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公開日 2024/11/05 06:30
RUBICON登場10周年での新シリーズ

ロングセラーの中核スピーカーにKOREテクノロジー投入。DALI「RUBIKOREシリーズ」の実力を聴く

井上千岳
DALI(ダリ)の中核シリーズである “RUBICON(ルビコン)” が登場して10年目を迎えた今年、“RUBIKORE(ルビコア)シリーズ” が登場した。ウッドファイバーコーンのデザイン変更をはじめ、音の要となる部分を大幅に刷新している。ラインナップとしてはフロア型2モデルとブックシェルフ型1モデルのほか、オンウォール型やセンタースピーカーも用意。コア化したルビコンの実力はいかなるものか?井上千岳氏によるレポートをお届けする。

RUBIKOREシリーズ(写真右からブックシェルフ型の「RUBKORE2」、フロア型の「RUBIKORE6」「RUBIKORE8」)

コアシリーズ最大の特徴はウッドファイバーコーン


創立40周年に先立ってその前年に発表されたのが新世代のフラグシップスピーカー、KORE。ここに投入された新たな技術をKOREテクノロジーと呼び、これを従来のシリーズに融合して新たなラインアップが形成されつつある。そしてついにダリの中核シリーズであるRUBICONシリーズにKOREテクノロジーが投入され、RUBIKOREシリーズとして登場した。

RUBIKOREシリーズ応用されたKOREテクノロジーは主に4つ。各機種に共通するので、先にまとめて触れておきたい。

まず「クラリティ・コーン・テクノロジー」。ウッドファイバー・コーンに数か所半月状の型押しを施し、ねじれを回避する手法だ。塗布剤がそこに溜まって厚くなり、共振が分散されるという効果もある。シリーズ最大の特徴のひとつ。

CCT(クラリティ・コーン・テクノロジー)を採用したウッドファイバー・コーン。数か所に半月状の型押しを施すことで、ねじれを回避する手法。さらにこの型押し部分に塗布剤が溜まることで厚くなり、共振が分散される効果もある

次にソフトドーム・トゥイーターの磁性流体を廃止した。放熱や動作の円滑化に有効ではあるが、その粘性などによって音質にも影響が及ぶ。代わりにギャップ部の精度を高めて支障を排除している。

ネットワークのコイルのコアにSMCを採用したもので、他のコア材より良好な結果が得られたという。フロア型の低域用ネットワークに使用されている。

フロア型の低域用ネットワークのコイルのコアにもSMCを採用。従来のRUBICONではメタルコアが採用されていた

最後が「コンティニュアス・フレア」と呼ばれるバスレフダクトで、円筒の中央部が徐々に細くなり、開口部で大きく広がる。空気の流通によるノイズを低減する新たな方式で、低域の明瞭化に貢献する。これらを軸に伝統のキャビネット技術も生かしながら、デンマーク国内でハンドメイドされている。期待のニューシリーズである。

ブックシェルフ型「RUBIKORE2」の魅力


まずブックシェルフ型の「RUBIKORE2」からである。構成は29mmのソフトドーム・トゥイーターと6.5インチ(165mm)・ウーファーによる2ウェイ。RUBIKOREのエッセンスというイメージで、くっきりと輪郭の整った音が豊富な情報量とともに端正に収まっている。一音一音のエネルギーが豊かで溌溂とした生気に溢れ、暴れのない整い方が品位の高さを感じさせる。

「RUBIKORE2」(528,000円/ペア・税込) ※カラーはブラック、マルーン、ウォルナット、 グロスホワイトを用意

バロックはやや腰を落として肉質感に富んだ再現を展開している。ヴァイオリンは流れが滑らかで艶やかだが、低音弦の厚みがアンサンブルを安定させて落ち着いた雰囲気だ。各楽器が明確な存在感を持ち、その間に混濁がない。

ピアノは明瞭で芯の厚い丸みを帯びたタッチが、ゆったりとした安らぎを感じさせる。表情が細かく、語りかけるような暖かみに溢れた再現がほっとさせるのである。

コーラスは透明度に溢れた響きが聴く人を惹き付ける。スピーカーの周囲に響きの豊かな空間ができ上がり、一点の汚れもないような純粋な余韻が心地好い。

オーケストラは切れのよさと混濁のないアンサンブルが、上級機そっくりの鳴り方をする。奥行が深く、楽器それぞれの位置感や距離感が正確なのもシリーズの特質と言っていい。クライマックスの強烈な炸裂も申し分なく、スケール感に富んだ2ウェイである。

RUBIKORE6の魅力


RUBIKORE6は6.5インチ・ウーファーをスタガーのダブル構成とし、ハイブリッド・トゥイーターを搭載している。まとまりがよく、本誌試聴室ではスケール感がちょうどいい。トゥイーターとウーファーのスピードがぴったり揃い、全てがハイスピードで一体化した反応の速さを感じる。

「RUBIKORE6」(1,056,000円/ペア・税込)

バロックはヴァイオリンやリュートがしっとりと落ち着いた光沢で、アンサンブル全体が腰の落ちた整い方をしている。その中でひとつひとつの楽器が自由自在に表現を展開して、ライブネスに溢れた再現が実現されるのである。

ピアノは芯の太さが柔らかな厚みに変わり、ステージが目の前にあるようなリアリティを引き出している。スピーカーの存在を一瞬忘れるような鳴り方だ。コーラスは声の肉質感だけでなくその息遣いやテキストの感触まできめ細かく描き出されて、幻影でも見るような雰囲気に包まれる。そして汚れのない響きが、呼吸をするような抑揚を見せるのである。

オーケストラはどの楽器もすぐ近くで聴いているように鳴り方が細かい。表情の変化が緻密でまた陰影が濃いのである。弦楽器も打楽器も木管楽器も切れがいい。シャープで動きが速く旋律もハーモニーも鮮明。トゥッティのフォルテは強靭そのもので峻烈に炸裂し、凄絶なクライマックスをこれ以上ないくらいの迫力で締めくくる。

RUBIKORE8の魅力


RUBIKORE8は6.5インチ・ウーファー3機をスタガーで搭載した大型モデル。ミッドレンジまでこの3基でカバーする。

「RUBIKORE8」(1,408,000円/ペア・税込)

非常に静寂感の高い鳴り方だ。バロックの楽器それぞれの鮮度が高く、正面の空間に楽器が浮き彫りになったような立体感に溢れている。また低域の弾みのよさも出色だ。低音用リュートやコントラバスがどっしりと構えているが、それが決して重くならず軽快に弾み、アンサンブルが生き生きと明快な流れを形作るのである。

ピアノは芯の太さとタッチの切れがちょうどよくバランスし、コンサートグランドの質感そのままの感触だ。一音一音がしっかりした肉質感を持ちながら余韻が適確に乗り、均整の取れた鳴り方を展開する。雄弁な再現である。

コーラスは濁りのない響きが空間いっぱいに広がって、透明な空気に包まれているような雰囲気を感じる。余韻は豊かだが旋律線がぼやけることがなく、ハーモニーがつねにくっきりと際立っている。

オーケストラは高低両端まで平坦で伸びやかなレスポンスが、申し分のない鳴り方を引き出している。にじみのない低音や厚みに富んだ金管楽器など、どれもたっぷりとしたエネルギーと切れのいい瞬発力で力強い。アンサンブルは色彩豊かで壮絶な華やかさに満ち、表現力の豊かさが圧倒的だ。余裕に溢れたスケールである。従来モデルと取り立てて比較しなくても、KOREシリーズのメリットを十分に感じることができた。

(提供:ディーアンドエムホールディングス)

本記事は『季刊・Audio Accessory vol.194』からの転載です

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