トップページへ戻る

レビュー

HOME > レビュー > レビュー記事一覧

公開日 2020/12/21 06:50
【特別企画】オーディオ銘機賞 銅賞受賞

ティアック同士の組み合わせで実現、アナログ再生のフルバランス伝送。「音の生命力が倍増」

石原 俊
ティアックから発売されたレコードプレーヤー「TN-5BB」、フォノイコライザー「PE-505」がオーディオ銘機賞2021でそれぞれ銅賞を獲得した。いずれも10万円台と手頃な価格ながら、本格的なアナログ再生にも通用する高度な内容が高く評価された。それぞれの製品の魅力、そして組み合わせによる楽しみ方を、審査員である石原 俊氏がレポートする。

オーディオ銘機賞銅賞を受賞したアナログプレーヤー「TN-5BB」と、フォノイコライザー「PE-505」

■フルバランス伝送を実現できるティアック入魂のアナログシステム

TN-5BBはベルトドライブ方式のレコードプレーヤーだ。シャーシは36mm厚のMDF製ベースプレートに12mm厚の人工大理石を組み合わせた積層構造で、質量は8.8kg。異種素材を組み合わせることで、高いハウリングマージンを得ている。

TEAC「TN-5BB」(168,000円/税抜)。ベルトドライブ方式で、33、45、78回転に対応する

プラッターはアクリル製の20mm厚で、質量は1.7kg。アクリルはレコードの素材である塩化ビニールとの相性が良く、両者がこすれあっても帯電しにくい。プラッターは「回しっぱなし」ではなく、光センサーが回転数を検知し、モーターにプラッターの回転に応じたサーボをかける「回転数自動調整機構」によって回転数を制御している。

TN-5BBのリア部分。RCA、XLR出力をそれぞれ搭載する

トーンアームはサエクとのコラボによるナイフエッジのスタティックバランス方式で、オルトフォンのMM型カートリッジ「M2 Red」が付属する。出力は通常のシングルエンドと昨今流行りのバランスの2系統。MMカートリッジ装着時のバランス出力には対応していない。

SAECとコラボしたナイフエッジトーンアーム、カートリッジはOrtofon「2M RED」を標準装備

一方のPE-505は、小型高密度な筐体でおなじみのReferenceシリーズに属するフォノイコライザーだ。MM/MC対応で、さまざまな負荷抵抗値と負荷容量値を選択することができる。入力はシングルエンドとバランスの2系統。ただし、バランス入力はMMには対応していない。出力もシングルエンドとバランスの2系統となる。

TEAC「PE-505」(168,000円/税抜)。フロントのつまみで、EQカーブを「RIAA」「COLUMBIA」「DECCA」に切り替えが可能

MCカートリッジとのバランス接続時には、入力段から出力段まで信号はフルバランス回路を通る。イコライジングカーブはRIAAのほか、DECCAとCOLUMBIAから選択できる。

PE-505のリア部分。バランス受けができることが大きな特徴

■バランス接続では、音像の生命力が倍増する

TN-5BBに付属するM2 Redを取り付けた状態でPE-505とシングルエンド接続して試聴を開始した。M2 Red特有の太い音が得られた。程よくナローレンジで、音に稠密感があり、音楽の根本的な部分を骨太に描く。このクラスのMMカートリッジとしては、情報量はかなりあるほうだ。というか、むしろPE-505の情報吸い上げ能力が高いというべきであろう。ともかく、このプレーヤーとフォノイコライザーはカートリッジの基本的性能をよく引き出してくれる。

ここでカートリッジをオーディオテクニカのAT-ART9XIにチェンジした。接続はシングルエンドのままである。まったく世界観の異なるサウンドだ。M2 Redでは中央に集まっていた音場が、左右のスピーカーのはるか外側に広がっていた。音像も千変万化の色彩変化を遂げている。極めつけはふくよかな低音だ。実体感と空気感が高度なレベルで両立しており、ある意味で本物よりも本物らしい。

ここで両者の接続をバランスに変更した。基本的にはシングルエンドと同じ世界観の音である。しかしながら音像の生命力と音場の静寂感は倍増しているように感じられる。音楽的にはシングルエンドよりも楽曲・演奏に絡むのだが、煩わしいと感じさせることはない。

イコライジングカーブの切り替えも試してみた。DECCAとCOLUMBIAのモノラルレコードは正しいポジションで再生するほうがはるかに好ましい。

もちろん、両モデルとも優秀なので、単体でも素晴らしいパフォーマンスが期待できる。


【TN-5BB】の仕様
●駆動方式:回転検出型高精度制御ベルトドライブ ●モーター:DCモーター ●回転数:33 ⅓rpm、45rpm、78rpm ●ワウ・フラッター:0.1%以下 ●プラッター:直径300mm(アクリル製) ●トーンアーム形式:スタティックバランス型S字トーンアーム ●実効トーンアーム長:223mm ●適合カートリッジ質量:4.0〜13.0g、14〜23g(付属ヘッドシェル含む) ●オーバーハング:18mm ●トーンアーム高さ調整範囲:約6mm ●出力端子:XLR×1、RCA×1 ●消費電力(スタンバイ時):2.0W(0.3W) ●外形寸法(突起部含む):450W×148H×351Dmm(ダストカバーを閉じた状態)、450W×135H×351Dmm(ダストカバーを取り外した状態)●質量:約10.5kg

【PE-505】の仕様
●全高調波歪率(定格出力、1kHz、GAIN LOW):0.002%(RCA入力/MM時)、0.02%(RCA、XLR入力/MC時) ●残留雑音電圧(入力短絡、GAIN LOW、IHF-A):10μV(RCA入力/MM時)、65μV(RCA入力/MC時)、85μV(XLR入力/MC時) ●SN比(入力短絡、定格入力、GAIN LOW、IHF-A):106dB(RCA入力/MM時)、86dB(XLR入力/MC時) ●RIAA偏差(20〜20kHz):±0.05dB ●チャンネルセパレーション(MM、10kHz、GAIN LOW):-90dB以上 ●ゲイン:34dB(GAIN LOW/RCA入力/MM時)、54dB(GAIN LOW/RCA、XLR入力/MC時)、46dB(GAIN HIGH/RCA入力/MM時)、66dB(GAIN HIGH/RCA、XLR入力/MC時) ●サブソニックフィルター:17Hz、-24dB/octave ●入力端子:RCA×1、XLR×1 ●出力端子:RCA×1、XLR×1 ●最大許容入力電圧(歪率0.1%、GAIN LOW):150mV(RCA/MM時)、16mV(RCA、XLR/MC時) ●入力インピーダンス:47kΩ・負荷容量0・100・220・330pF(MM)、10・22・47・100・220・470・1kΩ(MC) ●定格出力電圧:2Vrms(RCA)、4Vrms(XLR) ●出力インピーダンス:63Ω(RCA)、126Ω(XLR) ●消費電力:14W ●外径寸法:290W×84.5H×252.5Dmm ●質量:4.5kg

関連リンク

新着クローズアップ

クローズアップ

アクセスランキング RANKING
1 BRAVIAが空飛ぶ時代? 動画コンテンツの楽しみ方に押し寄せた大きな変化を指摘するソニーショップ店長。超大画面はさらに身近に
2 ネットワークオーディオに、新たな扉を開く。オーディオ銘機賞の栄えある“金賞”、エソテリック「Grandioso N1」の実力に迫る
3 Nothing、最大40%オフのウィンターセール開催
4 LG、世界初のDolby Atmos FlexConnect対応サウンドバー「H7」。オーディオシステム「LG Sound Suite」をCESで発表へ
5 「ゴジラAR ゴジラ VS 東京ドーム」を体験。目の前に実物大で現れる“圧倒的ゴジラ”の臨場感
6 衝撃のハイコスパ、サンシャインの純マグネシウム製3重構造インシュレーター「T-SPENCER」を試す
7 AVIOT、“業界最小クラス”のANC完全ワイヤレス「TE-Q3R」。LDAC、立体音響にも対応
8 ソニー「WH-1000XM5」に“2.5.1”アップデート。Quick AccessがApple Music/YouTube Musicに対応
9 「HDR10+ ADVANCED」が正式発表。全体的な輝度向上、ローカルトーンマッピングなど新機能も
10 クリプトン、左右独立バイアンプ機構のハイレゾ対応アクティブスピーカー「KS-55HG」新色 “RED”
12/19 11:02 更新

WEB