公開日 2023/03/09 06:30
動的な対照を精緻に描き分ける
ウェストミンスターラボのアンプと話題のオーディオ専用椅子「GamuT」を体験!
園田洋世
(株)ブライトーンが取り扱うアンプ&ケーブルブランド・WestminsterLab(ウェストミンスターラボ)と“オーディオ専用椅子”として話題のGamuT(ガマット)。これらの製品が展示され、じっくりと試聴することができる場所のひとつが、オーディオユニオンお茶の水アクセサリー館である。ここでは園田洋世氏が同店を探訪、両ブランドの魅力をレポートする。
古巣オーディオユニオンお茶の水アクセサリー館を久々に訪ねると、英ウェストミンスターラボのデュアルモノプリアンプ「Quest」と純A級モノラルパワーアンプ「Rei」はソナス・ファベールの「Sonnet VIII」と組み合わされていた。とりあえず最初に繋ぐケーブルはアクセサリー館常備の試聴機の中から国産中級機を選んだ。背もたれが低いスタッキングチェアに座って試聴を開始する。
まずアブラス指揮・フランダース歌劇場交響楽団&合唱団によるマルコプーロス「オルフェウスの典礼」から数曲聴いてみる。さすがデュアルモノプリとモノパワーのコンビである。センターに定位するホセ・ヴァン・ダムのバリトンの音像は引き締まっている上に密度が高い。オーケストラから放たれた音は、左右両スピーカーの外側方向へ向かって広く広く展開する。超絶レベルのチャンネルセパレーションだけが実現できる音像・音場表現である。
次に聴くタン・ドゥン「交響曲1997『天、地、人』」では、64個もの古代の鐘が3次元空間に立体的に定位する。2400年も前に作られたというこの鐘の大群が無骨な質感で奏でる不協和音と300人の児童合唱の優しいハーモニーとのコントラストは、やはりパワーアンプReiのハイスペックによるところが大きいだろう。ただでさえ音の性質が相反する鐘と声である。非力なパワーアンプだとそれらの動的な対照を精緻に描き分けることなどできはしない。
Reiは純A級動作で出力なんと100W/8Ω、つまりかなりの大出力アンプであり、しかも200W/4Ω、400W/2Ωと負荷インピーダンスに対してリニアなパワーを実現している。私などはこのスペックだけを見ると、とても大きくて重かった昔のクレルのモノラルパワーアンプあたりを想像してしまう。
しかし驚くべきことに、Reiは一人でも容易に設置できるサイズと重量なのだ。輸入元サイトにはサラッと書いてあるので見落としがちなのだが、ウェストミンスターラボのアンプはトランジスタの選別を独自の極めて厳密な方法で行っていて、それがハイパワーな純A級アンプをコンパクトな筐体で実現できた理由の一つなのだという。
海外製、殊にQuestとReiのようなフルバランスアンプが非常に高価な理由としてよくトランジスタ等のパーツの厳密な選別が挙げられるが、製品解説でその「選別方法」に言及するブランドは多くはない。きちんと言及している例として私の頭に真っ先に思い浮かんだのはFMアコースティックスだったりする……。
QuestとReiのサイズと重量からすると一見高過ぎる価格は、音はもちろんのこと、実際にかけられているコストから考えても実はかなりリーズナブルだと言えるだろう。
ではケーブルをウェストミンスターラボのものに換えてみよう。ULTRAシリーズのXLRケーブルとスピーカーケーブルを試聴した。ノイズフロアがいきなり下がったので、タン・ドゥンは冒頭の無音から徐々に盛り上がる様が劇的の度を増す。鐘、太鼓、合唱、独奏チェロ、管弦群等各音像の間の混濁が解消して、奏者の各演奏を分析的に聴くことができる。マルコプーロスはセンターに定位するバリトンとソプラノの鮮度が上がりレンジも広がった。マスクを外したかのようと言えば伝わるだろうか。
そして最後に、椅子をGamuTのロブスターチェアに換えてみる。ソナス・ファベールのミニマヴィンテージを愛用していた者の一人として、ウォルナットでできたシェルに悪い印象を抱くはずもない。
では肝心の音は?……マルコプーロスはバリトンもソプラノも音像がいきなり立体感を伴ってググッと目の前に迫ってくる。タン・ドゥンは各鐘のサイズの違いが音程の違いからだけでなく鐘「全体が」震える様から分かるし、今まで気がつかなかった木管隊とピアノの位置の高低差に驚かされもする。
店員時代には各種ルームアコースティックグッズも当然沢山試したし、部屋自体の音響特性は身体で覚えているので、ロブスターチェアの効果が従来のルームアコースティックグッズと異質なことはすぐに分かった。言うなれば「リスナーの身体に一番近いルームアコースティックグッズ」なのだ。
もしロブスターチェアのデモ機がお近くの専門店等に届いたら、ぜひ他の椅子と比較試聴していただきたい。「コンセントプレートの比較試聴」「オーディオラックの比較試聴」に匹敵する、世の常識人達相手には迂闊に話題にできない比較試聴ジャンル、「椅子の比較試聴」の爆誕である。
<編集部追記>
当面の間、オーディオユニオンお茶の水アクセサリー館に「Rei」「Quest」ならびに「GamuT Hi-Fi Lobster Chair」が設置されていますので、ご興味のある方はぜひご来店を。※WestminsterLabのアンプはタイミングによりLUMIN「P1」「AMP」になることもあるため、詳細は店頭にお問い合わせを
<ショップインフォメーション>
オーディオユニオンお茶の水店
〒101-0062 東京都千代田区 神田駿河台2-2-1 1F
TEL:03-3294-6766
営業時間:12:00〜20:00
(土曜 11:00-20:00 、日祝 11:00-19:00)
ライタープロフィール
園田洋世
1974年生まれ。中学からオーディオを始める。海城高校、慶應義塾大学卒業。大学在学中はシネフィルだったが卒業後オーディオ熱が再燃。オーディオユニオンお茶の水アクセサリー館に勤務して松浦店長の下オーディオ修行を積む。最近はもっぱらストリーミングで作曲家と演奏家の開拓に励んでいる。自身のブログ「オーディオ探究」やYouTubeチャンネル「オーディオ実験室」「Audio Legends」も随時更新中。
(提供:ブライトーン)
本記事は『季刊・オーディオアクセサリー188号』からの転載です。
ウェストミンスターラボのセパレートアンプ、サイズを超えたパワー感に驚く
古巣オーディオユニオンお茶の水アクセサリー館を久々に訪ねると、英ウェストミンスターラボのデュアルモノプリアンプ「Quest」と純A級モノラルパワーアンプ「Rei」はソナス・ファベールの「Sonnet VIII」と組み合わされていた。とりあえず最初に繋ぐケーブルはアクセサリー館常備の試聴機の中から国産中級機を選んだ。背もたれが低いスタッキングチェアに座って試聴を開始する。
まずアブラス指揮・フランダース歌劇場交響楽団&合唱団によるマルコプーロス「オルフェウスの典礼」から数曲聴いてみる。さすがデュアルモノプリとモノパワーのコンビである。センターに定位するホセ・ヴァン・ダムのバリトンの音像は引き締まっている上に密度が高い。オーケストラから放たれた音は、左右両スピーカーの外側方向へ向かって広く広く展開する。超絶レベルのチャンネルセパレーションだけが実現できる音像・音場表現である。
次に聴くタン・ドゥン「交響曲1997『天、地、人』」では、64個もの古代の鐘が3次元空間に立体的に定位する。2400年も前に作られたというこの鐘の大群が無骨な質感で奏でる不協和音と300人の児童合唱の優しいハーモニーとのコントラストは、やはりパワーアンプReiのハイスペックによるところが大きいだろう。ただでさえ音の性質が相反する鐘と声である。非力なパワーアンプだとそれらの動的な対照を精緻に描き分けることなどできはしない。
Reiは純A級動作で出力なんと100W/8Ω、つまりかなりの大出力アンプであり、しかも200W/4Ω、400W/2Ωと負荷インピーダンスに対してリニアなパワーを実現している。私などはこのスペックだけを見ると、とても大きくて重かった昔のクレルのモノラルパワーアンプあたりを想像してしまう。
しかし驚くべきことに、Reiは一人でも容易に設置できるサイズと重量なのだ。輸入元サイトにはサラッと書いてあるので見落としがちなのだが、ウェストミンスターラボのアンプはトランジスタの選別を独自の極めて厳密な方法で行っていて、それがハイパワーな純A級アンプをコンパクトな筐体で実現できた理由の一つなのだという。
海外製、殊にQuestとReiのようなフルバランスアンプが非常に高価な理由としてよくトランジスタ等のパーツの厳密な選別が挙げられるが、製品解説でその「選別方法」に言及するブランドは多くはない。きちんと言及している例として私の頭に真っ先に思い浮かんだのはFMアコースティックスだったりする……。
QuestとReiのサイズと重量からすると一見高過ぎる価格は、音はもちろんのこと、実際にかけられているコストから考えても実はかなりリーズナブルだと言えるだろう。
ではケーブルをウェストミンスターラボのものに換えてみよう。ULTRAシリーズのXLRケーブルとスピーカーケーブルを試聴した。ノイズフロアがいきなり下がったので、タン・ドゥンは冒頭の無音から徐々に盛り上がる様が劇的の度を増す。鐘、太鼓、合唱、独奏チェロ、管弦群等各音像の間の混濁が解消して、奏者の各演奏を分析的に聴くことができる。マルコプーロスはセンターに定位するバリトンとソプラノの鮮度が上がりレンジも広がった。マスクを外したかのようと言えば伝わるだろうか。
「椅子」はリスナーの身体に一番近いルームアコースティックグッズ
そして最後に、椅子をGamuTのロブスターチェアに換えてみる。ソナス・ファベールのミニマヴィンテージを愛用していた者の一人として、ウォルナットでできたシェルに悪い印象を抱くはずもない。
では肝心の音は?……マルコプーロスはバリトンもソプラノも音像がいきなり立体感を伴ってググッと目の前に迫ってくる。タン・ドゥンは各鐘のサイズの違いが音程の違いからだけでなく鐘「全体が」震える様から分かるし、今まで気がつかなかった木管隊とピアノの位置の高低差に驚かされもする。
店員時代には各種ルームアコースティックグッズも当然沢山試したし、部屋自体の音響特性は身体で覚えているので、ロブスターチェアの効果が従来のルームアコースティックグッズと異質なことはすぐに分かった。言うなれば「リスナーの身体に一番近いルームアコースティックグッズ」なのだ。
もしロブスターチェアのデモ機がお近くの専門店等に届いたら、ぜひ他の椅子と比較試聴していただきたい。「コンセントプレートの比較試聴」「オーディオラックの比較試聴」に匹敵する、世の常識人達相手には迂闊に話題にできない比較試聴ジャンル、「椅子の比較試聴」の爆誕である。
<編集部追記>
当面の間、オーディオユニオンお茶の水アクセサリー館に「Rei」「Quest」ならびに「GamuT Hi-Fi Lobster Chair」が設置されていますので、ご興味のある方はぜひご来店を。※WestminsterLabのアンプはタイミングによりLUMIN「P1」「AMP」になることもあるため、詳細は店頭にお問い合わせを
<ショップインフォメーション>
オーディオユニオンお茶の水店
〒101-0062 東京都千代田区 神田駿河台2-2-1 1F
TEL:03-3294-6766
営業時間:12:00〜20:00
(土曜 11:00-20:00 、日祝 11:00-19:00)
ライタープロフィール
園田洋世
1974年生まれ。中学からオーディオを始める。海城高校、慶應義塾大学卒業。大学在学中はシネフィルだったが卒業後オーディオ熱が再燃。オーディオユニオンお茶の水アクセサリー館に勤務して松浦店長の下オーディオ修行を積む。最近はもっぱらストリーミングで作曲家と演奏家の開拓に励んでいる。自身のブログ「オーディオ探究」やYouTubeチャンネル「オーディオ実験室」「Audio Legends」も随時更新中。
(提供:ブライトーン)
本記事は『季刊・オーディオアクセサリー188号』からの転載です。
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