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公開日 2021/06/28 06:45
【特別企画】ヘッドホン&スピーカー再生でテスト

“音質重視派”に推薦! 最新版「Audirvana Studio」は再生ソフトの“核”を磨き上げた決定版

逆木 一

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■サブスク/クロスプラットフォームを実現した「Audirvana」の新たなる挑戦

10年の歴史を持つPCの再生ソフト「Audirvana」が先日アップデートにより「Audirvana Studio」として生まれ変わった。この記事ではAudirvanaの歴史を概観して、今日のファイル再生における立ち位置を再考しつつ、アップデートによる変更点や、実際の使用感・再生音について確認していく。



今回のアップデートにおける変更点はいろいろとあるが、最たるものといえばやはり提供形態が従来バージョンの「買い切り」から「サブスクリプション」となったことだ。日本の価格設定は月契約が890円、年間契約で8,990円。

買い切りからサブスクリプションへの転換は賛否両論あり、これをどう捉えるかはオーディオファンひとりひとりに任せたい。ただ、ソフトを「サービス」として捉え、長期にわたるアップデートとサポートを行うためにサブスクリプションに転換すること自体はおかしいことではない(実際に「Roon」という先例もある)。

さて、ここで筆者の考えるPCの再生ソフトの「区分」について述べておきたい。

一つ目は「再生特化型」の再生ソフト。これは文字通り「デジタル・ファイル音源を再生する」ことに特化したソフトで、「HQPlayer」「PlayPcmWin」「JPLAY」などが該当する。高度かつマニアックな再生機能を備え、音質について高い評価を受けているものが多い。一方でインターフェイスは得てしてシンプルないし必要最小限で、「ストイックに音質を追求する」という傾向が強い。ソフト単体で音楽を聴く際の使い勝手、つまり「ライブラリを閲覧し、聴きたい曲を選ぶ」という部分はあまり考慮されていないため、他のソフトとの連携機能を持つものや、併用が前提となっているものもある。

二つ目は「ライブラリ統合型」の再生ソフト。これはデジタル・ファイル音源の再生にくわえて、ユーザーが所有する音源、すなわちライブラリの管理・ブラウジング機能を備えたソフトで、「JRiver Media Center」「MediaMonkey」「TuneBrowser」などが該当する。オーディオの文脈ではそれほど登場することのない「Windows Media Player」や「iTunes」もライブラリ統合型の再生ソフトだといえる。ユーザーが管理・構築したライブラリの音源がアルバムアートによって視覚的に一覧でき、そこから再生まで通して行えるため、実際に音楽を聴く際の使い勝手は再生特化型のソフトに比べて優れている。

AudirvanaはもともとMacの「再生特化型」ソフトとして始まった。iTunesと連携し、音源のブラウジングといったインターフェイスはiTunesに任せ、再生機能の部分をAudirvanaが担うという形である。

Audirvana Plus Ver.1の頃のインターフェース(2012年頃)。ライブラリ機能を持たず、プレイリストにドラッグ&ドロップして再生する方式だった

Audirvana Plus Ver2のインターフェース(2016年頃)。タイル状にアルバムアートが配置され、直感的な操作で再生ができるようになった

卓越した再生音質や組み合わせるDACの能力を引き出す様々な機能によって、AudirvanaはMacを代表する再生ソフトとして地位を確立した。独自のライブラリ機能の搭載、ストリーミングサービスとの連携、UPnP/DLNA対応といったアップデートを重ね、2018年にはWindows版も登場した。Audirvana Studioはそうした流れの先端にあり、冒頭で述べたように提供形態が変更され、先のバージョン3.5から基本的な部分は受け継ぎつつ、様々な点でブラッシュアップが図られている。

2018年にはWindows10対応版も発表

買い切り型ソフトとして2021年まで展開されていた「Audirvana 3.5」

AudirvanaにはiOS/Android用のコントロールアプリが用意され、ネットワークオーディオの作法で音楽再生が可能なのだが、現行バージョンのアプリはAudirvana Studioに対応しない。アプリのアップデートも近々予定されているとのことなので、続報を待ちたい。

■サブスクリプションやアカウントの設定はウェブブラウザから

Audirvana Studioはサブスクリプションモデルへの変更に伴い、各種ユーザー設定や使用するPCの管理、ソフトのダウンロード等はウェブ上で行うようになった。他のPCでAudirvana Studioを使う場合は、現在使っているPCを「Disconnect Device」で解除する必要がある。その代わり、Windows/Macをひとつのアカウントでシームレスに利用できる。

Audirvana StudioのWeb管理画面。サブスクプランの管理やデバイスの管理などが行える

ソフトのダウンロードの他、フォーラムへのアクセスなども利用可能

それでは、実際のソフトを見ていこう。

「Audirvana Studio」の管理画面。左カラムの配置などが大きく変更されている。表示するアルバムアートのサイズや外観の色(ライトまたはダーク)は変更可能

Audirvana Studioのインストールが完了したら、ローカルの音源の読み込み、ストリーミングサービス(TIDAL・Qobuz・HRA Streaming)へのログイン、オーディオデバイスの設定を行う。この辺りは従来と同様。Mac版では、オーディオ用にシステムを最適化する機能を引き続き使用可能だ。

基本的な機能はこれまでと同様だが、UIは一新されている。上図はローカル音源の読み込みの設定画面

TIDAL/Qobuz/HRA Streamingとも連携できる

従来バージョンからの主な変更点・追加機能としては、ローカルのライブラリとストリーミングサービスを横断する強化された検索機能、各種インターネットラジオやポッドキャスト対応、ローカルとストリーミングの音源を混在できるプレイリスト、カーネルストリーミング対応(Windows版)、音源の分析表示などがある。

オーディオデバイスの設定画面。出力先の指定のほか、アップサンプリング等の設定もここから行える。また、信号処理の経路も表示されるようになっている

新機能として追加された「音源の分析」。周波数特性やビット深度などを確認できる

操作感はおおむねバージョン3.5と同等。大規模なアップデートをして間もないためか、レスポンスや動作の安定性といった点は少々難が感じられるので、今後の改善を期待したいところだ。

Audirvana Studioは紹介してきた通り、視覚的な音源のブラウジングが可能だが、JRiver Media CenterやMediaMonkeyといったソフトに比べるとライブラリ機能はかなり限定されている。音源のタグ編集といったライブラリの「管理」までAudirvana Studioで行うことは不可能ではないものの、あまり現実的ではない。その点で、Audirvana Studioは視覚的に豪華なインターフェイスを持ちつつも、立ち位置はあくまでも「再生特化型」を堅持しているといえる。

Macの場合は、「オーディオ用にシステムを最適化」などいくつかの項目が設定できる

スピーカーとヘッドホンで再生クオリティをチェック

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