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公開日 2022/06/29 06:35
「ケーブルという存在がすっかり消えてしまう」

オーディオクエストの新たな“伝説” 最高峰インターコネククトケーブル「Mythical Creature」を聴く

井上千岳
世界的な知名度を誇る老舗ケーブルブランド、audioquest(オーディオクエスト)から最高峰のインターコネクトケーブルが誕生した。Mythical Creature(伝説の生物)シリーズとして、日本ではまずスピーカーケーブルから先行して発売されたが、上から「ドラゴン」「ファイヤーバード」「サンダーバード」の3モデルがラインアップされている。いずれも最高レベルのノイズ対策をはじめ、同社の最新にして最高の技術を集結させた正真正銘のフラッグシップモデルとなっている。誘電体バイアス・システム(DBS)の採用など、ケーブル伝送技術において驚くべき独自の技術を採用してきた同社の集大成を井上千岳氏が体験する。

RCA/XLRインターコネククトケーブルMythical Creature Series。写真は「DRAGON RCA/XLR」

独自の技術と素材を駆使し、広汎なノイズ低減を実現



オーディオクエストの技術を総結集して完成された、ラインケーブルの新たなフラッグシップである。今回は神話上の生き物の名前を型番として、Mythical Creatureシリーズと呼ぶ。

Mythical Creature Seriesの「FIRE BIRD RCA/XLR」(写真下)、「THUNDER BIRD RCA/XLR」(写真上)

ラインアップは3モデル。特徴はおおよそ共通するので、先にまとめて述べておくことにする。

オーディオクエストの導体は、昔からソリッド(単線)である。信号の混線や振動などによる歪みを避けるためである。本シリーズも銀または銅の単線で、結晶粒界での歪みを最小限に抑えるパーフェクトサーフェス(PS)導体が使用されている。

この導体をFEPエアチューブで絶縁。プラス側導体はほとんど空気以外と接触しない。逆にマイナス側はその役割を考慮して空気もFEPも使用せず、高密度な絶縁とするユニークな構造である。

ここからZERO-Techという独自の特徴が導き出される。No Caracteristic Impedance、すなわち特性インピーダンスを持たせないことで負荷との不整合を回避するこれもユニークな構想である。

このほかトレードマークのDBS(絶縁体バイアス・システム)は72Vとし、さらにバランス・ケーブルではホット/コールド間の絶縁を完璧に保つため両者別々にDBSユニットを装着している。

72V誘電体バイアス・システム(DBS)。XLRモデルに搭載されたDBSパックDual-72vはバランス構造の反転・非反転のプラス信号導体間の完全な絶縁を維持する新型を採用

またノイズ対策としてカーボン/グラフェン/メッシュ・ネットワークというシールド構造が採用されている。イラストを見ると編組/カーボン/グラフェン/カーボン/編組という5層構造のようで、これに先のゼロテックや方向性制御など種々の要素を組み合わせて、レベル6ないし7と呼ぶ広汎なノイズ低減技術を適用する。

最高峰の「ドラゴン」に採用されたレベル7のノイズ対策


すべてのプラグはケーブルの導体に合わせて専用設計されている

■THUNDER BIRD (サンダーバード)
一切の汚れや歪みのない、極めて上質な音の出方



「ThunderBird Interconnect」RCA=484,000円/XLR=649,000円(1mペア・税込)※1.5mペア、2mペアもあり

いちばん下のモデルから試聴していこう。「サンダーバード」は導体にPSC+という銅単線を使用。プラグはスリーブを銅メッキ、接点を銀コート銅としている。

「ThunderBird Interconnect」の内部

低域から高域までどこも軽々として、全く抵抗のない出方を感じる。信号の通りがいいのである。音に汚れや歪のないことが、軽やかさの基になっているのがわかる。極めて上質な音の出方である。

バロックは弦楽アンサンブルも独奏オーボエも、楽器の音量が増したようにふくよかで存在感が大きい。余韻も大変豊かで、それが音場全体に充満して音数が非常に多くなっているのである。

ピアノはゆったりとした鳴り方だが、質感は密度が高く目の詰んだ手触りがタッチを引き締めている。エネルギーが豊富で、特に低音部の量感が太いパイプから放出されるように大きな勢いだ。また濁りやにじみがなく、刺や硬質感も生じさせず、くっきりとした輪郭と厚手の肉質感ががっしりとした骨格に乗って縦横に展開される。

コーラスの広々とした光景と純度の高い響きにも、強く惹かれるものがある。解像度が高いため声もオーケストラも混濁することがなく、壮麗で光り輝くような洗練されたハーモニーが印象的だ。

■FIRE BIRD(ファイアーバード)
もう一回り高い次元に昇華、筋肉質の弾力の強さも乗る



「FireBird Interconnect」RCA=913,000円/XLR=1,155,000円(1mペア・税込)※1.5mペア、2mペアもあり

「ファイアーバード」はミドルレンジで導体は銀単線PSS。プラグのスリーブは銀メッキとしている。

「FireBird Interconnect」の内部

歪みとノイズの絡まない音調に変わりはないが、それがもう一回り高い次元に昇華された感触がある。信号の流れにもうひとつ勢いが加わり、エネルギーの通り道が太くなっている気がする。当たりの柔らかさに、筋肉質の弾力の強さが乗った出方である。

バロックは余韻の豊かさと手触りの瑞々しさがそのまま引き出されているが、音場全体がしっとりと潤った雰囲気の「サンダーバード」に比べて、個々の楽器の独立した存在感がひとつ高い。だから演奏そのものに活気がある。

ピアノもほとんど同じ感触だが、心持ちエッジのラインが強くタッチがくっきりしたアタック感を持つ。音自体は強靭だが、逆に周囲は静かだ。その対比が目覚ましい。

コーラスは豊饒という言葉がぴったりの円満な響きに包まれて、大きな流れがゆったりとうねるように続いている。深い再現である。

そしてオーケストラでは、緻密できめの細かい質感が弦楽器にも金管楽器にも備わり、単にきれいなだけではないリアルなライブの手触りを引き出す。瞬発力とエネルギーの高さも壮麗そのものだ。

■DRAGON(ドラゴン)
音そのものが生きている、本物のエネルギーを感じる



「Dragon Interconnect」RCA=1,584,000円/XLR=1,980,000円(1mペア・税込)※1.5mペア、2mペアもあり

最上位の「ドラゴン」はPSS導体に、同じ線材のドレイン線を採用している。他は「ファイアーバード」と共通である。

「Dragon Interconnect」の内部

ソース自体が生命を持ったように、ひとつひとつの音が自由自在に動き回る。音そのものが生きているようだ。本物のエネルギーとはこういうもののかもしれない。

バロックで聴こえるのは丸ごとの音場だ。空間の中に入り込んで、その奥から出てくる楽器それぞれを聴いている。そういう感触がある。ライブ感の極みである。

ピアノもピンと焦点の合ったステージに楽器が存在し、そこから音が出てくる。その音の動きがまた生気に富んで闊達だ。音にも空間にもノイズが感じられず歪みがないため、どこも生々しい。

コーラスはやはり広く深く生き生きとしているが、ここではそれがいっそう際立っている。ハーモニーの立体感ひとつにもそれが明らかだし、抑揚の感触が本当にホールの聴こえ方そのままである。

オーケストラも響きが深く、スケールが非常に大きい。ある限りの情報が全て出尽くした印象で、ここではケーブルという存在がすっかり消えてしまっている。最高峰の名に相応しい再現性である。


「ThunderBird Interconnect」
●導体:PSC+(パーフェクトサーフェス カッパー)単線●配置:ZERO-Tech(特性インピーダンスなし)●誘電体:FEPエアチューブを使用し、信号干渉を極小化●誘電体バイアス方式:72V DBS(RCA)、デュアル72V DBS(XLR)●ノイズ対策(レベル6):ノイズディスパーション ZERO-TECH+72V DBS+カーボン/グラフェンメッシュネットワーク+方向制御●プラグバレル:銅メッキRFドレイン●プラグ接点:赤銅の上に銀コート

「FireBird Interconnect」
●導体:金属 PSS(パーフェクトサーフェスシルバー)単線●配置:ZERO-Tech(特性インピーダンスなし)●誘電体: FEPエアチューブを使用し、信号干渉を極小化●誘電体バイアス方式:72V DBS(RCA)、Dual-72V DBS(XLR)●ノイズ対策(レベル6):ノイズディスパーション ZERO-Tech+72V DBS+カーボン/グラフェンメッシュネットワーク+方向制御●プラグバレル: 銀メッキRFドレイン●プラグ接点:赤銅の上に銀コート

「Dragon Interconnect」
●導体:PSS(パーフェクトサーフェスシルバー)単線●配置:ZERO-Tech(特性インピーダンスなし)●誘電体:FEPエアチューブを使用し、信号干渉を極小化●誘電体バイアス方式:72V DBS(RCA)、 Dual-72V DBS(XLR)●ノイズ対策(レベル7):PSSドレイン+ZERO-TECH+72V DBS+カーボン/グラフェンメッシュネットワーク+方向制御●プラグバレル: 銀メッキRFドレイン●プラグ接点:赤銅の上に銀コート

(提供:ディーアンドエムホールディングス)

本記事は『季刊・Audio Accessory vol.185』からの転載です

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