根本からの改良を加え、ラインナップを一新

パイオニアのスピーカーシステムを代表するS-A7シリーズが一新され、S-A77シリーズとして生まれ変わった。今回のモデルチェンジではユニットおよびキャビネットの構造にもメスを入れ、内容の変更点は多岐にわたる。シリーズの構成は、リボントゥイーターを積む4ウェイトールボーイ型のS-A77TB、同軸ユニットとツインウーファーを組み合わせたS-A77VT、同軸ユニットとウーファーのシンプルな2ウェイを採用したS-A77BSの3機種で、それぞれフロント、センター、サラウンドとしての使用を考慮しているが、実際にはそれぞれ独立した製品ととらえるべきだろう。以上の3モデルに加えてアクティブ型サブウーファーS-W7も同時発売されるが、550Wの大出力を実現した自社製デジタルアンプを搭載し、30cmユニットを積む本格派のサブウーファーである。

シリーズにはフラグシップモデルTAD-M1の開発で培ったノウハウが盛り込まれており、再生音からもその成果を感じ取ることができた。ストレートで力感に富み、同時に繊細な表現力も兼ね備える。低域から高域まで音色とスピード感がよく揃い、立ち上がりと立ち下がりが非常に速いことにも特徴がある。音がリリースされるときの負荷が減り、ストレスのない自然でスムーズな音をあらゆるジャンルの音楽で味わえる。この音離れの良さは明らかにTAD-M1を意識した結果だと思うが、それは本シリーズのような中型から小型のシステムでも大きなメリットを生んでいる。特にトールボーイ型のS-A77TBは広い周波数範囲にわたってエネルギーが豊かで表現力に余裕を感じさせた。

（TEXT：山之内 正）