公開日 2020/12/02 06:45
オーディオ銘機賞2021 銀賞を受賞
DYNAUDIOスピーカーの中核、「Contour 30i」が鳴らす“壮絶な表現”を聴く
井上千岳
DYNAUDIOの「Contour(コンター)」がシリーズ第3世代となる「Contour i」となった。上級機「Confidence」シリーズやエントリー機「Evoke」の開発、巨大測定システム「Jupiter」の完成などを受け、根本から設計を見直し、最新の研究成果が導入されている。ここでは、オーディオ銘機賞銀賞を受賞したシリーズの中核モデル「Contour 30i」を井上千岳氏が詳細にレポートする。
■新開発トゥイーターEsotar 2iを搭載したスリムな2.5ウェイモデル
Contourはディナウディオの中核となるシリーズで、1986年に登場し、2003年と2016年の2回、全面的なリニューアルを受けている。このContour iシリーズはデザインだけは残しながら内容に大幅な変更を加えたリファイン・バージョンである。Contour 30iはその中で、使いやすさも考慮に入れたスリムな2.5ウェイ・フロア型となる。
このサイズは、ブックシェルフ型の「Contour 20i」をそのまま上に引き伸ばしたスタイルで、底面積は同じである。トゥイーターもウーファーも一緒だが、ウーファー2基のうち片方を早めに減衰させたスタガー構成、つまり2.5ウェイとしている。ブックシェルフ型の延長と言ってもよく、小空間でもある程度広い部屋でも幅広く適応が可能である。
ドライバー・ユニットはいずれも新規の開発である。特にトゥイーターはEsotar2を改良したEsotar2i。上級機ConfidenceシリーズのEsotar3から多くを受け継ぎ、伝統的なファブリック・ドームの背後にインナードームHexisを装備して背圧を最適に制御している。またベンチレーションや放熱にも改善を加え、ネオジムマグネットも強化してレスポンスその他の諸特性を均一化している。
ウーファーは従来どおり18cmのMSPコーンだが、ダンパーに新素材Nomexを採用した。形状はリブの高さに変化を持たせたコルゲーション・タイプである。
キャビネットは多層MDFだが、フロント側を二重構造にしている。また内部のブレーシングとダンピングにも改良を施し、仕上げの木材やラッカーの品質も向上させたという。
前のContourシリーズではまだ巨大測定施設Jupiterは完成していなかった。今回はその成果をフルに活用し、ネットワークも一新している。クロスオーバーは300Hzおよび2.2kHz。スロープは2次とし、インピーダンス特性を均一化することでインピーダンス補正の不要なよりシンプルな構成を実現した。
■フルレンジのような一体感で、スケールと力強さがひと回り高まる
音調は以前よりスケールと力強さがひと回り高まった印象である。だがそれより先に気がつくのは、つながりが非常に滑らかなことだ。
シミュレーションなど解析技術の進歩によって、現代のスピーカーはユニット同士が別々に聴こえるようなことはない。一応はつながっているのが普通だが、本機ではそんなレベルではなく、まったくフルレンジのような一体感を示す。振動板の同質性やネットワークの精度にも依るのだろうが、Jupiterの効能にも計り知れないものがある。周波数レスポンスだけでなく、位相やスピードなどあらゆる要素が一体として動いているのである。過去にはなかった次元の違いと言っていい。
そのうえに立って、再現の振幅が大きい。スケールと力強さと言ったのはそれだ。例えばピアノでも、静かな音楽の弱音部でも音が立つ。エッジの彫りが深く、立ち上がりが高い。刺や硬質感はないため耳障りではなく、余韻ももう一枚厚く乗った印象である。
室内楽はそれこそダイナミズムが拡大したように感じられる出方で、ぐっと傍に近づいたときの感触だ。それでいてステージはきちんと奥行と位置感を持ち、イメージが膨れ上がってしまうようなことはない。そしてどの楽器も強弱が鮮やかで、立ち上がりも掘り下げも深いのだ。出てくる表現は壮絶なものになってくる。
オーケストラは開放的で明るく、伸びやかで広々としている。音量の小さな木管楽器などのディテールまで明瞭で濁りがない。トゥッティの豊かなボリューム感は格別で、押しつけがましさは少しもなく、全てが自然に大きな呼吸をしている。深く壮麗な再現力である。外観のデザインも美しいが、こうした内部技術が、左右シンメトリーに美しく配置されていることが理解できることであろう。
【Contour 30iの仕様】
●型式:2.5ウェイ・リアバスレフ・フロア型●ユニット:Esotar2iトゥイーター、Nomexスパイダー採用18cmMSPコーン・ウーファー18W×2●クロスオーバー: 300Hz/2.2kHz、2次カーブ●能率:87dB(2.38V/1m)●インピーダンス:4Ω●周波数特性:32Hz〜23kHz●サイズ:300W×1169H×403Dmm(グリル、脚部を含む)●質量:31.4kg
■新開発トゥイーターEsotar 2iを搭載したスリムな2.5ウェイモデル
Contourはディナウディオの中核となるシリーズで、1986年に登場し、2003年と2016年の2回、全面的なリニューアルを受けている。このContour iシリーズはデザインだけは残しながら内容に大幅な変更を加えたリファイン・バージョンである。Contour 30iはその中で、使いやすさも考慮に入れたスリムな2.5ウェイ・フロア型となる。
このサイズは、ブックシェルフ型の「Contour 20i」をそのまま上に引き伸ばしたスタイルで、底面積は同じである。トゥイーターもウーファーも一緒だが、ウーファー2基のうち片方を早めに減衰させたスタガー構成、つまり2.5ウェイとしている。ブックシェルフ型の延長と言ってもよく、小空間でもある程度広い部屋でも幅広く適応が可能である。
ドライバー・ユニットはいずれも新規の開発である。特にトゥイーターはEsotar2を改良したEsotar2i。上級機ConfidenceシリーズのEsotar3から多くを受け継ぎ、伝統的なファブリック・ドームの背後にインナードームHexisを装備して背圧を最適に制御している。またベンチレーションや放熱にも改善を加え、ネオジムマグネットも強化してレスポンスその他の諸特性を均一化している。
ウーファーは従来どおり18cmのMSPコーンだが、ダンパーに新素材Nomexを採用した。形状はリブの高さに変化を持たせたコルゲーション・タイプである。
キャビネットは多層MDFだが、フロント側を二重構造にしている。また内部のブレーシングとダンピングにも改良を施し、仕上げの木材やラッカーの品質も向上させたという。
前のContourシリーズではまだ巨大測定施設Jupiterは完成していなかった。今回はその成果をフルに活用し、ネットワークも一新している。クロスオーバーは300Hzおよび2.2kHz。スロープは2次とし、インピーダンス特性を均一化することでインピーダンス補正の不要なよりシンプルな構成を実現した。
■フルレンジのような一体感で、スケールと力強さがひと回り高まる
音調は以前よりスケールと力強さがひと回り高まった印象である。だがそれより先に気がつくのは、つながりが非常に滑らかなことだ。
シミュレーションなど解析技術の進歩によって、現代のスピーカーはユニット同士が別々に聴こえるようなことはない。一応はつながっているのが普通だが、本機ではそんなレベルではなく、まったくフルレンジのような一体感を示す。振動板の同質性やネットワークの精度にも依るのだろうが、Jupiterの効能にも計り知れないものがある。周波数レスポンスだけでなく、位相やスピードなどあらゆる要素が一体として動いているのである。過去にはなかった次元の違いと言っていい。
そのうえに立って、再現の振幅が大きい。スケールと力強さと言ったのはそれだ。例えばピアノでも、静かな音楽の弱音部でも音が立つ。エッジの彫りが深く、立ち上がりが高い。刺や硬質感はないため耳障りではなく、余韻ももう一枚厚く乗った印象である。
室内楽はそれこそダイナミズムが拡大したように感じられる出方で、ぐっと傍に近づいたときの感触だ。それでいてステージはきちんと奥行と位置感を持ち、イメージが膨れ上がってしまうようなことはない。そしてどの楽器も強弱が鮮やかで、立ち上がりも掘り下げも深いのだ。出てくる表現は壮絶なものになってくる。
オーケストラは開放的で明るく、伸びやかで広々としている。音量の小さな木管楽器などのディテールまで明瞭で濁りがない。トゥッティの豊かなボリューム感は格別で、押しつけがましさは少しもなく、全てが自然に大きな呼吸をしている。深く壮麗な再現力である。外観のデザインも美しいが、こうした内部技術が、左右シンメトリーに美しく配置されていることが理解できることであろう。
【Contour 30iの仕様】
●型式:2.5ウェイ・リアバスレフ・フロア型●ユニット:Esotar2iトゥイーター、Nomexスパイダー採用18cmMSPコーン・ウーファー18W×2●クロスオーバー: 300Hz/2.2kHz、2次カーブ●能率:87dB(2.38V/1m)●インピーダンス:4Ω●周波数特性:32Hz〜23kHz●サイズ:300W×1169H×403Dmm(グリル、脚部を含む)●質量:31.4kg