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公開日 2023/10/16 17:00
浮かび上がる課題と影響

iPhoneの安全はどうあるべき?「サイドローディング」への危惧の声、アップルの考え

山本 敦

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日本の政府機関である内閣官房 デジタル市場競争会議(DMCH)がアップルに対して、iPhoneユーザーがApp Store以外の他社によるアプリストアも使えるように法案を定め、義務づけようとしている。

関連する法案の素地をつくるために組織されたDMCHのワーキンググループが、今年の6月に「モバイル・エコシステムに関する競争評価の最終報告書(案)」を提出した。この最終報告(案)を受けて、今年の6月19日から8月18日までに広く国民からパブリックコメントも募集した。その内容が10月12日に官邸のウェブサイトに公開された。

App Store、iPhoneの安全な利用に関わる法案の議論が進んでいる

■サイドローディングの何が問題なのか



アップルとグーグルに代表される大手IT企業が独自に運営するアプリ配信や決済サービスには、デバイスとサービスとが強固に結びつくエコシステムがある。その状況が寡占的であり、市場における自由な競争を侵害するものであるため、両社に外部開放を促すべきという議論が、これまで米国や欧州で先行してきた。日本の政府機関も欧米が進める議論の内容を受け、国際協調を図ろうとしている。

アップルは自社のApp Store以外のアプリストアから、iPhoneなどのデバイスにアプリやサービスを追加できる「サイドローディング」を認めていない。そのためDMCHによる提案にも対峙する形で、懸念を繰り返し伝えてきた。

その理由として同社は、サイドローディングを悪意ある者が不正に利用することで、ユーザーのプライバシーを侵害する大きなリスクが生まれ、やがては国家の経済安全保障、サイバーセキュリティをも脅かす事態に発展する可能性を挙げている。

デジタル市場競争会議のワーキンググループでも、モバイル・エコシステムのあるべき姿については繰り返し議論が交わされてきた。その結果として、サイドローディングが生み出す脅威にもまた「現実の問題」として脚光があたり、周知に結びついた。最終報告(案)に対して寄せられたパブリックコメントは全559件にのぼるが、賛成の意見がある一方で、アプリの代替流通経路の導入に対する不安と懸念を表明する声が多くあることが、資料を読み込むと見えてくる。その一部を抜粋しよう。

■最終報告書(案)に寄せられた反対の声



DMCHのワーキンググループの最終報告(案)に対するパブリックコメントの内容が公開された

【全国消費者団体連絡会】
(仮に「アプリ代替流通経路」を容認した場合でも、保護者にわかりやすい仕組みを作って被保護者を保護できることが必要です。)わかりやすく利用しやすい仕組みを作れない場合は、「アプリ代替流通経路」は容認すべきではありません。(PDF資料:P49)

【インターネットユーザー協会(MIAU)】
スマートフォンは一番身近な情報端末として、幅広いユーザーが利用していることに強く注意すべきだ。子どもたちだけでなく、情報リテラシーが必ずしも高くない人たちの生活に密着するツールであり、濫用や悪用を防ぐ機能や仕組みが取り入れられてきたことに注目する必要がある。(PDF資料:P1066-1067)

【My Data Japan】
OS提供事業者が法令順守のレベルを超えてユーザーのプライバシー保護を図ろうとすることは、むしろ賞賛されるべきことであって、禁止されるような性質のものでないことは明白である。(PDF資料:P377)

【一般社団法人iOSコンソーシアム】
GIGAスクール構想はコロナ禍もあって周辺諸国にはないハイペースで国内への端末配備が進んだことでアジア諸国などからも非常に注目を集めた「成功事例」となっていますが、今回のアプリ代替流通経路を契機としたトラブルが頻発すれば、その功績は「暗転」しかねませんし、それによって教育領域でのICT活用が大きく後退した場合、その影響を受けるのは他でもない子供達であり、それは10数年後の日本経済全体にも深い爪痕を残すことになります。したがい、今回の規制緩和は教育現場で利用される端末を「適用例外」とすべきと考えます。(PDF資料:P169)

【電子情報技術産業協会(JEITA)】
ビジネスモデルを鑑みることなく、企業努力により開発されたサービスやソリューションを無償で提供することを強制する政策の方向性は、自由な企業活動を萎縮させる可能性もある。(PDF資料:P54)

【東京大学教授(先端研)・信州大学教授(経法学部)】
「経済安全保障」の観点からは、日本人のデータを扱うアプリケーションソフト開発者の中には懸念国の政府、軍隊、あるいはそのエージェントが含まれていると想定するほかはないのであり、そのような者がセキュリティ確保にとって死活的な脆弱性情報を入手すれば、それを掻い潜って危険なソフトウェアを開発し実装を図るのは、必定である。(PDF資料:P22)

寄せられた意見に対してDMCH事務局は資料の中で、「参考にしながら今後も必要な法制度の検討を進める」と回答している。

「多くの提言に謹んで反対します」

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