製品情報
PIONEER
VSA-AX4AH
¥209,524(税抜)
HDオーディオ対応の位相補正搭載AVアンプ
ビジュアルグランプリ2008 SUMMER ≪AVアンプ(中級タイプ/15万円以上50万円未満)部門≫受賞モデル
ビジュアルグランプリ2008 ≪銀賞≫受賞モデル
ビジュアルグランプリ2008 ≪ホームシアター大賞≫受賞モデル
ビジュアルグランプリ2008 ≪AVアンプ(中級タイプ/15万円以上50万円未満)部門≫受賞モデル
【SPEC】●実用最大出力:全チャンネル220W(6Ω、JEITA、6Ω、サラウンド時) ●定格出力:140W+140W(20Hz〜20kHz、0.09%、8Ω) ●周波数特性:5Hz〜100kHz (+0dB/-3dB) ●ライン入力S/N比:103dB (IHF-A) ●音声入力端子:同軸デジタル2、光デジタル5、アナログ4、アナログ(AV系)7、マルチチャンネル入力1 ●映像入力端子:コンポジット7、S端子5、コンポーネント3、D4端子2 ●その他入力端子:HDMI4(音声再生可能)、USB端子1、iPod専用端子1、LAN端子1 ●音声出力端子:光デジタル2、アナログ4、プリアウト1系統(サブウーファー出力1) ●映像出力端子:コンポジット4、S端子3、コンポーネント1(MONITOR)、D4端子1(MONITOR) ●その他端子:HDMI出力1、RS232C出力1、12Vトリガー出力1、SR入出力1 ●消費電力:380W ●外形寸法:420W×459H×187Dmm ●質量:17.0kg
※原則として製品発表時のデータを掲載していますので、内容・価格は変更されている場合があります。また、この製品データベースには生産・販売を休止したモデルの情報も含まれています。
パイオニアの最新AVアンプのラインナップはブラック仕上げのLXシリーズと、従来の流れを汲むシルバー仕上げのAXシリーズが混在している。本機は実質的にVSA-LX70と共通仕様の中級機で、中身は先日発表されたフラグシップ機SC-LX90の技術を一部先行して搭載するなど、進化の最先端を行く。特に、スピーカー内で生じる位相差を自動測定して補正する「フルバンド・フェイズコントロール」の搭載は注目に値し、補正精度を向上させた「Advanced MCACC」とともに、空間再現力のいっそうの改善が期待される。
ステレオ録音のSACDでまず本機の基本的な音調を確認する。重心の低い再生音だが、ただ低音の響きが厚いだけではなく、倍音領域まで含めた和音の響きの純度が高く、合奏のスケールが大きく広がることに進化を実感した。響きが厚いのに空間の見通しがいいのはそのためであり、特にフルバンド・フェイズコントロールをオンにしたときのパースペクティブの深さには感銘を受ける。ノラ・ジョーンズのボーカルはやや大きめの音像だがS/N感は優秀で、ベースの付帯音がなくテンポがよどみなく前に進む心地よさがある。
本機でマルチチャンネル音源を聴くときは、あらゆる方向に隙がなく密度の高い立体音場に耳を傾けたい。大編成の管弦楽では距離感の不揃いがなく、映画では聴き手から音源までの遠近の精度が高い。パイオニアが息長く続けてきたピュアマルチチャンネル再生の追求は、ここにきて新たな段階に入ったと言っていい。
まずはPS3と組み合わせて試聴した。『サハラ』は銃弾の衝撃音、ヘリのローター回転音ともに重さと厚みがあり、音楽よりは効果音が若干勝るが、視聴したシーンでは適切なバランスと感じた。管弦楽は定位の精度の高さとリズムの動きの良さが持ち味。MCACCの精度の高さもいいが、手動調整で聴いた音のバランスの良さにも好印象を受けた。『エネミー・ライン』はいかにも音圧感のあるサウンドを再現。冒頭のコーラスには優れた精妙さがあり、声のセパレーションと生々しいブレスが聴き手を引き付ける。地雷のシーンは距離と遠近感が秀逸。効果音の素材感の差や暗騒音の広がりの大きさにも感心した。『イノセンス』はディテールを丁寧に鳴らし分け、オリジナル素材の音数の差を見事に印象付ける。
続いて同社のBDプレーヤー「BDP-LX80」と組み合わせた。『サハラ』はそれぞれの効果音に音圧感と押し出しの強さ、実在感があり、緊張感の高い映像に拮抗する迫力を演出する。空間のつながりの良さ、密度感も第一級で、圧縮音声との違いは如実に出た。オーケストラは余韻が上質で、金管や木管楽器の音色が細くならない点が良い。弦楽器らしい艶のある音色も実演を髣髴とさせる。『エネミー・ライン』は勢いと精密感が両立したサウンドだ。冒頭コーラスのハーモニーが美しく響き、ビブラートの表情がきめ細かい。音楽と効果音のバランスは絶妙でどちらも質感が高い。低音の響きは空虚にならず、実在感がある。音源のサイズと材質を類推させる精度の高い効果音によって、音で聴き手の注意力を前後に振る演出の巧みさがよく伝わってきた。『デジャヴ』はエネルギー感が豊かで音楽と効果音のバランスが良好。(文/山之内 正)