公開日 2024/10/24 06:30
10/23よりプレオープン
待望の日本上陸、ハイレゾサブスク「Qobuz」速攻レビュー! Amazon/Apple Musicと音質を比較
ファイルウェブ編集部
ハイレゾストリーミングサービス「Qobuz(コバズ)」がついにプレオープンした。オーディオファンにとっては長らく待ち望んだサービスではあるが、日本ではすでにAmazon Music、Apple Musicという2大ハイレゾストリーミングが提供されている。
世界的には老舗でありながら、日本においては後発となってしまったQobuzだが、乗り換えるだけの価値はあるだろうか。Amazon Music、Apple Musicとの比較を行った。
QobuzはフランスXandrie社が提供する老舗ハイレゾストリーミングサービスだ。詳細は先日掲載した解説記事をご覧いただきたいが、米TIDALと並んで世界中のオーディオファンの間で親しまれてきたものの、長らく日本市場向けのサービスは提供されてこなかった。
そんな中、2019年にはAmazon Music、2021年にはApple Musicがハイレゾソースのストリーミング配信を開始。国産サービス・mora qualitasの登場とサービス終了などもありつつ、2024年、ついにQobuzの日本サービスが始まるわけだ。
海外では「Studio」「Sublime」の2プランを展開しているが、日本だと現時点ではStudioのみが選択可能。その中でも1アカウントの「ソロ」(月額1,480円/年額15,360円)、2アカウントの「デュオ」(月額1,980円/年額20,160円)、6アカウントの「ファミリー」(月額2,480円/年額24,960円)を選ぶことができる(価格は全て税込表記)。
再生ソフトはPC用(Windows/Mac)、スマホ用(iPhone/Android)に加えてブラウザプレーヤーを用意。なお、会員登録自体は無料であり、有料プランに登録せずとも、ダウンロード購入した音源を聴いたり、用意されているマガジンを読むことなどは可能だ。
実際にQobuzを使ってみての感想を記していこう。e-onkyo musicのサービス終了時、プレオープンはe-onkyo music会員向けのものとアナウンスされていたが、10月23日の朝時点で、公式サイトからアクセスすると、ごく普通に新規会員登録をすることができた。
早速会員登録し、ソフトにログインして使ってみようとしたところ、Mac用のプレイヤーでは上手く動作してくれない。これが記者の環境の問題か、それともソフト側の問題かはわからないが、同僚のWindows PCを借りて取材を続行した。
初手からつまづきかけたものの、ソフトの動作自体は比較的スムーズで、ページ移動にもあまりストレスは感じない。さすがにハイレゾファイルなだけあって、再生ボタンを押してから曲が始まるまでは少し時間を要するが、それはAmazon MusicやApple Musicも同じことだ。
カタログも、ハイレゾ版をリリースしていないアーティストの場合はロスレスで用意してくれていたりと、一定の充実度はあるように思う。ただ、邦楽系のアーティストだとポロポロと抜けもあるようで、例えば女性アイドルをざっと検索してみても、BiSやBiSH、ゆるめるモ!、sora tob sakanaなど、見当たらないアーティストがかなり出てきた。
また、同名のアーティストが一緒になっているケースも散見されたりと、まだきちんと整理がなされていない模様。もっともこのあたりの問題については、まだローンチしたばかりということで随時改善されていくことを期待したい。
ひとつユニークなのがプレイリストで、アーティストのまとめやトップチャートなどの一般的なものに加え、リファレンス音源をまとめたものや、レーベル、オーディオ系の企業がキュレートしたものが用意されている。
特にオーディオパートナーのプレイリストはJBLやオーディオテクニカ、LINNといったメーカーから、Roon、WiSAなどのサービス系、エンジニアまでバラエティ豊か。Qobuz再生環境を構築する手助けにもなりそうなうえ、日本でみたことのないメーカーも散見されたりと、なかなか見応えがある。
そして肝心の音質だが、結論から先に言うと、今回試した3社のなかではQobuzが一番オーディオ的に良い。
例えばビリー・アイリッシュの「bad guy」を聞いてみると、Qobuzは特徴的なベースを超低域までしっかりと再生してくれる。音場も広く、ボーカルのニュアンスやフィンガースナップのクリスピーさも再現する。
対するAmazon Musicは、Qobuzに比べると低域が浅く、音場も狭い。Apple Musicは、ベースの帯域はQobuzほど深くはなさそうだが、低域を多少ブーストしつつ、全体的に音の輪郭をクッキリさせている印象。これはこれで聴きやすく、分かりやすいサウンドではあるが、良くも悪くも味付けしている感は否めない。
もうひとつ、色々な曲を試聴している中で驚きの声が上がったのが緑黄色社会「Mela!」だ。低域がタイトで上物が豪華かつ音数の多い、典型的なJ-POPサウンドの楽曲だが、Amazon Musicは先述の通り低域が弱いため、元々の楽曲のキャラクターと相まってシャカシャカした印象が強くなる。そのうえで音場の狭さから上物がギュッと密集し、ゴチャゴチャしてしまっている。bad guyの場合は音が密集することで力強さを感じる面もあったが、Mela! は完全に相性が悪いように思えた。
Apple Musicは先ほどと同じように、良い具合に帯域バランスが整えられて楽しく聴ける印象。ただ上物は目立つところをクッキリさせる反面、ディティールの描写が甘くなっているようにも思う。
しかしQobuzの場合、音場が広く、解像度も高いため上物たちをしっかりと描き分け、ニュアンスまで余すことなく再現する。楽曲自体はそこまで低音成分がないものの、再生帯域の広さが「ゆったりと余裕のある鳴り方」に寄与している。解像感などのいわゆるハイレゾ的な要素だけではなく、この「キャパシティの深さ」も有していることがポイントのように思えた。
以上を踏まえて、音質最優先であればQobuz一択! ……と言いたいところだが、Apple Musicも決して悪くはない。むしろApple Musicの場合、ある程度聴きやすく整えてくれているので、再生環境にあまり左右されずそれなりの音を楽しめる、という美点を持っているように思う。Qobuzの場合はオーディオや部屋のチューニングによって大きく変わってくるため、使いこなすには一定のオーディオ的な力量が求められる。そういう意味でも“マニア向け”のサービスと言えるだろう。
カタログ面で言うと、Amazon MusicとApple Musicは空間オーディオ作品を取り揃えていることに触れておきたい。ここ数年で洋邦問わず多くのアーティストが空間オーディオ作品をリリースし始めているため、それらも楽しみたいのであればQobuzよりはAmazon、Appleの方をおすすめする。
そして価格だが、月額ベースでみると、Qobuzはソロの年額プランを選んだ際の月額1,280円が最安になる。対してApple Musicは月額1,080円が最安(学生プランを除く)で、Amazon Musicはプライム会員向けの年額プランを選べば月額817円で使うことができる。率直に言って、価格面だとQobuzは完全に分が悪い。
ただ、日本ではまだ「Sublime」プランが提供されていない。こちらはStudioよりも割高な代わりに、ダウンロード音源の購入にディスカウントが行える仕様なので、ストリーミングも使うしハイレゾ音源も毎月大量に購入する、というヘヴィーユーザーの場合、もしかしたらAmazon Musicより割安になる可能性も無きにしもあらずだ。
ソフトのユーザビリティなどに改善の余地はあるものの、まだローンチしたばかりのサービスであり、伸びしろとも捉えられる。冒頭で述べた通り会員登録自体は無料でできるので、ひとまず会員登録だけしておいて、様子を伺ってみるのもよいだろう。
そしてQobuzには1ヶ月の無料体験が用意されている。いざ使ってみようと思った方は、こちらも活用しながらじっくり検討してみてほしい。
世界的には老舗でありながら、日本においては後発となってしまったQobuzだが、乗り換えるだけの価値はあるだろうか。Amazon Music、Apple Musicとの比較を行った。
■オーディオファン待望、Qobuzがついに日本上陸!
QobuzはフランスXandrie社が提供する老舗ハイレゾストリーミングサービスだ。詳細は先日掲載した解説記事をご覧いただきたいが、米TIDALと並んで世界中のオーディオファンの間で親しまれてきたものの、長らく日本市場向けのサービスは提供されてこなかった。
そんな中、2019年にはAmazon Music、2021年にはApple Musicがハイレゾソースのストリーミング配信を開始。国産サービス・mora qualitasの登場とサービス終了などもありつつ、2024年、ついにQobuzの日本サービスが始まるわけだ。
海外では「Studio」「Sublime」の2プランを展開しているが、日本だと現時点ではStudioのみが選択可能。その中でも1アカウントの「ソロ」(月額1,480円/年額15,360円)、2アカウントの「デュオ」(月額1,980円/年額20,160円)、6アカウントの「ファミリー」(月額2,480円/年額24,960円)を選ぶことができる(価格は全て税込表記)。
再生ソフトはPC用(Windows/Mac)、スマホ用(iPhone/Android)に加えてブラウザプレーヤーを用意。なお、会員登録自体は無料であり、有料プランに登録せずとも、ダウンロード購入した音源を聴いたり、用意されているマガジンを読むことなどは可能だ。
■アプリの使い勝手や音質をチェック
実際にQobuzを使ってみての感想を記していこう。e-onkyo musicのサービス終了時、プレオープンはe-onkyo music会員向けのものとアナウンスされていたが、10月23日の朝時点で、公式サイトからアクセスすると、ごく普通に新規会員登録をすることができた。
早速会員登録し、ソフトにログインして使ってみようとしたところ、Mac用のプレイヤーでは上手く動作してくれない。これが記者の環境の問題か、それともソフト側の問題かはわからないが、同僚のWindows PCを借りて取材を続行した。
初手からつまづきかけたものの、ソフトの動作自体は比較的スムーズで、ページ移動にもあまりストレスは感じない。さすがにハイレゾファイルなだけあって、再生ボタンを押してから曲が始まるまでは少し時間を要するが、それはAmazon MusicやApple Musicも同じことだ。
カタログも、ハイレゾ版をリリースしていないアーティストの場合はロスレスで用意してくれていたりと、一定の充実度はあるように思う。ただ、邦楽系のアーティストだとポロポロと抜けもあるようで、例えば女性アイドルをざっと検索してみても、BiSやBiSH、ゆるめるモ!、sora tob sakanaなど、見当たらないアーティストがかなり出てきた。
また、同名のアーティストが一緒になっているケースも散見されたりと、まだきちんと整理がなされていない模様。もっともこのあたりの問題については、まだローンチしたばかりということで随時改善されていくことを期待したい。
ひとつユニークなのがプレイリストで、アーティストのまとめやトップチャートなどの一般的なものに加え、リファレンス音源をまとめたものや、レーベル、オーディオ系の企業がキュレートしたものが用意されている。
特にオーディオパートナーのプレイリストはJBLやオーディオテクニカ、LINNといったメーカーから、Roon、WiSAなどのサービス系、エンジニアまでバラエティ豊か。Qobuz再生環境を構築する手助けにもなりそうなうえ、日本でみたことのないメーカーも散見されたりと、なかなか見応えがある。
そして肝心の音質だが、結論から先に言うと、今回試した3社のなかではQobuzが一番オーディオ的に良い。
例えばビリー・アイリッシュの「bad guy」を聞いてみると、Qobuzは特徴的なベースを超低域までしっかりと再生してくれる。音場も広く、ボーカルのニュアンスやフィンガースナップのクリスピーさも再現する。
対するAmazon Musicは、Qobuzに比べると低域が浅く、音場も狭い。Apple Musicは、ベースの帯域はQobuzほど深くはなさそうだが、低域を多少ブーストしつつ、全体的に音の輪郭をクッキリさせている印象。これはこれで聴きやすく、分かりやすいサウンドではあるが、良くも悪くも味付けしている感は否めない。
もうひとつ、色々な曲を試聴している中で驚きの声が上がったのが緑黄色社会「Mela!」だ。低域がタイトで上物が豪華かつ音数の多い、典型的なJ-POPサウンドの楽曲だが、Amazon Musicは先述の通り低域が弱いため、元々の楽曲のキャラクターと相まってシャカシャカした印象が強くなる。そのうえで音場の狭さから上物がギュッと密集し、ゴチャゴチャしてしまっている。bad guyの場合は音が密集することで力強さを感じる面もあったが、Mela! は完全に相性が悪いように思えた。
Apple Musicは先ほどと同じように、良い具合に帯域バランスが整えられて楽しく聴ける印象。ただ上物は目立つところをクッキリさせる反面、ディティールの描写が甘くなっているようにも思う。
しかしQobuzの場合、音場が広く、解像度も高いため上物たちをしっかりと描き分け、ニュアンスまで余すことなく再現する。楽曲自体はそこまで低音成分がないものの、再生帯域の広さが「ゆったりと余裕のある鳴り方」に寄与している。解像感などのいわゆるハイレゾ的な要素だけではなく、この「キャパシティの深さ」も有していることがポイントのように思えた。
■日本ハイレゾストリーミング、一体どれを選びたい?
以上を踏まえて、音質最優先であればQobuz一択! ……と言いたいところだが、Apple Musicも決して悪くはない。むしろApple Musicの場合、ある程度聴きやすく整えてくれているので、再生環境にあまり左右されずそれなりの音を楽しめる、という美点を持っているように思う。Qobuzの場合はオーディオや部屋のチューニングによって大きく変わってくるため、使いこなすには一定のオーディオ的な力量が求められる。そういう意味でも“マニア向け”のサービスと言えるだろう。
カタログ面で言うと、Amazon MusicとApple Musicは空間オーディオ作品を取り揃えていることに触れておきたい。ここ数年で洋邦問わず多くのアーティストが空間オーディオ作品をリリースし始めているため、それらも楽しみたいのであればQobuzよりはAmazon、Appleの方をおすすめする。
そして価格だが、月額ベースでみると、Qobuzはソロの年額プランを選んだ際の月額1,280円が最安になる。対してApple Musicは月額1,080円が最安(学生プランを除く)で、Amazon Musicはプライム会員向けの年額プランを選べば月額817円で使うことができる。率直に言って、価格面だとQobuzは完全に分が悪い。
ただ、日本ではまだ「Sublime」プランが提供されていない。こちらはStudioよりも割高な代わりに、ダウンロード音源の購入にディスカウントが行える仕様なので、ストリーミングも使うしハイレゾ音源も毎月大量に購入する、というヘヴィーユーザーの場合、もしかしたらAmazon Musicより割安になる可能性も無きにしもあらずだ。
ソフトのユーザビリティなどに改善の余地はあるものの、まだローンチしたばかりのサービスであり、伸びしろとも捉えられる。冒頭で述べた通り会員登録自体は無料でできるので、ひとまず会員登録だけしておいて、様子を伺ってみるのもよいだろう。
そしてQobuzには1ヶ月の無料体験が用意されている。いざ使ってみようと思った方は、こちらも活用しながらじっくり検討してみてほしい。
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