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公開日 2024/08/26 17:20
PHILE WEB.SHOP 販売商品レビュー

サブゼロの人気コンセントに上級モデルが登場。さっそく試聴した

井上千岳

人気モデルのHST処理「壁コンセント」に上級モデルが登場



サブゼロ研究所の運営するCTLオンラインストア、あるいはCTLファイルウェブSHOPで入手できるコンセント「HST-Concent(SE)-A」は、アメリカン電機の定番モデルを部材としてSE処理(サブゼロ処理の最上級バージョン)を施した人気の商品だ。壁コンセントのようなものにもサブゼロ処理の効果が顕著に現れるということに、目をみはったユーザーも少なくないだろう。

そこでこの度、朗報がある。新たな製品が発売されることになった。同じく採用部材はアメリカン電機の製品だが、これまでのものよりグレードの高い上級モデルだそうだ。これを使用してSE処理を施した製品が、「HST-7110GHDXL(SE)」という壁コンセントである。専用のプレート「HST-1041XL(SE)」も付属する。

サブゼロ研究所の人気コンセントのアップグレード版「HST-7110GHDXL(SE)」。専用のプレートHST-1041XL(SE)も付属する

先に触れておくと、SE処理というのは24時間のサブゼロ処理を2回繰り返したうえ独自の物性処理を加えたもので、HSTとしては最もハイグレードな処理となる。

またアメリカン電機のウェブサイトによると、新しいコンセントは耐熱性・耐摩耗性など種々の特性に優れた難燃性高機能ナイロン樹脂をボディに使用。刃受は脱酸・リン青銅、端子は高導電率銅合金とし、刃受以外はロジウムメッキを施してあるという。金属部品はすべて非磁性だそうだ。プレートも同様に非磁性で仕上げられている。

壁コンセントを直接交換してテストするのは無理なので(電気工事士の資格が必要)、電源ケーブルを装着した電源タップにアレンジして試聴した。SE処理と未処理、それに参考のため旧製品(SE処理)も用意してある(写真)。

「壁コンセント」旧製品は基本的にS/Nがよいが、部材のグレードが変わると情報量がより豊富になる



まずは、その旧製品をまず聴いてみる。基本的にS/Nがよく、レスポンスが均一で出方が滑らかだ。これがサブゼロ処理の特徴で、どういう製品でもほぼこういう音になる。そのうえで製品個々の音質が重なるわけである。

「旧モデル」「新モデル(未処理)」「新モデル(SE処理済み)。電源ケーブルを装着した電源タップにアレンジ」

バロックはどこにも引っかかりがなく、動きが軽い(ヴィヴァルディ:四季、海の嵐他/新イタリア合奏団)。ピアノは芯が太く肉質感がある。透明度に富んだ澄んだ質感が適度な余韻を伴って充実している(アルベニス:入江のざわめき/細川夏子)。オーケストラも同様で解像度が高く混濁がない(サン=サーンス:交響詩集/ロト=レ・シエクル)。ただもう少し伸びと広がりの欲しいところもある。

これが新製品ではどうなるだろうか。まず未処理版を聴いてみたいが、部材のグレード自体がかなり違うし片方はSE処理済なのできちんとした比較にはならないのは言うまでもない。ただ参考にはなりそうだ。グレードが高いだけに、基本的な性能は明らかに向上している。情報量が豊富だ。音数が多いのである。特に細かい部分がそうで、表情が濃密できめ細かくなっている。

バロックは均一なレスポンスが上下に広がり、立ち上がりが高くまた速い。ピアノは低音の沈み方が深く響きが厚く、芯が一回りたくましくなったように感じる。オーケストラも楽器それぞれの音色や表情の変化が非常に細かく緻密に引き出されて音楽の陰影が深い。そし起伏が大きく、クライマックスの強靭な弾け方が峻烈だ。

部材が変わることでこれだけ再現力が向上しているのは間違いないが、さてそこで旧モデルと比べたときに欲しいと感じるのは静寂感と伸びやかさ。この点は旧モデルに少しだけ利があったように思う。

新製品は静かさと無理のない動きで、ずっと生き生きして聴こえてくる



SE処理を施した製品版は、音調という点では未処理と変わらずやはり基本的な性能の向上が利いている。しかし少し聴いていると気がつくことがある。音の出方に無理がなく、つながりが非常に滑らかなのである。

バロックは瑞々しくアンサンブルが展開されているが、その動きや凹凸にぎこちなさを感じることが全くない。強弱のどんな変化もさらっと流れるように引き出されている。またピアノは深い低音がもっとはっきりと実体感のあるタッチで聴こえてくる。周囲が静かだからである。和音の鳴り方にも混濁がなく、音の重なりがわかりやすい。

どちらも先ほどよりずっと生き生きして聴こえてくるのは、この静かさと無理のない動きのためである。オーケストラは立ち上がりがくっきりして、アンサンブルの分離もがいい。音の背後に濁りや汚れがないため、豊富な色彩が鮮やかで冴えている。

クライマックスのトゥッティでも無理矢理音を押し出しているという苦しさがなく、伸び伸びとした起伏が自然な呼吸で息づいている。これがSEの効果である。単に音数や質感が改善されただけでなく、根本的なS/Nや伸びやかさがシステムのグレードを大きく変えてくれるのである。

オーディオ評論家 井上千岳 氏



【試聴ソフト】
「ヴィヴァルディ:四季、海の嵐他」
フェデリコ・グリエルモ(Vn)、新イタリア合奏団
マイスター・ミュージック MM-4529

「アルベニス:入江のざわめき/細川夏子」
細川夏子(ピアノ)
マイスター・ミュージック MM-3092

「サン=サーンス:交響詩集」
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)、レ・シエクル
ハルモニア・ムンディ/キング・インターナショナル KKC6761/2(2CD)

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