くほど賢くなっていそうな予感がある。