公開日 2019/04/02 06:00
評論家・土方久明が音質や使い勝手をチェック
「ウェアラブルスピーカー」にケンウッド参戦! 88gと超軽量で「着けている感覚がない」注目機をレビュー
土方久明
■注目ジャンル「ウェアラブルスピーカー」にケンウッドが参戦
ここ一年ちょっとの間に“身につけられるスピーカー”として流行の兆しを見せているのが「ウェアラブルスピーカー」といわれる小型スピーカーだ。
アーチ状の形状を持ち、首回りに装着するネックバンドタイプのモデルは、ヘッドホンのように周囲の環境音を遮断せず、装着時の圧迫感もないので快適に音楽を楽しめると好評だ。スピーカーの位置が耳に近く、小さな音量でも楽しむことができ、ステレオ再生も実現しながら、周囲への影響も少ないという多くの長所を持つ。
最初にこの方式を考えた人はすごいと思うが、それではなぜこのタイミングで製品が世に出てきたかを推測すると、3つのキーワードが頭に浮かぶ。1点目はBluetoothを初めとする無線音声伝送技術の普及。2点目は音の良い小型のデジタルアンプが登場したこと。3点目は音響解析の進化で小型ボディでも高域から低域までのレンジが出せるようになったことだ。
そして、自宅でそんなに大きな音は出せないけれど、それなりに音楽を聴き取りやすくしたいという現代のニーズに、ウェアラブルスピーカーはズバリと合致したのだ。
そんな中、老舗のJVCケンウッドからaptX対応の「 CAX-NS1BT」が発売された。ケンウッドブランド初となるワイヤレスタイプのネックバンドスピーカーだ。
ということで今回は、自宅で本機を使ってみたレポートをお届けしよう。まず、箱から取り出してかなり軽いことに感心した。質量は約88gしかない。初めて首に掛けたとき、本当にバッテリーやスピーカーが入っているのかと思うくらいだった。これは世に出ている同種の製品の中でもかなり軽い部類で、本機の大きなアドバンテージとなりそうだ。ボディには20×15mmのメインスピーカーが2基、そして低音を増強する20×15mのパッシブラジエーターが2基搭載される。
BluetoothコーデックはSBC、aptXに対応するが、正直に言うと、できればAACにも対応して欲しいところ。バッテリーは、約3時間の充電で約20時間の長時間再生を実現する。
改めて外観を観察すると、ボディは三次元的な美しい曲面で構成されている。カラーはブラックとホワイトの2色がラインナップされるが、手元に届いたブラックモデルは、ボディに“KENWOOD”ロゴが表記され、赤いアクセントが入るクールなデザインだ。僕くらいの年代にとって、ブラックの背景に同ブランドのロゴはお馴染みでとてもカッコ良く感じる。
ボディ左側にある電源スイッチをONにすると、ナビゲーションボイスで電源ONとバッテリーレベルを教えてくれる。ペアリングは、電源を入れればスマホなど端末側のBluetooth接続リストに本機が表示され接続可能になる。また、端末側のリストに本機が出てこない場合は、右側のPlayボタンを長押しすると改めてペアリングモードになる。ナビゲーションボイスがペアリングの終了を教えてくれるので使いやすい。
■音質レビュー:音楽だけでなく動画再生でも試す
まずは、 MacBook Proと接続して、音楽ストリーミングサービスからトニー・ベネットとダイアナ・クラールのデュオアルバム「Love Is Here To Stay」を聴いた。音が頭の周りを包み、今までに感じたことのない新鮮な感覚だ。スマートスピーカーのような部屋全体への広がり方とは違い、頭部の周りを360度音が包み込む感じだ。最初は比較的大きな音量で聴いたのだが、同じ部屋にいる家族には、筆者本人が感じる音量より小さく聴こえていたようだ。
次にAstell&Kern 「A&futura SE100」と接続して、音楽を聴きながら読書を楽しんだ。上述の通り、本機はaptXにも対応しているので、同じようにaptXに対応するプレーヤーと組み合わせることで、より良い音質で音楽を聞くことができる。
ヘッドホンとスピーカーの良い部分を合わせた自然な音で、音楽をBGM的に楽しみながら快適に読書ができた。ヘッドホンのような頭部を挟み込む圧迫感がないのでよりリラックスできる。「あ、この使い方はいいな」と思わず声が出た。
ここまでの段階で感じた本機の音質傾向は、ひとことで言うならバランスの良い爽快な音。高級ヘッドホンのような上下のfレンジや迫力ある低域は望めないものの、大きな音から、かなり音量を絞っても1つ1つの音が明瞭に聞こえる。ここまで小さい音で楽しめるなら、家の中で使っても家族の目はあまり気にならないはず。事実一緒にいた家人もほとんど気にならないとのことで安心した。
iPadと接続してYouTubeを見るときにも使ってみたが、iPad本体から音を出した時と比べ、包み込まれるような臨場感がある音に嬉しくなった。Bluetooth製品で動画を見るときに気になるリップシンクのズレ、いわゆる映像と音声のズレも小さく、映像への没入感が大きく上がる。
最後はiPhone Xと組み合わせて、本機を首にかけたまま、近所の公園に向かってみた。重量が軽く、着けている感覚さえほとんど感じないので、歩いていても快適だ。ベンチに座って、2月に発表されたグラミー賞で「最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞」を受賞したアリアナ・グランデのニューアルバム「thank u, next」を聴く。刺激感がない伸びの良い中高域を基軸に、外で聞いていても明瞭なボーカルに感心する。コーラスが重なった時も音が団子にならないのも良い部分だ。
気持ちよく音楽を聴いていると、電話がかかってきた。そのままハンズフリーで通話できるので、これは便利だ。今回は試せなかったが、車の中で運転中に使用するのも便利そうだ。
イヤホンとヘッドホンの良いとこどりのようなウェアラブルスピーカーの良さを実感した試聴だった。やはり重量が軽いことは大きなアドバンテージで、無線で動きやすく、ヘッドホンを装着した時のような生活空間との境界がないので、音楽を聴きながら家族と会話したり、家のなかで色々と作業ができることは予想外のメリットだった。
音質については、スピーカーの位置が耳の直近にあるネックスピーカーは、刺激的な音だと耳が疲れやすくなってしまうことが予想できるが、解像感と耳あたりの良い音作りが絶妙だ。また、比較的Bluetoothの電波が安定して受信できるようで、部屋をまたぐくらいの距離であれば、音切れはほとんどおこらないのも印象に残った。
3.5mmミニジャックのアナログライン入力には対応しないが、その代わりスリムでスタイリッシュな本体と軽量化を実現したメリットの方が大きいだろう。ボイスガイドや自動オフ機能、Siriなどの音声認識機能の起動にも対応するなど使い勝手もよいし、コストパフォーマンスの高さも感じられる。音質、機能とも充実した内容が魅力だった。
ここ一年ちょっとの間に“身につけられるスピーカー”として流行の兆しを見せているのが「ウェアラブルスピーカー」といわれる小型スピーカーだ。
アーチ状の形状を持ち、首回りに装着するネックバンドタイプのモデルは、ヘッドホンのように周囲の環境音を遮断せず、装着時の圧迫感もないので快適に音楽を楽しめると好評だ。スピーカーの位置が耳に近く、小さな音量でも楽しむことができ、ステレオ再生も実現しながら、周囲への影響も少ないという多くの長所を持つ。
最初にこの方式を考えた人はすごいと思うが、それではなぜこのタイミングで製品が世に出てきたかを推測すると、3つのキーワードが頭に浮かぶ。1点目はBluetoothを初めとする無線音声伝送技術の普及。2点目は音の良い小型のデジタルアンプが登場したこと。3点目は音響解析の進化で小型ボディでも高域から低域までのレンジが出せるようになったことだ。
そして、自宅でそんなに大きな音は出せないけれど、それなりに音楽を聴き取りやすくしたいという現代のニーズに、ウェアラブルスピーカーはズバリと合致したのだ。
そんな中、老舗のJVCケンウッドからaptX対応の「
ということで今回は、自宅で本機を使ってみたレポートをお届けしよう。まず、箱から取り出してかなり軽いことに感心した。質量は約88gしかない。初めて首に掛けたとき、本当にバッテリーやスピーカーが入っているのかと思うくらいだった。これは世に出ている同種の製品の中でもかなり軽い部類で、本機の大きなアドバンテージとなりそうだ。ボディには20×15mmのメインスピーカーが2基、そして低音を増強する20×15mのパッシブラジエーターが2基搭載される。
BluetoothコーデックはSBC、aptXに対応するが、正直に言うと、できればAACにも対応して欲しいところ。バッテリーは、約3時間の充電で約20時間の長時間再生を実現する。
改めて外観を観察すると、ボディは三次元的な美しい曲面で構成されている。カラーはブラックとホワイトの2色がラインナップされるが、手元に届いたブラックモデルは、ボディに“KENWOOD”ロゴが表記され、赤いアクセントが入るクールなデザインだ。僕くらいの年代にとって、ブラックの背景に同ブランドのロゴはお馴染みでとてもカッコ良く感じる。
ボディ左側にある電源スイッチをONにすると、ナビゲーションボイスで電源ONとバッテリーレベルを教えてくれる。ペアリングは、電源を入れればスマホなど端末側のBluetooth接続リストに本機が表示され接続可能になる。また、端末側のリストに本機が出てこない場合は、右側のPlayボタンを長押しすると改めてペアリングモードになる。ナビゲーションボイスがペアリングの終了を教えてくれるので使いやすい。
■音質レビュー:音楽だけでなく動画再生でも試す
まずは、 MacBook Proと接続して、音楽ストリーミングサービスからトニー・ベネットとダイアナ・クラールのデュオアルバム「Love Is Here To Stay」を聴いた。音が頭の周りを包み、今までに感じたことのない新鮮な感覚だ。スマートスピーカーのような部屋全体への広がり方とは違い、頭部の周りを360度音が包み込む感じだ。最初は比較的大きな音量で聴いたのだが、同じ部屋にいる家族には、筆者本人が感じる音量より小さく聴こえていたようだ。
次にAstell&Kern 「A&futura SE100」と接続して、音楽を聴きながら読書を楽しんだ。上述の通り、本機はaptXにも対応しているので、同じようにaptXに対応するプレーヤーと組み合わせることで、より良い音質で音楽を聞くことができる。
ヘッドホンとスピーカーの良い部分を合わせた自然な音で、音楽をBGM的に楽しみながら快適に読書ができた。ヘッドホンのような頭部を挟み込む圧迫感がないのでよりリラックスできる。「あ、この使い方はいいな」と思わず声が出た。
ここまでの段階で感じた本機の音質傾向は、ひとことで言うならバランスの良い爽快な音。高級ヘッドホンのような上下のfレンジや迫力ある低域は望めないものの、大きな音から、かなり音量を絞っても1つ1つの音が明瞭に聞こえる。ここまで小さい音で楽しめるなら、家の中で使っても家族の目はあまり気にならないはず。事実一緒にいた家人もほとんど気にならないとのことで安心した。
iPadと接続してYouTubeを見るときにも使ってみたが、iPad本体から音を出した時と比べ、包み込まれるような臨場感がある音に嬉しくなった。Bluetooth製品で動画を見るときに気になるリップシンクのズレ、いわゆる映像と音声のズレも小さく、映像への没入感が大きく上がる。
最後はiPhone Xと組み合わせて、本機を首にかけたまま、近所の公園に向かってみた。重量が軽く、着けている感覚さえほとんど感じないので、歩いていても快適だ。ベンチに座って、2月に発表されたグラミー賞で「最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞」を受賞したアリアナ・グランデのニューアルバム「thank u, next」を聴く。刺激感がない伸びの良い中高域を基軸に、外で聞いていても明瞭なボーカルに感心する。コーラスが重なった時も音が団子にならないのも良い部分だ。
気持ちよく音楽を聴いていると、電話がかかってきた。そのままハンズフリーで通話できるので、これは便利だ。今回は試せなかったが、車の中で運転中に使用するのも便利そうだ。
イヤホンとヘッドホンの良いとこどりのようなウェアラブルスピーカーの良さを実感した試聴だった。やはり重量が軽いことは大きなアドバンテージで、無線で動きやすく、ヘッドホンを装着した時のような生活空間との境界がないので、音楽を聴きながら家族と会話したり、家のなかで色々と作業ができることは予想外のメリットだった。
音質については、スピーカーの位置が耳の直近にあるネックスピーカーは、刺激的な音だと耳が疲れやすくなってしまうことが予想できるが、解像感と耳あたりの良い音作りが絶妙だ。また、比較的Bluetoothの電波が安定して受信できるようで、部屋をまたぐくらいの距離であれば、音切れはほとんどおこらないのも印象に残った。
3.5mmミニジャックのアナログライン入力には対応しないが、その代わりスリムでスタイリッシュな本体と軽量化を実現したメリットの方が大きいだろう。ボイスガイドや自動オフ機能、Siriなどの音声認識機能の起動にも対応するなど使い勝手もよいし、コストパフォーマンスの高さも感じられる。音質、機能とも充実した内容が魅力だった。
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