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公開日 2019/03/03 07:00
15周年記念モデルを山之内正がレビュー

ファン待望! 久々「Victor」のウッドコーンコンポ「EX-HR99/HR55」で実感した “熟成” サウンド

山之内 正
Victorブランドのコンポが久々に登場した。誕生15年を迎えたということもあってウッドコーン技術を前面に打ち出し、特にスピーカーは強烈な存在感がある。兄弟関係にある「EX-HR99」と「EX-HR55」(関連ニュース)をまとめて紹介しよう。

評論家の山之内正氏が2モデルをレビュー

■天然木ならではのメリットを活かした個性溢れる“ウッドコーンコンポ”

ウッドコーンは振動板に天然木を採用することが出発点だが、いまの同技術はそこにとどまらない。ユニット内部からキャビネットまで、振動する部分全体にわたって木材を活用して響きをコントロールし、楽器を連想させる方法で音を追い込んでいる。

EX-HR99

磁気回路背面のウッドブロックやポールピース上部の木片吸音材、キャビネット内の響棒などがその一例で、さらに上位のHR99は振動板前面にチェリー材のシートを装着。部位ごとに役割は異なるが、いずれも天然木ならではの響きの良さを活かしていることがポイントだ。

EX-HR55

HR99とHR55で振動板面積は僅かに異なるが(※HR99が9cm径でHR55が8.5cm径)、どちらもフルレンジのウッドコーンユニットを積み、低音から高音まで音色を統一したうえで自然な音像定位を狙う。キャビネットはHR99の方が18mmほど奥行きが深い。本体もHR99のみボトムに重量級ベースを配置してフットに真鍮の無垢材を使うなど、低重心化と剛性を高める工夫が入念だ。

メイプル材のウッドブロックなど木製パーツを随所に採用

HR99(左)とHR55(右)のスピーカー。HR99ではウッドコーンにチェリー材の薄型シートを縦・横方向に装着した異方性振動板を採用

再生メディアはCDとFMラジオに加えてBluetooth、USBメモリーまで対応。USB再生はFLAC/WAV/MP3/WMAのみ対応。WAVとFLACは192kHzまでのハイレゾ再生ができるが、DSDが再生できないのは残念なポイント。一方BluetoothはaptX、AACをサポートするのでスマホの音源をワイヤレスで聴くなら音質に不満は出ないはずだ。

両モデルともUSBメモリー等に保存したハイレゾ音源を再生可能(写真はHR99のUSB端子部)

音質チューニングにビクタースタジオが加わり、もちろん独自の高音質化技術「K2テクノロジー」も両方のシステムに載せている。K2はリモコンに専用ボタンがあるので、聴きながら簡単にオン・オフの違いを試すことができ、使い勝手が良い。

リモコンは2モデルとも共通。独自の高音質化技術「K2テクノロジー」のオンオフボタンも備えている

JVCケンウッドがウッドコーンにこだわり続けているのは、他の技術では置き換えられない天然木ならではのメリットを大切にしているからだ。特に中域の密度の高い音色でヴォーカルやヴァイオリンなど旋律楽器の実在感を引き出す効果が高く、ファンの支持は根強い。音が力強く立ち上がるので金管楽器や打楽器には勢いがあり、アタックの鋭いベースも小型システムとは思えないほど存在感がある。

その独特の感触を好む音楽ファンは「ウッドコーンの音が好き」ということになるし、既存のスピーカーに比べると個性が強いと感じる人もいる。現代の高級オーディオはニュートラルな音調を志向するブランドが多数派だが、ウッドコーンオーディオはむしろ個性をはっきりと打ち出すことで他にはない強みを発揮していると言っていい。

それは今回のシステムでも変わらないが、やはり15年間に及ぶ技術の熟成は明確に聴き取ることができた。実際にHR99とHR55の音を紹介していくことにしよう。

■両モデルとも「立体的な音場の広がりを引き出す」

USBメモリーで再生したベースとヴォーカルのデュオ(ムジカ・ヌーダ)は、ベースのリズムが力強い。特に付点音符の切れが良く、テンポが停滞しないので、ヴォーカルがいかにも歌いやすそうに聴こえてくるところが面白い。声は想像したほどウォームなタッチにはならず、むしろカラッと明るくクリアな感触になった。

これはCDで聴いたジェーン・モンハイトのヴォーカルでも同様で、ベースが声にかぶらず、抜けの良いヴォーカルを堪能。どちらの曲もHR99で再生するとベースの重心が下がり、A線やE線の音域に厚みが出てくるが、HR55で聴くとその帯域は基音よりも倍音のエネルギーが強く感じる。低音の質感と量感にこだわるならHR99を選ぶことをお薦めしたい。

ジャズのライヴ録音(ジャズ・アット・ザ・ポーンショップ)をUSBで再生すると、サウンドステージが思いがけず広く、奥が深いことに感心させられた。スピーカーキャビネットのバッフル面積を最小限に抑えているため、反射や回折の影響が少なく、高域の拡散にもくせがない。ジャズでも空間情報を忠実にとらえた録音を聴くと、楽器同士の位置関係が浮かぶ立体的な音場が広がることがあるが、HR99とHR55はどちらもそうした広がりを引き出すことができる。

BluetoothでiPhoneを接続し、ポール・サイモンの「Can't Run But」、エド・シーランの「Shape of You」などアップルミュージック経由でダウンロードした音源を聴く。iPhoneなのでaptXではなくAACだが、一音一音のセパレーションが高く、音数が増えてもヴォーカルのニュアンスとリズムの動きはどちらも曖昧にならず、伸びやかなサウンドを楽しむことができた。

じっくり聴いてみると、USBメモリーやCDに比べて粒立ちや質感に限界を感じることもあると思うが、そんなときはリモコンを使ってK2テクノロジーをオンにしてみよう。ドラムのアタックやヴォーカルの発音がクリアに感じられるようなら、K2が本来の効果を発揮していると考えていい。ソースや再生音量によっては常時オンにしても良いと思う。特にBluetooth再生では大きな効果を発揮する。K2テクノロジーはHR99、HR55でほぼ同じ効果が期待できる。



ウッドコーンを採用したオーディオシステムを聴くのは久しぶりだったのだが、今回は記念モデルということもあるのか、HR99とHR55の両方でウッドコーン技術の熟成を実感することができた。中域の密度の高さなど同技術の核心というべき長所はそのまま確保しながら、音色の描き分けや響きの豊かさは確実に進化を遂げている。

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