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公開日 2020/04/11 11:17
ユーザーの同意/プライバシー/透明性に配慮

異例の共闘、AppleとGoogleが作る新型コロナ対策技術を読み解く

山本 敦
世界で依然、新型コロナウイルスの感染が猛威を振るう中、米国では現地時間の4月10日、アップルとグーグルが、濃厚接触の可能性を検出する技術開発に共同で取り組む声明を発表した。


アップルは3月末、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のガイダンスに基づいたモバイルアプリ「COVID-19 Screening Tool」とWebサイト「COVID-19 Screening Tool」を米国内向けに提供し、ウイルスに関連する情報発信を始めていた。CEOのティム・クック氏も自身のツィッターを通じてマスクの調達やアップルが医療従事者向けフェイスシールドの開発を進めることなどを明らかにしている。

グーグルもまた、プレス向けのリリースやブログを通じて、新型コロナウイルス対策に関連する情報を継続的に発信している。今月3日には日本を含む131カ国を対象に、端末のロケーション履歴設定を有効にしたユーザーから収集し、匿名化されたデータを用いた行動傾向のデータを「COVID-19 コミュニティ モビリティ レポート」として公開した。当レポートについてグーグルは、厳格なプライバシー規約とポリシーを順守した上でユーザーのデータを匿名化、集約したものと説明し、今後も感染症拡大を防ぐために情報の定期配信を続けると伝えている。

両社は10日に発表した共同開発のアナウンスにおいて、今後iOSとAndroidのプラットフォームの垣根を越え、Bluetooth Low Energy(BLE)技術を活用した濃厚接触の可能性を検出するプラットフォームを整えると発表している。世界各国の主要な公衆衛生当局や大学、NGOが、濃厚接触を検出・追跡する技術開発に取り組んでいる中、企業間競争を超えた “助け合いの精神” のもと、世界最大級のIT企業が手を取り合い、ウイルス対策に向け共に闘うことが表明されたことになる。

今後、世界の主要な公衆衛生当局が提供するアプリをiOSとAndroidの端末間で相互に運用するためのAPI(アプリケーション開発のためのインターフェース)を5月にリリース。以後数カ月をかけ、OSレベルのプラットフォームの実現・整備を目指す。

グーグルのブログでは、BLEテクノロジーを使った、ユーザーのプライバシー保護を実現する行動履歴記録の技術解説が紹介されている。こちらが今回、両社が共同開発を進めるプラットフォームのイメージを知る上で参考になる。

グーグルが公開している行動履歴記録の技術解説資料。新型コロナウイルスに陽性反応が出たアプリユーザーの濃厚接触者に対して、ユーザーのプライバシー情報を保護しながら有効な治療・ケアに関連する情報が提供される

資料によると、同技術ではユーザーを特定できる個人情報や位置情報の収集は行わず、ユーザーの端末に記録される。ウイルスの陽性反応が出たユーザーに関連する情報は、ほかにアプリを利用するユーザーはもちろんのこと、グーグルやアップルにも共有されることはなく、各国の公衆衛生当局や疫病対策機関だけが匿名化された情報をセキュアに扱う。さらにAndroid、iOS端末を横断して運営されるこの技術は、ユーザーの同意を得た場合のみ提供される。

アップルとグーグルは、それぞれのBluetoothと暗号化技術、および接触者追跡のAPIに関する詳細情報をサイトに公開している。

現在欧米やアジアの一部諸国では、新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐための取り組みとして、モバイル端末を携行するユーザーの行動履歴を記録するアプリの提供と運用をすでに開始している。一例を挙げると、シンガポールの政府技術庁が4月2日に配信を始めたiOS/Android対応のアプリ「TraceTogether」では、電話番号を登録したユーザー同士の近接データをBluetoothベースの技術を用いて検知、ユーザーの端末に保存する。新型コロナウイルスの感染が判明した場合、濃厚接触の疑いがあるユーザーへ同国保健省が迅速に連絡を取り、対策情報を提供するというものだ。

シンガポールの政府技術庁が新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため国民に向けて提供を始めたアプリ「TraceTogether」

グーグルの資料と照らし合わせると、シンガポールで運用が始まったTraceTogetherアプリの方向性が、アップルとグーグルが共同開発を進めるプラットフォームに近いのではないかと推察できる。

アップルとグーグルは、今後共同で開発を進めるプラットフォームが、利用するユーザーの同意を得て、プライバシーや透明性にも配慮したセキュアなものになると説明している。日本でも今後、新型コロナウィルスに関連する多様な対策が求められる中、両社のプラットフォームが日本の政府機関や保健当局とも連携して使われることになるのか、今後の展開に注目したい。

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