公開日 2024/09/01 07:00
本日9月1日は「防災の日」。防災の日であろうがなかろうが防災意識は常に必要だが、この機会にその意識をさらに高めておくのはよいことだ。ということで今回は防災に関わるオーディオアイテムに注目。「非常時持ち出し防災バッグに入れておくためのラジオの選び方」を考えてみよう。
いまやスマホがあればラジオ聴取も含めてだいたいのことは何とかなる。しかし逆に言えばそのスマホのバッテリーが切れてしまったらだいたいのことが何ともならなくなってしまう。なのでその消費はできるだけ減らしたい。
そこでラジオ聴取にはラジオそのものを用意しておこうというのが前提の話。そしてその製品選びには「ポータブルオーディオマニアが防災ラジオを選ぶ際はここに注意!」なんてポイントもあったりするのだ。
いきなり具体的に挙げるが、筆者が防災ラジオとして選んだ製品がこちら、オーム電気「AudioComm DSPポケットラジオ AM/FMステレオ RAD-P300S」となる。直販価格は2,948円だがネット通販全般では2,000円前後の値付けが多い。
このRAD-P300Sを例として、オーディオ好き視点も交えての防災ラジオの選び方、その一例を紹介していこう。
RAD-P300Sを選んだ理由=筆者が防災ラジオに求めた条件を、まずはざざっと挙げよう。
●必要十分に小型軽量であること
●乾電池駆動が可能であること
●乾電池の種類が単4であること
●デジタルチューナーであること
●イヤホン一体型ではなく外部イヤホン接続型であること
●外部イヤホン端子が3.5mmであること
●ステレオイヤホンの左右両方から音が出ること
●防災時しか使わないものなので手頃な価格であること
以降はなぜそれらを必須条件としたのかを説明しつつ、それを満たすRAD-P300Sを紹介していく。説明に目を通して「なるほど」となったところはご自身の製品選びにも取り入れていただければと思う。「自分の考え方には合わない」「自分の環境には適さない」というところもあるだろうから、自身の考えや環境にフィットしそうなところだけピックアップして取り入れていただければOKだ。
1.必要十分に小型軽量であること
小型軽量を重視するのは、説明するまでもなく、防災バッグに収納できる容量や背負って歩く際の重さとの兼ね合いからだ。例えば手回し充電機能や防水タフ仕様も防災ラジオとしては魅力的なのだが、そういった機能や仕様を備えた製品は大柄になりがち。なので今回は候補から外した。
ただ「自分、体力に余裕あってバッグはデカいの用意してますし重さも気になりません!」という方は、その余裕に合わせた製品選びをするのもありだろう。
「必要十分に」という言い回しもポイントで、「最小・最軽量」とかにはこだわっていない。というのも、ライターサイズなどの超小型軽量な製品は、筆者が見まわした範囲では、以降で紹介する他の条件を満たせなくなる場合が多かったのだ。
対してRAD-P300Sは他の条件もしっかりクリアしつつ、縦横おおよそカードサイズで本体重量62gと必要十分に小型軽量。しかも薄さはポケットラジオの中でも最薄クラスの16mmだったりする。十分すぎだ。
2.乾電池駆動が可能であること
「乾電池駆動が可能な製品を選ぶ」とは、逆に言えば「内蔵充電式バッテリーでしか動作しない製品は選ばない」ということ。理由は「バッテリー管理が面倒だから」に尽きる。
充電式バッテリーの管理の面倒さや厄介さは、ポータブルオーディオ好きな方こそ身に染みているはず。昔に愛用していたDAPやワイヤレスイヤホンを引っ張り出したらまずもちろん充電切れ。さらに長期の過放電で電池性能は著しく劣化。そんな経験があるのではないだろうか。普段使わないアイテムのバッテリー管理なんてそんな感じになってしまうものだ。
しかし防災アイテムに「いざというとき使えませんでした」は許されない。ならば対応策は「放置せず定期的に使って、放電/充電といったバッテリー管理をする」か「放置しても問題ないタイプの製品を選ぶ」のどちらかだ。
筆者のような人種には前者は無理なので後者を選んだ。そのための乾電池駆動だ。ポータブルラジオといまどきの乾電池の組み合わせであれば、一年くらい電池入れっぱなしで放置しても、自然放電で電池の大半が消費されてしまうとか、液漏れが起きてしまうとかいうことは、ほぼ起きないだろう。「ほぼ」という点に不安を覚えるようであれば、電池をラジオに入れずに、でもラジオと一緒にパッキングしておく形にすればよい。ラジオと電池を合わせて小袋にまとめておくなどだ。
なお電源周りでいうとRAD-P300Sの電源ボタンは、長押しではなく普通に押すだけで電源オンとなる仕様。そのままだとバッグの中で何かに押されたりして電源が入ってしまう危惧もある。であるがメーカーもそこは抜かりなく、ロックボタン長押しでの誤動作防止ロック機能の搭載で対策。
ただその上でも少し気になるのは、電源のオンオフに関わらず常に画面に現在時刻が表示されている点。年単位での防災バッグに入れておくなら、僅かながらの電池消耗はあるかもしれない。杞憂民である筆者としてはこの観点からもやっぱり、電池は抜いた状態でパッキングしておく予定だ。
3.乾電池の種類が単4であること
乾電池での使用が可能なことに加えて、その乾電池の種類も気にかけておきたい。昨今の小型家電で使われている乾電池の主流は単4と単3だろう。そのうち各自のご家庭で「リモコン用とかで日常的により多く備蓄してある種類」や「防災バッグに入れておく懐中電灯など他の家電と共通で使える種類」などにラジオに使う乾電池の種類も合わせておけば、備蓄管理や防災バッグの整理がしやすくなりそうだ。
ということで筆者の場合、身の回りや防災用の乾電池製品はできるだけ単4使用のものを選ぶようにして、備蓄と防災バッグの電池を単4中心で賄えるようにしている。なので防災ラジオも単4使用のものが望ましい。RAD-P300Sは単4×2本なのでここもクリアしている。
4.デジタルチューナーであること
ラジオ受信機において、アナログ選局チューナー採用機とデジタル選局チューナー採用機の使い勝手の違いは相当に大きい。特にそもそもの電波状況が劣悪な都心部では、アナログチューナーの選局ダイヤルは超微細に少しずつ回しての調整が必要だ。
その点デジタルチューナーはそれより高精度のチューニングを自動で行ってくれるので、操作が楽なことに加え、結果的によりクリアな受信も期待できる。ストレスが多いであろう災害時、チューニングに手間取ったりして余計な追加ストレスを感じたくはない。ここは楽をできるようにしておきたいところだ。
RAD-P300Sは曰く「デジタルで一発選局、高感度DSPポケットラジオ」とのことであるからこの点もバッチリ!
……なはずだが、使い勝手はともかく、ラジオの感度ばかりは実際に使う環境で試してみないことにはどうにもわからない。
ということで筆者自宅内とその一歩外で試してみた。東京都内ではあるが都心よりも多摩の山に寄っていて、しかしそれでもラジオの電波状況は劣悪で、AMだろうがFMだろうワイドFMだろうが室内ではまともに受信できない局ばかり。そんな環境だ。
そんな環境で、比較対象として同じくオーム電気の、DSPともデジタルとも表記されていないのでおそらくはアナログチューナーであろうポケットラジオ「RAD-P136N」も用意し、チューニングのしやすさ、受信できた局の音声のクリアさなどをテストした。
結果をまとめると、
●デジタル機RAD-P300S
受信環境がよろしくない局では背景ノイズの周波数が高めかつ不安定なせいでそれがやや耳障り。しかし音声自体のクリアさではアナログ機に一歩勝る。受信環境最悪の室内では、こちらでなら何とか聴取可能だが、アナログ機では音声よりノイズの方が大きくて無理といった局もあった。
●アナログ機RAD-P136N
受信環境がよろしくない局でも背景ノイズの周波数が低めかつ安定しているおかげか、その耳障り度は低い。音声自体もクリアさでは劣るものの柔らかな音調で好ましく感じる。しかし上述のように、受信環境が悪くなればなるほどにS/Nは著しく悪化しデジタル機との差が開く。
といったところ。受信環境が悪くなければアナログ機でもよい、むしろアナログ機が良いまであるかもしれない。であるが、自宅はともかく避難場所のラジオ受信環境など全く不明であるから、最悪の受信環境も想定してデジタル機にしておくのがやはり無難かと思う。
なおデジタルチューナー搭載機は機能も豊富。しかし代わりに「どのボタンを長押しでスリープタイマー」などのように、操作系は複雑化しがちだ。製品に紙の説明書も付属していたならば防災バッグにはそれも一緒に入れておくとよいだろう。
[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第277回】
災害大国日本、“もしも”に備えて考えておきたい「オーディオファン的 防災ラジオの選び方」
高橋敦■オーディオ好きの視点で防災ラジオを選ぼう!
本日9月1日は「防災の日」。防災の日であろうがなかろうが防災意識は常に必要だが、この機会にその意識をさらに高めておくのはよいことだ。ということで今回は防災に関わるオーディオアイテムに注目。「非常時持ち出し防災バッグに入れておくためのラジオの選び方」を考えてみよう。
いまやスマホがあればラジオ聴取も含めてだいたいのことは何とかなる。しかし逆に言えばそのスマホのバッテリーが切れてしまったらだいたいのことが何ともならなくなってしまう。なのでその消費はできるだけ減らしたい。
そこでラジオ聴取にはラジオそのものを用意しておこうというのが前提の話。そしてその製品選びには「ポータブルオーディオマニアが防災ラジオを選ぶ際はここに注意!」なんてポイントもあったりするのだ。
いきなり具体的に挙げるが、筆者が防災ラジオとして選んだ製品がこちら、オーム電気「AudioComm DSPポケットラジオ AM/FMステレオ RAD-P300S」となる。直販価格は2,948円だがネット通販全般では2,000円前後の値付けが多い。
このRAD-P300Sを例として、オーディオ好き視点も交えての防災ラジオの選び方、その一例を紹介していこう。
■ポタオデファンとして防災ラジオ選びで気にしたポイント
RAD-P300Sを選んだ理由=筆者が防災ラジオに求めた条件を、まずはざざっと挙げよう。
●必要十分に小型軽量であること
●乾電池駆動が可能であること
●乾電池の種類が単4であること
●デジタルチューナーであること
●イヤホン一体型ではなく外部イヤホン接続型であること
●外部イヤホン端子が3.5mmであること
●ステレオイヤホンの左右両方から音が出ること
●防災時しか使わないものなので手頃な価格であること
以降はなぜそれらを必須条件としたのかを説明しつつ、それを満たすRAD-P300Sを紹介していく。説明に目を通して「なるほど」となったところはご自身の製品選びにも取り入れていただければと思う。「自分の考え方には合わない」「自分の環境には適さない」というところもあるだろうから、自身の考えや環境にフィットしそうなところだけピックアップして取り入れていただければOKだ。
小型軽量を重視するのは、説明するまでもなく、防災バッグに収納できる容量や背負って歩く際の重さとの兼ね合いからだ。例えば手回し充電機能や防水タフ仕様も防災ラジオとしては魅力的なのだが、そういった機能や仕様を備えた製品は大柄になりがち。なので今回は候補から外した。
ただ「自分、体力に余裕あってバッグはデカいの用意してますし重さも気になりません!」という方は、その余裕に合わせた製品選びをするのもありだろう。
「必要十分に」という言い回しもポイントで、「最小・最軽量」とかにはこだわっていない。というのも、ライターサイズなどの超小型軽量な製品は、筆者が見まわした範囲では、以降で紹介する他の条件を満たせなくなる場合が多かったのだ。
対してRAD-P300Sは他の条件もしっかりクリアしつつ、縦横おおよそカードサイズで本体重量62gと必要十分に小型軽量。しかも薄さはポケットラジオの中でも最薄クラスの16mmだったりする。十分すぎだ。
「乾電池駆動が可能な製品を選ぶ」とは、逆に言えば「内蔵充電式バッテリーでしか動作しない製品は選ばない」ということ。理由は「バッテリー管理が面倒だから」に尽きる。
充電式バッテリーの管理の面倒さや厄介さは、ポータブルオーディオ好きな方こそ身に染みているはず。昔に愛用していたDAPやワイヤレスイヤホンを引っ張り出したらまずもちろん充電切れ。さらに長期の過放電で電池性能は著しく劣化。そんな経験があるのではないだろうか。普段使わないアイテムのバッテリー管理なんてそんな感じになってしまうものだ。
しかし防災アイテムに「いざというとき使えませんでした」は許されない。ならば対応策は「放置せず定期的に使って、放電/充電といったバッテリー管理をする」か「放置しても問題ないタイプの製品を選ぶ」のどちらかだ。
筆者のような人種には前者は無理なので後者を選んだ。そのための乾電池駆動だ。ポータブルラジオといまどきの乾電池の組み合わせであれば、一年くらい電池入れっぱなしで放置しても、自然放電で電池の大半が消費されてしまうとか、液漏れが起きてしまうとかいうことは、ほぼ起きないだろう。「ほぼ」という点に不安を覚えるようであれば、電池をラジオに入れずに、でもラジオと一緒にパッキングしておく形にすればよい。ラジオと電池を合わせて小袋にまとめておくなどだ。
なお電源周りでいうとRAD-P300Sの電源ボタンは、長押しではなく普通に押すだけで電源オンとなる仕様。そのままだとバッグの中で何かに押されたりして電源が入ってしまう危惧もある。であるがメーカーもそこは抜かりなく、ロックボタン長押しでの誤動作防止ロック機能の搭載で対策。
ただその上でも少し気になるのは、電源のオンオフに関わらず常に画面に現在時刻が表示されている点。年単位での防災バッグに入れておくなら、僅かながらの電池消耗はあるかもしれない。杞憂民である筆者としてはこの観点からもやっぱり、電池は抜いた状態でパッキングしておく予定だ。
乾電池での使用が可能なことに加えて、その乾電池の種類も気にかけておきたい。昨今の小型家電で使われている乾電池の主流は単4と単3だろう。そのうち各自のご家庭で「リモコン用とかで日常的により多く備蓄してある種類」や「防災バッグに入れておく懐中電灯など他の家電と共通で使える種類」などにラジオに使う乾電池の種類も合わせておけば、備蓄管理や防災バッグの整理がしやすくなりそうだ。
ということで筆者の場合、身の回りや防災用の乾電池製品はできるだけ単4使用のものを選ぶようにして、備蓄と防災バッグの電池を単4中心で賄えるようにしている。なので防災ラジオも単4使用のものが望ましい。RAD-P300Sは単4×2本なのでここもクリアしている。
ラジオ受信機において、アナログ選局チューナー採用機とデジタル選局チューナー採用機の使い勝手の違いは相当に大きい。特にそもそもの電波状況が劣悪な都心部では、アナログチューナーの選局ダイヤルは超微細に少しずつ回しての調整が必要だ。
その点デジタルチューナーはそれより高精度のチューニングを自動で行ってくれるので、操作が楽なことに加え、結果的によりクリアな受信も期待できる。ストレスが多いであろう災害時、チューニングに手間取ったりして余計な追加ストレスを感じたくはない。ここは楽をできるようにしておきたいところだ。
RAD-P300Sは曰く「デジタルで一発選局、高感度DSPポケットラジオ」とのことであるからこの点もバッチリ!
……なはずだが、使い勝手はともかく、ラジオの感度ばかりは実際に使う環境で試してみないことにはどうにもわからない。
ということで筆者自宅内とその一歩外で試してみた。東京都内ではあるが都心よりも多摩の山に寄っていて、しかしそれでもラジオの電波状況は劣悪で、AMだろうがFMだろうワイドFMだろうが室内ではまともに受信できない局ばかり。そんな環境だ。
そんな環境で、比較対象として同じくオーム電気の、DSPともデジタルとも表記されていないのでおそらくはアナログチューナーであろうポケットラジオ「RAD-P136N」も用意し、チューニングのしやすさ、受信できた局の音声のクリアさなどをテストした。
結果をまとめると、
●デジタル機RAD-P300S
受信環境がよろしくない局では背景ノイズの周波数が高めかつ不安定なせいでそれがやや耳障り。しかし音声自体のクリアさではアナログ機に一歩勝る。受信環境最悪の室内では、こちらでなら何とか聴取可能だが、アナログ機では音声よりノイズの方が大きくて無理といった局もあった。
●アナログ機RAD-P136N
受信環境がよろしくない局でも背景ノイズの周波数が低めかつ安定しているおかげか、その耳障り度は低い。音声自体もクリアさでは劣るものの柔らかな音調で好ましく感じる。しかし上述のように、受信環境が悪くなればなるほどにS/Nは著しく悪化しデジタル機との差が開く。
といったところ。受信環境が悪くなければアナログ機でもよい、むしろアナログ機が良いまであるかもしれない。であるが、自宅はともかく避難場所のラジオ受信環境など全く不明であるから、最悪の受信環境も想定してデジタル機にしておくのがやはり無難かと思う。
なおデジタルチューナー搭載機は機能も豊富。しかし代わりに「どのボタンを長押しでスリープタイマー」などのように、操作系は複雑化しがちだ。製品に紙の説明書も付属していたならば防災バッグにはそれも一緒に入れておくとよいだろう。
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