マルチ再生時の音質も高く、このクラスで1,2を争う完成度だ

つい最近意欲的なＳＡＣＤプレーヤーＤＣＤ−ＳＡ１０を投入したばかりのデノンが、今度はついにＤＶＤオーディオ、ＳＡＣＤ両フォーマットに対応したユニバーサルプレーヤーを発売した。各フォーマットへの対応を一歩ずつ着実に進めていくところに、デノンらしい姿勢がうかがえる。最近は本格的なアナログプレーヤーを発表して話題を集めるなど、同社のプレーヤーに対するこだわりは時代、方式を問わず受け継がれているのだ。

ＤＶＤプレーヤーとしての本機は、フラグシップ機ＤＶＤ−Ａ１の基本構成を受け継いでいることからも分かる通り、中級機が満たすべき基準をしっかりクリアしている。プログレッシブ変換回路と映像ＤＡＣに最新デバイスを搭載することはもちろん、ガンマ補正を含めた詳細な画質調整機能、ＮＴＳＣとＰＡＬの両フォーマット対応、素材の特性を高精度で検出するピュアプログレッシブ回路の継承など、基本装備は上級機となんら変わるところがない。

さらに注目すべきは、音質対策の徹底ぶりである。電源を信号処理ごとに分けて独立化するだけでなく、基板自体をオーディオ、ビデオ、デジタルの各信号ごとに分けて相互の干渉を物理的にも確実に抑える。ＤＶＤ−Ａ１、ＤＣＤ−ＳＡ１０で培ってきたこれらの音質対策は、本機にも確実に受け継がれている。底板を３層構造にして共振を抑えるなど、ピュアオーディオの製品に見られるデノンならではの手法も採り入れて万全を期している点も見逃せない。

さらに、ビデオ信号、デジタル信号、フロントパネルの表示をそれぞれ独立してオフにするピュアダイレクトモードは、２ポジションのカスタム設定を登録することができ、ソースに応じて使い分けられる。

本機は、細部までしっかりコントラストを確保し、同時にＳ／Ｎを高めた水準の高い映像を見せる。色情報も含めて情報量が大変豊富なので、プラズマディスプレイや液晶テレビはもちろん、プロジェクターと組み合わせて大画面を楽しむ用途にも安心して薦められる。

マルチチャンネル再生の音質は期待以上の表現力に驚かされる。ＤＶＤオーディオの安定したバランスと中低域の力強さ、ＳＡＣＤの緻密な空間再現力と聴感Ｓ／Ｎの高さは特筆すべきものがある。ＣＤ再生のクオリティも含めて、このクラスのユニバーサル機のなかで１、２を争う完成度の高さを見せる。

（text：山之内 正）