公開日 2018/05/22 16:06
【特別企画】アコースティックラボ主催「Acoustic Audio Forum」に記者が密着
オーディオに最適な部屋づくりを防音のプロが徹底解説。「アコースティックオーディオフォーラム」密着レポート
編集部:小野佳希
防音工事会社のアコースティックラボが、オーディオに適した響きを考慮してつくった“音がいい防音ショールーム”「蔵前ヴィレッジ」。同ショールームを会場に開催されているイベント「Acoustic Audio Forum」では、同社が培った“音がいい部屋づくり”のノウハウを体験することができる。「響きの周波数特性」をテーマに行われた前回の模様をレポートする。
この「Acoustic Audio Forum」は、プロのエンジニアも使う音楽スタジオなども手掛けるアコースティックラボが定期的に開催しているイベント。毎回テーマを変えながら、オーディオファンにとっては非常に関心が高い“音がいい部屋”を構築するためのポイントの解説が行われる。
この日のテーマは「オーディオルームの室内音響設計について(3)〜響きの周波数特性について〜」。吸音アイテムなどを配置していない状態の部屋でも実は吸音することを紹介しつつ、特に部屋による低音の吸音具合で音質にどのような影響が出るのかなどが説明された。
同社の鈴木代表は「お客様から、『いいスピーカーに買い換えたのだがイマイチしっくりこない、音にリアリティがない』という相談がきたことがある。詳しく聞いてみたら和室にオーディオシステムを設置しているとのことで、和室は吸音するものが多いのでオーディオには厳しい条件だということを説明した」とコメント。テーマ設定の背景を説明する。
現代建築で用いる建材は薄く、しかも軽い。そして、断熱材などを入れるために間に空気層を設ける中空二重構造になっている。このため、現代建築の部屋は共振しやすく、特に低音の周波数帯域を吸収してしまう。スピーカーからはいい音が鳴っているのに、リスニングポイントでは物足りなく感じるという問題が発生するのは、部屋が原因なのだ。
その対策のひとつが、防音工事で壁の剛性を高めること。同社が実際に行った工事では、石膏ボード3枚張りの壁にすることで共振の抑制を図った。これにより低音域の反射率が上がったことに加えて付帯歪音も減り、同じスピーカーでも音の印象はガラッと変わったという。
「オーディオ機器は剛性が大切だと言われるが、それは建築も一緒だ。剛性が足りない壁は反射音が濁ってしまう」と鈴木氏は解説。オーディオはスピーカーからの直接音だけでなく、間接音も含めて聴くものであるため、部屋の影響が大きいことを改めて説明した。
イベントでは、会場である「蔵前ヴィレッジ」の残響時間や平均吸音率の測定データも公開。様々な楽曲での音出しデモも行い「実際に体験してもらっても、この部屋には低音のダブつき感がないと感じてもらえたのではないか」とコメント。「『高音はちゃんとキレイに出ているのに包まれ感が足りない』という悩みを結構聞くが、部屋が低音を吸音していることに起因していることも多い」とし、「この部屋ではそうした不満を覚えることもないだろう」と言葉を続けた。
一方で鈴木氏は、「本来、防音や遮音と音響は別物だ」ともコメント。それぞれが別々の問題であり、防音/遮音性能を高めることだけを追求するのであれば部屋の音響に配慮せずに仕上げることも可能であることを説明する。
しかし、それではたとえ大音量再生を心置きなく楽しめる部屋になったとしても、音楽を聴く楽しみにはつながらない。実際、他社で防音工事をした後に不満を覚えて改めて工事を依頼されるようなケースもあるという。防音性能と音響を同時に考え、オーディオ的な文脈で“正しい”防音工事を行うことで“音がいい部屋”をつくれるのだ。
なお、この日のデモにはビームテック社がULTIFI(アルティファイ)ブランドで開発中のエッジレス平面振動板スピーカー試作機「Nova2101」を使用。開発者である同社の菅沼氏も参加し、原理的に位相ズレが起こらず原音に忠実な再生が出来ることを説明した。
菅沼氏は「ライブ音源では観客の拍手の表現など、ライブの雰囲気をよく感じられるよう再生できていると思う」とアピール。アコースティックラボの鈴木氏も「中音域のボーカルの表現の仕方に、スピーカーの特徴がよく現れているように感じる」などと述べる一幕もあった。
平面振動板スピーカーは次回5月25日(金)・26日(土)開催回でも登場予定。次回は田口音響研究所製の平面振動板スピーカーを使用するという。
次回のテーマは「オーディオルームの室内音響設計について(4)〜響きの質〜」。建材や仕上材などが持つ“響きの質”に注目してデモや解説を行う。
会場は同じく「蔵前ヴィレッジ」で、25日は18時〜20時、26日は14時〜16時での開催。公式サイトで詳細を公開しており、メールフォームまたは下記問い合わせ先から参加申し込みを受け付けている。
【問い合わせ先】
アコースティックラボ
担当:草階(くさかい)氏
TEL/03-5829-6035
E-mail/kusakai@acoustic-designsys.com
(特別企画 協力:アコースティックラボ)
この「Acoustic Audio Forum」は、プロのエンジニアも使う音楽スタジオなども手掛けるアコースティックラボが定期的に開催しているイベント。毎回テーマを変えながら、オーディオファンにとっては非常に関心が高い“音がいい部屋”を構築するためのポイントの解説が行われる。
この日のテーマは「オーディオルームの室内音響設計について(3)〜響きの周波数特性について〜」。吸音アイテムなどを配置していない状態の部屋でも実は吸音することを紹介しつつ、特に部屋による低音の吸音具合で音質にどのような影響が出るのかなどが説明された。
同社の鈴木代表は「お客様から、『いいスピーカーに買い換えたのだがイマイチしっくりこない、音にリアリティがない』という相談がきたことがある。詳しく聞いてみたら和室にオーディオシステムを設置しているとのことで、和室は吸音するものが多いのでオーディオには厳しい条件だということを説明した」とコメント。テーマ設定の背景を説明する。
現代建築で用いる建材は薄く、しかも軽い。そして、断熱材などを入れるために間に空気層を設ける中空二重構造になっている。このため、現代建築の部屋は共振しやすく、特に低音の周波数帯域を吸収してしまう。スピーカーからはいい音が鳴っているのに、リスニングポイントでは物足りなく感じるという問題が発生するのは、部屋が原因なのだ。
その対策のひとつが、防音工事で壁の剛性を高めること。同社が実際に行った工事では、石膏ボード3枚張りの壁にすることで共振の抑制を図った。これにより低音域の反射率が上がったことに加えて付帯歪音も減り、同じスピーカーでも音の印象はガラッと変わったという。
「オーディオ機器は剛性が大切だと言われるが、それは建築も一緒だ。剛性が足りない壁は反射音が濁ってしまう」と鈴木氏は解説。オーディオはスピーカーからの直接音だけでなく、間接音も含めて聴くものであるため、部屋の影響が大きいことを改めて説明した。
イベントでは、会場である「蔵前ヴィレッジ」の残響時間や平均吸音率の測定データも公開。様々な楽曲での音出しデモも行い「実際に体験してもらっても、この部屋には低音のダブつき感がないと感じてもらえたのではないか」とコメント。「『高音はちゃんとキレイに出ているのに包まれ感が足りない』という悩みを結構聞くが、部屋が低音を吸音していることに起因していることも多い」とし、「この部屋ではそうした不満を覚えることもないだろう」と言葉を続けた。
一方で鈴木氏は、「本来、防音や遮音と音響は別物だ」ともコメント。それぞれが別々の問題であり、防音/遮音性能を高めることだけを追求するのであれば部屋の音響に配慮せずに仕上げることも可能であることを説明する。
しかし、それではたとえ大音量再生を心置きなく楽しめる部屋になったとしても、音楽を聴く楽しみにはつながらない。実際、他社で防音工事をした後に不満を覚えて改めて工事を依頼されるようなケースもあるという。防音性能と音響を同時に考え、オーディオ的な文脈で“正しい”防音工事を行うことで“音がいい部屋”をつくれるのだ。
なお、この日のデモにはビームテック社がULTIFI(アルティファイ)ブランドで開発中のエッジレス平面振動板スピーカー試作機「Nova2101」を使用。開発者である同社の菅沼氏も参加し、原理的に位相ズレが起こらず原音に忠実な再生が出来ることを説明した。
菅沼氏は「ライブ音源では観客の拍手の表現など、ライブの雰囲気をよく感じられるよう再生できていると思う」とアピール。アコースティックラボの鈴木氏も「中音域のボーカルの表現の仕方に、スピーカーの特徴がよく現れているように感じる」などと述べる一幕もあった。
平面振動板スピーカーは次回5月25日(金)・26日(土)開催回でも登場予定。次回は田口音響研究所製の平面振動板スピーカーを使用するという。
次回のテーマは「オーディオルームの室内音響設計について(4)〜響きの質〜」。建材や仕上材などが持つ“響きの質”に注目してデモや解説を行う。
会場は同じく「蔵前ヴィレッジ」で、25日は18時〜20時、26日は14時〜16時での開催。公式サイトで詳細を公開しており、メールフォームまたは下記問い合わせ先から参加申し込みを受け付けている。
【問い合わせ先】
アコースティックラボ
担当:草階(くさかい)氏
TEL/03-5829-6035
E-mail/kusakai@acoustic-designsys.com
(特別企画 協力:アコースティックラボ)
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