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公開日 2019/10/04 06:30
【特別企画】 最初の1台にも、2ndモデルにも

どこを取ってもコスパ良し。セミオープンの銘機、AKG「K240 STUDIO-Y3」レビュー

佐々木 喜洋
AKGはオーストリアで1947年に設立された老舗の音響メーカーで、プロ用のマイクやヘッドホンで知られている。国内ではコンシューマーモデルでも知られているが、AKG「K240 STUDIO」はその名の通りスタジオなどで使われるプロフェッショナル用途のモニターヘッドホンである。

「K240 STUDIO-Y3」(市場想定価格¥6,500前後)

こうしたモニターヘッドホンは忠実な再現性を目指して設計されているため、コンシューマーでも脚色のない音を好むユーザーから音楽リスニング用としてよく使われる。K240 STUDIOはこの分野では定番と呼ばれ、いまだに根強い人気のあるモデルのひとつだ。

国内ではしばらく正規取り扱いがストップしていたが、再発売の要望が多かったとのことで、この10月5日からヒビノ株式会社が新たに取り扱いを開始する。しかも、ヒビノ独自の1年保証を加えた3年保証の特別モデル「K240 STUDIO-Y3」として発売するのだ。

プロ向けモデルとして考えぬかれた耐久性、装着性、そして音質

K240 STUDIO-Y3はセミオープンタイプのダイナミック型ヘッドホンで、耳を覆う大きな円形イヤーパッドを採用している。オープン/セミオープンタイプのヘッドホンは抜けが良く自然な音が特徴であり、AKGのプロ向けラインナップで多数の機種に採用されている。本機はその中でも最エントリーに位置づけられ、実売価格は6,500円前後とかなり手頃。高品位なAKGヘッドホンがこれほど入手しやすいというだけでも、本機の価値は高い。

円形のハウジング/イヤーパッドにセミオープン構造を採用

ドライバーの直径は30mmで、周波数特性は15Hzから25,000Hzまでの再生帯域をカバー。プロ用モデルのために開発された独自の「XXLトランデューサー」を搭載する。そしてダイヤフラムには、異なる2種類の素材を組み合わせた「TWO-LAYERダイヤフラム」構造に加えて、中心部と外縁部で厚みを変えた特許技術「バリモーションテクノロジー」が採用されている。

ダイヤフラムには、2種類の素材を組み合わせ、中心部と外縁部で厚みを変えた設計の「XXLトランスデューサー」を採用。イヤーパッドを取り外せば直接見える位置に搭載されている

これによりダンパー特性を改善するとともに、分割振動を抑制することで高域特性を改善しているという。分割振動とはダイヤフラムの外縁部と中心部で振動の速さや大きさに差異が生じてしまう現象のことで、高域性能を劣化させる原因となる。

インピーダンスは55Ω、音圧感度は91dB/mWであり、能率はコンシューマー向けヘッドホンに比べるとやや低めではあるがスマートフォンでも十分に鳴らせる。実際に試聴してみたところデジタルオーディオプレーヤー(DAP)との相性も良い。

ケーブルは片出しで3mのストレートケーブルだ。着脱が可能で、断線時も簡単に交換できるのが嬉しい。ヘッドホン側の端子はこの価格帯にしては珍しく本格的なミニXLR端子を採用している。頑丈で確実に固定できる点がプロ仕様を感じさせる。

断線にもすぐ対応できる着脱式ケーブル。ミニXLR端子でしっかり接続されるため、接触不良の可能性も小さい

再生機側のプラグはステレオミニプラグが採用されていて、DAPでの使用にも適している。据え置き再生機の6.3mm標準端子につなぐためにアダプターも添付されている。

本体は230gと軽量だ。外観デザインはシックな黒を基調として、金をハイライトに使う点が高級感を感じさせ、AKGヘッドホンを所有する喜びが値段以上に得られる。ヘッドバンド部分は自動で動くセルフアジャスト機構を採用しているため装着するだけでサイズに合わせた長さ調整ができる。イヤーパッドに厚みがあるオーバーイヤー型なので効率的に側圧を分散して耳への負担も少ない。

長さが自動で調整できるセルフアジャスト機構を搭載し、幅広で頭部への重みを分散するヘッドバンド。大型で厚みのあるイヤーパッドが負担を軽減するため、ゆったり装着できる

忠実さと空間表現のバランスが絶妙

音を聴いてみると、とても心地よい音色で自然な広がりを感じられる。音場は横に広いだけではなく奥行きも感じられ、楽器音がホールに響いていくように美しい。本来スタジオのモニター用途を想定したモデルではあるが、家で音楽を楽しく、気持ちよく聴く用途にも適している。AKGの持つ音色の美しさが堪能できるモデルだと思う。

“プロ向けのモニターヘッドホン” としての色付けのないサウンドに、広がりのある音場が合わさることで、自宅で音楽を楽しむ用途にも十分通用する

高域はハイハットがきれいに響き鮮明だが、きつさが少ないために疲れにくい音だ。中域では女性/男性ボーカル共に明瞭感が高く、歌詞もよく聴きとれる。これは低域がやや控えめで、マスキングがされにくいためだと思う。

低域はウッドベースの迫力が感じられるくらい十分な量感が確保されているが、本来モニター用であるため不自然に張り出すような過剰な低音はない。音楽を録音に忠実に鑑賞できるとともに、ライブのエネルギー感を楽しむこともできる絶妙なバランスだ。倍音の豊かさを感じられるような情報量の豊かさを感じさせ、楽器音の描き分けもよくできている。



K240 STUDIO-Y3は、ヒビノが扱うAKGプロフェッショナルラインの中でも、最も安価なオープン型ヘッドホンであるが、音質はこの価格帯を大きく超えるものであり、かなりコストパフォーマンスが良い。

プロ用というと無機的で硬いダイレクトな音を想像してしまうかもしれないが、K240 STUDIO-Y3は広がりのある自然で気持ちの良い音色を実現しており、家で音楽を長時間楽しむにも適したモデルであると言える。ひとたび使用してみればK240 STUDIOがこれまで定番と言われていた理由がわかるだろう。

さらにケーブル端子でもわかるようにプロ向けの耐久性があるのに加えて、今回は3年の長期保証がついているために長く安心して使うことができる。

K240 STUDIO-Y3は最初の1台にふさわしいモデルであり、AKGサウンドを堪能するためのベテランユーザーの2台目としてもオススメできる。またイヤホン派の人も、ヘッドホン入門としてみてはいかがだろうか。手持ちのスマホやDAPをK240 STUDIO-Y3に繋ぐだけで、いつもとは異なる音楽リスニングを楽しめるはずだ。


(企画協力:ヒビノ株式会社)

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