公開日 2019/01/08 16:00
大きく進化したBRAVIA
<CES>ソニー初8Kテレビの価格は? 新4K有機ELテレビは何が進化した? 疑問点を聞いた
編集部:風間雄介
ソニーが2019 International CESにおいて、2つの新「BRAVIA MASTER」を発表した。1つは、これまでの4K有機ELテレビを進化させた「A9G」。こちらは想像の範囲内だったとしても、8K液晶テレビ「Z9G」が発表されたことに驚いた方も多いのではないか。
新たに発表されたこの2つのモデルについて、分かっていることとそうでないことを整理してお届けしたい。
■4K有機ELテレビの新フラグシップ「A9G」
ソニーの4K有機ELテレビは、A1からはじまり、A8F、A9F、そして今回のA9Gという流れで進んできた。A9Gは4世代目のモデルだ。米国での発売は春以降順次。日本での発売はアナウンスされていないが、もし発売されるとして、例年通りであれば夏前頃だろうか。
A9FとA9Gの最も大きな違いは、そのフォームファクターだ。壁掛け時の厚さを、A9Fの2分の1にしたのだ。世界的に壁掛け設置比率が高まっていることを受け、よりすっきり設置できるよう工夫した。
とはいえ、A9Fを半分にまで薄くするのは、それほど簡単なことではなかったという。ソニーの有機ELテレビは、画面から音が出る「Acousitc Surface」を搭載しており、今回の新モデルであるA9Gも、その最新バージョンである「Acousitc Surface+」を備えている。
Acousitc Surfaceは、画面の後ろに設けられたアクチュエーターが振動し、その振動をパネルに伝えて音を出す仕組みだ。だから、筐体を薄くしながら、音質もこれまで通りのクオリティを実現するのはたやすいことではない。アクチュエーターの大きさや設置場所などについても作り直さなければならなかったという。
なおこのスピーカーは、従来からある「センタースピーカーモード」も引きつづき搭載。さらに、アップデートでドルビーアトモスにも対応するとのこと。上部にスピーカーがあるわけではなさそうで、どのようにしてイマーシブサウンドを実現するのか気になるところだが、楽しみに待ちたい。
また背面に入っている基板の設計も、一からやり直したとのこと。テレビ本体を前から見るとあまり変わっていないようだが、内部はかなり進化しているのだ。A9Fが欲しいけど壁掛けがしづらい、と感じていた方には朗報といえるだろう。
そして、変わったのは厚さだけではない。画質もしっかり進化している。パネルは「A9Fに搭載した、次の世代のものを搭載している」(ソニービジュアルプロダクツ 長尾和芳氏)とのことだ。ピーク輝度はほぼ変わっていないとのことだが、パネル特性は当然変わっている。それにあわせて、X1 Ultimateの画作りを調整し直したという。
また長尾氏は「X1 Ultimateの使いこなしも、第2世代になったこともあって、ずいぶんこなれてきました。これも画質向上に寄与しています」と説明する。具体的にどのあたりが画質向上したのかと尋ねると、ひと言では言い表せない、という。ある一箇所ではなく、全体的に手を加えているようだ。
さて、本機のHDR対応状況だが、HDR10はもちろんのこと、ドルビービジョン、HLGに対応している。HDR10+には非対応で、今のところ、今後のアップデートで対応する予定も無いとのことだ。これは少し残念だ。
そのほか、Netflixと共同開発した「Netflix画質モード」は引きつづき搭載するほか、IMAX Enhanced対応も謳われている。このIMAX EnhancedはTHX認証のようなもので、IMAXが考えるクオリティを満たしたテレビが対応をアピールできるという。ソニーはIMAXと以前から仲がよく、今回A9GがIMAX Enhancedに対応することになったとのことだ。
また、HDMIのバージョンはHDMI 2.1となる。ただしHDMI 2.1で追加された機能で対応するのはeARCだけで、そのほかのHFR(High Frame Rate)映像対応や可変リフレッシュレート機能「VRR」、自動低遅延モード「ALLM」などには対応しない。
ちなみにeARCは、HDMIケーブルのイーサネットチャンネルなどを使い、従来のARCでは伝送できなかった非圧縮の5.1/7.1ch、またドルビーアトモスやDTS:Xなどのオブジェクトオーディオをテレビ経由で伝送できる機能となる。
また他サービスとの連携では、従来通りGoogleアシスタント built-inによって、ブラビアに話しかけるだけでテレビの操作ができる機能を備える。
それだけではない。発表ではまったく触れられていなかったが、アップルのAirPlay 2とHomeKitにも、将来のアップデートで対応する。これでサムスン、LG、VIZIO、ソニーという、北米の主要テレビメーカーが、そろってAirPlay 2に対応したことになる。
AirPlay 2に対応したことによって、iPhoneやiPad、Macからコンテンツをストリーミング再生できる。さらにHomeKitとAirPlay 2の合わせ技によって、iPhoneなどに「ヘイSiri」と語りかけることで、テレビの電源ON/OFF、コンテンツの再生などが行える。iPhoneユーザーが多い日本では、多くのユーザーに受け入れられそうだ。
■ソニー初の8K液晶テレビ「Z9G」
さて、続いてはソニー初の8K液晶テレビ「Z9G」だ。98型と85型が用意され、発売時期や価格は春に発表予定で、日本で発売するかどうかは未定となっている。
まだアナウンスされておらず、そしてこの記事を読んでいる方が最も知りたいことは、「価格はどの程度なのか」ということだろう。ブースにいた複数の説明員に尋ね、鎌をかけたりもしてみたが、おおよその価格帯すら、まったく教えてもらえなかった。本当に決まっていないのかもしれない。
ちなみに、シャープの80型8Kテレビ「8T-C80AX1」の国内販売価格は200万円前後、そしてサムスンの85型8Kテレビの米国での販売価格は15,000ドル前後となっている。春に発売時期や価格をアナウンスするというから、これらの価格設定からあまりかけ離れない、あるいは下回ることを願いたい。
さて本機は、その型番から分かるとおり、液晶テレビのフラグシップ「Z9F」の上位機、もしくは後継機にあたるモデルだ。Z9Fとの最も大きな違いは、もちろん、解像度が4Kから8Kへと進化したことだ。
映像プロセッサーは「X1 Ultimate」。この高い処理性能によって、8K映像の情報量をリアルタイムに処理できるという。また8K超解像アルゴリズム用の専用データベースを内蔵。あらゆるコンテンツを8Kにアップコンバートする「8K X-Reality PRO」を実現した。
本機で重要なのは、パネル解像度や映像処理エンジンだけではない。独自のバックライト技術「バックライトマスタードライブ」にも注目したい。リリースには「8K向けに最適化したバックライトLEDモジュールと制御アルゴリズムを新規開発した」とシンプルに書かれているが、ここにも相当の工夫が盛り込まれているようだ。
パネルが8Kになって、画素数が4Kの4倍になると、当然ながら開口率は下がる。そうすると、同じ光量では輝度が下がってしまう。そうならないよう、LEDモジュール自体やアルゴリズムを工夫することで、Z9Dなどと比べても、圧倒的に高い輝度を実現できたのだという。
実際に画面を見てみると、比喩ではなく、眩しいくらいに明るい。輝度の数値は教えてもらえなかったが、8K/HDR映像の高精細かつハイダイナミックレンジな映像を、大変美しい映像で表現できていた。
バックライトを工夫して輝度を上げたというと、熱も気になるところだが、これも相当な工夫を行ったという。空冷や水冷などの手法は採らず、ファンレスで放熱できているとのこと。
さて、98型や85型になると、その両脇にフロアスタンディングスピーカーを置いたとしても、画面の中央からは遠く離れてしまう。画面中央に音をしっかり定位させるにはセンタースピーカーが欲しくなる。とはいえ、Z9Gは液晶テレビなので、有機ELテレビのように後ろから画面を振動させるわけにもいかない。
こういった背景から作られたのが、画面の上下に配置した、計4つのスピーカーで音をしっかり定位させる「Acoustic Multi-Audio」システムだ。実際のデモを聴くと、2スピーカーの場合と4スピーカーの場合とでは、当たり前だが音の広がりが全く違う。またこのスピーカーシステムは「センタースピーカーモード」にも対応しており、音と映像の一体化が行えるよう工夫している。さらに、後日のアップデートでドルビーアトモスにも対応するとのことだ。
本機も、HDMIのバージョンはHDMI 2.1。ただし、対応する機能はeARCだけではなく、ほかの機能も加わる可能性がある。同社の希望としては「4K/120pの入力にまで対応したい」というから期待したい。
なお本機もGoogleアシスタントbuilt-inだけでなく、アップルのAirPlay 2とHomeKitにも、将来的なアップデートで対応する予定だ。
◇
ソニーが発表した2つのBRAVIA MASTERについて、分かっていることとそうでないことをまとめた。現地時間1月8日からブースが開くので、また追加情報も入ってくるはず。その際には別途お伝えしていきたい。
新たに発表されたこの2つのモデルについて、分かっていることとそうでないことを整理してお届けしたい。
■4K有機ELテレビの新フラグシップ「A9G」
ソニーの4K有機ELテレビは、A1からはじまり、A8F、A9F、そして今回のA9Gという流れで進んできた。A9Gは4世代目のモデルだ。米国での発売は春以降順次。日本での発売はアナウンスされていないが、もし発売されるとして、例年通りであれば夏前頃だろうか。
A9FとA9Gの最も大きな違いは、そのフォームファクターだ。壁掛け時の厚さを、A9Fの2分の1にしたのだ。世界的に壁掛け設置比率が高まっていることを受け、よりすっきり設置できるよう工夫した。
とはいえ、A9Fを半分にまで薄くするのは、それほど簡単なことではなかったという。ソニーの有機ELテレビは、画面から音が出る「Acousitc Surface」を搭載しており、今回の新モデルであるA9Gも、その最新バージョンである「Acousitc Surface+」を備えている。
Acousitc Surfaceは、画面の後ろに設けられたアクチュエーターが振動し、その振動をパネルに伝えて音を出す仕組みだ。だから、筐体を薄くしながら、音質もこれまで通りのクオリティを実現するのはたやすいことではない。アクチュエーターの大きさや設置場所などについても作り直さなければならなかったという。
なおこのスピーカーは、従来からある「センタースピーカーモード」も引きつづき搭載。さらに、アップデートでドルビーアトモスにも対応するとのこと。上部にスピーカーがあるわけではなさそうで、どのようにしてイマーシブサウンドを実現するのか気になるところだが、楽しみに待ちたい。
また背面に入っている基板の設計も、一からやり直したとのこと。テレビ本体を前から見るとあまり変わっていないようだが、内部はかなり進化しているのだ。A9Fが欲しいけど壁掛けがしづらい、と感じていた方には朗報といえるだろう。
そして、変わったのは厚さだけではない。画質もしっかり進化している。パネルは「A9Fに搭載した、次の世代のものを搭載している」(ソニービジュアルプロダクツ 長尾和芳氏)とのことだ。ピーク輝度はほぼ変わっていないとのことだが、パネル特性は当然変わっている。それにあわせて、X1 Ultimateの画作りを調整し直したという。
また長尾氏は「X1 Ultimateの使いこなしも、第2世代になったこともあって、ずいぶんこなれてきました。これも画質向上に寄与しています」と説明する。具体的にどのあたりが画質向上したのかと尋ねると、ひと言では言い表せない、という。ある一箇所ではなく、全体的に手を加えているようだ。
さて、本機のHDR対応状況だが、HDR10はもちろんのこと、ドルビービジョン、HLGに対応している。HDR10+には非対応で、今のところ、今後のアップデートで対応する予定も無いとのことだ。これは少し残念だ。
そのほか、Netflixと共同開発した「Netflix画質モード」は引きつづき搭載するほか、IMAX Enhanced対応も謳われている。このIMAX EnhancedはTHX認証のようなもので、IMAXが考えるクオリティを満たしたテレビが対応をアピールできるという。ソニーはIMAXと以前から仲がよく、今回A9GがIMAX Enhancedに対応することになったとのことだ。
また、HDMIのバージョンはHDMI 2.1となる。ただしHDMI 2.1で追加された機能で対応するのはeARCだけで、そのほかのHFR(High Frame Rate)映像対応や可変リフレッシュレート機能「VRR」、自動低遅延モード「ALLM」などには対応しない。
ちなみにeARCは、HDMIケーブルのイーサネットチャンネルなどを使い、従来のARCでは伝送できなかった非圧縮の5.1/7.1ch、またドルビーアトモスやDTS:Xなどのオブジェクトオーディオをテレビ経由で伝送できる機能となる。
また他サービスとの連携では、従来通りGoogleアシスタント built-inによって、ブラビアに話しかけるだけでテレビの操作ができる機能を備える。
それだけではない。発表ではまったく触れられていなかったが、アップルのAirPlay 2とHomeKitにも、将来のアップデートで対応する。これでサムスン、LG、VIZIO、ソニーという、北米の主要テレビメーカーが、そろってAirPlay 2に対応したことになる。
AirPlay 2に対応したことによって、iPhoneやiPad、Macからコンテンツをストリーミング再生できる。さらにHomeKitとAirPlay 2の合わせ技によって、iPhoneなどに「ヘイSiri」と語りかけることで、テレビの電源ON/OFF、コンテンツの再生などが行える。iPhoneユーザーが多い日本では、多くのユーザーに受け入れられそうだ。
■ソニー初の8K液晶テレビ「Z9G」
さて、続いてはソニー初の8K液晶テレビ「Z9G」だ。98型と85型が用意され、発売時期や価格は春に発表予定で、日本で発売するかどうかは未定となっている。
まだアナウンスされておらず、そしてこの記事を読んでいる方が最も知りたいことは、「価格はどの程度なのか」ということだろう。ブースにいた複数の説明員に尋ね、鎌をかけたりもしてみたが、おおよその価格帯すら、まったく教えてもらえなかった。本当に決まっていないのかもしれない。
ちなみに、シャープの80型8Kテレビ「8T-C80AX1」の国内販売価格は200万円前後、そしてサムスンの85型8Kテレビの米国での販売価格は15,000ドル前後となっている。春に発売時期や価格をアナウンスするというから、これらの価格設定からあまりかけ離れない、あるいは下回ることを願いたい。
さて本機は、その型番から分かるとおり、液晶テレビのフラグシップ「Z9F」の上位機、もしくは後継機にあたるモデルだ。Z9Fとの最も大きな違いは、もちろん、解像度が4Kから8Kへと進化したことだ。
映像プロセッサーは「X1 Ultimate」。この高い処理性能によって、8K映像の情報量をリアルタイムに処理できるという。また8K超解像アルゴリズム用の専用データベースを内蔵。あらゆるコンテンツを8Kにアップコンバートする「8K X-Reality PRO」を実現した。
本機で重要なのは、パネル解像度や映像処理エンジンだけではない。独自のバックライト技術「バックライトマスタードライブ」にも注目したい。リリースには「8K向けに最適化したバックライトLEDモジュールと制御アルゴリズムを新規開発した」とシンプルに書かれているが、ここにも相当の工夫が盛り込まれているようだ。
パネルが8Kになって、画素数が4Kの4倍になると、当然ながら開口率は下がる。そうすると、同じ光量では輝度が下がってしまう。そうならないよう、LEDモジュール自体やアルゴリズムを工夫することで、Z9Dなどと比べても、圧倒的に高い輝度を実現できたのだという。
実際に画面を見てみると、比喩ではなく、眩しいくらいに明るい。輝度の数値は教えてもらえなかったが、8K/HDR映像の高精細かつハイダイナミックレンジな映像を、大変美しい映像で表現できていた。
バックライトを工夫して輝度を上げたというと、熱も気になるところだが、これも相当な工夫を行ったという。空冷や水冷などの手法は採らず、ファンレスで放熱できているとのこと。
さて、98型や85型になると、その両脇にフロアスタンディングスピーカーを置いたとしても、画面の中央からは遠く離れてしまう。画面中央に音をしっかり定位させるにはセンタースピーカーが欲しくなる。とはいえ、Z9Gは液晶テレビなので、有機ELテレビのように後ろから画面を振動させるわけにもいかない。
こういった背景から作られたのが、画面の上下に配置した、計4つのスピーカーで音をしっかり定位させる「Acoustic Multi-Audio」システムだ。実際のデモを聴くと、2スピーカーの場合と4スピーカーの場合とでは、当たり前だが音の広がりが全く違う。またこのスピーカーシステムは「センタースピーカーモード」にも対応しており、音と映像の一体化が行えるよう工夫している。さらに、後日のアップデートでドルビーアトモスにも対応するとのことだ。
本機も、HDMIのバージョンはHDMI 2.1。ただし、対応する機能はeARCだけではなく、ほかの機能も加わる可能性がある。同社の希望としては「4K/120pの入力にまで対応したい」というから期待したい。
なお本機もGoogleアシスタントbuilt-inだけでなく、アップルのAirPlay 2とHomeKitにも、将来的なアップデートで対応する予定だ。
ソニーが発表した2つのBRAVIA MASTERについて、分かっていることとそうでないことをまとめた。現地時間1月8日からブースが開くので、また追加情報も入ってくるはず。その際には別途お伝えしていきたい。