3Dなど最新技術に対応したハイパフォーマンスエントリー

デノンから今夏に投入されるHDMI Ver.1.4a端子搭載、3D映像のパススルー出力対応AVアンプの3モデル中、最もエントリークラスに位置づけられるモデルだ。シリーズ上位モデル「AVR-3311」「AVR-1911」と比較すると、上位モデルでは7.1ch対応のところ、本機は5.1chになっており、iPodデジタル接続やネットワーク再生などの機能は省略されているのが、機能面でのポイントになる。余計な機能は不要という方にとっては、コストパフォーマンスが非常に高いと言えるだろう。

アンプとしての基本的な性能面では、同社アンプシリーズの一翼を担うモデルとしての哲学をそのまま受け継いでいる。「ダイレクト・メカニカル・グラウンド」のコンセプトに基づいて、シャーシ構造やパーツ配置を最適化。振動を効果的に抑え、逃がす構造としている。そして信号経路を最短にすることで信号の損失を最小にする「ミニマムシグナルパスサーキット」である。パワー段を厳選パーツによるディスクリート構成としているあたりも、出力数にこそ少しの差はあるが、上位モデルと同等だ。

なお機能面では、本機はドルビープロロジックIIzに対応するが、プリアウトでの対応となる。つまりフロントハイトスピーカー増設の際には、別途2ch分のパワーアンプが必要になる。フロントハイトの設置を検討されている方、あるいは興味のある方は選択の際に注意してほしい。

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版・破」の各場面では、密閉空間ではその狭さや密度を、広い空間ではその広さや抜けを適切に表現。空間の再現性は十分だ。爆発音など中低域の効果音の抜けの良さも好印象。低音を重く引きずらず、すかっと抜けてくれる。大きな移動を伴う中高域の効果音のキレやスピーカー間のつながりも良好だ。

台詞も含め音調は少し甘めで、少なくとも硬質ではない。しかし上位モデルもその傾向なので、本機に手抜きがあるというわけではない。シリーズの音作りとして、緊張感を強く出しすぎないようにしているのだろう。それにこの音調は音楽ソース、特に女性ボーカルと相性が良い。5.1ch再生時での上位モデルとの音質差は、確かに存在するものの大きく顕著ではない。機能面からこちらで十分という方であれば、非常にお買い得なモデルであると言える。

（text：高橋敦）